ニュースページトップへ戻る TONIOトップへ戻る
平成20年度産業支援機関連携促進会議  

クラスター創成事業や地域資源活用促進事業によって産学官連携が活性化し、新たなビジネスチャンスが生まれています。本年度の会議では、クラスター創成事業で著しい成果を上げている福岡県のプロジェクト担当者を招き、その進展状況をうかがいました。また富山を中心とした地域資源活用の動向や新たな動きを、各担当者に紹介していただきました。その概要をお知らせします。


講演 世界をリードする先端システムLSIの開発拠点を目指して 概要はこちら

支援機関発表 地域資源活用プログラムについて 概要はこちら

支援機関発表 とやま発 新事業チャレンジ支援事業について 概要はこちら

支援機関発表 NEAR2008inとやまの開催について 概要はこちら

支援機関発表 「高度差4000」地域ブランドマイスター養成プログラムについて 概要はこちら

 ■講演 世界をリードする先端システムLSIの開発拠点を目指して
(財)福岡県産業・科学技術振興財団 福岡先端システムLSI開発クラスター 事業総括 大津留 榮佐久

 昨年7月、私が事業総括をしている「福岡先端システムLSI開発クラスター」が、第1期(’02年7月~’07年3月)に引き続いて、知的クラスター創成事業の第2期の採択を受けました。私は第2期から運営に携わっていますが、クラスター推進の様子や現場で起きている課題などをお話します。
 福岡県では’01年に「シリコンシーベルト構想(SSB構想)」を立ち上げました。これは京畿道(韓国)、九州、上海、新竹(台湾)、香港、シンガポールの半導体の生産拠点を結び、より先端的な半導体開発拠点にしようというもの。インドも視野に入れています。その先にはEUやアメリカがありますが、SSBで連携して欧米に伍して最先端の半導体開発を進めていくプロジェクトです。これを進めるための産学官の連携組織として、「福岡県システムLSI設計開発拠点推進会議」が発足し、これがクラスター形成を推進する元になりました。


クラスター創成事業はシーズの産業化が目的

 クラスター創成事業第1期で、システムLSI関連企業が5倍の110社になりました。特に中小・ベンチャー企業の集積が著しく9社から89社とほぼ10倍。システムLSI分野の研究者も全国の約20%が集まるなど、クラスター創成事業の中では際立った成果を上げました。
 そこで今度は2期目のスタートです。成果が上がったといっても、第1期のプロジェクトをそのまま引き継いだわけではありません。きちんと精査し、第2期には参加していただかなかったケースもあります。ただ、バイオなどは10年ほどの開発のスパンがあることも知っていましたので、これらを加味しました。プロジェクトの評価基準は、世界レベルの可能性があるか、研究者が数百社の企業から支持を得ているか、そして研究者に研究のビジョンがあるか、です。
クラスター創成事業の主旨はシーズの産業化にあり、応用研究から製品開発の手前までの研究が範囲です。ですから予算のついたプロジェクトには成果が求められます。その観点からして、産業化に向かわず論文だけで終わってしまう研究は、科研費やCOEの予算でやっていただく他ないのではないかと思われます。


