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富山の農水産品を輸出しよう!  

第7回 世界をリードする環日本海経済交流
富山の農水産品を輸出しよう!
富山県農水産品輸出促進セミナー・個別商談会開催

 アメリカに端を発した日本食への関心は、ヨーロッパやアジアの国々にも広がり、一種のブームになってきた。ここ10年ほどの間に、海外の日本食レストランは2万店を越える勢いで増加。寿司バーやスーパーでの刺身の販売も珍しいことではなくなった。日本の食材は、“安全・安心、高品質、おいしい、そして健康的”と人気は徐々に高まり、輸出される農林水産物も増えてきた。
 こうした状況を踏まえ、国では農林水産物の輸出促進施策を展開し、また県と環日本海経済交流センターでは、県内の農林水産物を海外、特に中国へ輸出し、消費の拡大を図ることを目的にしたセミナーと個別商談会を開催。3名の講師により農林水産物輸出の現状や課題、行政のサポートが紹介されたほか、14社が持ち込んだ商品を前に、輸出の可能性や具体的な取り扱いの相談が行われた。その概要をお知らせする。

 


賞味期限が4カ月以上ある商品で、日常的に消費する食材でトライを

石橋修氏(上海石橋水産品有限公司)
 「30を越える都道府県でこういうセミナーに招かれましたが、富山には『はっ』とする魅力的な食材がありますね」
 こう語るのは、講師の1人、上海石橋水産品有限公司の石橋修氏である。同社は上海、北京、天津などを中心に中国国内で20店のスーパーや寿司バーを運営(6月現在)。一方で同社は貿易業務も行い、水産品を中心に日本からの食材の輸入に積極的に取り組んでいる。
 石橋氏は8年に及ぶ中国での食品販売の経験から、「輸送コストや通関、中国国内での流通事情を考慮して、乾物や加工品、調味料あるいは冷凍品など、賞味期限が4カ月以上あり、日常消費するような食品でまずは試みたらいいのではないか」とアドバイス。そして「パッケージやラベルの文字を、中国語に変える心づかいも必要」と付言された。
峯村正孝氏(伊藤忠大連有限公司)
  また、伊藤忠大連有限公司の峯村正孝氏は、中国国内の農業事情や流通の仕組みを紹介。例えば「新たにスーパーと取引きを始める時は、入店費用(一種の口座開設料)として1万元(約16万円)、扱う商品1品毎に新品販売料が1000元(1万6000円)必要で、この他に店舗マージン(約30%)や店舗リベート(2%/月、1%/年)などが求められる」という。また「新しい商品の販売時には、単に陳列しただけでは商品が売れないため、販売員をつけることや紹介ビデオの上映、あるいはそのセットが必要になるケースが多々ある」とのこと。以上のことは大連の事情であるが、北京や上海など他の都市でも同様の仕組みがあるようだ。


政府も輸出拡大に向けて具体的施策を整備・展開

高橋一成氏(農林水産省大臣官房国際部国際経済課輸出促進室・課長補佐)
 中国の市場がここまで注目されるようになったのは、著しい経済発展があるためである。GDPは毎年10%前後で成長。特に発展が著しい沿岸都市は4~5億の人口を擁し、「新興富裕層」が増えてきた。例えば大連市と上海市に限ってみても、前者の人口は562万人(近くの瀋陽市や鞍山市を含めると約1600万人)、後者は登録人口では1770万人を越え(未登録も含めると3000万人前後と推計)、そのうちの15%前後が日本人の平均所得以上の収入があるのではないか、と推測されている。
 中国をはじめとした海外での日本の農林水産物への関心が高まったことを背景に、政府が積極的に動き出した。平成16年1月には、小泉首相(当時)が施政方針演説で農林水産物の輸出拡大策を表明。翌年には、当時3000億円程度であった農林水産物の輸出額を、「平成21年には倍の6000億円にしよう」と目標を掲げ、続く安倍首相は「平成25年には1兆円規模に」と、さらなる拡大策を示したのであった。
 こうした方針を受けて、農林水産省では輸出促進本部を設置。また流通や観光産業とも連携をとり、具体的な輸出拡大策をとるために農林水産物等輸出促進全国協議会を設立(平成17年4月)したほか、輸出環境を整えるための施策も実施してきた。
 セミナーでは、農林水産省の高橋一成氏(大臣官房国際部国際経済課輸出促進室・課長補佐)も講演し、検疫交渉の加速化、輸出証明書の発行体制の整備、HACCPやGAPなどの手法の導入のほか、海外における展示会・商談会の開催や常設店設置による販売(輸出)支援などを具体例を交えながら紹介し、受講者(農林水産業者)に支援策などを積極的に利用することを呼びかけていた。


商談会では14社中12社が「成果があった」と回答

 また今回のセミナーでは、講演終了後に商談会が実施された。峯村氏や高橋氏が所属する企業グループでは貿易実務を行い、現地での販売チャネルを有するため、県内の14社と具体的な商談を展開。商品としての可能性や価格についてのアドバイスもあり、参加各社にとっては実りある商談会となったようだ。
 後日のアンケート調査では、見積書を提出することになった企業が6社、サンプルを送ることになった企業が3社あり(複数回答)、「輸出の可能性なし」と判断された商品(3社)でも、なぜ可能性がないのかその理由(コスト、食文化、規制)も明確にされたため、12社が「成果があった」と答えている(予想以上にあった/5社、まあまああった/7社)。
 昨年11月、富山県では500kg(約900個)の呉羽ナシをテスト輸出して香港で販売。1個270円(輸出コストがかかるため国内価格の約1.5倍、中国産ナシの約4倍の価格)という高い値段であったが1週間で完売し、継続的・安定的な農林水産物の輸出を目指して、商品の開拓や啓蒙に乗り出したところだ。

個別商談会の様子

●富山県の農林水産物の輸出に関する問合せ先
・(財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
 TEL 076-432-1321
・日本貿易振興機構(JETRO)富山貿易情報センター
 TEL 076-444-7901
・富山県農林水産部農林水産企画課
 TEL 076-444-9622

本セミナーの詳しい紹介は「環日本海経済ジャーナルNo76」(9月上旬発行)をご覧ください。
URL:http://www.near21.jp/


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