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第19回 「(株)富山サンダーバーズベースボールクラブ」  
  
第19回 株式会社富山サンダーバーズベースボールクラブ
球団・選手の元気が地域を興す
県民の支援・応援でもっと活性化

 結局、初年度はリーグ2位で終わった富山サンダーバーズ。終盤のゲームは雨に泣かされてタイトな試合日程が組まれたが、石川ミリオンスターズとの優勝争いは白熱した。高校野球やセ・パ両リーグの野球(日本プロ野球機構:NPB)とはひと味違った野球が展開されることになり、スポーツファン、野球ファンにとっては、楽しませていただいた1年目となった。

富山にも球団を!と支援者が集まった

優勝がかかった終盤戦は、特に盛り上がって、最高の観客動員数は8,539人でした。
 プロ野球の地方への本格的な展開は、世紀が新しくなってから始まった。 04年には日本ハムファイターズが北海道に移転。翌年、パ・リーグ2球団の合併劇の副産物として、仙台に東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生した。また04年9月には、かつて西武ライオンズで活躍した石毛宏典氏による四国アイランドリーグの構想が発表され、05年4月に開幕。高校野球や社会人の朝間野球は他の地域同様に盛んであるにもかかわらず、北信越だけが取り残される形となってしまった。
 そこで名乗りを上げたのが、アルビレックス新潟(サッカーJ1)等のスポーツチームを運営する同グループ。自らも球団を持つ構想を発表するとともに、隣県の経済界等に参加を呼びかけると、富山、石川、長野で動きが現れ、本県では某企業のN社長が出資者を募り始めた。
 「私も野球が好きで、高岡の野球協会に所属して、高校野球の記録員などをしてきました。富山県での球団設立の話が持ち上がった時、これは地域の活性化につながるのではないかと思い、お手伝いさせていただいたのです」
 ホームページの制作・運営などを請負う(株)メディアプロ(高岡市)の社長・永森茂氏は球団設立のために県内の企業回りを始めた時を振り返るが、その時は「自分が球団社長に就くとは夢にも思っていなかった」そうだ。
 ところが目標にしていた6,000万円の出資金のメドがついた時、最初に設立準備に動いたN社長から、球団社長就任を推されたのであった。
 「晴天の霹靂(へきれき)とはこのこと。最初に準備のために動かれた方、出資の相談にのっていただいた方々、皆さん大きな企業の社長です。その中から社長が決まり、会社が設立されれば、私の役目は終わりだと思っていたのですが…」
 永森社長は、IT企業の経営と球団社長の二足のわらじを履くことになったのであった。


新球団もベンチャー企業 「地域の活性化」を評価

 北信越BCリーグ4球団の運営主体(会社)が設立されたのは06年夏から秋のこと。その前は、「設立準備室」等の名前で呼ばれ、この段階から球団やリーグ運営のための打合せ・情報交換が頻繁に行われるようになった。
 永森社長も“富山県球団”開設準備委員の1人であったため、会議にはよく出席していたのであるが、ある球団の準備委員が「自分たちはある意味、ベンチャー企業だ。新事業を立ち上げる時には公的な支援制度があるから、一度地元の制度を調べて相談してみよう」と提案した。
 富山の開設準備室では早速、本県の制度を調べて、当機構の「創業・ベンチャー挑戦応援事業」に応募(平成18年8月)。機構では、近い将来設立される企業が「球団運営やスポーツ振興を通じて、地域の活性化と青少年の健全育成を目指すことを会社設立の第一の目的に挙げている点を評価」して助成を決めたのであった(同年10月)。
 「準備段階から、どの球団も健全経営ができるかを心配していましたので公的支援を期待したのです。今こうして最初のシーズンが終わりましたが、各社赤字かもしれません。富山の場合、観客動員数は他球団より健闘したものの、有料入場者数の比率と広告収入が伸び悩みました」
 1年間を振り返っての、永森社長の弁である。
試合の前後にはファンサービスのために記念写真やサインにも気軽に応じた。


有料入場者2,000人で“トントン”

ファンとの集いなどにも積極的に参加。
 初年度のリーグ全体での1試合平均の観客動員数は1,790人。富山主催ゲームでは2,005人。地元でのサンダーバーズ戦は意外と健闘しているものの、有料入場者は約4割と振るわなかった。
 「1試合平均、有料のお客様が2,000人いたら、収支はトントンになるでしょう。でも今年は、滞りなく試合を運営するので精いっぱいで、集客まで細かい神経が回らなかったと反省しています」(永森社長)
 観客動員に関しては、他の3球団も事情はほぼ同じ。また広告収入も、富山の場合は製造業の中でも部品メーカーが多いため、スポンサー探しには苦労したようだ。
 ところが来シーズンには福井、群馬の球団が加わり、北信越BCリーグは6球団に増えて、「BCリーグ」と名称も変更。四国アイランドリーグには既に九州の2球団が加わって、「四国・九州アイランドリーグ」になっている。また、栃木、福島、和歌山にも球団設立の動きがあるようで、新たな独立リーグ誕生の可能性も出てきた。


経済と元気の波及効果

「独立リーグは、選手にとっては夢を実現する場であり、夢をあきらめる場でもある。観客は選手のひたむきな姿勢から元気をもらう」と永森茂社長は熱く語った。
 ではなぜ、球団設立にここまで熱を入れるのか。社会人野球をはじめ企業のスポーツチームは減り続けているものの、サッカーやバスケットボールなども含めて、プロチームが相次で現れるようになってきた。
 「それは一企業でチームを持つのに限界がきたのと、プロ化によって地域の活性化が目に見えてきたからでしょう」と永森社長は語るが、それを裏付ける数字もある。
 四国アイランドリーグでは、初年度4球団で3億円近い赤字を出したというが、地元の経済研究所は四国全体に12億円の経済波及効果を生み出したと試算。サッカーの場合も、JFLからJリーグに昇格すると、地方都市でも10億円以上の経済波及効果が見込まれるというから、プロチームの運営は地域の活性化に大きく役立っているようだ。
 独立リーグの場合、選手の待遇は決してよくない(富山サンダーバーズの場合は月給15万円ほど。他球団もほぼ同様)。シーズンオフにはスポンサー企業などで働いている。
 しかし選手は真直ぐに夢を追いかけ、その姿から元気をもらっているのは県民の方ではないだろうか。球団に必要なのは、公的支援もさることながら、みんなの支援・応援ではないかと思えてきた。(この記事を書くにあたって、「広島カープ」(現・広島東洋カープの前身)の歴史を繙(ひもと)いてみた。球団運営資金を確保するために、市民が酒樽を街頭にならべて募金した時もあったという。編集子はサンダーバーズ後援会に入ることを決めた)


[企業の概要]
所在地 富山市下赤江町1-12-21
代表者 永森 茂
資本金 7,725万円
従業員 35名(監督、コーチ、選手、事務職員等を含)
電 話 076-433-2202  FAX 076-433-2208
事 業 野球チームの運営、リーグの試合参加
URL http://www.t-thunderbirds.jp/


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