第36回 ユウ・アクアライフ 創業・ベンチャー挑戦応援事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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第36回 ユウ・アクアライフ

県内最初のアクアリウムビジネスを創業
補助事業で“水を得た魚のように…”

人気の魚のひとつカクレクマノミ。アニメ映画
「ファインディング・ニモ」のモデルとなった。
映画がヒットしたため、熱帯魚を飼うことが盛んになり、
それまで300億円程度の市場と見られていた熱帯魚市場
(水槽など設備も含む)が600億円ほどに膨らんだという。
(市場規模は業界内での推計)

 24時間…とまではいかないものの、今回の主人公・橋本勇一さんは、戦うビジネスマンだった。県内中堅企業の営業マンとして、富山の本社と東京を往復する日々。それも既製品のルートセールスより、提案型の企画営業を好み、新規開拓に勤しんだ。
 そんな橋本さんも、時には疲れる。自宅に帰って、ひとり水槽の熱帯魚を眺めながら心癒されることが度々あったという。
 こうした経験を何度もした32~33歳頃のある夜のこと。水槽を眺めていてふと思った。
 “東京では美しくディスプレイされた水槽をたまに見かける。それも徐々に増えているような気がするけど、富山では見たことがない。あっても昔からあるような金魚の飼育水槽のようなものだ。美しくディスプレイされた水槽。これでビジネスができるのではないか”
 それ以降、出張で他の地域を回る時も、観賞用の水槽(アクアリウム)がどんなところに設置されているかを観察するように。そこでわかったのは商業施設や駅、ビルやホテルのエントランス、オフィス、病院や福祉施設の待合室やホール、飲食店などに多く設置されていることがわかった。そこでまた思った。
 “富山で見かけないのは、専門業者がおらず営業されていないだけで、市場がないわけではないのではないか”
 もともと独立して創業したいと考えていた橋本さん。この企画を3年ほど温め、36歳になった時、家族に起業の夢を語った。
 奥さんはいい顔をしなかった。橋本さんの両親も奥さんの両親も反対だった。その理由は、「そんなことで生活を成り立たせるだけの収入が得られるのか」というものだ。家族が思い描いた「そんなこと」とは、金魚屋さん、熱帯魚屋さんの延長である。それでは東京で見たアクアリウムのことをどんなに熱く語っても、ピンとくる家族がいないのも無理からぬことだった。そもそも富山には、美しくディスプレイされた水槽がないのだから…。

「美しくスタイリッシュ」をビジネスのネタに

ある飲食店のオーナーのニーズを生かして、水槽内にガンダム
を配置した例(上)と県内の大型ショッピングセンターでの設置例。

 でも橋本さんは創業の旗を揚げた。時は5年前の平成20年9月のこと。魚や水槽、機材の仕入先を確保し、「オリジナルデザインのアクアリウム」を謳い文句に飛び込み営業を始めた。営業開始から1週間ほどしたある日のこと。ある福祉施設が「入所者の癒しになるから設置したい」とさっそく申し込んでくれた。またしばらくして、別な福祉施設からもオーダーが入り、「幸先がいい」と喜んだものだ。
 橋本さんが進めようとしたビジネスモデルは、魚や水槽、機材の販売をするショップではなく、顧客の要望に応じて水槽全体とディスプレイをデザインし、設備は買い取りまたはレンタル、リースを選べるようにした。ただどのケースでも週1回の水槽内外のメンテナンス(コケ取り、水の交換、機材の点検)を行うように。特にこだわったのが、水槽内のディスプレイを美しく不定期に変化させることだった。
 「熱帯魚を飼い始める人は結構いますが、早々に断念される方が多いようです。その理由は、うまく魚が飼えない、メンテナンスがたいへん、などです。さまざまな飼育用品が販売されていますが、飼育やメンテナンス方法が適切でなければ、上手に飼育はできません。水を交換する作業も結構たいへんです」(橋本さん)
 「たいへん」「難しい」を解決するところにビジネスチャンスがあるとはよくいわれることだが、橋本さんはそこに目をつけたわけだ。ちなみに、“アクアリウムデザイナー”という職種はまだ確立されたものではないが、橋本さんはパソコンのデザインソフトを使って、水槽全体のデザインや設置イメージ、水槽内のディスプレイなどを提案しながら顧客を開拓。県内では初めての、そして今のところ唯一の事業を始めたわけだ。

従業員1名を常用するまでに

石川県内のある病院に設置した例。L字型の特製の水槽を
用いているため、待合室、エントランスなど広範囲に見ること
が可能で、「こころがなごむ」と来院者には好評とか。

 幸先よく顧客の開拓はできたものの、生活を安定させるにはなかなか至らない。創業から1年近くした時、取引先金融機関に事業継続のための融資を依頼した。担当部長は、橋本さんのビジネスモデルに関心を持ちつつも、「創業時の公的支援を相談してみてはどうか」と当機構を訪ねることを提案。相談を重ねる中で「創業・ベンチャー挑戦応援事業」(平成22年度)の採択が決まり、また25年度には国の雇用創出基金事業を活用した「創業等企業力強化支援事業」に採択されて、従業員1名を雇い入れて事業の拡大を図ったところだ。
 「挑戦応援事業で補助していただいた事業資金で、息をつなぐことができ、その間に顧客を増やすことができました。また企業力強化支援では、半年ほど新規雇用者の人件費の補助をいただきながら、事業の拡大を試みることができ、アクアリウムビジネスの可能性を確信しました」(橋本さん)

「公的な補助、金融機関の融資が飛石的続き、
それを生かして事業が軌道に乗りつつある」とこの5年間を
振り返る橋本勇一さん。

 橋本さんのいう事業の拡大とは、独居老人宅に小型のアクアリウムを設置して、定期的に行うメンテナンス時に高齢者の様子の確認と会話を目的とした試験的なサービス。また海水魚飼育水槽の海水の交換用に、富山湾の海洋深層水を生かすこと企画し、その商品化を図った。もちろん新規雇用者と協力して、顧客の開拓にも熱を入れた。
 「熱帯魚の販売経験のある青年ですが、アクアリウムをデザインすることに関心があったようで、それこそ水を得た魚のように働いてもらっています」
 橋本さんは、企業力強化支援事業終了後の常用化を決めており、数年先の法人化を狙ってまた1歩踏み出した。どうやら橋本さんこそが、補助事業を生かして水を得た魚のようにアクアリウムビジネスの海を泳ぎ回っている様子。近い将来、「富山県全体を癒しの空間にしよう」と奮闘中だ。

所在地/富山市布瀬本町2-4 サークルパレス布瀬101
代表者/橋本 勇一
資本金/個人創業
従業員/1人
事 業/アクアリウムのレンタル・リース・販売、アクアリウムのプロデュース・メンテナンス
TEL/076-423-7752 FAX/076-464-5576
URL/http://ww3.ctt.ne.jp/you-aqua/

作成日  2013/12/18

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