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環日本海諸国との経済交流をレポートしながら、そこで羽ばたく富山の中小企業をご紹介。海外展開にも支援の輪が…。

第28回 世界をリードする環日本海経済交流

サポートデスクの支援を受けて
タイ・バンコクに現地法人開設 ~コムテックスのアジア展開の第一歩~

 「後藤さん、一度タイに遊びにおいでよ。首都のバンコクは成長のエネルギーに満ちていて、興味深いから……」
 ある建築関係のメーカーの、タイ法人社長からのメッセージ。懇意にしている方からの誘いゆえ、むげに断るわけにもいかない。
 コムテックスの後藤敏郎社長が、この誘いを受けてタイを訪れたのは平成23年6月のこと。ところが驚いたことに、その9カ月後に後藤社長はタイ進出を決め、さらに7カ月後の24年10月には、コムテックスのタイ法人を設立することになるのだが、最初の訪問時には、現地法人の設立などはつゆほどにも思わなかったそうだ。
 コムテックス株式会社——高岡市に本社を構え、ITコンサルティングや企業向け専用ソフトの開発を主な業務とする会社。日本を代表する建築関係、ハウスメーカーなどを取引先にする、中堅のIT企業だ。今回はそのコムテックスの、タイでの法人開設や今後の事業計画をレポートするとともに、同社のタイ法人設立を支援した当機構の富山県海外販路開拓サポートデスクを紹介しよう。

タイ視察を繰り返すうちに……

コムテックスバンコクを設立してからは、日本とバンコクを2~3
週間で交替しながら勤務する後藤敏郎社長。3~5年先には、
アジアの他の国への展開の可能性も視野に入れている。

 訪タイ中の後藤社長は多忙を極めた。取引先の本社経由で、タイの支店や合弁会社に視察の協力をお願いし、オフィスや工場のみならず現場も訪問。客先の多くが建築関係・ハウスメーカーなどであるため、工事現場にも足を踏み入れたのだった。
 「インフラ整備が盛んで、また民間のビルや住宅などの建設も多く、成長の勢いを感じるとともに工事の品質管理や効率化に、われわれのサービスの出番があるのではないかと感じました」
 その“感じ”は、当初は直感のようなものだったが、タイの魅力に開眼した後藤社長は、その後の8月、9月にも訪れて現場訪問を繰り返し、その頃には実感に近いものに変わりつつあったようだ。
 「そのうち、短時間の現場訪問ではなく、3~4週間ほど工事現場に密着して、実際にどんなニーズがあるかを肌で感じたいと思いました。それで私の訪タイのきっかけになった方に相談すると、その会社が受注した工事現場で受け入れ可能という返事が返ってきて、その準備を進めました」(後藤社長)
 ところがここで、問題が起こった。読者の皆さんの中にはご記憶の方も多いだろう、台風による洪水が発生したのだ。タイ北部・東北部などが豪雨に見舞われ、ダムの貯水量や河川の流量を上回った水が下流域の工業地帯やバンコクなどの都市を襲ったのである。
 11月の訪タイを計画していた後藤社長と同社のシステム開発を担当しているエンジニアは、この洪水により翌年1月に予定を変更。年が明けて3週間にわたって現場に立ち会いながら、タイの工事現場に則した品質管理や作業効率化のためのソフトのあり方などを探り、それが終わった時、タイでのビジネスの可能性を確信したのだった。

サポートデスクから裏路地の情報まで

環日本海経済交流センターで、海外展開について相談を受ける
「富山県海外販路開拓サポートデスク」。鹿野健マネージャー(左)
は東南アジアが詳しく、田中正明マネージャー(右)は中国・中南
米が得意だ。

 そしてさっそく、ジェトロ(JETRO)のタイ事務所を訪問。帰国後には、ジェトロの東京本部も訪ね、タイ進出について相談を持ちかけた。またバンコクに事務所を持っている地元の金融機関にも声をかけ、「有益な情報があれば提供して欲しい」と依頼したのだ。
 この頃になると、後藤社長のもとにはタイ情報が集まるように。コムテックスのタイ進出計画が伝わるにつれ、それはますます多くなった。
 同社が正式に、タイ法人設立を決めたのは、24年3月のことだ。足かけ9カ月に及ぶ後藤社長のタイ視察の報告を聞いた役員は、取締役会においてタイでの展開に諸手を挙げて賛成したのだという。
 これにより、その準備に拍車がかかるわけだが、その頃より後藤社長の胸には「これでいいのか」という一種の不安の思いが……。タイの情報量が多くなればなるほど、その内なる声は大きくなるように思われたのだ。

