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第4回とやま産学官交流会  

特集 第4回とやま産学官交流会
産学官連携の発展と地域活性化
~富山の未来をひらく~

富山県商工労働部長/藤木 俊光
国立大学法人富山大学長/西頭 徳三
富山県立大学長/中島 恭一
富山県経済同友会代表幹事/中尾 哲雄
日本政策投資銀行富山事務所長/藤田 寛

藤田 今日のパネルディスカッションは、産学官連携を通して「とやまの未来をひらく」という観点で行います。まず、官の立場である富山県は、どのような視点を持ち、また施策を実施しているのでしょうか。

藤木 本県産業の特徴は、第二次産業のウェートが非常に高い。統計では、総生産の36.8%が第二次産業。日本全体では約26%ですから、富山は10ポイント高い。中でも富山の場合は基礎素材や部品が高く、最終製品メーカーに納入する立場にあり、外国との競争の中でプレッシャーを受けています。そこで産学官が連携して、最先端の分野にチャレンジし、同じ素材でも、より高いアプリケーションを追求することが、必要になっています。 また本県の特色として人材が挙げられます。県内に進出している企業に話をうかがうと、勤勉で優秀な人材が 確保できる、といわれます。これは、わが県にとっては貴重な資源です。この人材を今後どうつくり、高めていくのか…。
こうしたチャンスがあるのは、大学です。富山県を代表するものと人、この2つにおいて産学連携は欠かせません。そこで現に何をやっているか。産学官連携は欠かせません。そこで現になにをやっているか。産学官連携の一例に、とやま医薬バイオクラスターがあります。薬の富山の特色を背景にして、バイオ分野の技術を結集して、世界に先駆けた診断・治療システムを開発するという取り組みで、いい結果が得られつつあります。県立大学については、後ほど中島学長にお願いしますが、県立大学を拠点とした産学官連携も積極的に展開しています。また新富山大学とは、ll月1日に包括的な連携協定を締結しました。技術交流を中心とした産業振興、学校教育や生涯学習などの文化面、また医療関係でご協力いただきたい。重要な技術と人材を磨いていくためにも、産学官連携を大いに進めたいと考えています。

日本政策投資銀行富山事務所長/藤田 寛
藤田 学の代表として、新富山大学の西頭学長、県立大学の中島学長に参加いただいています。これまでの取り組みや抱負をお願いします。

西頭 新しい富山大学は、人文、人間発達科学、経済、芸術文化、理、工、医、薬の8学部を擁しています。 これに加えて伝統的な医・薬学を研究する和漢医薬学総合研究所、そして附属病院。10部局、研究者約1000名となりました。単に3つの大学が統合して3倍になったというのではなく、それ以上の効果を発揮すると思っています。今日のテーマとの関係ですが、私自身の反省を含めて申し上げますと、これまでの国立大学はあまり地域を見てこなかった。また先生方は自分の研究に関心を向けて、教育をあまり重視してきませんでした。社会や経済の変化で、地域社会全体が疲弊しつつあります。新しい富山大学は1000名の研究者を抱えていますので、これを最大限に活用して地域社会に貢献したい。これまでの地域貢献は理系の学部が多く、文系の学部の出番が少なかったという点があります。これからは大学全体を巻き込んで、具体的に行動したい。

