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第16回 アルハイテック株式会社

廃アルミをリサイクルして発電に利用
実用化を目前に控えて企業も立ち上げ

 薬のパッケージや飲料パックの内側に使われているアルミ。薄いため酸化しやすく、インゴッドにしようにも難しく、できてもコストがかかり過ぎる。プラスチックや紙から分離されても、廃アルミの資源化には多難な前途が予想されていた。
 アルハイテック(前身は、トナミ運輸(株)グリーンエネルギー研究所)が、その研究に着手したのは平成18年のこと。日本の名だたる大学が、その研究に邁進してきたにもかかわらず、成果が出ないため研究から撤退しつつあった時だ。廃アルミのリサイクル研究では最後発であった同社が、富山県工業技術センターとともに試行錯誤を開始。廃アルミを燃料電池に利用して発電し、電気自動車に改造した軽トラを走らせたのは、3年後の21年夏のことだった。そこまでの研究については、この金の卵シリーズの3回目でレポートしているのでそちらをご覧いただくとして、今回はその続編といったところ。廃アルミを利用した発電が、いよいよ実用化に向けて歩み始めたのだ。

2カ所で始めた回収が70カ所まで増えた

8年前から廃アルミのリサイクルの研究に携わっている水木
伸明常務。大手製紙会社の役員から「アルミ付き飲料パック
を分離した後の、アルミとプラが混在した残渣を、処分・再利
用する方法はないか」と相談されたことがきっかけだった。

 アルミ付き容器の大半は、埋め立てか可燃物に混ざった状態で焼却されているのが実態の様子。焼却されてもアルミはスラッジとして残り、いずれにしても埋め立て処分場に運ばれるため、自治体としては頭痛のタネのようだ。そういう中で、廃アルミをリサイクルして発電することが報じられたため、同社の“軽トラを走らせる実験”は注目を集め、全国の自治体から問い合わせが殺到したのだった。
 廃アルミのリサイクル研究に携わって8年になる常務の水木伸明さんが振り返る。
 「それほど、廃アルミの処理は長年の課題だったわけです。東京のあるテレビ局からは、実験や事業化の過程を密着取材したいという打診をいただきました。ただ、技術的にはまだ改良すべき点がありましたし、またアルミ付き容器を回収するための社会的な仕組みづくりも必要で、軽トラを走らせたといってもスタートラインを出たばかりの状態でした。それで取材の方はしばらく待って欲しいとお願いし、再び地道な研究活動に戻ったのです」
 社会的な仕組みづくりについては、環境省の支援を受けて(平成21年度)、富山市、金沢市の2カ所でアルミ付き容器回収の社会実験を実施。コミュニティセンターやスーパーなどに回収用のボックスを置かせてもらい、合わせて電源としてアルミの再利用についての広報にも力を入れたのだ。
 この仕組みづくりの過程で、問題点が浮かび上がってきた。それは、誰が廃アルミ回収の主体になり、どのように管理して発電するのか。また発電した電気はどのように利用するのか。日常的に廃アルミを回収して、電源のない時(所)だけ発電するのか。それ以外でも発電するとしたら、その電気をどう活用するのか、等々。リサイクルの名の下で回収されたパソコンや家電製品の一部が、近隣国に輸出(?)され、野積みになっていたという報道もかつてあったが、廃アルミが電気という資源に生まれ変わるだけに、回収に協力する市民の意識には高いものがあったようだ。
 「自治体や回収に協力してくださる市民の方々とお話する中で、廃アルミの回収から発電、そして電気の利用という仕組みづくりには、技術開発と同じくらい、いやそれ以上に大事でデリケートなことがあると気づかされました」と自治体などでのレクチャーに頻繁に出かけている水木さんは語り、「行政とか公的な性質を持った地域の団体、あるいはそれらが認めた組織が回収や発電の主体になればいいのではないか」と続けた。
 その具体的な例としては、商店街組合が主体となって回収し、防犯用の街灯の電気に使う。地域の観光協会が中心になり、発電した電気は観光スポットの夜間のライトアップに用いる。福祉施設を窓口に回収し、その施設の電力に使う、等々。当初は、臨時の電源として使うことを想定していたのだが、日常的な利用のアイデアが自治体や市民の間から続々と寄せられたという。
 こうして富山・金沢の2カ所で始まった廃アルミ回収の試み。後には周辺の自治体などにも伝わり、平成26年夏の時点で北陸三県で70カ所あまりで回収されるようになり、さらに増えることが予想されるそうだ。