コムテックスバンコクが入居しているビル。

 ある時、懇意にしている建材メーカーの役員に相談すると、「ぼくの同級生が大手商社に勤めていたが、定年を機に、富山県企業の海外展開のアドバイスをするようになった。紹介してあげるから相談してみたらいい」と返してきたのだ。
 そのアドバイザーこそが、当機構が平成23年4月に設置した「富山県海外販路開拓サポートデスク」。東南アジアなどを担当する鹿野健マネージャーは、大手商社で三十数年にわたり貿易業務に携わり、フィリピン・ベトナム・タイでは、現地法人の責任者なども務めた。バンコクについては、裏通りの飲食店の名前まで覚えていたほどだ。
 後藤社長はさっそくアポイントをとって、タイ進出の事業計画とこれまでの経緯を説明すると、「教科書的な情報だけでは成功は難しい。もっと地に足ついた情報を集めないと……」とアドバイス。そして「A、B、Cいずれかの銀行で口座を開いて、タイに進出する計画を持っている旨を伝えたらいい」と続けた。
 さらには「事務所を決める時、不動産屋との交渉ではこれに気をつけて、現地スタッフの求人はこう、労働条件はこう決めたらいい。あの通りの居酒屋Xでは、時々富山県人会が開かれているから、人脈を広げるのに役立てたらいい」と、立板に水のごとく留意点などを続けたのだ。
 「鹿野マネージャーのアドバイスは、現地で実際に仕事をした方の目線から出ていて、私の不安を一気に取り除いてくれました」と後藤社長は当時を振り返るが、そのアドバイスを受けてすぐにA銀行に連絡を入れて口座を開設。そしてタイでの事業計画を話すと、本店のタイ担当者との面談の機会もつくってくれた。そのタイ担当者は、鹿野マネージャーのアドバイスをもっと細かくした内容の注意事項などをレクチャーするとともに、直近のタイの経済情勢などについても説明してくれたのだ。

50人体制を実現して、さらには……

コムテックスバンコクの皆さん。交替で高岡の本社で研修を受けてい
る。この他にタイに赴任した日本人スタッフ1人と、本社と兼務の後藤
社長がいる。

 こうしたやり取りを幾度か経て、コムテックスバンコクが設立されたのは24年10月。登記や事務所の開設、求人の告知・採用などの実務を、後藤社長は1人でこなした。そして徐々に増やした現地スタッフは、26年8月現在で10人に。高岡の本社でソフト開発のための研修を交替で受け、スキルアップに励んでいるところだ。
 「今はまだ、タイ人スタッフだけでソフト開発ができるまでにはなっていませんので、現地ではたくさんの引き合いをいただいていますが、『もう少し待ってください』とお断りしています。彼らには、研修や日本で受注した仕事のアシスタントをしながら、品質を維持することと納期を守ることの大切さを学んでもらっているところです。いずれ今の10人を核にしてコムテックスバンコクを50人体制に……」
 後藤社長の「いずれ」は、3年以内を目標にしているようだが、現地スタッフが育った際の仕事の確保には自信がある様子。日本の客先のタイ関連の法人、コムテックスバンコク設立以来の人脈、そして富山県が北陸銀行のバンコク駐在員事務所に置いた「富山県バンコクビジネスサポートデスク」などからの情報により、現地での顧客開拓はスムーズにいくと見ているようだ。
 「日本では、コムテックスの特徴を出して、そして生き残りを図るために建築関連に特化してソフトを開発してきましたが、タイではまだその必要性はないようで、どの業界にもIT化の必要性が押し寄せています。当社ではまず、タイ法人向けの会計ソフトを開発し、クラウドを通じてフリーに提供することを考えています。それを現地での第一ステップとして、その使い方のアドバイスやメンテナンスを通じて個別の企業との接触を図り、その中で相手先が求めるソフトを開発していけばいいのではないかと思っています。タイでは最初から建築関連に特化せずに……」
 後藤社長はその時期が来るのは、1年半くらい先ではないかと見ている。その頃には、タイ人スタッフも育ち、コムテックスバンコクは自活できると期待しているところだ。
 そして3年ほど先に50人体制になったら……。
 東南アジアの経済情勢が極端に変化していないと仮定すると、タイ1国に開発と市場を限定するのではなく、その分散も当然、検討課題になってくるはずだ。取材中、後藤社長はいくつかの国名を具体的に挙げながら、「そこに開発拠点を持つ可能性は十分にある」「あの国には販売拠点を置くかもしれない」と、アジア諸国での展開の可能性談義に花を咲かせた。
 その時にはまた、「サポートデスクのアドバイスで○○に行ったら……」とコメントをいただく日がくるのかもしれない。

○問合せ先
(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/

作成日  2014/08/25

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