中島 県立大学は小規模校ですが、その特性を活かして少人数による対話型教育を導入してきました。来年からはそれをさらに進め、4年を通じた少人数ゼミを実施していきます。また企業から募集したテーマによる卒業研究を昨年から実施し、実学志向の教育に努めています。
本学発足時の目標の中に、富山県の発展を目指した県民の大学というのがありますので、県が進めている情報通信、環境、バイオ、ものづくり、などの重点課題を高等教育機関の立場から支えていく役割を果たしていかなければならないと思っています。その意味では地域貢献活動も基本的な使命であると位置づけて、産学連携事業、生涯学習事業等に取り組んできました。昨年4月には、地域連携の総合的な窓口として地域連携センターを開設。それに合わせて県内産業界による支援組織として、県立大学研究協力会を発足して、ここにおられる中尾さんに会長をお願いしました。県内企業を中心に200社を越える会員がいますが、会員企業と連携を進めるためのリエゾンサポーターを配置し、本学のコーディネーターと協力しながら大学と企業のマッチングを進めています。
産学交流を進める活動では、技術相談や公開セミナー、研究室公開、企業に出向いて行うお出かけ研究室、特定のテーマで行うテーマ別研究会、企業の技術者を対象としたイブニングセミナーなども開催しています。昨年スタートした、企業から募集したテーマによる卒業研究は好評で、本年は69件の応募があり、44テーマの研究が実施されています。
従来、企業からは「大学の敷居が高い」という指摘を受けてきましたが、こうした状況は解消されました 。県立大学には敷居はありません。本学を大いに活用していただきたいと思います。


違う者がぶつかってイノベーションが生まれる

富山県経済同友会代表幹事/中尾 哲雄
藤田 中尾代表幹事は、富山大学のOBでもあります。経済人として、どのように大学と関わってこられたかをご紹介いただきたい。
中尾 昔からどこでも、経済界は高等教育機関の整備をお願いして、大学誘致の陳情や提言をしてきました。富山県立大学もその設立を早くから働きかけてきました。また富山大学も戦後の混乱期に、多くの先輩たちが学部を独立させ、経済界も新生大学にするためのお手伝いをしました。しかし懸命に提言する割には、できた後はあまり関係のない顔をする傾向がある。できた大学と関わって、誇り、愛情、愛着を持つことが大事だと思います。
 県立大学の、卒業研究のテーマ募集は、大変にいいと思います。企業が抱える技術的な問題をテーマとして出し、教授や学生が相談して研究を進め、それに答えていくことは画期的です。特許に結びつきそうな研究もあるようで、ますます期待は大きくなるでしょう。富山大学では、私は経営の委員として関わらせていただき、そしてITに関する講座も持たせていただいています。2つの大学には、経済界の皆さんと力を合わせて、できる限りの支援をしたいと思います。

藤田 産学連携はビジネスの問題で語られがちですが、地域のプレーヤーという観点からすると、大学にはそれ以上の価値があるのではないでしょうか。

藤木 新しいものを生み出すイノベーションはどこから生まれるかというと、異質なものの交わりからです。同質の人たちが集まって話をしていても、イノベーションは生まれません。大学の先生方は、ビジネスマンとは違うものの見方をされる方です。産学連携を例にすると、企業側は「なかなか先生に話しが通じない」という。また大学の先生は「ビジネスマンと話しても、話が合わない」と。でも、話が合わないからこそ交流に意味があり、話が合うのであれば交流する必要はありません。異質なものの見方をする者同士がぶつかる中でイノベーションが生まれますから、産学連携に限らず地域活動にも、大学の先生、学生の皆さんには異質な町の空間に出て、ビジネスあるいは地域活動にもっと触れていただきたい。反対に地元の皆さん、企業の皆さんは大学にもっと足を踏み込んでほしい。違う者同士がぶつかり合うことで新しいことができることを認識すべきだと思います。

西頭 藤木部長のご指摘、これは正に交流のポイントを突いています。この観点で富山大学を振り返ってみると、本学には地域共同研究センターがあります。設置申請されたのは昭和62年。全国で初めてで、ここを窓口に企業との共同研究をしてきました。
私は地域交流とか産学官交流には、いくつかのステージがあるのではないかと思います。バブルが弾ける前までは、主に大企業と理系の学部の先生方との交流がメインでした。これがファーストステップ。ところが経済や社会の状況が変わって、90年代からは前と同じではいけないと気づいたのではないでしょうか。新富山大学はこれから大いに地域交流を進めますが、私は2つの面で分けて考えています。ひとつは地域共同研究センターが行ってきた技術移転などをさらに拡大する。もうひとつは地域社会の将来のあり方を提言できるようになりたい。これを私は富山大学21世紀研究プロジェクトといっていますが、富山大学が持っている教育研究資源を最大限に活用して、個別の地域社会に提言していくことを並行して取り組みたい。そうしないと真の地域貢献にはならないと思います。これまでは一部の教官が個別対応で連携してきましたが、第2ステップに入った段階では、組織対組織の取り組みが重要です。


