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とやま産学官金交流会2013

ものづくりの未来を拓く
—産学官金連携で富山を元気に—

デフレからの脱却や2020年オリンピック東京招致決定など明るいニュースがある一方で、ものづくり産業を取り巻く環境にはまだ厳しい一面が残っています。こうした中でこの交流会を開催し、富山のものづくりの一層の発展を期待した次第。当日語られた「トヨタ生産方式」の真髄を要約して紹介します。

基調講演
「グローバル化に於る、基本的なものづくり戦略」

トヨタ紡織株式会社 相談役  箕浦 輝幸 氏

 皆様こんにちは、箕浦でございます。今日、私はものづくりについて講演しますが、「企業は人なり」というように、「ものづくりも人なり」なのです。その意味では、ものづくりの大事なところは人づくりで、そういうことについてもお話します。
 トヨタ自動車には、いわゆる「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一さんがいました。副社長までいかれた方です。私はもともとは事務畑の人間ですが、製造や技術に関する仕事にも長く携わり、大野さんの下で20年近く直接指導を受けました。グループ会社に移ってもさまざまな改善に取り組み、まだ道半ばという感があります。そう、改善にはゴールがありません。会場の皆さんも、いろいろ製造業に携わっておられると思いますが、改善はずーっと続くと実感されているでしょう。ものづくりの環境、働く環境は毎年変わっています。会社が生き残るために、働くみんなの賃金を上げるために、技術、生産方法、収益構造などさまざまな点を改善しなければいけません。改善は進化していくもの、そしてエンドレスなものです。

生産性はアメリカの1/9

 1967年にトヨタ自動車に入った私は、いろんな部署を経験しました。先ほども申し上げたように、もともとは事務屋ですが、製造や物流、調達の部門も長く、アメリカ法人の社長、また関連会社・ダイハツの社長も務めています。どの職場に行っても、大野さんから教わったことは何一つブレることがなかったと自負しています。人事部長を務めた時も、人事部には難しい案件がたくさんありますが、大野さんだったらどうするだろうかとよく考えました。そこでハタと気づいたのです。大野さんからはたくさん課題を出されて悩んだけど、その度に真剣に考えてきた。その一つひとつが経験になって、自分を成長させてきた。大野さんは最大の教育者だ。人事部の仕事も肝心なところは人材を育成することだと気づいたのです。それ以来、部下が持ってきた提案の中で、「これをやったら人は育つ」と思ったものは積極的に採用しました。反対に、どんなに素晴らしい提案でも、「これをやったら楽して、人は育たないだろう」と思える提案は不採用にしてきました。私はその単純な判断基準で、部下の提案の採否を決めるようにしたのです。その基準が明確になってから、私の判断は速くなりました。大野さんのイズムは私のベースになっています。
 トヨタ生産方式のハウツーについては多くの本に書かれていますので、ここではその元となる、基本的な思想などについて紹介していきます。
 我々はかつて、自動車の生産性についてアメリカと比べてみました。アメリカにはフォードシステムがあり、ベルトコンベアでどんどん流して、同じものを大量につくっていく。極めて生産性は高く、日本の9倍ありました。日本は1/9ですから、生産性を上げないとアメリカとの競争にならないわけですが、移民で人口が増えているアメリカと同じように大量生産しても、日本の場合は市場が小さいので、アメリカと同じようには販売できません。日本でそれをやると在庫の山になってしまいます。日本の市場は基本的には、多品種少量生産が前提になっています。

