第28回 五洲薬品株式会社 学官連携推進事業 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン) TONIO Web情報マガジン 富山

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研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第28回 五洲薬品株式会社

共同研究の魅力は、開始時には想像できなかった
アイデアやヒントが次々と浮かんでくること

日本で初めて多段式海水分離技術の実用化に成功した五洲薬品では、
富山湾海洋深層水の原水を分離し、ミネラルウォータ、化粧品、入浴剤・
トイレタリー製品、食品など、目的に応じて使い分けている(写真は海洋
深層水が使われている同社の商品群)。

 富山湾の海洋深層水の商業利用が始まったのは、平成12(2000)年6月のこと。それと機を合わせるように今回の取材先・五洲薬品では深層水利用を中心とした商品開発が盛んになった。国・県・当機構などの公的な支援を受けての研究開発は、平成29年度末までに16テーマを数えるように。そのほとんどを大学や公設試験研究機関と共同で進め、産学官連携の中から新しい技術を開発し、新商品を世に送ってきた。
 今回の取材では、同社のここ最近の連携による技術開発、商品開発の取組み例をうかがいながら、その成果や連携の利点などにも話題を広げていった。
 まずは「高機能素材・ライフサイエンス産学官連携戦略研究事業」(平成27年度)に採択されての「バイオマスナノファイバーを用いた整髪料の開発」だ。これは「とやまナノテククラスター」の関係者から、「バイオマスナノファイバービンフィス」(以下、BiNFi-sと略す)という新素材があることを聞き、そのゲル状の素材を見せてもらった同社の佐伯行紀研究開発部長らが、「化粧品かスキンケア剤に使えるかもしれない」とその応用を思い立ち、話を部に持ち帰って用途開発のアイデアを募ったのが始まりであった。

ナノ化製品に初チャレンジ

大学や公設試などとの共同研究に積極的に取り組む同社研究
開発部の佐伯行紀部長。

 BiNFi-sはもともとは、魚津市の(株)スギノマシンが開発したもの。セルロース、キチン、キトサンなどの生物由来資源を、「ウォータジェット製法」でナノ化した超・極細繊維素材だ。原料も製法も自然なところから注目を集め、様々な業界で用途開発が試みられている。
 五洲薬品ではこれを「整髪料に使えないか」と研究を開始。一般的な整髪料では、シリコンや界面活性剤が原因物質となって毛髪や頭皮にトラブルを起こす人がいる、ノンシリコン系整髪料では、機能成分である油脂の酸化により頭皮に肌荒れを招来する人がいる、などの課題があり、ゲル化された自然由来のナノファイバーを前にした時、同社の開発スタッフはその改善に役立つのではないかと期待したのだった。
 開発を率いた佐伯部長が振り返る。
 「ウォーターベースの整髪料については取組み実績があり、整髪料の成分については大枠では把握していました。ただ今回は、初めてのナノセルロース素材であることと、少し粘度のある整髪料へのチャレンジということで難しいところもありました」
 開発に当たっては、富山県工業技術センター(現/富山県産業技術研究開発センター、以下同)の協力を仰ぎ、BiNFi-sの物性や加工法についてのレクチャーを受けるとともに、ナノ粒子の調整なども依頼。また試作品での使用感確認のために、走査型電子顕微鏡を用いての毛髪表面の拡大観察を行うなど、同社の機材では実験や検証ができないところのカバーを依頼したのであった。
 「素材も加工法もナチュラルですから、そのイメージを大切にしたかったので原料のBiNFi-sの量を多めに使う方向で試作品をいくつかつくりました。ウォーターベースの整髪料のようなサラサラ感は出せませんでしたが、髪のハリやコシ、まとまり感については、ほぼ期待通りものができました。走査型電子顕微鏡による観察では均一なコーティングと、洗髪による残留性が低いことを確認しました。ただ……」
 と佐伯部長は声を落とした。その先のコメントを要約すると以下のようになる。
 商品開発に当たっては、先述にように原料のBiNFi-sを多めに使用してきた。それが裏目に出たのか、整髪料が乾くと細かくはがれ落ちるように。原料はナノ単位の超・極細繊維であるため、乾燥するとセットされた髪から白くて細い繊維が落ちるというのだ。BiNFi-sの配合量を抑えると、繊維の剥離は防ぐことができるのだが、そうすると髪のまとまりがなくなり、また“自然由来のナノファイバーを使用”というセールスポイントが使えなくなる。同社では開発の支援を受けた次年度からは、適切な配合量と乾燥による剥離の防止方法の探索などを研究テーマとし、また商品化のメドが立った際のOEM生産の相手先探しなどを課題として、開発を続けているところだ。

