前述したように、ものづくりR&Dセンターの特徴のひとつに、企業スペースを併設していることが挙げられる。それも工業技術センター・中央研究所の敷地内に、その試験棟と隣接する形で立地。県にはこの他、農業、水産、薬事、衛生、環境、果樹、畜産、森林などの公設試験・研究機関もあるが、それらと隣接する形でプロジェクト&企業スペース(インキュベートと共同研究機能を合わせ持つ施設)が設けられたのは、恐らく初めてのこと。側聞するところによると、公設試験・研究機関に企業スペース(インキュベーション施設)が併設される例は全国的にも珍しく、現時点では2、3の例を数えるだけだそうだ。
その、ものづくりR&Dセンターの企業スペースに、いち早く入居を決めたのが(株)オーギャの水島昌徳社長(オーギャ=Original Goods for Allの頭文字より)。同社はセンサ開発、センサソリューションをメインとするベンチャー企業。産業用ロボット、ヒューマノイドロボットなどにセンサを提供するとともに、ロボットが将来、今より遥かに民生化されて普及することを見越して、より小型化して、かつ性能の高いセンサの開発に取り組んでいる。
「3月までは高岡駅ビルのインキュベーション施設に入居していました。共同研究していることもあって工業技術センターにはほぼ毎日通っていたのですが、ここに企業スペースが併設されると聞いて、すぐに申し込みました。新しく導入されたUV表面加工装置が魅力でした」(水島社長)
センサは、センサ部分そのものが重要なのはいうまでもないが、複雑な配線パターンを有する基板もポイントになる。試作品をつくる際、従来はその都度、パターンの版を起こすところから始め、毎回3~5万円の費用をかけていた。しかしながら試作1回目で期待した通りのパターンができるとは限らず、それがかさむとベンチャー企業にとっては負担になる。
そこに導入されたのがUV表面加工装置だ。この装置は、紫外線照射によりアクリルポリマーの表面を改質。あるいはまた空気存在下で照射すると、ポリマー表面を直接酸化することができる。この特性を生かすと、センサにとって命ともいえる、微細なパターンを有する基板の試作品を、簡単に・安価につくることが可能。水島社長はそこに魅力のひとつを感じたのであろう。
また工業技術センターに隣接する企業スペースに入居すると、センターに通うための時間の節約になる。その結果、センター職員への相談も、より頻繁にそして長くとれるように。さらには入居している他の開発型企業の人々と情報交換の場が持てるようになり、企業スペースへの入居の結果、一石三鳥・一石四鳥の効果が期待されるわけだ。
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オーギャの水島社長はセンター開所と同時に企業スペースに入居。「いずれ工場を持ちたい」という。このロボットハンドに装着されている同社の超薄型触覚フィルム(静電容量検出型感圧センサ)は、0.5mm以下の厚さで、曲面への実装も可能。 |
「富山県ものづくり研究開発センター」への関心の高さは、前述の通りだ。ちなみに企業スペースには隣県企業の入居もあり(8月初旬時点で、2階の企業スペースは予約も含めると満室、1階の広いプロジェクトスペースが2室空いているのみ)、設備利用についての問い合わせは中部各県からもきている。またセンター前の駐車場には県外ナンバーの車も目立つようになり、産学官連携・異業種交流の舞台は整いつつあるようだ。 新しい技術、新しい製品が世に出るのもそう遠くではないであろう。その誕生の産声が、「おぎゃー」と日本のみならず世界にとどろくことを願ってやまない。
【お問い合わせ先】
富山県ものづくり研究開発センター
https://www.tonio.or.jp/monozukuri/
【最先端設備に関して】
富山県工業技術センター 企画情報課
高岡市二上町150
TEL0766-21-2121 FAX0766-21-2402
【企業スペース・プロジェクトスペースに関して】
(財)富山県新世紀産業機構 産学官連携推進センター
ものづくり研究開発センター
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