「なぜ」を5回繰り返す

 そこで生産性が日本の9倍あるアメリカと戦うには、どうしたらいいかが課題になりました。その時、大野さんはじっくりとアメリカの生産現場を見て、確かに素晴らしい生産方式ではあるが、ムダもたくさんある。そこで我々の生産方式を振り返って、ムダを取り除いていけばアメリカの生産性に近づくことができる、と思ったのです。作業にムダな動きはないか。在庫のムダはないか。システムそのものにムダがないか、と徹底してムダを探してそれを取り除こうとしました。これが大野さんの原点です。それで、ムダを取り除く基本的な考え方として、必要なものを、必要な時に、必要な量だけつくる、あるいは必要な量を運ぶという大野さんの哲学に至ったわけです。そのためには、ジャスト・イン・タイムだと。それからもうひとつは、異常が起こった場合の対処です。異常もムダなものですからなくさないといけませんが、そのためには見える管理をしましょう、と。異常が起こったら、起こった箇所にランプが点くようにし、ラインを止めて、その異常が2度と起こらないように改善しようということです。その際、大野さんは異常が起こった現場で「なぜを5回繰り返せ」といいました。
 口でいうのは簡単ですが、実際は難しいものです。例えばあるラインで異常が起きて止まってしまった。「なぜだ」と聞きます。答えは「モーターが壊れました」。それに「なぜ」を続けるとこうなります。
「なぜモーターが壊れた」
「モーターが焼けました」
「なぜモーターが焼けた」
「モーターに水が入りました」
「なぜモーターに水が入った」
「モーターの上を通っている配水管に穴が開いて…」
 ここまできたら、この異常が2度と起こらないようにするためにはどうしたらいいかがわかってきます。配水管の取り換えと同時に、モーターの上を配水管が通らないようルートを変更することです。こうすれば、同じ異常は起こらなくなります。ところが「なぜ」を2回程度で止めていたら、モーターの交換だけで終わってしまい、いずれまた同じような異常が起こります。
 大野さんは異常が起こったら、その場所がわかるように、見える化しろといいました。見える管理はある意味、異常管理です。我々はそれへの対処を「自働化」といいました。ここでの「動」には人偏がついて、「働」という字になっています。異常が起こると人がついて止める如く、「自働」で止めるようにします。単なる「自動」でしたら、不良品が発生しても流し続けますが、「自働化」の概念では、異常があれば原因を究明し、二度と起こらないようにします。

取りに行くをつないだシステム

 単純なベルトコンベア式での自動化の場合、どこかで異常が発生してもそのままラインを動かして、不良を内在したままにしてしまうケースもあります。ところがトヨタでは異常があったらラインを止めて、2度とラインが止まらないようにします。異常が起こることも、ムダなことです。ムダにはこの他に、つくり過ぎのムダ、不良品をつくるムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、加工のムダ、動き方のムダなどいろいろあります。例えば作業ロボットに取り付けられているカッターが空中を動いていた場合、「なぜ空中のこのルートを動くのか。近道できないか」となります。空を切っているロボットの動きもムダと見られるのです。
 トヨタではムダの一つひとつを取り除いてきました。たくさんあるムダの中で一番いけないのは、つくり過ぎのムダです。つくり過ぎのムダは、なぜいけないか。売れないだけでなく、売れない製品をつくるために、人も準備し、設備投資もするからです。こういう場合そもそも、元の計画が間違っていたのです。例えば、毎日10個しか要らないのに、20個つくる設備を入れる。つまり2倍の設備を最初から入れる。20個つくっても売れないから、最後は捨てることになります。こういうことを、ムダがムダを呼ぶ、といいます。
 そこでジャスト・イン・タイムが必要になってくるわけです。従来のものづくりは、上流からのプッシュ方式でした。上流から「何月何日までに、これこれをいくつ、つくりなさい」と指示がくる。それが終わったら、その次の工程について「何月何日までに、あの加工をいくつしなさい」と指示を与える。こういう指示を最初から最後の工程まで出すのです。そこで、途中で異常があっても、それより前工程は異常にはまったく関心を寄せず、計画通りにつくって持ってくる。ですから異常が発生した場所に、部材がどんどん貯まるのです。
 そこでトヨタでは発想をまったく変えて、一番後ろから前工程へ、引き取りにいったらいいのではないか、と。つまり最終工程での作業が終わったら、一つ前の工程に必要な部材を取りに行く。一つ前の工程は、最終工程が取りにきたら、自分たちの加工をするために前の工程に部材を取りに行って、自分たちの仕事をして、後工程に渡す準備をする。つまり「取りに行く」をつないだシステムです。そこで例えばどこかの工程でトラブルが発生した場合、その後工程が取りに行っても部材がないから、流れはそこでストップする。トラブルがあった箇所の前工程も、トラブルがあった箇所が部材を取りにきていないので、次の分をつくらずにストップする。つまり、そこで流れが自動的に止まるのです。いわゆるカンバンです。後工程から前工程に渡されるカンバンはいわば発注書の役割をし、逆の場合は納品書の役割をする。言葉を換えると、前工程は後工程からカンバンを掲示されないことには、つくる権利がないのです。当初、このカンバンはビニールケースに入れて、まさしく作業指示看板として使っていました。今日ではその考え方をそのまま受け継いで、ITのシステムで管理しています。

