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NEAR2008inとやま開催  

NEAR2008inとやま開催
北東アジアの3カ国から157社出展
産業部品・材料に熱い視線が集まった

 ’99年から始まったNEAR(北東アジア経済交流EXPO)。5回目を迎えた今回の「NEAR2008inとやま」の展示会では、昨年からの出展誘致活動が効を奏して、特に中国からの出展企業が増え、全体としては過去最高の157社(団体)となった。
 10月29・30日の2日間にわたって行われた展示会は、初日はあいにくの横なぐりの雨にもかかわらず、延べ3,695人が参加。日本企業の仕入れ・調達担当者の質問に答えつつも、取引き条件や納期のあり方などを、逆に熱心に質問する企業も多かった。
 熱気を帯びた産業部品・材料展示会の様子を、出展企業のコメントを交えながらリポートする。

商談等が熱心に行われたNEAR2008inとやまの様子


来場者が真っ直ぐに向かった企業は…

 まず1時間ほど、会場のテクノホール2階の通路から全体を見渡していて、気づいたことがあった。大半の来場者には、受付けを済ませると、右回りあるいは左回りで、ブース全体を見学して、関心のあるブースへ再度足を運ぶような動きがみられた。
 しかしながら、予め訪問先を決めていたのではないかと思われる来場者も見受けられた。そういう来場者は、受付けを済ませると、目的のブースに真っ直ぐに向かう。既に取引きがあっての表敬訪問が想定されるし、また、展示会の前に入手した出展企業情報(ガイドやHP)で、訪問先の目星をつけていたのではないかとも思われる。中でも際立っていたのは、大連恒立工業有限公司(http://dlhit.cn/)だ。受付け後、真っ直ぐに同社のブースに向かうグループが多いのに目を引かれた。
 さっそくブースにうかがって、会場配置の通訳を通じて取材を申し込むと、「わかりました」と流暢な日本語が返ってきた。会長(董事長)は、刁鋭さん。同社のNEAR出展は3回目であった。幾組みもの来場者が同社のブースに真っ直ぐに向かっていたことを話し、既に取引きのある企業に、あるいは今後、取引きの可能性のある企業に事前にPRしていたのではないかと尋ねてみた。
 「当社独自では、PRはしていません。たぶん取引き先の商社の担当者が、販売先のお客様企業に、NEARに当社が出展するのを案内していただいたのだと思います」と答え、「今日会ったのは、初めての方ばかり」と名刺を見せてくれた。いずれも産業機械や電子機器、プラント等のメーカーで、大都市周辺に本社や工場を有する上場企業。「今日は顔合わせみたいなもの」と会長は3回目出展の余裕をうかがわせた。
 同社の取扱い製品は、鋳鉄・鋳アルミ・ステンレス等を使った鋳造品や溶接品。鋳造には精密部品も含まれ、既に日本の産業機械メーカー、プラントメーカーへの納品実績があり、メーカーとの直接取引、商社を仲介した間接取引と相手先の事情に合わせているという。
 刁会長は、前2回の出展の時も、大手の数社と名刺を交換した。具体的な商談は展示会の後に始まり、相互に4~5回の企業訪問を繰り返してから、契約に至った経験を持っている。余裕をうかがわせたのはそういう経験を踏まえていることもあったが、実は売り上げのすべてを日本企業に依存していて、日本の取引き習慣などを理解していたこともあった。ちなみに売上げの9割が日本への輸出であり、残り1割は大連の日系企業に納めている。
 「創業9年目の若い企業ですが、日本の企業の皆様に育てていただきました」と刁会長は微笑んだ。
創業前は国営商社に務めていた大連恒立工業の刁会長(董事長)(左)。日本語は学生時代に勉強したというが、専攻は理系。商社時代の経験も役に立っている様子。

