第25回 株式会社タイワ精機 とやまロボット開発支援事業 産学官連携推進事業(新商品・新事業創出枠) TONIO Web情報マガジン 富山

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第25回 株式会社タイワ精機

精米機メーカーが取り組む低騒音化とロボット開発
社業に豊年満作をもたらすのは……

コイン精米機の低騒音化などの開発を率いてきた
田中敏晴研究部長。

 「田んぼの水面を、家庭用のお掃除ロボットのような装置が、抑草と地中のガス抜きを兼ねて泳ぎ回るようになったら、無農薬有機栽培でお米をつくっている農家には朗報ですよ。人手が限られる中で、無農薬有機栽培を行っている農家の皆さんは、中耕除草という手間を田植えの後で1〜2回加えているのを、ロボットで代用できるようになるのですから!」(註:中耕除草=稲の生育初期に株間の表土を浅く耕して雑草の発芽・生育を抑える。かつてはヤツデの葉のような鍬(くわ)を使い手でかいたり、車輪がついた手押しの中耕除草機を使い、田んぼ全体を歩いた。この際、土中のガス抜きも一緒に行われる。近時は、初期の田植機(2条植え、あるいは3条植え)に似たエンジンにより走行する中耕除草機も開発されているが、人が一緒に歩いて操作しないといけない。乗用タイプもある)
 そうニコニコ顔で語るのは、タイワ精機で有機米栽培用補助ロボット(本稿では以下、「田んぼのガス抜きロボット」と称す)の開発に取り組んできた研究部の田中敏晴部長。同社にとっては、16年前に始めた米ぬかをペレット状に成形して散布する抑草システムの開発や、アイガモ農法にヒントを得た抑草用足ひれロボットの開発に続く、ユニークな製品開発の第3弾だ。
 ご承知のように、タイワ精機は精米機、コイン精米機でおなじみの地方の機械メーカー。富山市関に本社・工場を構え、コイン精米機ではOEMも含め50%を超える国内シェアがある企業だ。そのタイワ精機が、本業の精米機の製造販売の他に、無農薬有機栽培の米づくりを支援する機器の開発に取り組むのにはわけがある。それは、おいしいごはんが消費者の皆さんの食卓に上って欲しいという願いとともに、農薬を使わない、生体・環境にやさしい米づくりに取り組む農家を支援したいという思いが強いから。特に「農業の担い手不足」が喧伝されるようになってからは、それは一層強いものとなった。

田んぼのガス抜きロボットの登場

初期的な有機米栽培用補助ロボット。発泡スチロールにモーター
を搭載した簡単なシステム。

 本論に入る前に水稲について大まかにいうと、米づくりには一般的な慣行栽培と無農薬有機栽培の二通りがある。慣行栽培では、苗の生育に応じて水を溜めたり抜いたりするのだが、無農薬有機栽培では抑草を狙って、長期間、深く水を張る。水を溜めたり抜いたりする場合は、土の中で醗酵してできたガスは抜けやすい。一方、無農薬有機の深水植え栽培では、水圧によってガスは抜けにくくなってしまう。問題はこのガスだ。
 「ガスの主な成分は硫化水素です。これが苗の根元にとどまると根腐れが起こりやすく、その結果、食味や収穫量が低下するといわれています。中耕除草は、除草もさることながら、土の中のガスを抜くことが大きな目的であったわけです」(田中部長)
 ちなみに硫化水素は、卵が腐ったような匂いを有する有毒ガス。温泉地で発生するガスに含まれることが多く、これが充満する閉鎖的な温泉施設などには長居しないほうがよいようだ。
 同社が、田んぼのガス抜きロボットの開発に本格的に取り組んだのは平成27年度のことだ。当機構の「とやまロボット開発支援事業」の適用を受けるとともに、足ひれロボットの開発時から富山県工業技術センターと共同で開発を続けており、社の敷地内にある無農薬有機栽培用実験田での試験運用も含めて、その有用性を確認したのだった。
 システムの概要を紹介しよう。初期的な動作の確認を目的とした装置であったのと、「将来、製品化した場合、できるだけ農家の負担を軽くするために簡単な構造にしたい……」(田中部長)という思いから、ロボットのシステムは極めて単純だ。
 水田に安定して浮かせ続けるために、本体を発泡スチロールにしてモーターを搭載。モーターの回転運動を上下運動に変換し、その上下の動きを長さ30cmほどの棒に伝え、その棒が水底の土に刺される・抜かれるを繰り返す。これにより水を濁らせて雑草の発芽を抑制するとともに、土中のガスを抜こうというのだ。