原料の加工からチャレンジ

「原料の加工から取り組めたのがよかった」と開発を振り返る
寺島将太さん(上)と、深層水や海由来の保湿成分を配合した
バス用品のセット。

 続いての開発は「産学官連携推進事業—新商品・新事業創出枠—」(平成28年度)の採択を受けて進められた、「深層水と微細化昆布を用いた高機能スキンケア剤の開発」。ナノ化素材の取組み第2弾である。
 同社では以前にも、カマボコメーカーからの相談で、昆布巻きカマボコをつくる際に出る昆布の端材の利用を研究した経緯があった。その時は昆布をペースト状にしてパックとして利用する方向で開発。保湿効果がすこぶる高く、肌荒れの改善も他のスキンケア剤にはみられないほどの威力を発揮するも、いかんせん昆布のにおいが強烈であった。モニタリングに協力した女性群からは「においの問題が解決されれば最高!」と高い評価を得たのであったが、においの問題は解決できなかったのだ。その意味では、今回のスキンケア剤の開発は、昆布利用の取組み第2弾でもあった。
 「昆布のナノ化については整髪料開発時のご縁で、再び工業技術センターやスギノマシンの方々に協力を仰ぎ、肌に浸透しやすい昆布の大きさを探るために、ナノ化の際の大きさの調整をお願いしました。既存のスキンケア剤の中には、分子が細胞間の隙き間より大きいものが多々あり、添加されている機能性成分が皮膚内に浸透せず、十分な効果を発揮していないものもあるので、より微細なナノ化によって肌荒れの改善や保湿効果アップを実感できるようにしたかったのです」
 こう語ったのは寺島将太さん。昆布を用いた高機能スキンケア剤の開発にあったて、工業技術センター等との連絡調整や核となるナノ化昆布の開発に中心的な役割を果たしたのであった。その寺島さんが続ける。
 「ウォータージェットによるナノ化では、何度も機械を通し、対象物をほぐして微細化するため、他のナノ化手法より細かくすることができます。昆布は繊維のかたまりのようなものですから、ほぐして微細化することによって非常に細かくなり、角質層に浸透しやすくなるのです」
 試作段階のモニタリングでは、評判は上々であった。「昆布の匂いがする」という意見が一部にはあったものの、先の昆布パックほどではなく、すでに改善のメドも立っている。この取材の時点では、商品化に向けての準備を着々と進めているところだった。
 新しいスキンケア剤の開発過程を俯瞰して、寺島さんが総括する。
 「この深層水と微細化昆布を用いた高機能スキンケア剤の開発では、当社としては初めての試みである原料の加工から取り組むことができ、ノウハウ蓄積の一助になったのではないかと思います。原料の製造や加工からの商品開発は、他社商品との差別化を図る上でプラスになります。また、経験を重ねる途上にあるわれわれ若手・中堅の研究員にとって、工業技術センターや他社の研究員と意見交換できたことも有益でした」

再生医療用培養液にチャレンジ

同社の商品開発の様子。大学、公設試との共同研究ではテーマ
毎に連絡・調整役を研究開発部から出すそうだが、「外部の研究
機関との接触の中でノウハウの蓄積が進むことから、若手も積極
的に出す」(佐伯部長)とのこと。

