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第50回 南部白雲木彫刻工房

木彫品から木製看板、そして木片加工品へ
流行の次に備えての商品開発が功を奏して

明治31(1898)年創業の南部白雲木彫刻工房の三代目・南部
白雲(秀三)氏。「真似されにくいものをつくっていけば、価格で
比較されることは少なくなる」とオリジナル品の開発に勤しむ。

 「欄間(らんま)の時代はいつまでも続かない。今のうちに、次の商品を開発しておかなければいけない」
 今からおよそ30年前の南部白雲氏(三代目)の弁だ。井波彫刻は昭和の終わりから平成の初め頃にピークを迎え、約20億円あった売上げも今日では半分以下の8億円程度に。かつての主力商品・欄間は、住宅の様式が変わった(和室の二間続きが少なくなった)ことと、生活スタイルの変化(欧風化と自宅で冠婚葬祭を営む習慣が少なくなったこと等)を受けて、平成の世が進むにつれて需要はきわめて少なくなった。
 白雲氏は平成元(1989)年頃より、からくり大黒や木彫看板の制作を試み、ポスト欄間をうかがい始めた。周囲の同業者からは「何を変わったことを」と白眼視されたが、「欄間がはやった理由が分かれば、下火になる可能性も推測できる。核家族化や家のコンパクト化、洋室嗜好が顕著になりつつありましたので、欄間の勢いがなくなる芽は出始めていました。だから私は商品開発の必要性を訴えたのです」と当時を振り返りながら語った。

真似されにくいもので差別化を

寺社から依頼された龍の彫り物とオリジナル賽銭箱の一例。

 一方、井波町(当時)では、地元商工会が音頭をとって土産物開発を推進。町内の木彫・食品加工等の業者などが集まって、井波らしい土産物の開発が模索された。もちろん白雲氏も参画。氏は丸みを帯びた石に絵を施し、インテリア等に利用するストーンアートをヒントにし、それを木で置き換えて展開することができないかと考えた。ところがこれが難しかった。
 「同じ形のものを大量に、というのでしたらできたのですが、形や丸みが不揃いな木の球体を大量に削り出すのは難しく、産業機械を扱っている知人に相談しても、期待した答は返ってきませんでした。そこで自分で機械に改良を加え、木地をつくることができるようにしたのです」
 白雲氏によれば、「機械に素人だったから、既成概念にとらわれることなく改良ができた」ようだ。そして木地に絵を施して道の駅などに置くと、ポツリポツリと売れて、追加のオーダーが入るように。土産物としての可能性が出てきたため、「めでたし、めでたし」かと思いきや、本業の木彫の仕事に支障を来すようになったため、土産物づくりは棚上げせざるを得なくなったのだ。
 白雲氏の手を占めたのは、全国の寺社から依頼された装飾用の造形物や備品、あるいは看板、銘板などの制作。先代からの取引先寺社に加え、それら寺社からの紹介で新たな寺社が増えるなどして、右肩下がりの井波の木彫業界にあって、なんとか勢いを保っていたのだ。
 その頃に受注したものを例示していただくと、建物の柱を飾る龍の彫り物やオリジナル賽銭箱などが示された。いずれも寺社から直接依頼されたもの。住職や宮司から要望を詳しく聞き出し、その上で彫り出した一品ものだ。
 「日本で欄間がはやってしばらくしたら、アジアのある国で類似品がつくられるようになり、安い価格で販売されて日本の市場を荒らしたものです。でも、こういう寺社ごとの要望を反映した一品ものは、価格ではなく彫刻の質で評価されるので、私たち職人としては仕事にやりがいを感じることができます」
 と三代目白雲氏は井波の宮彫師としての挟持を示すのであった。

「全国の家庭の1%に木彫りの表札を!」

周りの景観にとけ込む木製サイン(掲示板)の一例。

 ただ、思うように展開できなかった面もある。それは木彫りの看板、銘板だ。建築業界では広くサインと呼ばれ、案内板や表示板などを指す。金属や樹脂、ガラスを加工したものが多く、イルミネーションが施されたりもする。昨今はこちらが主流といってもよいのだが、白雲氏は木彫りのものでサイン市場の一角を占めることができないかと模索したのだ。
 「寺社や店舗、あるいは古い街並を保全する地域からの依頼で、木彫りの案内板をつくることはありますが、私はそれを経営の柱とまでは行かないにしても、太い枝程度にはしたかったのです。ところがなかなか販路の開拓ができない。ホームセンターや工務店の傘下に入って、そこからの注文を待つ方法もあるでしょうが、それでは……」
 白雲氏は言葉を濁したが、「それでは値段を叩かれるだけだ」と続けたかったのだろうか。そうした中、ある時、商工会経由で当機構の販路開拓マネージャーを紹介されて面談することに。大手商社OBのアイデアの豊富さに惚れ込み、マネージャーが担当していた「中小企業首都圏販路開拓支援事業」による支援を申請し(平成27年度)、二人三脚で販路開拓を始めたのだ。
 白雲氏が語る。
 「マネージャーには、ウチの工房の受注のスタイルを詳しくお話し、また木彫りサインへの熱い思いも語りました。看板、銘板というから寺社や店舗、事業所などがお客に想定されますが、表札も含めて考えたら全国の家庭が対象になり、そのうちの1%に木彫りの表札が採用されても……、とお話したらマネージャーはすごく興味を持ってくれました」
 そこで販路開拓マネージャーが出したアイデアは……。“ご縁(取引実績)のある寺社にお願いし、家内安全、商売繁盛などの祈祷料込みで、表札を受注してもらうのがよいのではないか”と。そして比較的大きな寺社の名を挙げ、「まずはここにお願いしてみよう……」と勧めるのだった。白雲氏は早速その寺社の代表者に会い、毎月の縁日での木彫りの表札の紹介と注文受付の協力を仰いだ。そして同様の依頼を、取引のある他の寺社にもお願いしたのであった。

