第17回 ケーシーアイ・ワープニット株式会社 サポイン(戦略的基盤技術高度化支援事業) TONIO Web情報マガジン 富山

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産学官連携の様子をご紹介しながら、将来、売上げの柱になる可能性を生む新技術・新製品誕生のドラマを追う!

第17回 ケーシーアイ・ワープニット株式会社

連携各メンバーのノウハウを結集して
蒸れずにのびるウィンドブレーカー開発

試作された新しいウィンドブレーカー。土木工事従事
者の着用評価では、「蒸れにくくて、動きやすい」とい
う声が多数寄せられた。商品化に向けて、色やデザ
インは検討中。

 高密度ながら伸縮性があり、なおかつ透湿性・通気性がある生地が開発された。トレッキングや登山などの野外スポーツを楽しむ方、あるいは土木工事や警備など屋外での仕事に従事している方には朗報だろう。この生地を用いてウィンドブレーカをつくると、蒸れにくく、そして動きやすくなるというのだ。
 従来も、防水・透湿性のあるウィンドブレーカーはいくつものメーカーでつくられてきた。しかしそれらには、多孔質のフィルムを2枚の織物ではさんで三層構造にした生地を利用しているものが多い。こうした生地では、中の素材がフィルムであるため透湿性は不十分で、汗をかくと蒸れやすいという。従って登山などで着用している人は、内側の服を脱いだり着たりして、ウィンドブレーカー内の温度・湿度を調整しているのだ。おまけにフィルムをはさむ生地は織物のため伸縮性はほとんどなく、体を動かすと肩・ひじ・ひざのあたりが突っ張り、着心地が悪いと感じる人も多いようだ。
 これに対して新しいウィンドブレーカーは、ナノファイバー不織布を2枚のニットではさんで一体化した生地を用いているため、伸縮性があるのはもちろんのこと透湿性・通気性に優れているという。このウィンドブレーカーを開発したのは、南砺市に本社を構えるケーシーアイ・ワープニットを中心とした産学官の連携体。今回のレポートでは、サポイン(戦略的基盤技術高度化支援事業)の採択(平成22~24年度)を受けて進められた、ウィンドブレーカー開発の概要を紹介しよう。

一見、矛盾する機能だけど……

既存品にない、着心地のいいウィンドブレーカーをつくろうと集まった連携
体の各メンバー。

 5年前のことだ。富山県工業技術センターにナノファイバー不織布をつくるマシン(エレクトロスピニング装置)が導入された。その時、ケーシーアイ・ワープニットの坂下剛さん(開発次長)は、「ナノファイバー不織布とニットを組み合わせたら新しいことができる。ナノファイバー不織布の特徴から推測すると、蒸れないウィンドブレーカーがイチ押しではないか」とひらめいたそうだ。
 ただナノファイバー不織布は破れやすい。ニットにはさんで使うにしても既存の技術では亀裂の入ることが予想された。そこでニットの糸の種類・編み方・密度・厚み、ナノファイバー不織布の原料・編み方・厚み、またニットと不織布を一体的に圧着する新しい技術が求められた次第。さらには防水効果のある縫製方法も必要になったのだ。
 これらの課題を解決するために、高い技術を持つ企業や研究機関が集結。ニットはケーシーアイ・ワープニット、ナノファイバー不織布は富山県工業技術センター、圧着技術はテックワン(能美市)、縫製方法は今井機業場(南砺市)がそれぞれ開発を担当することに。そして国内で唯一、繊維学部を擁し、ナノファイバー不織布に詳しい信州大学がアドバイザーとして加わった。
 「単に、ニットと不織布を組み合わせるだけでしたら、どこにでもできますが、われわれはプラスアルファーの機能を持たせることを目指しました。それは、高密度ながら伸縮性があり、なおかつ透湿性・通気性もある生地を開発すること。これらは一見、矛盾していますが、連携に加わったメンバーの高い技術を組み合わせることで、世界で初めてのことが実現できるのではないかと思いました」
 坂下さんは開発が始まった当初をこう振り返るが、各々の分野では試行錯誤が続いたようだ。

日本初のマシンで編んだニットは

ウィンドブレーカー外側の生地(ニット)に水滴を落とした状態。撥水性が
高いため水滴は生地の上をコロコロと転がる。

 まずは高密度で伸縮性のあるニットの開発。防水性を高めるためには撥水性のある細い糸を高密度で編まなければいけないが、高密度化は透湿性や通気性を妨げかねない。また高密度にすると、編み目が詰まってごわごわした感じになりやすく、伸縮性を落としかねない。そこで同社ではこの矛盾する課題を解決するために、日本で初めてのニッティングマシンを導入。最も細い糸の中から伸縮性もあるもの数種を選び、糸の密度、編み方、生地の厚みなどを組み合わせて試作することに。すべてを組み合わせるとあまりにも数が多くなるため、可能性が高いと思われるもの十数種に絞って実験を進めたそうだ。
 続いてはナノファーバー不織布だ。工業技術センターがエレクトロスピニング装置を導入したことで、不織布をつくることが可能になったわけだが、同センターではマシンの操作にはまだ慣れていなかった。そこでナノファーバー不織布やマシンの操作に詳しい信州大学の准教授に指導を仰いだのだ。
 「不織布は、織ったものではなく、糸を重ねてシート状にしたものです。感覚的にはシート状にした綿菓子といっていいでしょう。その不織布をつくる際、離型紙にナノファイバーを吹きつけながら紙を巻き上げていきます。その時のスピードによって不織布の厚さが変わってきますし、糸の元になる溶剤の種類によっても不織布の性質が変わってきます」
 坂下さんはそういって、今回のウィンドブレーカーに使われているナノファイバー不織布を取り出した。厚さはおよそ15μ。触った感じは、ゆで卵の薄皮のようだ。しわが寄らないように伸ばそうと試みるのだが、静電気のためかピンと張らない。両端を持って少し力を入れると、裂けてきた。

