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第45回 有限会社グリーンパワーなのはな

農業法人が独自に海外の市場を目指すまでに
中国の他に欧米諸国や東南アジアにも輸出を

[写真上]グリーンパワーなのはなで海外の
市場開拓を担当する金泉和久取締役(左)。
右の村川真理子主任も海外の市場開拓を担当し、一昨年
にはイギリス、シンガポールの商談会に同行された。
[写真下]富山市水橋地区の田植えの様子。
大規模経営化を目指し、令和3年度より、1枚数反単位の
現状の圃場を町単位にする耕地整理を開始。
大規模経営化をにらんで海外市場を開拓し始めた。

 4〜5年前、県関連の別な広報誌の取材で、富山県内の農業法人約30社(個人経営含む)を取材したことがある。その際、収穫した農産物あるいはその加工品を輸出している企業は1社もなかったが、今回取材した(有)グリーンパワーなのはなは、中国の他にイギリス、フィンランド、ドイツ、フランスなどにお米やその加工品などを輸出。近時は東南アジアにも販路を広げようと商談会等に積極的に参加するほか、インターネット通販サイトを通じて行う国際的な商取引(いわゆる越境EC)にもチャレンジしている。
 「4年前でしたら、当社も国内での取り組みについてしかお話しできませんでしたが、あることがきっかけで海外のマーケットに関心を持つようになったのです」
 と語るのは同社取締役の金泉(きんせん)和久氏。氏はもともとは園芸担当でイチゴ、キク、ネギ、ニンジン等の栽培と販路開拓(もちろん国内)を担当していたのだが(今日も)、3年前、北陸農政局主催の農産物輸出のための商談会に参加。その際、全国農業協同組合連合会(以下、全農)経由で、中国への白米輸出の糸口をつかんだのだった。

ブロークンな英語で伝える

海外の市場展開に当たっての主な商品、黒米、
赤米やそれらのお粥、黒米茶など(写真上)。
これらの商品を海外向けに販売するための
同社の英語版のサイト(写真下)

 「最初は全農を窓口にして、通関手続きや現地のロジスティックをお任せした輸出でした。当社の実際の業務は、国内の集積地まで商品を運ぶだけ。ですから輸出しているといっても、実感がなかなかわきませんでした」と金泉氏は振り返るが、輸出ビギナーにはそれでよかったのかもしれない。「食品の輸出には国ごとに細かい規制があり、それを最初から理解するのはなかなか難しい。また現地まで運んだ後の市場の開拓という課題もありますが、これも輸出初心者にはハードルが高い。この時の白米の輸出は、輸出流通をよく把握していた全農のおかげで、運よく中国に輸出することができたといえます」と金泉氏は付け加えた。
 そして中国への白米輸出の後、翌年の令和元年にはイギリスへの輸出も試みるように。全農の輸出担当者にグリーンパワーなのはなの「黒米」を紹介すると、「これはおもしろい!」と輸出品目に取り上げられたのだ。同社ではさっそく、輸出用の商品パッケージや英文のレシピを作成。使用農薬の欧州規制対応を自社内でまとめるなどの努力を重ね、輸出に必要な業務を徐々に覚えていった。すると今度は、イギリスでその黒米を見たフィンランドの食品販売業者が関心を持ち、令和2年からはフィンランドへ輸出するようになり、さらにはJETROの商談会でフランス、ドイツのビジネスマッチングに参加すると商談が成立し、これらの経験を通して、輸出にまつわる業務は自社でこなすことができるようになったのだ。
 ここで編集子には疑問が浮かび、金泉氏に尋ねた。「言葉の問題はどうしたのか」と。すると答えていわく。
 「私の英語は、学生時代にとった英検3級のレベルで、自由に会話できるというものではありません。商談会では、通訳をつけてもらえる場合が多かったので、その支援を受けました。ただ、商談成立後の日常のコミュニケーションは、英語で行っています。ブロークンな英語でも『伝える気合』が大事です。わからない時は『わからない』と相手に伝えます。すると別な言葉に置き換えるなど、双方で工夫しています。文章を作成しなければいけない時は、近年急速に精度が上がっているGoogle翻訳やDeepL(ディープル)などの自動翻訳のツールを使うと便利です」(金泉氏)
 各種書類の他に商品紹介のパンフレット、越境EC用やAmazonの海外サイトの作成でも自動翻訳は役立ったという。「日本語を英語に訳し、その英語を再度日本語に訳すなどしてチェックします。最初と違った日本語に訳されると、どの部分の翻訳がネックになっているかがわかるので、平易な日本語に置き換えます。すると翻訳が一致するようになり、それを書類に記載しています。時には2種類の自動翻訳ツールでのダブルチェックも行います」と返ってきた。

