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研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第11回 ユニオン産業株式会社

米の消費拡大に一石を投じる
新型の米粉製粉機を開発

「振動解析の専門家がいてくれたおかげで、
実験は半年分以上短縮できた」と話す澤井勇社長。

 米粉の消費がのびてきた。農林水産省の資料(米粉用米の市場規模の推移)によると、米粉用の米の生産量は、平成20年度は566tであったものが、22年には27,796tに跳ね上がり、23年度は4万t前後ではないかと推計されている。米の消費拡大を狙う農林水産省や農業関係者にとっては、この傾向はまさに福音であり、輸入小麦量(最近は年間500万t程度)の1割分でも取って代わることができれば、と米粉の利用拡大に力が入っているところだ(22年3月閣議決定「食料・農業・農村基本計画」では、平成32年度の米粉用米の生産量の目標を50万tにした)。
 ただそこには、米粉を製造する上での課題もあった。米粉の製粉機には、気流粉砕式、高速粉砕式(ピンミル)、胴搗粉砕式、水挽粉砕式、ロール粉砕式と各種あるものの、現状では、粒度50~100ミクロン程度が限界。「もっと小さくできないか」という声が、米粉を利用する業者(パン、菓子、製麺など)から上がり、機械メーカーの中にはその対応に追われていた企業もあった。

「県立大学と連携したら…」と勧められて

今回開発された米粉製粉機。

 富山市のオムニパークに本社を構えるユニオン産業もその1社だ。各種産業機械を製造している同社では、もみ殻の粉砕機を納めていた機械商社の西村機械製作所(本社大阪)から、「もみ殻粉砕機を米粉製粉用に改良し、粒度を20ミクロン程度まで細かくできないか」と打診されていたのである。時は平成21年度に入ったばかりの頃ことだった。
 「もみ殻を粉砕するのも、米を粉砕するのも原理は同じです。試しに、従来のもみ殻粉砕機で米を粉砕すると40~50ミクロン程度には粉砕できましたが、それ以上に細かくはできませんでした」
 澤井勇社長は打診された当時を振り返ったが、改善策をすぐに見つけ出すことはできなかった。
 ちなみに同社のもみ殻粉砕機は、気流粉砕式の一種だった。この方式では、粉砕室内でローターが高速回転し、粒子が破砕室内の壁に衝突、あるいは粒子同士が衝突・摩擦して粉砕される。そして粉砕された粒は気流にのって排出される。気流粉砕式は他の破砕方式より粒度の調節が可能で、改良によりもっと微細に粉砕することができるのではないかと、以前より期待されていたシステムであった。
 より微細な米粉にするためには、ローターの回転数を現状の4000rpm(rpm=revolution per minute/1分間の回転数)から7000rpm程度まで上げなければいけない。試しに、もみ殻粉砕機の回転数を上げると、ローターまたは軸のブレから機械全体が振動して安全運転上問題のあることがわかった。また回転数を上げることにより、軸から発生する熱が米を変質させることも把握できた。
 これらを解決しないと、新しいシステムの開発ができないわけだ。そこで同社では、かつて大学や公設研究機関との共同開発に際して、支援を仰いだことのある当機構の産学官連携センターを訪ねた。そこで「戦略的基盤技術高度化支援事業」を紹介され、また「富山県立大学に振動制御が専門の研究者がいるので、連携したらいい」と勧められたのだった。

半年間で開発できたのは天佑!?

従来の機械と開発された機械の振動速度の比較。
ローター部は従来機ではSUS(ステンレス)だったが、
軽量化などを図ることによって、技術目標の1cm/s以下になった。

 その支援事業の採択が、中小企業庁において決まったのは平成21年10月のこと。富山県立大学、西村機械製作所、そしてユニオン産業が連携して、高速回転時に発生する振動破壊の起きない安全な機械で、かつより微細な米粉ができる製粉機の開発に乗り出したわけだ。
 少し専門的になるが、今回の課題となった振動の状況について述べておこう。
 従来の粉砕機では、回転数を上げて5200rpmくらいにすると、急に揺れが激しくなり機械全体がガタガタとなった。共振という現象が起きたわけだ。わかりやすくいうと、2つの音叉を並べ、片方を強く叩くと、もう一方は叩かなくても音がしはじめ、その後、その音が互いに影響を及ぼす。原理的にはそれと同じ現象が粉砕機で起き、ローターや軸の振動が、粉砕機を構成する他の構造物(筐体など)にも伝わり、振動が増幅してガタガタしたのである。
 「以前でしたら、こういう課題に対処するために、ローターの改良版の試作品をつくり、振動が少なくなるかどうかをいちいち調べていました。ところがこれでは、費用も日数もかかり、なかなか改良に乗り出せない現実がありました」
 と澤井社長はいうが、技術指導にあたった県立大学の屋代研究室は、コンピュータによる振動解析など振動工学を専門とし、設計段階で振動を回避する最適設計を可能にしたのだという。県内にそういう専門家が在職したことはまさに天佑で、これにより振動制御のシミュレーションはスムーズに進むこととなった。
 一方の、米(米粉)の熱変性の件。これはローターを高速回転させると軸が熱を持ち(90℃程度)、その熱が伝わって米がアルファー化(糊化)してしまう問題だ。これに関しては、振動の問題をクリアした後で、ローター、軸受けの再設計を行い、約30℃、軸受温度を下げることに成功した。

 こうして振動と熱の問題を解決して7000rpmで安全に作動する製粉機を開発。20ミクロンの米粉をつくることができるようになった。現在は販売を目指しさらなる改良が進められ、粉砕部の胴径290mmを基本にして、430mm、750mm のマシンも開発されることとなった。
 「この支援事業の適用期間は半年で、新年度に入ってから商品のPRに努めています。ただ、改良の余地もありますので、助成対象でなくとも補完研究は続けています。米以外の粉砕も可能で、今後のバリエーション展開が楽しみです」と澤井社長は取材を結んだ。
 澤井社長のいうバリエーション展開には、食品製造以外の分野での応用も含まれ、すでにいくつかの問い合わせがあったようだ。

米粉の評価を行った西村機械製作所は、新しい製粉機が開発された後で、展示会等で積極的にデモンストレーションを行った。

戦略的基盤技術高度化支援事業(24年度の公募は終了しています。)

[ユニオン産業株式会社] 
○所在地 本社 富山県富山市南央町3-33 TEL 076-429-5152 FAX 076-429-5195
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作成日  2013/02/04

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