技術経営教育の充実を図りたい

国立大学法人富山大学長/西頭 徳三
藤田 富山大学には芸術文化学部という全国的にもユニークな学部ができました。これについては西頭学長どうお考えですか。

西頭 これは旧高岡短大で、統合を機に4年制の学部に生まれ変わりました。芸術系の大学・学部は国立では少なく、総合大学の富山大学に芸術文化学部があるのは貴重で、学部構成がユニークなものになりました。この芸術文化学部は、芸術家養成のみを目的とするものではありません。地域社会に出て歴史や文化の掘り起こし、博物館や美術館の活性化などを担う人材も育てたいと思います。また、すでにフィンランドとの交流がありますが、新学部長は世界に展開する熱意を持っています。

藤田 中島学長、県立大学の今後の新しい取り組みは何でしょうか。

中島 来年4月、工学部の学科の大幅な改編を行います。現在、工学部2学科ですが、4学科に改める準備を進めており、環境に優しい生産としてバイオ技術を活かそうと、生物工学科を設置予定です。また、機械と電子情報を融合した新しいタイプの学科、すなわち知能デザイン工学科を新たにつくります。また本学には短期大学部があります。その環境システム工学科は、水環境に関連する教育研究に非常に強い学科で、文部科学省の特色GPに今年度採択されました。水環境に恵まれた富山県の地域特性を活かした環境教育、環境産業の育成に貢献していきたいと思います。来年の4月からは社会人を対象にした、本学独自の論文準修士制度をつくります。さらには経営感覚を磨くためにMOT(技術経営)教育の充実を図り、大学院の教養科目のひとつにしたい、と考えています。


大学の先生方、地域社会の中で顔を見せて!

富山県立大学長/中島 恭一
中尾 異質なものが交わるようになったのは最近のことで、富山大学や県立大学の今後に期待したい。今や、ひとつの企業が単独で何かを研究する時代ではなく、各々の研究所が産学連携の中で役割を持って研究していく時代に変わりました。あるいは他の企業との共同研究でやっていく時代になりました。善し悪しは別として、中国のある大学ではソフトウエア学部がそのまま会社になって、学部長が社長になっています。産学連携というより、産学が融合しています。
産学連携の話になると、技術とか工業の話ばかりになる。私は1965年から2000年までの35年間、地域学会に所属していましたが、ひとつのテーマを学際的にやっていました。学部横断的です。工学部や医学部など単一の学部が企業と連携する他に、学部同士が連携して多角的な研究が必要ではないかと思います。
新しい芽を生み出して、企業をつくっていくというのは非常に大きな目的です。そのためには富山大学、富山県立大学含めて大学の周辺、あるいは富山の産業界、あるいは県民の皆さん、官の皆さんが、さまざまの分野で研究している、勉強しているというムードが醸成されなくてはならないでしょう。そのムードの中で、先ほどから論じられている問題はうまく好転していくのではないか。ですから、他の学部の先生方もぜひ顔を見せていただきたい。教授の皆さんが、地域社会の中で顔を見せられることで、大学への愛着につながると思います。

西頭 中尾さんは今ムードといわれ、いい言葉だと聞いていました。大学の周辺には地域社会と解け合って研究するムードが欠けているというご指摘です。先ほど私は産学官連携も第2のステージに入ったと申し上げましたが、そこでは大学が地域社会に提言していく。提言には文系の先生方も社会科学系の先生方も入るという意味です。提案型のプロジェクトで地域社会の中に出ていきますと、市町村の方、あるいは地元の皆さんや高校生たちと触れ合うでしょう。先生方との触れ合いの中で、富山大学と地元のムードを醸し出したい。学生の教育には学内だけでは限界があります。私たち自身が地域社会に出ていって、そこを教育の場にすることが非常に重要です。これを私は教育の社会化、キャンパスの社会化といっていますが、これをぜひ実現したい。

