第40回 訪問看護ステーション ままアシスト/株式会社高尾 とやま起業未来塾|創業補助金 TONIO Web情報マガジン 富山

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第40回 訪問看護ステーション ままアシスト/株式会社高尾

県内初の小児専門の訪問看護ステーションを創業
「サテライトを2カ所に…」と抱負を語るまでに

県内初の小児専門の訪問看護ステーションを事業化した高尾久
子さんとスタッフの皆さん。高尾さんは、30年あまりの大学病院
小児科での看護師経験を下に起業した。

 「『高尾さん、あなた本当に大丈夫? 経済とか経営の“け”の字も知らないけど……』と、未来塾の先生方には諭されました。私は小児科の看護師として30年あまり働いた中で、小児の訪問看護の必要性を感じ、それを事業化したい一心でいたのですが、市場規模や潜在的なニーズについては十分に把握していませんでした。その点を、先生方は不安に思われたのでしょう」
 高尾久子さんは、NICU(新生児集中治療室)を退院した赤ちゃんや、在宅ケアが必要な小児専門の訪問看護ステーションの事業化が可能かを学ぶために、とやま起業未来塾(平成23年度)に通った当時を回想するが、当初の講師陣の反応は、かんばしいものではなかった。
 調べてみると、県内の訪問看護ステーションでは、「小児の訪問看護も受け付けます」と謳ってはいるものの、その受付数は県内全体でも年間14件。その数字から「やはり事業化は無理ではないか」とたしなめる声が挙った。
 一方で、高尾さんの内なる声は「それは小児を専門とする看護師が、スタッフにいないからではないか。だから需要はあっても、実際は断っているか、退院してもフォローの体制がないため、そのまま入院を継続せざるを得ない状況にあるのではないか」とささやき、起業を迫るのだった。
 高尾さんの内なる声のとおり、新生児の一定割合(約10%)は未熟児で生まれてくるためNICUに入り、退院後しばらくの間はフォローが必要だ。退院している場合の多くは、近くに小児の訪問看護を受けつける拠点がないため、家族の支援の下で在宅療養をしているのだが、それが見込めない場合は、入院を継続しているのが実態のようだ。

県内の主だった小児科医が応援することに

実際の訪問看護の様子。「子どものケアとともにお母さんの相談
相手になることも仕事のひとつ」らしい。

 「そういう背景を整理して、県内の潜在需要はこれくらい、そのうちの何割の方に利用していただけたら事業として成り立つ、と説明できたらよかったのですが、当初の私にはそれができませんでした」と高尾さんは笑う。ところが未来塾で経営について学び、同期生や先輩の事業プランなどを参考に、小児専門の訪問看護ステーションの事業化を練っていった結果、修了時の発表会でそのプランは最優秀賞を受賞するまでになったのだ。
 そしてその後、勤務先(富山大学附属病院)でかつて一緒に仕事をした医師で、現在の小児科医会の会長に相談すると、「私も小児の在宅医療の充実を図ることができないかと考えていたところだ。小児の訪問看護ステーションの開設を応援する」と返し、また同大病院出身の県内の主だった小児科医たちも「がんばって!」とエールを送ってきたのである。
 こうした準備の後、平成25年5月に創業。定年までまだ数年を残していたが、「体力のある今のうちに事業の基盤をつくろう」と高尾さんは「ままアシスト」の旗を揚げた。そして同年度の創業促進補助金(国)の採択を受けて、県内初の小児専門の訪問看護ステーションの体制づくりに乗り出したのである。
 「まずは、小児科での勤務経験のある看護師の募集から始めました。小児の看護は、言葉で伝えることのできない子どもたちの状態を観察し、早期に対処していかなければなりません。成人の看護とは異なり、小児科看護の経験がとても大切になってきます」
 高尾さんは、成人対象の訪問看護ステーションとの違いを強調してこう語るが、「1年半ほど経過して、やっと5名のスタッフを確保できるまでになった」という。

この事業の質的な充実を図ることができる

訪問先での注意事項などは随時確認。

 そして実際にサービスを開始してわかったことがある。当初は、1日平均5~6件の利用申し込みがあれば、事業として採算ベースに乗るのではないかと想定していたというが、それでは経営が成り立たないことがわかってきた。また、移動の時間が大きなロスになることも徐々にわかり、「例えば午前中に砺波市、午後に魚津市という予定を組むと、1日の勤務時間の大半を移動に使うことになる」のだそうだ。
 実際にはこうならないよう、訪問先の組み合わせや看護師のローテーションを、予約状況に合わせて週末に、翌週の予定を作成。成人を対象にした訪問看護ステーションでは、ステーションを中心に車で15分程度(最大でも30分程度)で移動できる範囲を“商圏”としているが、「ままアシスト」の場合は、県内全域を対象にしないといけないようだ。
 「補助金は、スタッフの人件費や事務所賃借料などに使わせていただきました。小児科医の協力もあって、なんとか経営できている状況です。おかげで利用件数も増えつつありますので、未来塾の先生方にはいい報告ができそうです」
 高尾さんが微笑みながらそう語るので、「支店を出して効率的に動くことを考えてもいいのでは?」と投げかけると、以下のような答が返ってきた。
 「もちろん考えています。県西部の場合は砺波、東部の場合は魚津あたりにサテライトを設けると、訪問時間の短縮になるばかりでなく、サービス向上や利用者の利便性アップにつながり、ひいてはこの事業の質的な充実も図ることができます」
 この答を聞いた編集子が、ポツリとつぶやいた。「高尾さん、経営者になってきましたね」と。

所在地/富山市五福1188-2
代表者/高尾 久子
資本金/500万円
従業員/5人
事 業/小児専門の訪問看護ステーション運営
TEL/076-411-9228 FAX/076-411-9158

作成日  2015/03/12

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