人の作業も標準化して「異常」を感知

 次に見える化、目で見る管理についてお話します。目で見る管理では、工場のどこで異常が起こっているかを把握し、その異常箇所だけを管理すればいいのです。ですから見える管理は、異常管理ともいわれます。わかりやすい例でいうと、西部劇でもご覧になった方も多いと思いますが、何万頭もの牛を引き連れているカウボーイは、果たして何人いるのか。数人しかいないでしょう。どうして数人で何万頭も牛を管理できるのか。カウボーイは牛の群れを進める際、群れから外れた牛を長い棒でつついて、群れの方に戻します。群れから外れた牛は「異常」で、カウボーイは異常の管理をしているわけです。何万頭もの牛全部に指示を出すとなると数人では足りませんが、群れから外れる牛に指示を出すだけでしたら数人で済む。たくさん機械のある工場も同じことです。1台ずつに正常かどうかを管理する人をつけると多くの人員が必要になりますが、異常が発生した箇所だけを管理するようにすると、少ない人数で済むのです。少ない人数での異常の管理がしやすくするために、ランプを点灯して見えるようにするのです。
 では、人が作業している工程はどうするのか。例えば、カッターやドリルが破損して異常が発生した場合は、その破損を検知できるようにしておけばいいのですが、人の作業がメインの工程ではどう管理するのか。そこで考えるべきは、異常とは、標準があっての異常だということです。標準から外れた動きをするから異常が発生する。ということは、人の作業も標準化しておけばいい。例えばある作業で、それを1つこなすのに何分何秒かかり、どういう作業手順で行うかを予め標準化し、そこから外れた時を異常と判断するようにしたらいいのです。
 ここでも「なぜ」を5回繰り返す。標準作業と違う動きをしたから「異常」が発生したのですが、なぜ違う動きをしたのか。何かに足が引っかかったのなら、2度と引っかからないようにしたらいいわけです。

ラインを止める=膿を出し切る

 「これらを徹底していくと、アメリカのものづくりに勝てる」と大野さんはよくいいました。しかし実際に行うのは非常に難しいものです。私自身も、これが本当に実行できたのは、ダイハツの社長をしていた時です。なぜ難しいかというと、ラインを止めるということはお客様に待っていただくということになるからです。そこまでして、ジャスト・イン・タイムを徹底するのか。そこの判断は社長にしかできません。
 よくあるのは、お客様に迷惑をかけてはいけないと知恵を出して、ライン外に補助ラインを緊急に設けて作業を続けることです。こうすれば確かに予定の量は出ますが、補助ラインのための人も機材も必要になります。これはムダです。私がダイハツの社長を務めていた時、ある工場長は異常が発生してもラインを止めませんでした。社長、会長はじめ役員全員が「異常発生時にはラインを止めなさい」といっているのに、です。そこである時、「明日の作業日報を今書け。異常が発生して、ラインが2時間止まりました、と。その日報を今、了承するから」と工場長に迫って明日の日報を書かせました。実際、翌日に異常があってラインが止まりました。その一件があってから、工場長はラインを止め、不具合を直してから再開するようにしました。1カ月ほど、ほぼ毎日ラインは止まりました。販売店からは苦情がきますが、「今ここをしのいだら、高品質の車を、コストダウンして提供できるようになる」と社長が覚悟しないといけないのです。私もその時は腹をくくり、販売店に頭を下げました。
 ところが1カ月ほどすると、ラインがだんだん止まらなくなり、止まっても短時間で済むようになりました。何が起きたかというと、みな緊張感を持って仕事をするようになったのです。「毎日2時間もラインを止めていたら、会社はどうなるのか」と思い、自分の持ち場では異常が発生しないようにと取り組み、1度異常が発生すると「2度と起こしてはならない」と真剣に改善していったのです。ある工程で発生した異常が、実はその前の工程での作業が不完全なために発生したことがわかったこともあり、後工程の担当者が「もっとしっかり仕事をしてほしい」と前工程に要求したこともありました。
 もう真剣勝負の毎日です。こうしてラインが止まらなくなると、補助ラインのためのスペースも設備も要らなくなりました。これはダイハツのある工場で実際にあったことですが、その後で工場を新設した時、同じ生産台数のラインでしたが、スペース、工程数、設備投資はほぼ半分で済みました。トヨタ生産方式については、たくさん語られていますが、本当に大事なのはここです。覚悟を持って、ラインを止めることができるかどうか。大野さんは確信を持ってこのシステムを進めようとし、「うまくいかなかったらオレは辞める」といつも辞表を持っていました。
 ラインを止めるというのは、膿を出し切ることです。異常があってもライン外の人を使って動かし続けると、異常は担当者とそのライン外の2人しか知らないことになる。これでは異常の原因を内在したままになります。ところがランプを点けてラインを数十分止めると、周りのみんなが何が起こったのかと関心を持ち、異常発生の原因を共有するようになります。ここがもっとも大事なのです。ここを理解していただかないと、本当の意味でのトヨタ生産方式の真髄が理解できないのではないかと思います。
 ラインを止めるのは本当に覚悟が要ります。私も最初のうちは「止めずに、ライン外の人が入り動かせば、稼働率が上がる」と思いました。でもそれをやると、会社の体質はどんどん悪い方向に向かいます。ラインを止めることは、会社にとっては本当に痛いことです。痛いからこそ、「絶対に真因を突き止め、2度と起こさないようにする」と真剣になるのです。