数百円の授与品の営業で数百万円の賽銭箱を

公的な産業支援などを積極的に活用し、干支の置物などの授与
品の販促に積極的な南部望さん(白雲氏の三女)。「よしみ工房」
は三姉妹が中心に進めている。

 さて、棚上げになった丸い木片の土産物の件だ。平成21(2009)年に白雲氏の長女がUターンしてきたことを機に復活することに。母親の名前「好美」さんにちなんで「よしみ工房」ブランドとし、絵のバリエーションを増やした。長女が描く絵は、白雲氏の描く龍や鳳凰と違って、優しく・かわいいと評判になり、取扱う土産物店も増え始めたのであった。
 「でも私には、何か違和感がありました。本業の木彫や、これから大きくしたい看板・銘板は寺社を中心に展開しているにもかかわらず、よしみ工房の小物は土産物店で売っていく。販促の努力が2つに分散されることにムダを感じました。それで販売は寺社1本にし、絵付けは干支(えと)やお守り、おみくじなど寺社にまつわるものに変えることにしたのです」(白雲氏)
 こうして南部白雲木彫刻工房の今日の礎ができた。そして平成23(2011)年には次女が白雲工房に弟子入りして、デザインの点からよしみ工房をサポート。また平成27(2015)年には三女が販売事務や広報・宣伝などに携わるようになり、白雲氏は内弟子(2人)も含めて9人の大所帯を切り盛りする工房の主となったわけだ。
 こうなると、毎月一定の売り上げが確保されなければ、工房は回らなくなる。「中小企業首都圏販路開拓支援事業」を活用しての営業展開は、その一助を期待してのものであったし、また平成28年度から2カ年にわたって支援を受けた「小さな元気企業応援事業」でのよしみ工房の授与品(寺社のお守り、干支の置物など)の販促ツール作成もその一貫であった。
 三女の望さんが語る。
 「従来の寺社彫刻や木製看板・表札などの販売ルートとして寺社がありましたので、その方々への説明用にパンフレットとホームページの作成を企画しました。その作成に、助成制度を活用させていただい

よしみ工房の授与品の一例。上は「お守り」、下は「十二支 きっ
ころ」。ちなみに丸みを帯びた不揃いな木片をつくる機械は、三代
目白雲氏が特許を取得している。

た次第です。そのパンフレットを持って住職や宮司を訪ねると、ものすごい“大物”に出合うこともあります」
 といって関西の大きな神社の例を紹介してくれた。それを要約すると……。よしみ工房の干支の置物に関心があるという連絡を受けて神社を訪問。商談を進めるうちに、宮司が白雲工房の本業の木彫に興味を持ち、トントン拍子に話が進んでオリジナル賽銭箱の制作依頼を受けた、というのだ。それもこういう話はいくつもあり、「授与品から看板。看板から彫刻物。それらの逆も、と相乗効果を発揮するようになった」(望さん)という。そこで出てきた寺社の名前も、おそらく全国の多くの方が知っていると思われる大きな寺社で、寺社間の紹介でそれがもっと増えつつあるという。
 最後に、取材を締めくくるように白雲氏が語った。
 「井波には木彫職人の他に、宮大工もいますし、建具職人もいる。木を加工する職人の層は日本で一番厚い地域ですから、これらが協力し合ったらまた新しい展開が期待されるのではないか。そういうところでも公的な産業支援をお願いして、全国に井波の木の加工品をお届けできるのではないか」
 創業120年目を迎える三代目はますます盛んだ。

所在地/南砺市井波2174
代表者/三代目南部白雲(南部秀三)
資本金/個人創業
従業員/8名(内弟子含む)
事 業/木彫刻品の制作・販売
TEL/0763-82-0916
URL/https://yoshimi.nanbuhakuun.com/
URL/http://nanbuhakuun.com/

作成日  2018/09/18

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