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第4回とやまベンチャーマッチングフェア開催  

第4回とやまベンチャーマッチングフェア開催
2月24日、富山国際会議場において「とやまベンチャーマッチングフェア」が開催されました。基調講演では、起業者、新ビジネスの立ち上げ担当者にとってはバイブル的な存在になっている月刊『アントレ』の西日本編集長を経験した山口俊介氏に、取材を通じて感じてきた事業成功への秘訣をお話いただきました。またフェアでは、10件のビジネスプランが提案され、引き続き商談会も開催されました。それらを要約してお知らせします。  

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基調講演 本当に儲かった話は表に出ない
有限会社かほり堂 店主 山口 俊介氏

 月刊『アントレ』をご存じでしょうか。1997年にリクルートが発刊しました。かほり堂は今から6年前に、『アントレ』の編集部の一部を独立してつくった会社で、マッチングビジネスの他、今でもリクルートの仕事を半分しています。私たちは年間何百という企業の方々と会いますが、そこで出会った経営者やビジネスを題材にお話させていただきます。

鳥の目、虫の目、魚の目

 新しい事業を創造する時には、間(ま)の関係性を考えることが大切で、3つのポイントがあります。空間軸、人間軸(じんかんじく)、時間軸の3つです。まず1つ目の空間軸は、大局的に物事を見ること。鳥が俯瞰するように、全体を見渡しながら大局的に物事を見た時に、果たして本当にこの事業は必要とされているのか、どうかを大局的に判断する。続いて人間軸。鳥に対して今度は虫の立場で見る。細かい配慮、気配りがされているか、ですね。経営者と従業員の関係、従業員と協力者の関係、お客さんとの関係もあります。いかにして人との関係性を保っていくか。もしくは結びつきを強めていくかということが大切です。3つ目の時間軸は魚の立場になって、時の流れを読むことです。また、魚は常に水面下におり、地上は見えません。そこで見えない部分をイメージする力が大事になってきます。もう1つ、魚の目はいわゆる魚眼レンズになっていて360度見渡せる。「後ろに振り向くな!」といわれますが、たまには後ろを確認しておかないと誰もついて来なかった、ということもあり得ます。鳥の目、虫の目、魚の目、この3つの観点で自分自身を見つめていくと、事業を行なう際には役に立つと思います。


好きが高じて新ビジネスに発展

 新しい事業を創出しようとする時、いくつかヒントがあると思います。きっかけですね。これはもしかしたら新しい事業になるのではないか、と。その、きっかけは何種類くらいあるでしょうか。講演会の度に会場の皆さんに聞きますが、50とか100とか、いろんな数字が出ます。実は人の欲の数だけビジネスチャンスがあるのです。すなわち108。私も自分の欲を数えてみましたが、57まではいきましたが、58番目が出てこない。「欲ないと、よくない」。シャレているわけではありませんが、人の気持ちが分からなければ、ビジネスは生まれません。
 実例を挙げながらお話します。「不」のつく日本語のあるところにビジネスチャンスがある。「不」を取り除いてあげるんですね。幼い子どもを持つお母さんたちには安心して子どもを預けられる託児所が望まれていました。そこには、預けた先の託児所が不安という問題点があります。
 これを解決した託児所が今大人気です。その託児所ではカメラを取り付けていて、お子さんを預けた親御さんに託児所の様子を見えるようにしました。IDとパスワードを入力すると、ネット経由で3分間見ることができるのです。率直な言い方をすると、預けたお父さんお母さんが交代で託児所を監視することによって、不安を安心に変えるというビジネスモデルが生まれました。保母さんも見られているわけですから、プレッシャーになります。ですからそのプレッシャーに耐えられる、本当に子どもが好きな保母さんしか勤まらない。子ども好きな保母さんがいると評判になって、お客さんがまた増えていきました。ITを活用して、不安を解消したビジネスです。
 今度は靴のクリーニング屋さんの話。福岡県に本社があり全国に30店舗くらいまで店を増やしてきました。革の靴も丸洗いして、きれいに汚れを落として、臭いも落とし、それでいて乾燥しても革が割れない。この社長、もともとは不動産屋さんですが、小さい頃から靴がものすごく好きで、1日1回靴を磨いて寝るそうです。なんと靴を400足持っている。その社長が焼き肉店で、19万円ぐらいする靴の甲に焼き肉のたれを落としてしまった。靴好きの社長ですからいろいろ回って、やっと取れたのが九州大学でした。バイオテクノロジーの技術を利用したそうです。そこで社長は、九州大学の理学部と共同で、どんな汚れでも落ちる薬液を3年がかりで開発し、靴の丸洗いに至ったわけです。天然成分の洗剤ですから、手も荒れない。特殊な処理をしなくてもいいので、そのまま排水として流せる。その技術を確立してからお店を出し始めました。15坪くらいのお店で月の売り上げが400万円、粗利90%。低温の乾燥機も開発されて、直接的な原価は、薬液代と水道・光熱費だけです。好きなことがビジネスに発展した例です。
 お客さんのほとんどは女性の方、特にお母さんです。最初は、お父さんの靴を持ってくる例が多いそうです。一番洗いたいのは、娘さんのブーツらしい。中にカビが生えたりしているのできれいにしたいけど、まかり間違ってブーツが縮んだり割れたりすると娘さんに怒られますよね。だからまずお父さんの靴で実験する。これできれいになったら娘さんのブーツ、そして最後に自分の大事な靴を持っていく、というのが一般的な様子だそうです。