お客様のニーズを汲み上げるとは

 以上が、日本の自動車企業がアメリカ企業との競争に勝つために行ってきた、ものづくりの基本的な考え方です。こうした先人の努力により、日本はGDPで世界第2位になって成長し、日本は豊かになりました。ところがそれから20年。今日、日本は厳しい環境におかれています。世界的には人口は増加していますが、日本は少子高齢化を迎えています。また新興国はすごい勢いで成長している反面、先進国は停滞気味です。国際間の競争はますます激しくなります。日本では従来も、グローバル化が叫ばれてきましたが、実際は内需に支えられてきました。これは数字が示しています。ところが少子化によって内需だけでは生き残れなくなり、本当の意味での貿易立国にならざるを得なくなりました。内需に支えられてきた日本は、グローバルな競争は苦手です。
 ではこれからどうするか。20年に及ぶ停滞から脱却しつつある今、政府や日銀などに頼るばかりでなく、我々民間企業の努力も重要になります。そこで大切なのは、前からいわれている基本的な3つのことを徹底して行うことだと思います。
 最初はお客様主体ということです。例えば日本の電気製品は技術的にも性能的にも極めて優れています。しかし海外のお客様のニーズをつかんでいるかというと、そうでないところもあるようです。韓国のサムスン電子では、入社後5年経過したら、自分の好きな国に1年間行って、一般市民と同じ生活をして、その国の文化や生活を理解する専門職の制度を設けています。仮にその国にサムスン電子の工場や販売拠点があっても、いっさい支援しません。そこでネイティブな生活を1年もすると、言葉もわかるようになります。そういう人間を、その国で拠点をつくる際のリーダーにするのです。またお客様との対応を任せ、お客様から得た情報を開発部門に直接伝えさせるわけです。
 ある国で実際にあったことです。日本のメーカーの営業マンもサムスンの営業マンも必死になって冷蔵庫の営業をしていました。ところが性能的には日本の冷蔵庫の方がいいにもかかわらず、サムスンの冷蔵庫がよく売れたという。その国では、冷蔵庫の中のものを勝手に食べられないために鍵をつける必要があったのですが、サムスンの営業マンは「鍵をつけないと冷蔵庫は売れない」と消費者からいち早く聞き出していたのです。冷える性能は日本の冷蔵庫がよくても、鍵のかからない冷蔵庫はその国では評価されませんでした。お客様主体と日本ではいっていますが、本当の意味でお客様の方を見ていなかったことをこの事例は教えてくれます。

