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第29回 アジャンタSpice  
第29回 アジャンタSpice
カリースパイスメーカー誕生に向けた
商品開発と販促の華麗な物語

「地カリーという言葉があるかどうかわかりませんが、富山でオリジナルなカリースパイスをつくっていきたい」と代表の石崎和生さんは、あくまでもメーカーを目指す。
 「好きこそものの上手なれ」
 とはよく言ったものだ。カレー好きが高じて、この道に入って21年。代表の石崎和生さんは、見た目もインド人に近くなって、特に富大生にはありがたい存在だ。
 大学(五福キャンパス)前のカレーショップでは、テイクアウトの「アジャンタチキンカリー」「アジャンタポークカリー」などが1人前250円、ライス付きでイートインの場合は370円。この金額でオリジナルカリーを提供して、学生やビジネスマンの胃袋を満たしてきたわけだ。
 ただ、ご本人はカレーショップのオーナーというよりは、平たくいうとカレー粉のメーカーを目指して、今も新しいスパイスの配合を試みている御仁。今回はそんな石崎さんのカリー開発物語で、当センターの支援がスパイスとなって、事業を引き立てた例を紹介しよう。

次々とマッチングして新商品を

 そもそもの始まりは、当機構の「とやまベンチャーマッチングフェア」(平成22年2月)に参加したことであった。取引先の銀行にフェアのことを紹介された石崎さんは、あるビジネスプラン発表者に相談したいことがあって、当日、「カレー粉の個包装」について持ちかけた。当時アジャンタでは、新しいカリースパイスの開発を目指し、個包装してスーパー等に卸すことを企画。従来品は社内で包装して出荷していたが、新しいカリースパイスでは積極的に売ってみようと、量産を計画したわけだ。
 ところが話を聞くと、個包装の最低ロットは1万袋。今まで、月に何十袋単位で食品卸に納品してきた経験からいうと、いきなり1万袋はきつかった。そこで個包装の話は、「販売のメドが立った時点でもう一度」ということで一端は中断に。ただここで石崎さんは、フェア来場時に当機構に登録する専門家(経営コンサルタント)と出会い、国の中小企業応援センター事業を活用して、同氏のアドバイスを受けることにした。(平成22年4月)
 「まず相談したのは、ある流通グループから依頼されていた、高齢者向けカリースパイスの開発でした。高齢者はカレーが好きだけど、一般のルーでは、むせたり、油が強くて胸焼けするので、これを解決する方策とか、協力してくれる企業はないだろうかと尋ねたのです」(石崎さん)
 するとコンサルタント氏は、「富山市内のある食品メーカーが、嚥下障害を持つ方に向けてつくっている、とろみを足す食材を使ってみてはどうか」と提案。その食品メーカーの社長との面談をセットしてくれた。また、「県内のある医薬品メーカーがつくる、滋養強壮の健康補助食品をカレーに加えたら、高齢者の健康増進になっていいのではないか」と勧め、その企業とのマッチングもセットして、商談の場に立ち会った。
 「あれよあれよ、という間に新しいカリースパイスができた、という感じです」と石崎さんは振り返るが、流通グループが運営する高齢者施設でこのカリースパイスを使ったカレーを提供すると、むせずに飲み込め、お年寄りの間で極めて好評で定期的に納品するようになったという。

「大学前」の電停の前にあるテイクアウトのカリーショップと、イートインショップ2階にあるオリジナルカリースパイス製造の場。この4月から、上海にできるカレーショップに、1日1000食分のオリジナルカレーを提供することに。


優秀支援事例の最終選考まで残ったが…

石崎さん御自慢のキーマカリー(上)とMALAYSIANココナッツミルクチキンカリー(下)。ワンコイン(500円)でお釣が来るって、信じられます?
 ここまでの話で推察できるように、同社にとっては新商品(新しいカリースパイス)の開発は問題なくできるが、課題はその商品を売ることだ。それは、代表の石崎さんも重々理解しているところだ。しかし同社の専従は石崎さん当人のみ。パート・アルバイトの従業員が20人いるといっても、主な業務はショップの運営を手伝うことだ。これでは、せっかく新商品をつくっても、また「小なりといえどもカリースパイスの1メーカーを目指す」といっても、絵に描いた餅に終わってしまう。
 石崎さんは再び、中小企業応援センターからの専門家(中小企業診断士)派遣を要請し、事業計画の策定を試みた。(平成22年9月)
 「専門家の方には、まず原価の算出と労務費についての考え方を指導していただき、その上で商品の価格をどのように設定していくかアドバイスいただきました。そしてそれらを踏まえた上で、最初の1年の販売目標、2年目の販売目標…と中長期の目標を定め、その目標をクリアするためには、どのような販促活動をしていくか、など細かい点も教えていただきました。個人経営で今まであまり詳しく考えたこともなかったのですが、先が見えてきたようで…」と石崎さんは明るい。
 従来アジャンタでは、食品卸4社にオリジナルカリーを卸してきた。といっても量として多くはなく、今回の専門家派遣を通して、石崎さんはそれを10倍程度に増やすべく歩み始めたのである。
 商品開発にあたっての支援、そして販促・経営健全化のアドバイス。ともに中小企業応援センターの支援案件で、同社の事例は全国優秀支援事例にノミネートされたものの、惜しくも表彰にまでは至らなかった。商品開発については高い評価を得たが、年度内の販売実績が少し足りなかった。表彰は、次年度以降に、お客様からいただくのではないか。

 所在地/富山市五福6区1922-5
 代表者/石崎 和生
 資本金/(個人営業)
 従業員/20名(パート・アルバイト)
 事 業/オリジナルカリースパイスの開発・製造・販売
 TEL/076-405-2567
 FAX/076-482-4884
 URL/ http://www.welovespice.com/

作成日2011.02.24
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