 続いて話をうかがったのは、広州東霖電子有限公司(http://www.orientronic.com/)。昨年末からの出展勧誘によって、今回初めて広州市の企業8社の参加が実現したわけで、同社はそのうちの1社だ。テーブルにはところ狭しと変圧器や安定器、電位器が並べられ、3人の担当者が緊張した面持ちで来場者の問いかけに答えていた。話はNEARのことを知った経緯から始まった。
 「広州市の貿易促進委員会にNEARを紹介されました。その後でHPで調べ、部品や材料に絞った展示会だとわかり、参加を決めました」と社長(総経理)を務める曽亦婷さん。 そして「完成品を見て、そこにどんな部品が使われ、それがどこでつくられているかまではわかりません。専門展示会は商談の密度を濃くするためにもいいのではないか」と続けた。
 同社では、日本、ドイツ、アメリカ、オランダ、イスラエルなどの企業との取引きがある。日本の企業へは、毎月、あるいは隔月で変圧器を納めているものの、すべて商社が仲介。他の国の企業との取引きもほぼ同様だ。今回のNEAR参加は、取引先を独自に開拓したいという意欲の現れでもあった。
 ここで、少し意地悪な質問をしてみた。“商社を仲介した取引きの方が納期に余裕があるのではないか。場合によっては、商社は、多少の在庫もする。ところがメーカー直になったら、納期は商社以上に厳しくなることも想定される。かんばんシステムという、日本独自の資材納入のシステムを知っているか”。質問の趣旨は以上のようなものだった
 曽さんは自信たっぷりに答えた。
 「商社へ納めるのも、ジャストインタイムが要求されます。当社には、販売専門の会社が香港にあり、日本だけでなく欧米の企業の要望にも答えています」
左から、広州東霖電子の欧さん(理事)、曽さん(総経理)、李さん(技術部長)。李さんは技術的な相談にも答えられるようにと参加。


NEAR翌日からは個別企業に営業に

 韓国からの出展企業も2社取材した。そのうちの1社は、今回の出展が2回目という第一電子(京畿道始興市 http://www.bestjeil.com/)。ブースには営業部長の鄭遇淥さんが詰めていた。
 第一電子は、電子部品の射出、加工、組立などを行っている企業。具体的な製品としては、減圧弁、フロート弁、流水感知器、圧力スイッチ、レベルスイッチ等々。トイレの洗浄器やシャワー機器などで使われている部品だ。
 日本の企業数社とは取引きがあり、中国、台湾、マレーシア、オーストラリアなどにも輸出している。
 「当社は、産業展示会にはよく出展しています。日本の展示会も多数出展していますが、NEARは部品専門の展示会で来場者の関心が高く、前回に引き続いて出展しました」
 鄭部長は出展の抱負を語りつつ、ブースに立ち寄る見学者にパンフレットやカタログを手渡していた。
第一電子の鄭さん。同社の製品はトイレの洗浄シャワーなどに使われており、身近な存在。

 今回初めて参加したヒートテック株式会社(忠清南道天安市  http://www.heattechnology.co.kr/)は、社長の他に3名の社員が来場者の対応に追われていた。同社が扱っている製品はヒーターコア、燃料冷却器、格子構造ヒートシンクなどで、自動車や建設機械、産業機械などに使われるもの。’06年からの3年間、毎月2000台のヒーターコアを、上場しているある産業機械メーカーに納めており、’09年も続く予定だ。
 「当社のことを事前に調べられたようですが、3年前、ある産業機械メーカーの調達担当の部長から連絡がありました。何度も行き来し、当社の工場も見ていただいて、取引きすることが決まったのです。この3年間、開発も一緒にやってきました」と語る朱元鐸社長(代表理事)は日本語が堪能だ。その企業との取引きを皮切りに、部品メーカー数社へも納品するようになったのだという。
 初めての海外出展のゆえか、朱社長は精力的であった。来場者に対応する一方で、出展している他の企業の情報も集めていた。特に中国からの出展ブースには何度も足を運んでいたようだ。またNEARの開催翌日は関東方面の企業に営業に出かけていた。
ヒートテックの朱社長(代表理事)も日本語が堪能で、「NEARでの展示の後は日本国内数カ所を営業にまわる」と意欲的。


