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研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第19回 株式会社シキノハイテック

小水力発電の電力変換装置を開発
無電源地帯に電力の安定供給を

「技術者の採用は、新卒・中途ともに毎年積極的に行っ
ている」と語る浜田満広常務。“金の卵”探しには積極
的な企業だ。

 「当社では、新しい装置やシステムを開発 する際には、若手とベテランのエンジニアを組ませるようにしています。こうして技術やノウハウを伝えていくとともに、人づくりもしていく。モチベーションを高く保ち続けるのは難しいのですが、先輩に鍛えられること、後輩を指導することで、自分を見つめ直すよい機会になっています。今回のプロジェクトは、ノウハウがまったくないところから始めましたので大変でしたが……」と担当役員の浜田満広常務は、4年前に始まった開発を振り返り、「製品ができ上がったこれからは販売面で実績を積み、多くの方々にこの装置の有用性をご理解いただきたい」と抱負を語るのだった。
 経営幹部の期待を担った開発とは「マイクロ発電向け高性能電力変換装置の開発」。平たくいうと、農業用水などに設置が進みつつある小規模な水車を回して得た不安定な交流電力を、安定した直流に変換する電力変換装置を開発しようというもの(風力発電も念頭に置いている)。東日本大震災(H23年)をきっかけに再生可能エネルギーを活用した発電が注目されつつあるが、不安定な自然エネルギーを活用する小規模な発電機では、電圧が安定しないがゆえに限界がささやかれるところもあるほど。小水力発電機を開発・販売しているある企業では、既存の変換装置の費用が高すぎて、普及の足かせになっている、と指摘するところもあるようだ。

「門外漢ですが、ぜひに!」と

小水力発電の中での電力変換装置の位置づけ。電圧が安定しないと機
器の電源には向かないので、電圧を安定化する装置が必要になる。

 現場で開発の旗を振った古川卓哉氏(執行役員/電子事業本部長)が振り返る。
 「グリーンイノベーションについては県や地元企業の関心も高く、研究会ではいろいろ議論されていたようです。ただ『いつまでも議論していても仕方がない』ということで当社に声をかけていただき、具体的な装置の開発に乗り出そうということのようでした」
 ところが、電圧の変換装置についてはシキノハイテックは門外漢だ。ご承知のように同社は、画像処理(このジャンルで、同社は「富山県ものづくり大賞」の大賞を受賞/H27)やモジュール開発、半導体検査装置の開発などについては得意中の得意で、日本の名だたる大手企業が同社の製品やシステムを使っているのだが……。そんな同社に、白羽の矢が立ったのだ。

装置内部の組み上げの様子。いくつもの機能がコンパクトにまと
めあげられている。

 「得意な分野ではないので……」と断ることも可能であった。しかしながら、チャレンジ精神が旺盛な社風が後押ししたといえばいいのか、「せっかくいただいたチャンスです。ぜひに!」と答え、半導体制御装置の開発に携わっていた若手エンジニア・平井達也氏とベテランエンジニアを組ませ、関連部署もサポートする体制を整えて、開発に乗り出したのだった。
 「当社には、電力の変換技術に詳しい人はいませんでした。しかし、富山大学の研究分野である電力の変換分野と、ニーズが一致していたことから、当社の得意な制御技術と組み合わせて、電力変換装置の共同開発に当たりました」(平井氏)
 平成23年の夏、東日本大震災からまだ数カ月しか経っていない時のことだ。開発チームは、発電された電力の電圧を上げ、それを一定の常態に保つことを目標に掲げた。そして基本となる技術そのものは23年度中に開発したのだが、「商品として売り出すには遠いレベルにあった」(古川部長)ため、翌年からは公的支援を受けてのブラッシュアップを模索。24年度は当機構の「新商品・新事業創出公募事業」の、25年度は国の「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」(24年度補正)の支援を受けて、性能の向上や小型化を図ったのである。

電圧を3倍に

開発当初から営業を兼ねて、ユーザーのニーズを吸い
上げてきた沖田亘氏。

 開発が始まると同時に電力変換装置の営業に飛び回っ た営業課の沖田亘係長が語る。
 「小水力発電装置のメーカーや発電機を購入される可能性の高い自治体や自治会を訪ね、営業を兼ねて、装置に対するニーズをうかがいました。そうしましたら、性能の向上や装置のコンパクト化はもちろんのこと、安価で安全対策が施されていることなど、たくさんの要望が出てきました。これらも加味して、24年度の開発はスタートしたのです」
 先述のように開発2年目は、「新商品・新事業創出公募事業」の支援を受けての取り組みとなった。

富山大学との共同開発によってできた三相三倍整流回路。高効
率の発電を実現(特許出願中)。

 富山大学との共同研究では、三相三倍電圧整流回路を開発。電圧を3倍にすることで水車の回転が少なくても最大の出力を取り出すことを可能にし、しかも部品点数を少なくしてコンパクトで高効率な電力変換を可能にした。発電効率は太陽光発電の一般的な効率が約20%なのに対して、同社の変換装置をつけた小水力発電では約80%と極めて高いものに。装置の大きさも、初年度の試作機に比べておよそマイナス60%とし、H75cm×W50cm×D45cmとコンパクトにした。また農業用水など吹きさらしの環境下で設置されるため、風雨に耐える筐体も開発したのだった。
 ところが……。