バイヤー招へい商談会でも輸出の芽が・・・・・

海外バイヤー招へい商談会の様子。アクリル板を設置
するなど、感染予防対策を講じた上で実施された。
(写真上/令和2年、写真下/令和3年)。

  こうして海外展開のノウハウを徐々に蓄積し始める一方で、同社では当機構の「海外バイヤー招へい商談会」(令和2、3年)に参加。各年に4〜5社のバイヤーとマッチングを行い、白米、黒米、赤米の他におかゆなどの加工品の輸出を試みるようになった。
 金泉氏がその商談会参加の経緯を振り返る。
 「JETROからいただいた情報で、新世紀産業機構にも輸出を支援する助成制度があることを知り、そういう情報をいただくためにメルマガの登録をしました。われわれのような小規模な会社にとって、こういう情報は極めて貴重です。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた令和2年からは、海外企業とのマッチングは無理だろうと諦めていたのですが、感染が落ちついた時を見計らい、日本在住の海外バイヤーを招いて商談会が行われるということでしたので参加させてもらいました」
 結果は・・・。
 同社では2ヵ年で合わせて9社との商談を実施。半数以上のバイヤーとはマッチング以降も連絡を取りあい、サンプル出荷やテストマーケティングを試みるなど現地の反応を調べるように。そのうちの1社、香港に本社を構え、世界各地に支社を展開するバイヤーとは商談がまとまる寸前まで交渉が進んだのだった。ところが・・。新型コロナウイルスの影響で、その貿易商は事業を縮小し、日本支社は閉鎖されてしまったのだ。
 金泉氏が続ける。
 「バイヤーの担当者は、輸出入に関して高いスキルを持った方でした。日本支社の閉鎖によりその方は独立され、ありがたいことに引き続き当社商品の中東やアメリカ、ヨーロッパへの輸出の話を進めていただいています。現地との商談は、コロナ禍を考慮してリモートにより進めていますが、バイヤー招へい商談会で出会った方とのご縁が功を奏して実を結びつつあります」

シンガポールでもチャレンジ

今年(令和3年)7月に行われたシンガポールでの
テストマーケティングの様子。同社は「黒米茶」
「心白粥60」を出品。(来場者が手にしているのは
「黒米茶」)。

 当機構が日本アシストシンガポール(株)に委託して行っている「シンガポールにおけるテストマーケティングおよびオンライン商談会」(テストマーケティング/2021年7月、オンライン商談会/同年10〜12月)でも成果が期待されている。この販促イベントは、東南アジアの交易・経済の拠点であり、またマーケティングリサーチに最適な環境であるシンガポールにおいて、富山県産品の知名度を向上させ販路開拓を推進するため、テストマーケティングおよび同国を中心とした東南アジアのバイヤーとのオンライン商談会を行おうというもの。協力を得た日本アシストシンガポールは、日本企業の製品やサービスを現地のマーケットに適応させるノウハウについては高いものを持ち、これまで600社を超える日本企業のASEAN進出についてのアドバイスなどを実施してきている企業だ。
 その協力を受けてのテストマーケティングに、県内15の参加企業は1社2品までの商品を出品。シンガポールのオフィス街の「日本を体感でき、日本ファンのお客様同士が情報交換できる場」をコンセプトにした「JAPAN RAIL CAFE」で展示するとともに、隣接する販売コーナーではテスト販売も試みられた。
 各社の商品は、それぞれ試食あるいは試用されてアンケート調査の対象に。グリーンパワーなのはなの「黒米茶」には「お米の風味が味わえる」「まろやかで飲みやすい」などの声が寄せられ、また「心白粥60」は「口当たりがよく子どもや赤ちゃんによさそう」「素敵な食感、滑らか、お米の味を感じる」と好評を得、テスト販売のコーナに足を運んだお客様は「黒米」や「心白粥60」を買い求められたという。
 こうした経緯を経て、同社ではこの10〜12月に行われるオンライン商談会に駒を進めることに。日本アシストシンガポールのサポートのもと、現地企業5社と商談を行う予定だ。
 「5社の皆さんとは、どのような商談になるか楽しみであり、期待もしています。コロナ禍によりリアルの展示会の多くが中止になり、それに代わってネット上でのバーチャル展示会や商談が盛んになりました。あまりコストがかからないところから、今後はこうした海外商談の進め方を、ノウハウを含め確立する必要があると感じています」
 金泉氏は期待に胸を膨らませ、「この3年間での輸出実績はイギリス、フランス、ドイツ、フィンランド、香港、シンガポール、マレーシア、アメリカ、中国と9つの国・地域に広がりました。越境ECも徐々に成果が出始めており、さらにギアを上げて輸出拡大に挑戦したい」と抱負を語り取材を締めくくった。
 ちなみにグリーンパワーなのはなは、富山市に拠点を置く「なのはな農業協同組合」(JAなのはな)の子会社。地方の単一農協の子会社・関連会社が、農産物やその加工品の輸出に取り組むのは、極めて珍しいのではないか。

 

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL https://www.near21.jp

作成日  2021/11/17

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