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第26回 「株式会社リハ.システムウェイ」  
第26回 株式会社リハ.システムウェイ
富山で初めての訪問リハビリを事業化
支援を受けサービスの充実を図ってきた

リハ.システムウェイの事業本部とスタッフの皆さん。大きな病院の院長のご子息が、森さんの事業に賛同し、使わなくなった自宅を事務所用に貸してくれたそうだ。
 「(財)富山県新世紀産業機構では、創業者を支援しています。創業・ベンチャー挑戦応援事業では…」
 地元の新聞に載った小さな記事。「ベタ記事」といって、普通なら見逃しそうな記事といっていいだろう。
 その記事を、自宅を拠点に「地域リハビリとやま」を構え(平成19年7月)、リハビリサービスを始めた森サチ子さんは、翌8月に目にした。当機構のことも、「創業・ベンチャー挑戦応援事業」のことも初めて知った。ホームページを検索して調べると、「新世紀産業機構は産業支援のための公的な機関であり、さまざまな支援施策があることがわかった」という。
 さっそく「創業・ベンチャー挑戦応援事業」のコーナーに入って驚いた。申込締切が8月20日とあり、あと2週間ほどに迫っていたのである。
 創業間もない森さんにとっては、この新聞記事は福音であった。「何か支援してくれそうだ…」と期待して、ホームページから申請書をダウンロードし、必要事項を記入。翌日、当機構の中小企業支援センターを訪ねて提出したのであった。

教員を辞めて創業

 平成7年に理学療法士の資格をとった森さん。創業前の8年間は、医療福祉専門学校の教員として小児リハビリの教育をし、また地域に出向いて高齢者向けの転倒予防教室などの講師も務めていた。地域での健康体操教室では参加者が多く、家庭に要介護者を持つ人からは、足腰を衰えさせない方法や体の移動の仕方、着替えをスムーズに行う方法など、質問攻めに合うこともしばしば。「訪問リハビリを求めている人は多いのでは…」と起業の意欲が芽生え、それが徐々に成長していったのである。
 ところが理学療法士の資格を生かして働いている人のほとんどは病院などの施設で勤務。森さんが創業しようとした当時、全国で4万3000人あまりの有資格者がいたが、自営・開業している理学療法士は全国でも88人、富山ではまだ1人しかいなかった。
 そういう中での創業だ。しかも教員という安定的な立場を、半ば捨てての…。「背中を押してくれる同志がいたからできた」と森さんは振り返るが、とにかく第一歩を踏み出したのである。
訪問リハビリに取り組む森さんの様子を伝える新聞記事(北日本新聞/平成20年12月29日) 本県で最初の株式会社・開業の理学療法士となった森サチ子さん。


マッチングフェア参加で転機が…

第3回とやまベンチャーマッチングフェアでの展示の様子。この展示の前に、“転機”のきっかけとなるビジネスプランを発表。
  幸い「創業・ベンチャー挑戦応援事業」(平成19年度)に採択され、助成が決定。パソコン等の備品の充実にあてた。そして「理学療法士、ご入用ではありませんか?」と機会あるごとにPRし、また友人・知人らが口コミで広めてくれた甲斐もあって、申し込みは徐々に増えてきた。
 その年の暮のことだ。たまたま当機構に立ち寄った森さんは、翌20年2月開催の「とやまベンチャーマッチングフェア」で、プレゼンテーションする企業を募集するチラシがラックにあるのを発見。中小企業支援センターで相談して、「ものは試しに…」とさっそく参加を申し込んだ。
 このプレゼンテーションは転機をもたらした。フェアの数日後、「お手伝いできることがあれば…」とある銀行の支店長が訪ねてきたのだ。支店長は訪問リハビリの可能性についてしばし語り、公的な支援制度全般についてレクチャーしていったのである。
 これはまさに渡りに舟であった。マッチングフェアでは、訪問リハビリについてのみプレゼンテーションした森さんであったが、いずれは法人化し、訪問看護の事業を始めることも企画していたのだ。看護ステーションを構え、また法令上必要な人数の看護師を雇用するとなると、初期投資は相当な額になる。「渡りに舟」といったのは、その時期がきたら融資の相談をしたいという思いをもったからである。

実際の訪問リハビリの様子。


起業未来塾で目覚めた

石井知事や講師陣(県内企業の社長・会長)を前に、訪問リハビリ・訪問看護のビジネスプランを発表する(平成21年12月)。森さんのプランは、第5期とやま起業未来塾で優秀賞になった。
 その“舟に乗った”のは、1年後のこと。21年2月に法人化して、4月には健康保険や介護保険の制度が利用できる事業所として訪問看護ステーション「フィット」が認可された。1人からスタッフを6人(常勤4人、パート2人)に増員。初期の運転資金を支店長に相談すると、「創業時、低利で融資する制度がある」と県の低利融資制度を紹介され、銀行を通じて申請すると、これも採択されたのである。
 森さんはまた、21年4月に「とやま起業未来塾」(第5期)への入塾を希望した。自営業としては、1年半以上が経過していたが、法人化し、生まれたばかりの社長。講師陣の指導を受けながら「自らの事業プランを練り直したい」という思いから応募したのである。
 半年間の講義を経て実感したのは、「いつまでもプレーヤでいてはいけない。経営者として10年先をみて、そこから1年ごとの計画を立てなければいけない」ということだという。マッチングフェアの時、「いずれは県東部・西部に1カ所ずつ支店をつくりたい」と抱負を語っていたが、未来塾を通して「単に事業所を増やすのではなく、デイサービス、ショートステイなどサービスの充実を図る方向で行きたい」と軌道を修正。そのビジネスプランは第5期の優秀賞となり、修了式では塾生を代表して講師陣にお礼を述べた。
 その中で、「藁にもすがる思い」の時があったことを縷々(るる)明かされていたが、この取材では「公的な支援制度で何度も引き上げられた」事例を語ってくれたのであった。


[企業の概要]
 所在地/富山市内幸町5-13
 代表者/森 サチ子
 資本金/300万円
 従業員/6名
 事 業/訪問看護(リハビリテーション)のサービス提供、地域・施設にてリハビリテーションのサービス提供
 TEL/076-471-5030  FAX/076-471-5066

作成日2010.02.05
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