西頭 これは旧高岡短大で、統合を機に4年制の学部に生まれ変わりました。芸術系の大学・学部は国立では少なく、総合大学の富山大学に芸術文化学部があるのは貴重で、学部構成がユニークなものになりました。この芸術文化学部は、芸術家養成のみを目的とするものではありません。地域社会に出て歴史や文化の掘り起こし、博物館や美術館の活性化などを担う人材も育てたいと思います。また、すでにフィンランドとの交流がありますが、新学部長は世界に展開する熱意を持っています。

藤田 中島学長、県立大学の今後の新しい取り組みは何でしょうか。

中島 来年4月、工学部の学科の大幅な改編を行います。現在、工学部2学科ですが、4学科に改める準備を進めており、環境に優しい生産としてバイオ技術を活かそうと、生物工学科を設置予定です。また、機械と電子情報を融合した新しいタイプの学科、すなわち知能デザイン工学科を新たにつくります。また本学には短期大学部があります。その環境システム工学科は、水環境に関連する教育研究に非常に強い学科で、文部科学省の特色GPに今年度採択されました。水環境に恵まれた富山県の地域特性を活かした環境教育、環境産業の育成に貢献していきたいと思います。来年の4月からは社会人を対象にした、本学独自の論文準修士制度をつくります。さらには経営感覚を磨くためにMOT(技術経営)教育の充実を図り、大学院の教養科目のひとつにしたい、と考えています。


企業の資源を大学でも活用したい

富山県商工労働部長/藤木 俊光
藤田 中島学長、県立大学は県や経済界とどのように取り組んでいかれるのか、あるいは何を期待するのでしょうか。

中島 本学の活動は県民の皆さんに説明責任を負っていますので、地域社会や地域住民に理解され、支持されるという努力が必要です。その意味では大学と県民、あるいは産業界との間に太いパイプ、あるいは多様なチャンネルを築かなければなりません。その太いパイプづくりに、県にはこれまで以上に力を貸していただきたいと思っています。
また経済界へのお願いですが、産学連携は両方にメリットが感じられて初めて有効に機能すると思います。企業の方々には、大学の知的資源を有効に活用していただくことは大いにやっていただきたい。その一方で、産業界が持つ技術力、独自に持っておられる教育力を大学で活用させていただきたいと思います。大学にとっても、企業が持っているニーズや価値観は刺激になり、新しい研究の動機になります。

藤田 最後に藤木部長、県としての産学連携の期待をお願いします。

藤木 本県産業の特徴などを考えた時、産学連携は他の県、他の地域に増して重要な意味を持っています。今日、両学長の話をうかがっていて、大学が町に出る、地域社会に対して働きかける、というような決意が伝わってきました。県としてはこれまで以上に産学連携の出会いの場をつくる、あるいはコーディネーター機能を果たしたいと思います。その上で強いて申し上げると、大学には町に出てきてくださいということの他に、知の拠点として、常に世界最高峰を狙い続けてください、とお願いしたいと思います。また中尾代表幹事の話しにありましたが、愛着を感じて、われわれが大学を育てる、そのためには何ができるのか、という視点も大切でしょう。大学への要望はありますが、その一方でわれわれは大学に対して何ができるのかを提案しなければいけないと思います。

藤田 今日は刺激的な話が多くありました。会場には多くの産業界の方々がおいでになると思いますが、富山大学の地域共同研究センターや県立大学の地域連携センターを積極的に活用いただけたらと思います。また県の関連機関である富山県新世紀産業機構では、企業と大学の橋渡しなどをしていますので利用されることをお勧めして、パネルディスカッションを終了します。(文責・編集部)


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