「この1」を損と見るか…

 次は設備投資についての考え方です。販売店などの意見も入れて、例えば毎日10台生産する設備が妥当と思われた場合、7割の設備を導入して、不足の3割分は改善によってまかなうよう努めることです。想定通りに売れることはなかなかありません。7割の設備で、お客様からの10の注文に対して9の納品ができた。この時、「1の損をした」と考えがちですが、この場合は「1少なくなったけど努力によって売り上げを2増やすことができた」と考えるべきです。
 ところが一般的には前者になりがちです。そこで1の損を逃さないために最初から10の設備を導入して、稼働率を低くしてしまう。予定通りにつくらないのは実損です。場合によっては会社の存続を危うくします。先ほどの1を、「損した」と社長が判断した場合は「君らはなぜ設備をきちんと入れなかったのか」と社員を怒鳴りがちです。そうなると、皆サラリーマンですから、怒鳴られないよう大きめの設備を導入するようになるものです。そしてそれをフルに活用しなくても、誰も怒らない。大きなムダが野放しになってしまいます。
 この場合、「7割の設備で9台もつくってくれた。よく頑張った」と社長は社員を褒めるべきなのです。
 3つめは原価についての考え方です。従来の考え方は、「この前、この部材をつくった時はいくらだったから…」と部材や部品の過去の実績を積み上げ、そこから販売価格を導いていました。ところが今日では競争が激しくなって、商品の価値、すなわち価格はお客様が決めて、「この値段なら妥当だと思うから買う」とお客様が価格を決定するようになっています。そこで、従来通りの原価積み上げ方式をとっていたのでは、利益を上げることはできません。価格に対して原価が高すぎるのです。
 今求められているのは、従来の積み上げ方式ではなく、前回1個500円かかった部材も、400円でできないか、300円でできないかと既成概念にとらわれずに考えることです。場合によっては100円でできないか、と。最近の自動車の販売現場では、1000円高いか安いかが勝負の分かれ目になっています。原価率を低くしておくと、商談の最後のところで「ではあと1000円お安くします」と切り出せるのです。原価は神様が決めたわけではありませんので、いくつもの視点で検討し直してみると、つくり方も含めて新しい展開がでてきます。

修羅場をどうやって提供するか…

 今申し上げたのは、基本的な3つのことです。これを徹底していくと、国際的な競争にも打ち勝つことができると思います。そこで大事なのは、これらができる人材をいかに育てるかです。先ほど韓国の、海外での1年間のネイティブな生活について紹介しましたが、興味ある事例です。自分自身のことを振り返って思うのは、私は大野さんに本当に鍛えられました。大野さんから課題を与えられ、悩んで悩んで答えを探しました。悩んで困ることが、成長には必要なことだと思います。誤解を恐れずにいうと、若い方に修羅場をどうやって提供するかです。
 そして目標は常に高めに設定することです。5人で稼働しているラインがあって、「今のリーダーの代わりに君がいって同人数でラインを動かしてくれ」といわれても、期待されているかどうかはわかりません。この場合はあまり期待されていないといった方がいいでしょう。ところが、「5人で動かしていたラインだけど、君が行って、2人で動かせるようにしてほしい」といわれたら、期待されているのがわかります。これは人間尊重でもあります。
 目標を高く設定すると、先輩や詳しい方に教えを乞うために頭をさげるようになります。そうすると、自分1人では何もできないことがわかって謙虚になります。ところが低い目標設定では、往々にして自分だけで解決ができ、「オレがやった」と傲慢になってしまう。謙虚さがなくなると、人の意見に耳を傾けることがなくなり、時にはお客様の声も聞かなくなる。ですから高い目標を与え、悩んで悩んで悩ませる。こうやって人を育てていったらいいのではないかと思います。ご静聴ありがとうございました。

質疑応答

 ジャスト・イン・タイムの真髄は、異常があった場合にはラインを止めるとこだとありました。情報を共有し、緊張感を高め、結果として稼働率を上げていくということでした。そこには、部品納入会社との間で連帯感のようなものが育成されます。片や、部品納入会社にもコスト競争させるとありました。そこには相矛盾するものがあるように思えるのですが、ご経験上、どのように対処されてきたのでしょうか。

 今のご質問は、部品メーカーとの関係をどう持つかですね。価格コンペして、一番安いメーカーと契約していくというのは、アメリカ的なやり方です。それは選ぶ文化。ですからアメリカでは、系列とかグループ企業があまりない。日本の場合は育てる文化です。今まで真面目にコツコツやってきたものを、他社が価格コンペですごく安い値段を出してきたから、そちらに乗り換えるというのは日本的ではありません。また、単に安さだけで部品を選ぶと、皆同じ部品メーカーから仕入れるようになって製品の差別化ができなくなります。私たちのグループでは、他社が安い値段で出してきたら、グループ内で協力して改善し、それに打ち勝とうとします。そこにあるのは育てる文化です。こうしてやってきたからこそ、他のメーカーより優位に立つことができるようになり、また他メーカーとの差別化もはっきりと謳うことができたのです。日本の基本は育てる文化だと思います。

作成日  2014/02/20

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