ゆで卵の薄皮のような不織布を……

ゆで卵の薄皮を丈夫にした感じのナノファイバー不織布。三層構造をなす
ウィンドブレーカーの生地の中に用いられている。生地の両端を引っ張る
と、少しの力で破れる。

 このゆで卵の薄皮のようなナノファイバー不織布を離型紙から剥がしながら、上下別のニットではさんで圧着させる技術を開発するのがテックワンの役割。研究初期は信州大学から不織布を分けていただき、ニットも想定される既製品の近いものを利用して、手探りで圧着法の開発を行ったという。そして最終的にたどり着いた方法は、加熱した接着剤をドット状に塗布して、熱と圧力を加えてニットと不織布を一体化するというもの。接着剤の種類やドット一つひとつの面積・密度、圧着の際の温度・圧力・処理時間のほかに、不織布と生地がしわにならずに一体化する方法などが模索されたのである。
 そして最後は縫製だ。こちらも初めは完成形のニットやナノファイバー不織布がないため、既存の類似の生地で実験を開始。当初は、いわゆる縫い目のない熱融着を試みた。しかし水や圧力の耐性試験を繰り返していく中で、期待したほどの強度が得られないことがわかった。そこで最終的には縫い目の出る縫製法にし、内側に防水テープを張って水が浸入しないようにしたのだ。

着用評価で上々の評判

国内で開催された展示会には4回出展。いずれの会場
でも来場者の関心は高く、商品化に自信を持ったという。

 こうした研究を各メンバーは、平成22~23年度に実施。そして基本的な方向性が定まったところで、24年度には量産を見すえた生産のあり方や販売方法を模索したのである。
 「われわれは新しいウィンドブレーカーの販売を、既存のメーカーや問屋に頼らないほうがいいと判断しました。理由のひとつは、メーカーも問屋も在庫を持ちたがらないからです。また既存の流通に投入すると、他メーカーの従来品と値段だけで比較されることになりがちで、このウィンドブレーカーの、より蒸れにくく、伸縮性があって動きやすいという機能に対する評価が後回しにされかねません。そこで、従来とは違った流通チャネルを模索したのです」(坂下さん)
 防水・透湿性のある既存のウィンドブレーカーは、上下セットで3~4万円前後のものが多い。対してこの新しいウィンドブレーカーの想定小売価格は上下セットで7~8万円程度。従来品の倍であるが、機能と着やすさを納得していただける方に買っていただきたいというのだ。
 同社では、展示会に出展して潜在的な利用者の反応を見てみた。すると、外で仕事をする機会の多い業界から注目を浴び、商品化の時期などが尋ねられたという。また土木関係の会社2社に協力を仰ぎ、雨の日の作業での着用評価を実施。「着たまま作業しても蒸れにくく、また突っ張り感がない」という感想が多数寄せられたそうだ。
 こうしたことを踏まえ、ナノファイバー不織布をつくるマシンの販売代理店が、不織布を別な形で展開することも含めて、ウィンドブレーカーの販売を一手に引き受けたいと名乗りを挙げ、契約を結ぶことに。その代理店は不織布をシート単体で販売するほか、半導体工場などの除塵マスク、重機や船のオイルフィルターなどでも応用する道を拓いたのだ。

来春から市場に!

新しいウィンドブレーカーの開発に当たって中心的な役割を果たしてきた
坂下さん。

 こうなると公設試験場である工業技術センターに、いつまでもナノファイバー不織布の製造を依頼し続けるわけにはいかない。相談の結果、件(くだん)の販売代理店がナノファーバー不織布の生産も引き受けることとなり、工業技術センターがその製造ノウハウを代理店に指導するようになったのだ。
 圧着する工程、また最後の縫製でも、課題が持ち上がってきた。両社とも従来からの本業があり、設備等の制約もあって特殊素材への量産に対応するための生産態勢が組めないというのだ。そこで友好関係にある同業者に協力を仰ぐこととし、それぞれの技術について指導することに。サポインの支援が終わった後も技術移転の指導が続き、補完研究2年目の今年に入って、そのメドが立ったのだという。
 「試作の段階では、黒と黄色の組み合わせのウィンドブレーカーしかなかったのですが、服飾デザイナーとも相談し、いろんな色の生地をつくるとともに、ウィンドブレーカーのデザインも開発しているところです。今年の暮くらいまでにサンプルをいくつかつくり、その中から商品化するデザインを決めていきます」
 坂下さんのこの言葉から、同社の“金の卵”が孵り始めるのは来年(H27年)春頃のことと予想される。ちょうど北陸新幹線が開業する時だ。そうすると、早い人は雪の大谷ウォークの際に着用するかもしれない……、と思いながら取材を締めくくった。

[ケーシーアイ・ワープニット株式会社]
 本社 富山県南砺市林道2435
 TEL 0763-62-2121 FAX 0763-62-3679
 URL http://kci.kawada-knit.co.jp/

作成日  2014/10/15

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