お金を払って捨てていたものが、お金をもらって売るものに

 専門的な知識や技能をもとに、事業の拡大を図るケースがあります。ある司法書士さんのこと。司法書士は不動産登記などを仕事としていて、最近のように不景気になってくると不動産売買が減って登記の仕事も減ってきます。ところがこの司法書士さんは、どんどこどんどこ売り上げが伸びている。「景気が悪くなるほど、私のところは売り上げが伸びる」といっていました。
 景気が悪くなると、賃貸住宅では家賃の不払いが起きます。大宅さんとしては、本音は出ていって欲しいのですが、なかなか切り出せない。一般の司法書士さんも、人に恨まれる仕事はしたくないですから、そういう依頼は引き受けません。ところがこの司法書士さんは、恨まれることなく、家賃不払いの人が納得して部屋をあけるテクニックを持っている。専門家の中でも嫌がる仕事を引き受けていくと、その人の専門性にますます需要が高まったのです。人が嫌がる事にこそ、価値が隠れているものです。
 自分が持っている動産や不動産、資格や人的なネットワークも新しいビジネスを生むきっかけになります。昔、小学校の向かいに駄菓子屋さんがありました。その倉庫に、当時の値段でいうと100円とか200円くらいのプラモデルが眠っていることがあります。そのプラモデルを買いつけて、オークションで販売するビジネスが出てきました。100円で買いつけたものが5万円で売れることもある。500倍です。昔懐かしいものを必要としている人もいるのです。
 新しいビジネスを考える場合は、組み合せを考えることも必要です。技術や素材、方法など今ではたくさんありますから、組み合せは無限大でしょう。今日、この後でもおからの件がプレゼンテーションされるようですが、奈良の豆腐屋さんの話です。おからを捨てるのは、産業廃棄物になってお金がかかるということで、困っておられました。「どうしましょう」と相談されましたが、「食べるしかないでしょう」と当初は答えていました。「まいど1号」という人工衛星を打ち上げた、東大阪というものすごく技術を持った町に知り合いがいました。そこで相談すると、なんとできたのが、おからで作った紙コップ。30個300円。東京のDIY店でエコ商品として販売したら、爆発的に売れました。お金を払って捨てていたものが、お金をもらえる商品になったのです。