インゴッドには難しい。だったら……

写真上は、破砕片をパルプとパルプ以外に分けた状態。
アルミとプラが混在したものを乾留炉で処理すると、アルミと
油に分離される。

 一方の技術的な改良の件だが、復習の意味も含めてこのシステムの概要を紹介しておこう。
 回収されたアルミ付き容器はまず、数センチの大きさに破砕され、水が入った分離装置に投入される。分離装置は洗濯機のような構造をしており、羽根の回転によって、破砕片をパルプとパルプ以外(すなわちアルミとプラスチック)に分離。ここまでは従来も行われ、パルプはトイレットペーパーなどに利用されてきた。
 問題はパルプ以外の残渣(ざんさ)だ。アルミとプラの分離がうまくいかず、従来は焼却後にアルミスラッジを埋め立て地へ、あるいは混在した状態で最初から埋め立て地で処分してきたのだが、同社では中国の大学との共同研究の結果、乾留炉(かんりゅうろ)を用いてアルミとプラを分離することに成功。融点の違いを利用したのだ。
 「このアルミを、インゴッドにしたらいいという意見もあります。しかし容器から分離したアルミは非常に薄く、加熱すると燃えてスラッジになってしまいます。そこでアルミにアルカリ溶液を加えて水素を発生させ、その水素を燃料電池に利用しようというのが、私たちが開発したシステムです」
 同社技術部主任の渡辺裕晶さんは、パルプとパルプ以外の残渣、さらには乾留によって分離されたアルミと油が入った容器をそれぞれ示し、「この乾留油はA重油に相当します」と続けた。
 つまり同社が開発した廃アルミをリサイクルして発電するシステムは、おおまかにいうと分離装置、乾留炉、水素発生発電装置の3つからなり、従来からある破砕装置を加えた4つで一連の処理ができる。この4つをワンセットで設置することも可能だが、例えば破砕・分離・乾留は1カ所の大型プラントでまとめて処理し、水素発生発電装置については個別の施設に設置することも可能というわけだ。

12時間連続の発電を目指して

渡辺裕晶さんの後方にあるのは乾留炉の一部。オフィスパークの社屋に
展示されているマシンは旧式のもので、26年末までに新型のプラントを
導入する予定。

 軽トラを走らせた時点で水木さんは「車を走らせたことが注目されていますが、このシステムのポイントは、安全に、どこででも発電が可能ということです」とコメントし、「電源のない場所で電気を必要とする工事などに利用できる」と続けていた。その後で東北を大地震が襲い、また洪水や土砂災害などによる避難生活が各地で起こる中で、非常時の電源としてこのシステムを活かすことも目標に掲げるように。平成24・25年度の2カ年にわたって、当機構の「先端技術実用化支援事業」に採択され、稼働の長時間化や安定化が図られた次第だ。
 「実は、軽トラを走らせた当時の、連続発電時間は1時間程度で、1時間ほどのメンテナンスの後で再び発電するというものでした。工事現場、あるいは電源を失った避難場所では、これでは役に立たないでしょう。夜間の照明に使うと仮定しても、少なくとも12時間の連続運転が求められる。支援を受けた24、25年度の開発では、これをクリアすることと試作機をつくることを目標にしました」と渡辺さんは振り返るが、富山大学、富山県工業技術センターなどの協力も得て、プラントの改良に乗り出したのだった。
 難航したのは、水素発生発電の過程だ。ここでは、回収されたアルミに水酸化ナトリウムなどのアルカリ性の水溶液が加えられるが、両者が連続的に、安定的に投入され、水素の発生そして発電が長く続くことが求められる。そこで投入されるアルミの形状や水溶液の成分・濃度、反応後のアルミ残渣の除去方法についての実験などが繰り返された。また一連の反応を途切れさせないためにタンクを2つ用意し、交互に反応させることによる12時間連続しての稼働が試みられ、試作機を使っての実験では1kW、12時間連続の発電が確認された。
 アルミとアルカリ溶液の反応にも工夫がもたらされ、触媒を加えることによって反応速度を10倍近くにアップ。また反応による副生成物も、従来の方法ではアルミン酸ナトリウム程度だったものが、触媒を加えるなどの工夫により、より有用性の高い水酸化アルミニウム(Al(OH)3)になり、工業原料として再利用が可能になったのだ。

事業化に向けて……

26年4月に竣工したアルハイテックの社屋。

 こうして開発された廃アルミを利用する発電のプラント。常温・常圧の中で安全に稼働させることができるため、自治体や市民団体ばかりでなく、企業からも注目されるように。またトナミ運輸内では事業として育てる機運が高まり、賛同を得た企業(トナミHDを含めて8社)からの出資も仰いで、アルハイテックを設立(25年10月)。今年の4月には高岡オフィスパークに新社屋を構え、新しい出発を迎えたところだ。
 「ディスプレイ用のプラントは、今はまだ従来機ですが、年内には新しい装置を導入したいと思います。そして本格的な販売は、来年の4月から。いずれは全国に販売拠点を9カ所くらい設けて……」
 水木さんのこの言葉から、事業の青写真がしっかり描かれているのがうかがえる。
 アルハイテックの設立準備をしていた時、大手商社からの出資の打診もあったそうだ。ただ、あまりにも額が大きいため(それだけで出資比率の90%を超えるため)、丁重にお断りしたという。また日本でも有数の民間のシンクタンクに依頼して、フィジビリティ・スタディ(事業可能性調査)も実施。それによると、本格的な営業を開始して数年後には、経営も安定すると予想されているという。
 「この事業で難しいのは、プラントを誰に販売するかです。単に儲け主義に走るのでしたら、販売先は誰でもいい。しかしそうなると、再資源化された電気の使い道の点で、アルミの回収に協力してくれた方々への信頼を裏切るような事態も生じかねません。もしそこで疑義が生じるとアルミの安定的な回収はできなくなり、せっかくの廃アルミ利用のプラントも、ただの箱になってしまうのです」と水木さんは語り、「だからこそ行政や地域の公的な団体、あるいはそれらが認めた組織が販売先としては望ましいのです」と再び強調した。
 富山はアルミ産業が盛んな地だ。それだけにインゴッド化できないアルミ廃材も多く、その実用化が待たれるところだ。

[アルハイテック株式会社]
 本社 富山県高岡市オフィスパーク1番地
 TEL 0766-50-8109 FAX 0766-50-8305
 URL http://www.alhytec.co.jp/

作成日  2014/09/01

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