実用化に向けて

有機米栽培用補助ロボット(田んぼのガス抜きロボット)
の試験田での実証実験の様子。

 試験田での実証実験の様子は左の通り。実証実験では、2m四方の約4㎡に仕切った田んぼを3カ所用意し、ロボットを導入する区画、導入せず放置する区画、導入せず中耕除草をする区画に分けて、稲の生育や米の食味について比較した。
 その結果、ロボットを導入し、自動的にガス抜きを行った区画は、導入せず中耕除草をした区画同様に稲は順調に育ち、おいしい米が収穫できた。一方、ロボットを導入せず放置した区画では、稲の生育も米の食味も悪かったのである。
 幸先の良いスタートであったが、製品化には高いハードルがあるようだ。試験田の写真からうかがえるように、実験段階ではモーターの電源はコードにより田んぼの脇から送られており、耕地整理された広い田んぼ(一般的には3反程度(30m×100m)の面積を有する)では、電源を積む、あるいは小さなソーラー発電装置を搭載するなどの工夫が必要だ。また現状ではロボットの推進力は、ガス抜き棒を刺したり抜いたりする際に生じる力の反発力を利用しているが、広い田んぼをくまなく均一に移動させる工夫も求められる。合わせて、例えば3反の田んぼを効率よく除草・ガス抜きするためには、1台のロボットでよいのか、あるいは複数のロボットを投入しなければならないのか等々も検証されなければならない。
 「これだけITやAI、ドローンの技術が発達していますから、お金に糸目をつけなければ、素晴らしい自走式ロボットができるのでしょうが、農家の負担を最小限に抑えることを考えると……」と語る田中部長はあくまでも農家目線での開発を優先しているようだ。
 同社では平成28年度以降も田んぼのガス抜きロボットの開発を続け、本年度は土中のガスの成分を詳しく調べ、ガス抜きによってガスの量や成分にどのような変化がもたらされているのかを検証している。

コイン精米機の騒音の低減を図る

同社のコイン精米機。

 タイワ精機では、本業のコイン精米機の開発でも富山県工業技術センターの協力や、当機構の「産学官連携推進事業(新商品・新事業創出枠)」の支援を受けて(平成28年度)、コストをかけずに騒音の低減を図るための技術開発に着手。一部の技術については、翌年から実用化しているのだが、そもそもコイン精米機の騒音低減化には以下のような背景があった。
 従来、コイン精米機が設置されてきたのは、スーパー等の駐車場の一角、都市部からベッドタウンに向かう幹線道路沿いの遊休地、郊外の農協の隣接地というパターンが多かった。これらのケースでは周辺に民家は少なく、多少騒音があってもクレームがくる可能性は低かった。ところが近年は、玄米を購入し精米の度合いを調整したり、一度の精米量を少なくしてぬかの酸化を極力抑えたりする都市部の消費者が増え始めたところから、コイン精米機が市街地や住宅地団地の一角に設置されるようになったのだ。そこで精米中の騒音への対策が求められるようになったわけである。
 では一口に騒音といっても、どれくらいの音が、どれくらいの大きさかをご存じだろうか。マンション・アパートの騒音トラブルについての資料をみると、換気扇の音は約42〜58dB(デシベル)、掃除機約60〜76dB、目覚まし時計約64〜75dB、日常的な人の話し声約50〜61dBなどと例示されている。
 タイワ精機のコイン精米機では、10m離れた地点での騒音を掃除機や大声での会話のレベルから、換気扇や静かな会話のレベルまで下げようというのだ。
 「コイン精米機の低騒音化については、従来からも取り組んできましたが、富山県工業技術センターの協力を得た今回は、周波数を分析するなどして騒音の音源や伝播経路を特定し、それに合わせた騒音低減手段をとることで、コストをかけずに効果を得られるよう試みました。騒音発生源の主なものには2つあり、精米時、精米機の中で玄米同志をこすり合わせてぬかを剥離する動作に由来する音と、そのこすり合わせる動作が振動となり、コイン精米機のハウス全体を振動させることによって発する音が1つ。もう1つは、剥離されたぬかをファンにより吸引してサイクロンでぬかを回収するのですが、その際のファンから発生するサイレンのような風切り音と、その風切り音がサイクロンを通過して排気をダクトに導くための管を伝わってハウスの外に放出されていたのです」(田中部長)
 余談であるが、ハウスの外に放出されるこの風切り音は、タイワ精機の精米機特有の音だ。他メーカーのコイン精米機では、ファンでぬか収拾ボックス内のサイクロンにぬかと排気を一緒に放出する。ここまでは同じだが、サイクロンから外の導管は設けず、ボックスの換気口の穴から空気を抜くシステムになっている。このシステムでは風切り音はボックス内で解放されるため、こもった音になり、風切り音が漏れるのは少ないという利点があった。ところがこのシステムでは、ぬか収拾ボックスに送られた排気自体もボックス内でこもりがちになり、コイン精米機やハウスのすき間というすき間から漏れ出て、細かいぬかも一緒に漏れ出るのだ。漏出したぬかは、虫のエサになるばかりか、酸化よる異臭の原因にもなった。つまり従来のコイン精米機では、騒音に目をつぶるか、漏れ出るぬかを我慢するか、二者択一を迫られていたのであるが、タイワ精機では今回の開発を通して、ぬかの漏出は従来通り抑えるとともに、騒音も低減しようとしたのだ。

