第31回 氷見稲積梅株式会社  TONIO Web情報マガジン 富山

TOP > 世界をリードする環日本海経済交流 > 第31回 氷見稲積梅株式会社

環日本海諸国との経済交流をレポートしながら、そこで羽ばたく富山の中小企業をご紹介。海外展開にも支援の輪が…。

第31回 氷見稲積梅株式会社

梅の加工品を開発してアジアの国々へ
各種のサポートがじわじわと効いて……

ここ10年ほどの事業計画書を振り返りながら、稲積梅の増産や
加工品の開発を語る長澤誠尚社長。

 「この梅酒を海外でも販売したい」
 氷見稲積梅(株)の長澤誠尚社長がそう思ったのは、平成24年頃のこと。同社前身の特産氷見稲積梅生産組合の時代より、接ぎ木によって苗を増やし、梅の生産拡大を図ってきたことが実を結びつつあった時だ。当機構の農商工連携ファンド事業や農業の6次産業化支援により商品開発が急速に進み、その販路開拓は必然的に浮かび上がる課題であった。
 ここまでに至るには、苦難の道が続いた。生産組合が設立された平成13年を振り返って長澤社長が語る。
 「私はある自動車メーカーに勤め、本社や販社で長く営業を担当していました。定年後Uターンして氷見に帰ってきたのですが、里山の荒廃に唖然としました。そこで初代の組合長と力を合わせて山を切り開き、苗木をつくって毎年500~700本の稲積梅を植えてきたのです」
 それがようやく平成20年頃より実を結び始め、梅干し以外の加工品の開発も模索するまでになったのだ。

昭和24年に発見された稲積梅の原木。この母樹は残っているが、
接ぎ木によって今は4代目が苗木の生産に活躍しているという。

 ちなみに「稲積梅」は、昭和24年に氷見市稲積地区で偶然に発見された梅の新種。品種改良によってもたらされたものではなく、長い年月の間に富山の気候風土に順応してきたもの。その種を植えても「稲積梅」にはならず、苗木の生産はもっぱら接ぎ木によってなされてきた。
 またその梅の実は、南高梅に比べて少し小粒ながらも、核が小さいため果肉の歩合が高く、品種特性を調べた高岡農業改良普及センターが「果肉の厚さが厚いほうに属する。果肉内の繊維も比較的少なく、品質は上位である」と評価(平成18年4月)したほど、質の良い梅であった。

海外販路開拓サポートデスクに相談

氷見稲積梅の加工品の一例。左から梅ゼリーの「梅の精」、
梅ドリンクの「氷見の乙女」「昇龍梅」。

 生産組合では、梅の加工品を開発する一方で、「稲積梅」のブランド化も図り、販路開拓に努めてきた。その結果、県内の食品スーパーなどでの販売は徐々に増えたものの、県外にマーケットを広げようとすると高い壁が……。ご承知のように梅の加工品ではC社をはじめとする全国に知られたメーカーがいくつもあり、それらがガリバーのように氷見稲積梅の前に立ちはだかってきたのだ。
 知名度と歴史のあるメーカーに伍して、市場を開拓していくのは至難の業である。そこで長澤社長は、「ブランドイメージが日本国内ほど固定化されていない海外ならば、市場開拓の可能性もまだあるのではないか」と考えた次第。そこで視野を広げたことが転機となり、新たな道が拓けてきたといっていいだろう。
 同氏が当機構の富山県海外販路開拓サポートデスクを訪ねたのは平成25年の10月のことだ。「公的な支援を受けてシンガポールのデパートなどで梅酒の展示即売会を行ったこともあるが、その後が続かなかった。継続的な商売をしたいので、東南アジアに販路を持つ貿易商社あるいは代理店などを紹介して欲しい」という要望を持っての来訪であった。
 「ご相談を受けてすぐに、台北のビジネスサポートデスクに同社の案件のことを知らせました」とは海外販路開拓支援マネージャーの弁。台北のビジネスサポートデスク(正式名称:富山県台北ビジネスサポートデスク)は、富山県が台湾でのビジネス促進のために台北に置いた拠点のことで、専門の職員が海外販路開拓支援マネージャーなどと連絡を取りながら、相談者の台湾での事業展開を支援するために、現地企業との橋渡しを担っている。

ガリバー企業に立ち向かって

白山の伏流水でつくられた蔵元仕込みの「梅酒
原酒」。醸造アルコールを使っていないため、ま
ろやかな味わいがある。

 台北ビジネスサポートデスクではさっそく、貿易商社などに氷見稲積梅の梅酒のことを紹介すると、「サンプルが欲しい」と反応を示すところが現れた。そして試飲などを通じて商談を進めていったのだが……、最終的には仕切値が折り合わず成約には至らなかったようだ。
 「その案件の後で、今度は中国の巨大商社との商談について海外販路開拓支援マネージャーから連絡をいただき、その日本支社にも同行していただきました。マネージャーは長く商社に勤められ、海外でのビジネス経験を豊富に積まれている方で、ネットワークの広さやツボの押さえどころは驚くばかりでした」と長澤社長は振り返り、「さすが餅は餅屋だ」と付け加えるのだった。
 この巨大商社もサンプルの梅酒を本社に持ち帰り、中国国内の酒類取扱業者を集めて試飲会を開いたところ、いくつもの業者が「扱いたい」と手を挙げたそうだ。ただここでも問題になったのは、台湾の貿易商社の時と同様、仕切値だった。氷見稲積梅の梅酒は、米焼酎を使用しているため、味にまろみと高級感があるが、醸造アルコールを使用している他社大手の梅酒に比べ、割高にならざるを得ず、それがネックとなって商談がなかなか進まなかったのだ。

梅で地域の活性化を

平成26年10月に行われた当機構主催の海外バイヤー招聘商談
会における、氷見稲積梅と南京のバイヤーによるマッチングの様
子(右端の後ろ姿は長澤社長、左端は海外販路開拓支援マネー
ジャーの田中正明)。

 こうして商談の機会が増えてくる中で、まとまりつつある案件も出始めた。その一つが当機構が主催している海外バイヤー招聘商談会をきっかけにしたものだ。同社では、平成25年、26年と、2年続けて当該商談会に参加。ともに数社とのマッチングを行ったところ、26年秋、中国・南京から来日した商社が、「店舗販売の他にネットビジネスの商材にも使えるのではないか……」と関心を示したのだ。そして、その後のフォローアップを経て、今年3月、32ケース(1ケース12本入)を輸出したのである。また、台北ビジネスサポートデスクを通じて紹介された別の企業とも商談がまとまり、今年2月、7ケースをコンテナに載せた。
 「海外での販売の糸口を、やっとつかんだところです。これを単発に終わらせず、末永く継続できるように育てていきたい。当社の梅酒は、醸造アルコールは使っていませんから、格段においしい。大手メーカーのものに比べて価格は若干高くなりますが、中国や台湾の方々にも味の違いはわかっていただけるでしょう」
 長澤社長は期待を込めて語るが、話をずーっとうかがっていくと、目標とされているのは「馬路村のゆず」の様子。梅の産地化と商品開発によって、ふるさとの活性化を図りたいと、長澤社長は何度も強調したが、“東の稲積梅、西の馬路ゆず”と並び称される日が来るのが楽しみだ。

○問合せ先
(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/

作成日  2015/07/06

このページのトップに戻る

キーワードをご入力ください。

 サイト内検索   www検索

Copyright (C) 2005-2013 Toyama New Industry Organization.All Rights Reserved.