売り先を変える、用途を変える

 アウトソーシングにもビジネスチャンスがあります。自前で全部やってしまうのではなく、外注を使う。特に人が苦手な部分を代わりにやってあげることで価値を生むことができます。飲食店向けに、出前の注文だけを受ける会社があります。「出前館」という名前でやっていますので、そこのホームページをぜひ見てください。この社長、実は富山県出身の女性で、学生時代にはモーニングコール事業をやっていました。男子生徒、男子学生に、約束の時間にモーニングコールをして起こしてあげるビジネスです。そのために女子学生を雇っていました。ちなみに先ほどの出前受付けのビジネスですが、出前の配送だけをするビジネスもあります。
 同じ商材でも、売り先を変える、用途を変えるとチャンスが生まれます。同じ商材でも高付加価値のビジネスができます。福井県の鯖江はメガネのフレームをつくっている会社が多い。しかし最近は海外ものに押されてあまり売れなくなり、お箸をつくり始めました。いわゆるMy箸です。フレームの素材で傘の骨をつくっている企業もあります。
 炭もいろいろなところに使われていますが、用途によって値段が全然違います。ある炭の産地を取材したのですが、一番安いのは建材用に使われる炭。1kg 5円でした。ところがこの同じ炭を、焼き鳥屋さんに販売すると1kg 50円。河原などでのバーベキュー用にすると、ホームセンターでは3kg 300円程度で売られています。1kg 100円ということです。この炭を今度は、「ごはんがおいしく炊けます」「水がきれいになります」とパッケージしてスーパーで販売すると、数十g、数百gの炭でも500~600円になります。その炭を売っている会社が銀座にショールームを出しました。室内の調湿・脱臭用にきれいにラッピングした炭が、今度は1本数百gを3本で5,700円。1kgで5円を見ていますから、本当に驚きです。場所が変わると、お客さんも用途もこれだけ変わってくるというビジネスです。


憎しみは水に流し、恩を胸に刻む

 私は成功している経営者に、たくさん会ってきました。そこで「どんな人が成功しますか」と聞くと、大体みなさん共通している。その第3位は「支援者が多い人、仲間が多い人」。応援してくれる仲間が多い人は、成功するということです。第2位は「やり切る力を持っている人」でした。夢を見る人はたくさんいます。でも、見続ける人は少ない。やり切ったからこそ結果が残せたということもありますが、とにかく諦めずにやり切ることです。そして第1位は「志の高い人」でした。昨今は偽装のオンパレードですが、嘘はだめですね。社会貢献というと口が上滑りそうですが、それがなければ続かない。一番大事なのは「志」だとみなさんいわれました。そして判断基準は、損得ではなく、嘘か誠かだ、と。
 成功している経営者の「志」には3つ点で共通するものがありました。1つ目は「功は人に譲れ」ということです。「俺のおかげだ」と有頂天になるのではなく、「ご協力いただいた誰々さんのおかげです」と、手柄を人に譲るくらいの度量を持ってる人でないと成功しないだろうということです。2つ目は「憎しみは水に流せ」です。ネガティブなことばかりいっていると、そういう情報しか来ない、そういう人しか集まりません。いい情報をアウトプットすることで、よりよい情報が自分に集まってくるということです。3つ目は「恩は胸に刻め」。みなさんお気づきの通り、恩を受けるとすぐに忘れてしまいます。逆に、恩を与えるとずーっと覚えている。これを反対にし、恩を忘れないようにし、胸に刻もうということです。そして受けた恩を返す時は、倍返しする。それくらい高い志を持っていないと成功しないというわけです。(要約・文責編集部)

山口俊介氏
有限会社かほり堂 代表取締役
福岡県出身。1987年大阪芸術大学芸術学部卒業後、株式会社リクルート入社。大手企業の中途採用実施における担当部署の立ち上げ、西日本の地方行政における過疎化対策支援、企業の事業展開におけるフランチャイズパッケージ作成支援を経て、1996年ヒューマンリソースマネジメント室にて「モチベーション・リソース(人はなぜ働くのか?)」について研究。
1997年ビジネスインキュベーション事業部の立ち上げ及び、月刊「アントレ」を創刊。西日本編集長に就任。西日本地域のビジネス支援事業に携わる。2002年12月同社退職。
2003年1月ビジネス薬局かほり堂を設立、自ら数々の企業を立ち上げ、また起業・独立の支援に奔走する一方で、立命館大学の客員教授として、「自立的で創造的な人材」、「アントレプレナーシップに満ちた人材」の輩出を目指している。
他、役職としては、立命館大学経営学部 客員教授 (アントレプレナー教育講座)、京都精華大学 人文学部非常勤講師 (プレゼンテーション技法)、多摩大学 非常勤講師 (ベンチャー企業経営)、株式会社リクルート 月刊アントレ西日本編集顧問、ベンチャーコミュニティー世話人代表、財団法人大阪市都市型産業振興センター「創業準備オフィス」審査員ほか多数

作成日2009.03.25

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