試作精米機で消費者の反応を

初期に試作された共鳴型消音器(上)
と排気ダクトへの導管のそばに組み
込まれた様子。

 まずは耳につくサイレンのような風切り音だ。導管を伝わって出る音も周波数的には同系統の音(専門的にはピーク音と倍音という)で、富山県工業技術センターの提案により、共鳴の原理を用いて音を打ち消すような音を発生させて、騒音を抑えることが模索された。
 この消音法は、例えば最近の携帯音楽プレーヤーなどに採用されていて、周囲の騒音を内蔵のマイクロフォンで集音し、これと逆相の音を出力するとこによって騒音を打ち消して、楽曲をよりクリアに聞く方法だ。また救急車では、救護者を落ち着かせ、救急隊員と医療機関の無線通話を明瞭にするために共鳴の原理を使い、車内のサイレン音を低減させている(この時車外では、通常にサイレンが響いている)。これをアクティブ・ノイズキャンセリングという。
 「従来の我々には、単に防音材や遮音材を使って音を小さく抑えることしか念頭になく、音で音を消すというのは極めて斬新な発想でした。前述のアクティブとは異なりパッシブな方法ですが、ファンと排気ダクトの間に共鳴型の消音器を取り付けたところ、期待したとおりに騒音の低減が図れたのです」(田中部長)
 一方の精米機本体とその振動からくる騒音だ。精米機の回転バランスの改善が考えられたが、空運転した場合の騒音レベルが低いところから、精米作業特有の音や振動と受け止めるしかないようだ。そこでコイン精米機のハウス全体を防音・制振構造にする案が浮上したが、高コストで実用化は難しい。コストとの兼ね合いで最終的にとられたのは、精米機の振動をスタンドやハウスに伝わりにくくすることだ。いわゆる防振ゴムの材質、硬さ、数量を見直し、振動の伝播を抑えることが図られた。
 「建物の地震対策の一環として、防振ゴム、制振ゴムの品質が向上していました。いくつか試してみたところ、精米機そのものは振動しても、スタンドやハウスの床への振動の伝わり方は格段に改善されました。これについては既存のコイン精米機でも順次、改良が施されることになりました」と田中部長は再びニコニコ顔で語った。
 消音機が取り付けられた試作機は同社前に設置され、近隣住民による使用感の調査が行われているが、ぬかの漏出がなく、低騒音の同社のコイン精米機は、競合各社の製品に比べて優位性を持つようになり、今後の拡販が期待されるところだ。

[株式会社タイワ精機]
 本社/富山市関186
 TEL 076-429-2480 FAX076-429-4735
 URL http://www.taiwa-seiki.co.jp/

作成日 2017/9/15

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