インフラ整備の盛んなモンゴル

富山県モンゴル友好親善協会の長井さんは、3年前から日本とモンゴルの交流のサポートをするようになり、企業からの相談にも応じている。
  今回の展示会では、モンゴル関係の企業(団体)3社も出展していた。そのうちのひとつ、富山県モンゴル友好親善協会の長井弘仁さんに、モンゴル経済の様子、進出企業の状況などをうかがった(日本にはモンゴルとの友好関係促進を図るための団体が80以上あり、そのうちの4団体が、今年表彰された。富山県モンゴル友好親善協会も表彰を受けた一つ)。
 昨今のモンゴルの経済状況を一言でまとめると「昭和30年代の日本と同じ」ではないかと長井さんはいう。独立して18年経ち、この間、総選挙を5回経験して民主化は徐々に進んできた。首都ウランバートルではインフラの整備が進み、ビル建設、上・下水道の整備、道路建設で沸き返り、韓国や中国の企業がその多くを受注しているようだ。また、日本が支援する国際空港の建設も’09年から工事が始まり、’15年の開港を目指しているというから、長期にわたる活発な経済成長が見込まれている。
 日本からモンゴルに進出している企業は約300社。モンゴル産業通商省では日本からのさらなる投資を呼びかけ、今年の10月、日本モンゴル貿易投資官民合同会議をウランバートルで開催し、経済産業省からも担当官が派遣された。
 「特に注目すべきは地下資源・鉱物資源ではないか」と長井さんは付言した。モンゴル産業通商省が合同会議用に作成した資料を見ると、石油探査投資額が’05年約2940万ドル、’06年約1億2680万ドル、’07年約2億3840万ドルと急増している。またモリブデン、錫、タングステン、マンガン、レアアースなどのレアメタルの他に、金、銀などが豊富なことも確認されている。これらに対する投資額を比較すると、日本は中国の0.37%、カナダの1.0%、韓国の15.1%と、モンゴルでのビジネス展開をしている国の中では最も少ないようだ。
 モンゴルの情報が少ないのが原因だろうが、「その橋渡しをするのが私たち友好親善協会の役割」と連絡先を教えてくれた。モンゴルへの投資、モンゴル企業との通商などに関心のある方は下記まで。
 在日モンゴル大使館(03-3469-2088) http://embmong.com/main_jap.php
 富山県モンゴル友好親善協会・長井(090-3294-7650)


100万個のうち2個の不良品も許されない
それが製品の信頼につながっている

 最後にもう1社、通路を歩いていて気になっていた天津市和銘精密機械有限公司(天津市)を訪ねた(貿易促進委員会天津市分会のHP http://www.ccpit-tj.org/)。ブースの壁には日本語で書かれたパネルを掲示し、また赤いビロードの上に自社製品を並べている。大げさにいうと貴金属・アクセサリーの即売をしているようで、出展企業の大半が母国語あるいは英文のパネルを掲示し、白いテーブルクロスの上に製品を置いているのと比べると、格段に目立っていた。
 「そんなに目を引きましたか」
 と顔をほころばせたのは、この展示アイデアを出した会長(董事長)の胡志堅さんである。初めての海外での産業展出展で、しかも持ち込める荷物が限られている中で、何とか注目されたいと知恵を働かせた結果に満足しているようだ。
 ビロードの上で輝いていたのは、工作機械や自動車、電子・電気機器などで使われる精密部品。商社を通じて、’03年から自動車メーカーをはじめ産業機械メーカーなど納め、製品の9割は日本に輸出している。
 「ある自動車メーカーには、月に100万個の部品を納めています。100万個の中に2つの不良品があったら取引き停止。だから本当に気を使っています」
 胡会長は日本の品質評価の厳しさを指摘する一方で、「日本の自動車の性能がいいのは、小さな部品ひとつの品質管理も徹底されているからで、そこから製品の信頼も生まれている」と続け、「品質管理には自信があるので、他のメーカーの方にも当社の製品を使っていただきたい」と結んだ。
天津市和銘精密機械の会長(董事長)・胡さん(左)は、なかなかのアイデアマン。特にこのビロードの上に置いた製品は、来場者の目を引いていた。



 「NEAR2008inとやま」では、会場横のセミナーコーナーで、出展各地域の投資環境説明会が開催された他、個別企業の貿易相談も行われた。具体的な商談、契約はこれからで、取引き開始にはしばらくの時間が必要であるが、成果については、機会を改めてご案内します。

作成日2008.12.26
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