出口を明確に意識するために……

 第2期の始まりに当たって、企業集積の促進と地域のプレーヤーの増大、そして自立的なクラスター形成へ向けての基盤づくりを目標にしました。企業集積については当初、100社増やして200社にすることを想定していましたが、現在は300社を目標としています。また第2期の事業は’11年には終了しますから、終わった後も活動が続けられる仕組みづくりを念頭に置いています。例えば活動資金の1/3を国から助成していただき、1/3は企業からの支援、残り1/3は大学が持っている地域資源や海外の連携先から調達してくる、など自立化を図ることです。
 プレーヤーの増大。これは端的にいうと人材育成で、学生の教育に力を入れるのはもちろんのこと、留学生の育成・支援、Uターンした学生や社会人の再教育などです。組込みソフトウエア技術者の養成など、産業界のニーズの高いプログラムを用意しました。
 また国際展開力の強化も目指しています。例えば国際的な研究者の交流会は、セミナー・シンポジウムなどで今までも行ってきました。ただ従来のイベントは開催がゴールであることが多く、その先につながっていません。イベントはあくまでもプロセスの一端。時間軸の中でイベントを意義付けすることが必要です。また世界的に活躍する研究者を講師に招き、これを縁に組織としての交流の拡大やプロジェクトの進展に役立てていくべきです。
 第2期のクラスターでは、出口を明確に意識するために、アプリケーションとして自動車分野、ロボット分野、バイオ分野と目標を定めました。といっても大枠を決めただけです。ピンポイントの研究はこれからですから、成果が出るには1~2年はかかるでしょう。またアプリケーション開発と並行して、マーケティング等を実施すべきです。企業においては研究開発とマーケティングは並行して行い、市場のニーズを研究開発に反映させています。大学や地域でこれを行うには限界がありますから、専門商社や人脈を持っている方の協力を仰ぐなどして、マーケティングはしっかりしておくべきです。これが不十分だと、企業はなかなか製品化に乗り出しません。
 私どもが進めているクラスターには、24プロジェクトの研究があります。これを放置してバラバラにしておくと、産業化にはなかなか至りません。製品化には資金と時間がかかり、よほど素晴らしいシーズでない限り企業は動かないものです。そこで我々は、技術をシステム化することを念頭におきました。技術をシステム化するというのは、製品開発しやすいところに近づけることです。また技術の高付加価値化も図っています。技術の付加価値を高めると、製品が高く売れるようになりますから、企業にとってはメリットが大きいはず。クラスター事業は、高付加価値化を仕掛けることに意義があると考えています。

  
クラスター創成事業は団体戦

 プロジェクト推進に当たっての組織図としては、研究統括のもとにプロジェクトマネージャー(PM=研究代表者)を置き、その指導下でプロジェクトリーダー(PL)が研究室や企業を引っ張っていく形にしました。研究室や企業は並列です。また企業は、ベンチャー企業、中小企業、大手企業と主に3つのカテゴリーに分け、PM、PL、研究室、そしてそれぞれの企業の枠に、具体的な担当者(社)を当てはめました。一部には反発もありました。しかし担当を具体的にリストアップしないと、研究が単なる概念で終わってしまいます。何度もいいますが、クラスター事業は、製品開発の手前を出口にしているのです。
 ここで重要な役割を果たすのが科学技術コーディネータです。大学の先生方は研究で手がいっぱいですから、研究者間の調整、また研究者と企業間の調整にはコーディネータに負うところが大きい。そのコーディネータを研究統括の補佐役に付けています。福岡のクラスター事業では、コーディネータがプロジェクトメンバーの間を走り、プロジェクトは5年間続きますが、一部のプロジェクトでは3年で成果を出すことを目標に取り組んでいます。
 産学官の連携では、それぞれの機関が自分たちのルールを主張し合っていたのではプロジェクトは進みません。柔軟に対応していかないと、ビジネスチャンスを逃してしまいます。科研費の研究は研究者の個人戦ですが、クラスター事業は団体戦です。私どもは先端的な半導体の開発を目指していますから、技術領域としては各機関が組み合って、そして技術をシステムアップせざるを得ないのです。知的クラスター創成事業(第2期)は2011年で終わりますが、実用化試作センターのような中核研究機関をつくることも検討し、またさらに高度な人材を育成するためのプランも温めています。確実に成果を、こういう意識で「福岡先端システムLSI開発クラスター」は進んでいます。

■(財)福岡県産業・科学技術振興財団 http://www.ist.or.jp/index.php
■ 福岡先端システムLSI開発クラスター http://www2.lab-ist.jp/


Copyright 2005-2013 Toyama New Industry Organization All Rights Reserved.