第36回中国研究会開催
1月14日に行われた 中国研究会には、県内の企業・団体から19名が参加。最近の中国の経済情勢の報告と分析が、藤野文晤センター長によって行われました。その一部を要約して紹介します。
 
  
  昨年の金融クライシス以来、中国経済については悲観的な見方が大半です。確かに広東省では、アメリカ向けに生活雑貨やプラスティック用品をつくっていた工場の倒産が相次ぎました。海外貿易も激減しています。しかしそういうところばかりに目を奪われていると、大きな流れが見えなくなってしまいます。
 昨今の中国を見るポイントの1つは、中国が陥っているジレンマです。中国は、世界一の外貨保有高1兆9000億ドルを有し、米国債を大量に買っています。ドルを基軸とした国際通貨体制が崩壊すると、中国は甚大な被害をこうむるので米ドルを買い支えています。一方で、米ドルへの依存度を高めるのは不安なので、ユーロ等も視野に入れています。しかし急激にユーロ等にシフトするのは危険ですから、そこにジレンマを感じているわけです。中国はアメリカ経済を無視できません。しかしまたアメリカにとっても中国経済は重要な関心事になってきました。
 もう1つのポイントは、経済のパラダイムの転換期に来ていることです。米国でも完全な市場原理主義に反省が起こっています。中国では、鄧小平さんの改革開放政策以来、南部の沿岸地帯に始まった発展が各地に広がり、わずか30年の間にGDPは世界3位、貿易高は世界2位に躍り出ました。ところが中国経済の70%ほどを牽引してきたのは、広東省を中心とする華南や上海を中心とする華東などの沿岸地帯で、内陸部は発展途上でした。江沢民政権の終わり頃、発展の格差を是正しようと西部や東北三省の開発(いわゆる西部大開発)に乗り出し、それは胡錦濤政権にも受け継がれました。しかし、西部大開発がなかなか進まないというジレンマがありました。そこに金融クライシスが起き、これは中国の経済政策修正を後押しする形になりました。

緊急経済対策の効果がもうで始めた

 金融クライシスの中国の大きな影響をまとめると、2つあります。その1つは石油、石炭、鉄鉱石などの原材料を過剰に在庫したことです。昨年11月、12月あたりは原材料の動きはストップしました。しかし、今年に入ってから若干動き出し、底が見えたようです。物流が始まっていますから、悲観的な見方にとらわれ過ぎるのは、かえって危険です。税収はきちんと見込めて、財政は健全です。債務国ではありません。確かに海外貿易は減少しましたが、日本で考えられているほど大きなダメージは受けていないのです。
 2つめは内陸部への開発に一層目を向けたことです。先ほど申し上げた西部大開発。輸出減少によるマイナス分を、西部大開発でカバーしようというのです。胡錦濤政権はさっそく4兆元(約60兆円)の「経済対策10措置」を発表しました(2008年11月)。2011年までの3年間に、住宅保障プロジェクトの建設加速など10の対策を実施しようというのです。この他に各地方政府も対策に動き出し、中央・地方全部併せると日本円にして100兆円を超える緊急の対策が用意され、即実施に移されました。
 「10措置」の中で最大のポイントは鉄道の建設です。新しい路線をつくるとともに既設路線の高速化・電化を図ります。また農村活性化のプロジェクトも見逃せません。住宅の整備に合わせて生活が向上する施策を行います。こうした対策は、本来はもう少し早く手をつけるべきでしたが、なかなかできず、金融クライシスに後押しされる形で行われるようになりました。
 「10措置」の効果が既に現れているようです。鉄鋼産業は増産に向かいました。第2波の経済対策も近く発表される予定で、3月には全人代が開催されます。全人代でも経済対策が議題にのぼるでしょうが、中国は総力を結集して8%の経済成長を維持しようとしています。中国経済の先行きに関しては悲観論が多いのですが、「6月に反転する」という予測もあります。私はそれに近い見方をしています。
 中国が反転攻勢に出たら、日本は中国との経済関係を強化して、日本の回復も図ったらいい。また韓国とさらなる連携も図るべきでしょう。確かに今、「危機」的状況を迎えています。日本にいる中国系の大学教授は、「危」はクライシス、「機」は変化のチャンスと説いていますが、うまいとらえ方です。


欧米企業が抜けつつある今こそチャンス

 中国への投資に関しては、日本は欧米の後を追うばかりでした。ところが今回のクライシスで、欧米の企業の中には引き上げるところが出てきます。また優秀な中国人の人材も、欧米企業から放出されるでしょう。日本にとっては、絶好の機会です。中国の反転は、V字型ではなくU字型が予想されます。少し底をはってから反転するでしょうから、しばらく様子を見、その間に準備しておいたらいい。そして欧米企業が抜けた後の穴埋めをしながら、優秀な人材の確保も並行して行えばいいのです。チャンスはたくさんあります。悲観論に目を奪われていると、せっかくのチャンスを逃がしてしまいます。プラスティック製品や化学製品も一時は完全にストップしていましたが、これも物流が再開しています。回復の兆しが現れているのは事実です。
 中国は今、内需の拡大を図っています。そのためには農村を豊かにしないといけません。農村は農業だけが経済活動ではなく、中小企業もたくさんあります。その中小企業と、日本の中小企業が連携することもあり得る。農村の中小企業は、最先端の技術を必要としているのではないので、日本の中小企業にも十分に商売の可能性があるのです。


  *中国研究会は月に1回のペースで、当機構の会議室で開催されています。参加は自由。製造業、販売業、農林水産業など業種は問いません。関心のある方は、環日本海経済交流センターまでご連絡いただくか、「中国研究会の開催」ホームページをご覧ください。
 

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作成日2009.02.09

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