 そして3番目は「戦略的基盤技術高度化支援事業」(通称「サポイン」)採択による「再生医療研究による富山湾海洋深層水等張液を利用した研究用細胞培養液開発および高機能性化粧品開発」。わかりやすくいうと、 iPS細胞などヒトの幹細胞を培養する溶液を富山湾の海洋深層水からつくり、またその培養液を利用して高機能な化粧品もつくろうという、きわめて野心的な取組みだ。
 再び佐伯部長がその背景を語る。
 「従来の培養液は、牛の血清などを利用し、人工的につくり出してきました。しかしそこには、BSEや未知なるウイルスなどの危険が潜んでいる点や、ロット毎のばらつきが大きいという欠点があります。一方で、無血清培地の開発も進みつつありますが、特定の条件下でしか性能が発揮できないところから、再生医療研究では血清培地からの移行は、なかなか進まないようです」
 BSEは、かつて牛肉の輸入制限にまで発展した牛の病気の一種。牛海綿状脳症……「牛の脳がスポンジ状になり異常行動などを示すようになる病気」と聞けば、罹患した牛が歩けなくなって倒れていく映像を思い出す人も多いだろう。そういう不安に加え、動物由来の血清を使った培養液には、ロットによる培養性能のばらつきが多いらしく、高品質なロットには買い占めの動きが出ることもあるそうだ。
 そこで佐伯部長らが着目したのが、富山湾の海洋深層水である。深層水は原始生物の外部環境に近く、ヒトの体液(細胞外液)の組成にも近いところから、幹細胞の培養液に適しているのではないかと思った次第。加えて、かつて県の畜産試験場で、クローン牛の受精卵の培養液に富山湾で採取した海洋深層水を使って成功した、という事例も念頭にあったようだ。
 ただテーマはとても大きい。そこで同社ではサポインによる支援(平成27〜29年度)を求めるとともに、iPS研究の第一人者(iPS細胞から目の視神経を再生した教授)が在職する国立成育医療研究センターに共同研究を持ちかけるとともに、商品開発や技術開発でかつて指導を仰いだことのある富山大学・徳島大学の先生方にも声をかけ、その先生方が研究体制をさらに強固なものにするために立命館大学・名古屋市立大学の専門家も加えるよう五洲薬品にアドバイスしたところから、合わせて6者による共同研究の体制ができ上がったのである。
 3年におよぶ共同研究の結果は……。
 「培養液そのものの開発については、製法の基本的なところはクリアできましたが、残念ながら製品として完成させるところまでは行きませんでした。また開発の過程で、仮に完成しても幹細胞や病理細胞の培養の場で、新しい培養液を採用していただくには並々ならぬ営業の努力が必要なことがわかりました。そこで今は継続研究として、従来の、動物の血清由来の培養液に深層水のエッセンスを添加して、培養液の性能を上げる溶液の開発に舵を切りました」と佐伯部長は語り、「一方では、その培養液を化粧品に応用する研究も行ったのですが、そちらでは素晴らしい成果を上げ、乾燥によるシワの改善効果と美白効果のある化粧品ができました」と続け、胸を張った。
 先述のナノ化した昆布を利用したスキンケア剤に加え、これで2つの化粧品が舞台の袖でデビューの日を待つことに。培養液の開発は、視点を変えて開発が続けられることになったようだが、その3年間の共同研究の中で“新たな商品開発のタネ”を見つけたようだ。そのタネについてのコメントは「今の段階ではご容赦願いたい」と佐伯部長は語るが、「共同研究の魅力は、開始した時には想像もできなかった商品開発のヒントやアイデアが、開発の途中で次々と浮かんでくることです。外部の研究者との接触の機会が増えれば増えるほど、アイデアも多くなりますから、サポインのような大きなテーマに取り組んで、多くの機関の方々と交わることは財産になります」と取材を結んだ。
 再生医療の一端に触れた同社が、そこでどのような化学反応を社内にもたらし、次なる商品開発に取り組むのか楽しみなところだ。

[五洲薬品株式会社]
 本社/富山市花園町1-1-5
 TEL 076-424-2661
 URL https://www.goshu.co.jp/

作成日 2018/09/19

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