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第23回 「株式会社カターレ富山」  
第23回 株式会社カターレ富山
チーム創設1年目でJ2昇格
「おらがチーム」として皆さんの支援を

J2昇格が決まってのサポーターとの記念写真。翌日の北日本新聞には、全スポンサー企業の名前を入れて御礼の広告(新聞見開き2pの大きさ)も出した。

 昨年12月1日。正月が1カ月早まったのではないかと思うほど「おめでとう」が飛び交い、初冬にもかかわらず富山が熱くなった。チーム創設1年目にして、カターレ富山のJ2昇格が決まったからだ。今シーズンの期待も日増しに高まっているが、夢の発端は3年前にさかのぼる。
 「Jリーグを目指せるプロチームをつくろう」
 と富山で熱を帯びて語られるようになったのは、’06年から’07年にかけてのこと。県サッカー協会を中心に、その実現に向けた歩みが始まったものの、平坦な道のりではなかった。 
 当時、富山には日本フットボールリーグ(JFL)に所属するアローズ北陸(北陸電力サッカー部)とYKK APサッカー部の2チームがあり、これとは別にチームを立ち上げるのは困難と思われた。となると、この2チームを母体に…となるが、いずれも企業としての宣伝・イメージアップ、地域のスポーツ振興などの目的を持って運営されているチーム。「Jリーグを目指すチームをつくるために、手放してほしい」といわれて、「どうぞ」と答えがすぐに出る問題ではなかった。

営業未経験者がスポンサー回り

カターレ富山の1試合平均の観客動員数は4306人。全収入に占める入場料収入の割合は低く、安定経営のためにはスポンサー収入と同額程度まで高めていくのが課題。
 しばらくすると、「夢」に賛同する企業経営者や経済団体が現れた。サッカーを通して富山を元気にしたい、地域経済を活性化したい、という思いは徐々に広がり、「県民サッカークラブ」というコンセプトもでき上がる。一企業ではなく、県民全体で支えようというのだ。
 その一方で、チーム経営のフィージビリティスタディー(事業可能性調査)も行われた。収入(スポンサー収入、入場料収入、グッズ等の販売収入)と支出(選手ならびにフロントの人件費、試合の運営費、遠征費、事務所維持費など)のシミュレーションをし、また先行している地方のクラブチームの運営費などを参考に割り出すと、ある収入額がクリアできればチームの運営は可能と出た。夢物語の数字ではなく、努力によって達成可能な数字と思われ、これを契機に地元経済界の期待はますます高くなっていく。
 そして2チームを運営する各企業が、Jリーグを目指して統合することに合意。’07年9月に発表され、11月から’08年シーズンの準備が始まった。
 「ここからが我々フロントの出番。収入の計画では、その内の80%以上をスポンサー収入と見ていましたので、専務も含めた7人の営業担当は必死でした。営業経験者は1人のみ。他は手探りで企業回りをしたのです。母体の北陸電力様、YKK AP様にもご協力いただき、取引先をたくさん紹介していただきました」
 管理部長・総務マネージャーを務める芝田聡氏は、1年数カ月前のチーム創立当時を振り返るが、同氏も営業メンバーの1人。兼務でスポンサー探しに走り回った。また、このコーナーの19回目に紹介した富山サンダーバーズが創業支援を受けたことを聞き付けて、県経営支援課を通じて当機構中小企業支援センターを訪問。「創業・ベンチャー挑戦応援事業」に申請し、助成事業に採択された。
左から長谷川選手、濱野選手、朝日選手。


1シーズン目は黒字。今期からが正念場

富山(草島・大沢野)・高岡・魚津で、年代ごとに週1回ずつ開催されているサッカースクール(有料)。この他に保育園・幼稚園等の要請で開催された巡回サッカー教室があり、普及・育成担当のコーチが派遣される(無料)。08年シーズンの派遣は150回を超える。
   1年目の結果は、序盤は苦戦したものの徐々に勝ち点を積み上げ、11月23日のMIOびわこ草津戦に2対1で勝利したことで勝ち点を61とし、Jリーグ昇格条件の4位以内をクリア。結局、3位でシーズンを終えて、J2への昇格が決まった。
 また収入の方も、目標金額を何とか確保。スポンサー企業は407社(内1口3万円の小口スポンサーは175社)に及び、収入のなかった第1期分(’07年11月~’08年1月までの3カ月分)の赤字も補填し、’08年シーズンはなんとか黒字に終わりそう、ということだ。(取材時点では決算中)
「J2で実力を蓄え徐々に上位にランクされるようになり、いずれはJ1へ」と夢を語る中尾哲雄社長。
  「問題は2年目です。昨年秋からの経済状況の悪化が心配です。チームは皆さんの支援を受けないとやっていけない。今シーズンは、ファンクラブの会員区分も変えて、会員様には割引価格でできるだけチケットを購入してもらう方向に転換した。1人でも多くの方にスタジアムに足を運んでいただきたい」と芝田氏は必死だ。
 昨シーズンのJ2チームの平均収入は約12億円。広告や入場料の単価がJFLより上がるため収入は伸びるものの、試合運営費や人件費を中心に支出も増える。J2の中には、財政難で消滅の危機を迎えたチームもあったが、市民の熱意によって再建し、現在では1試合平均1万人を越えるサポーターがスタジアムを埋めつくしているという。
ファンとの集いなども積極的に開催。地域のイベント参加、福祉施設訪問などもできる限り日程を調整して行なっている。
  「カターレには、富山弁の『勝て』と、肩(カタ)を組んで行こう(アレ:aller〈仏語〉)という意味があります。公的な支援はありがたい。県民の皆さんのサポートはもっとありがたい。『おらがチーム』として皆さんに愛されるようになりたい。そして…」と中尾哲雄社長はJ1への夢も垣間見せた。




[企業の概要]
 所在地/富山市新桜町5-3第2富山電気ビルディング
 代表者/中尾 哲雄
 資本金/6,300万円
 従業員/21名(うちフロント11名(強化スカウト担当含む)、トップチームスタッフ7名、
      育成普及スタッフ3名。ただし、選手含まず)
 事 業/サッカークラブの運営  TEL/076-444-5500  FAX/076-444-5507
 URL/http://www.kataller.co.jp/

作成日2009.02.25
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