多機能に、しかもさらにコンパクトに

「この会社のよいところは、若手にもチャンスを与えてく
れること」と今回の開発を振り返って語る平井達也氏。

 「営業の方からは、『まだ大きすぎる。もっとコンパクトにならないか』『稼働中に万一トラブルがあった際の、バックアップのシステムがあったらよい』などの声が上がってきました。機能を高めたり増やしたりしつつも、さらにコンパクトに。一見相反しますが、それも踏まえてもう一段のブラッシュアップを図ることにしました」(平井氏)
 当初の安全装置は、いわゆるブレーカー程度のものだったという。これだけでは、万一故障して電力供給ができなくなった場合、例えばそれがビニールハウスの空調の電力に使われていたと仮定すると、電力供給がストップすると同時に空調も止まってしまうことになる。これでは花や野菜の生長を阻害しかねず、最悪の場合は全てを枯らしてしまうことになってしまう。
 そこでバックアップ用にバッテリーを備え、万一故障した場合はバッテリーの電力を使い、緊急事態が発生したことを設置者に伝えることができるようにもしたのだった。
 「これを応用すると、例えば火山などの危険地帯の周辺に、小さな水車を回すような小川があれば、そこで発電した電力で観測用の機器を動かし、データや画像をふもとの研究所などに送ることができるのです。当社には、カメラの技術もありますし、画像をきれいに圧縮する技術もある。そしてそれをスマホなどで定期的に送信する技術もある。ですから無電源地帯で、この装置が活躍する可能性は極めて高いのです」

左はH24年度時点での装置外観。右はH25年度のもの。試作1号機の1/4程度の大きさになった。

 取材中、古川部長は「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発支援補助金」のサポート(H25年7月~26年6月)によって、さらにコンパクト(H50cm
×W55cm×D60cm)になった変換装置を指差しながら、その可能性を強調するのだった。

「環境未来都市」やインドネシアが注目

富山市内の準用河川にて行われた発電実証実験の様子。県や
市はもちろんのこと、国土交通省や農林水産省もこの実験には
注目したという。発電効率80%以上が確認された(最大効率90
%達成)。

 農業用水や小さな川に小水力発電装置を設置するのは、水利権の関係上、自治体や流域の自治会になるケースが多い。変換装置に関心を示すのはそういった団体が多いのが現実だ。
 国より「環境未来都市」の承認を得ている富山市では、この変換装置の有用性を高く評価して市内に推奨するとともに、「途上国の農村部に共通する『電力不足』や『農業衰退』といった課題を解決するため、富山市の特性を活かした『農業用水を活用した小水力発電』及び『農業関連技術』を用い、『富山型農村活性化モデルの国際展開を図る』」(第4回富山市環境未来都市推進協議会資料」より)と称して、インドネシア・バリ州タバナン県におけるPR活動の際には、シキノハイテックも誘って小水力発電システムを紹介したのであった(H26年3月)。
 また富山市の月岡中学校では、富山高等専門学校と共同で再生可能エネルギーをテーマにした授業を展開。同校近くの農業用水で行われたシキノハイテックの小水力発電の実証実験をきっかけに、その発電で生まれる電力の活用方法についてアイデアを募ったところ、イルミネーションや一人暮らしのお年寄り宅への無料供給、道路の融雪、獣害対策など55名の生徒からさまざまな意見が寄せられたという(H26年1月)。
 「せっかくいただいたチャンスですから、一つひとつの機会を大切にしていきたい。無電源地域は国内はもとより海外にもたくさんあります。販売を始めた当初に、インドネシアでのPRの場をいただいたことは、本当にありがたい」と浜田常務は語り、「将来、これで事業部を立ち上げることができたら……」と夢を語った。
 ちなみに電力変換装置1台のお値段は、カスタマイズによって多少異なるものの、大体100万円台中ごろを少し上回る程度(バッテリー代含まず)。太陽光発電の同様のシステムの1/2~1/4に抑えられている。
 「それは当社のシステムでは、余剰電力を地元の電力会社に販売することを想定していないからです。そうすることによってコストの削減を図ったわけです」(古川部長)
 日本国内のみならず、無電源地域は世界中にあり、照明や各種の機器を動かすための活躍の場は、それこそ星の数ほどある。その5%に小水力発電システムが設置され、さらにその5%にこの地産地消型の電力変換装置が取り付けられれば……。星の数を仮に1000万と仮定しても25,000台売れることになる。
 大きな“金の卵”だ。

[株式会社シキノハイテック]
 本社 魚津市吉島829番地
 TEL 0765-22-3477 FAX 0765-22-3916
 URL http://www.shikino.co.jp/

作成日  2015/09/07

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