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藤野文晤センター長。「欧米の国々とも取引きしたけど、中国が一番やりやすかった」と。 |
中国とのビジネスを展開した経験のある方なら「藤野文晤」の名前はご存じのはずだ。大手総合商社の伊藤忠商事で40年以上にわたって中国ビジネスを担当。鄧小平政権が改革開放政策を実施する前から中国に駐在して人脈づくりに勤しみ、大手総合商社の中では最初に中国とのビジネス実現にこぎつけるために、その舞台裏を整えた人物だ。
「1963年から1年の半分を中国で過ごすようになりましたが、当時の貿易高は微々たるもので、人の交流も限られていました。’72年3月、商社の中では伊藤忠が最初に取引相手と認められたのですが、その準備を、上司であった富山県出身の瀬島龍三さん(当時・専務)と一緒に1年以上にわたって進めていました。その時役に立ったのは、’63年からつくってきた人脈でした」
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「NEAR2008inとやま」の来場者は3,695名。1カ月後のアンケート調査によると、成約8件、成約金額2万ドル、商談中281件、商談中金額1,977万ドルであった。 |
藤野センター長は当時を懐かしそうに語るが、40年にわたる中国ビジネスを支えてきたものは「人脈の一語に尽きる」と断言する。同氏は、江沢民政権までの歴代トップと会ってきた、数少ない日本の商社マン。本人あるいはその側近につながる太いパイプを持っていることで知られている。
その藤野氏が当センター長に就任したのは5年前のこと。前出の中国研究会は氏の発案によって月1回のペースで開催されるようになり、各種の資料とともに最新の中国情勢が紹介され、中国との取引き(輸出入、現地への工場進出など)を検討している企業に貴重な情報やアドバイスが提供されてきた。(1月に実施された第36回の研究会については、その概要を以下に紹介)
また、当センター最大の事業であるNEARの実施にも多大な協力をいただいている。NEARは中国、韓国、モンゴル、ロシア沿海州などの部品・部材企業の製品をテクノホール(富山市)に展示し、商談を促進するために行ってきた産業展示会(隔年開催)。部品・部材に限った専門的な展示会は極めて珍しく、大手メーカーの調達関係者ばかりでなく、各地の中小企業も注目してきた。
昨年秋の5回めを数えるNEAR (NEAR 2008inとやま)では、157社(団体含む、以下同)が参加。2年前のNEAR2006inとやまには151社が来県。5回の通算では591社となり、日本企業との取引き開始の機会を得てきた半面、日本企業にとっては新たな提携先確保の場になってきたわけだ。
出展企業を募る際、特に中国ではセンター長名義の協力依頼の文書が効いた。依頼文を受け取った現地政府や貿易促進委員会のトップらは「藤野さんの頼みなら」とひと肌脱いでくれ、地元企業に積極的に出展勧誘に動いてくれたものだ。回を重ねたNEARについて藤野センター長がいう。
「NEARは相当定着し、現地での知名度も上がってきました。これは私の個人的な意見ですが、中国や韓国の部品・部材企業を招くだけではなく、富山の企業、北陸の企業が現地に赴いて、産業展示会等に参加することも必要でしょう。また工業製品だけでなく、農水産物やその加工品を輸出することを考えたらいい。これからは双方向の経済交流の時代になり、また製造業以外にも目を向けるべきです」
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