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第25回 「シラホフーズ株式会社」  
第25回 シラホフーズ株式会社
白エビの殻の微粉末で新商品模索
粉末化も事業としての可能性が…

同社の主力商品の一部のほたるいかの沖漬けと白えびのむき身。業務用の他に写真のような小売りパックもある。
 荒井忠一社長は研究熱心だ。創業前の、サラリーマン時代から富山県食品研究所に通い、魚介類の加工や衛生管理について指導を仰いできた。
 その姿勢は、平成11年に同社を設立してからはもっと盛んに。食品研究所の他に、富山県立大学にも助言や技術指導を求めるようになり、生物工学が専門の教授からは、電解水を使っての魚介類の鮮度保持のノウハウを学んできた。
 また詳しいことは後述するが、同社は主力商品の白えびのむき身やほたるいかの沖漬けなどの製造・販売だけでは満足せず、富山ならではの海産物を生かし、ふりかけや調味料、さらにはうどん等の麺類、ケーキやパンなどの試作も開始。水産加工を本業とする同社が、製麺や製菓など他業種との連携も試みているという。
 このちょっと変わった取り組みは、国の地域資源活用プログラムの支援を受けて進行中。荒井社長はいったい何を狙っているのだろうか…。

いざ国へ

地元の製麺企業の協力のもとでできた、白えびの殻の微粉末が入ったうどん、そうめん(試作品)。えびの香がいっぱい。編集子は焼うどんも試してみたが、抜群にうまかった。配合量や麺の太さなどを調整して、もうすぐ商品化の予定。
 前述のように荒井社長は、水産加工品の製造・販売に長く携わってきた。ところが数年前から、「水産加工だけでは、将来的に見ても限度があるのではないか」と思い始めたのである。魚介類の種類によっては水揚げ量が安定せず、減る傾向のものが多い。そこで今の業務を生かして、新たな展開を模索。そしてたどり着いたのが、白えびの殻を粉末化して他の食品に生かすというアイデアであった。
 えびの殻の粉末化は、他でも取り組まれた経緯がある。ところが従来の方法では粒度が粗く、食感が悪い。粒度を細かくすることが可能であれば用途開発が進む…、と夢がふくらんできた荒井社長はさっそく新しい方法を探り始めた、そして1年の試行錯誤の結果、微粉末化に成功したのである。
 「粉末化の機械は既存のものですが、殻の乾燥の仕方や水分量を調節すると、微粉末にすることができたのです。試しに、粉末を混ぜてうどんを製麺すると、食感を損うことがありませんでした」(荒井社長)
 小麦粉の粒度は10~100μm(1μm=1/1000mm)。殻の粉末は「その半分程度」というから、食感を悪くすることはないだろう。
 粉末化のメドは立った。しかし荒井社長は、これをどのように利用し、どのように販売していったらいいか。夢をどのようにして現実化していけばいいか見当がつかない。頭を抱え込んで、それこそエビのように丸くなる日々が続いた。
 「何かヒントはないか」と探し歩いていた時(平成19年11月)、知人が国の機関である中部経済産業局 北陸支局を紹介してくれた。さっそく電話で、白えびの殻の粉末化とその商品展開の可能性を語ると、「荒井さん、その話もう少し詳しく話してくれないかな…」と誘われたのである。


「このトライで、ビジネスチャンスをいただいた」

こちらも商品化が予定されている「ふりかけ」。左から、白えび、ほたるいか、黒づくり、ずわいがに、ぶり。微粉末にした各食材を用いている。(パッケージは仮)
「地域資源活用プログラムで、当初予期しなかったビジネス展開も見えてきた」と語る荒井忠一社長。
 食品研究所や県立大学で指導を受けた経験から、国に対していわゆる“敷居”は感じなかった。資料をそろえてオフィスに出向くと、(独)中小企業基盤整備機構 北陸支部(中小機構)、富山県 経営支援課、そして当機構 中小企業支援センターの担当者も加わって待っていたのである。
 「6、7人の方々がいて、何事が始まるのかと驚きましたが、必死にプレゼンテーションしました。すると皆さん関心を示してくださり、『地域資源活用プログラムに応募したらいいのでは』と提案されたのです」
 地域資源活用プログラム は、地域で眠っている宝(産地の技術、農林水産物、観光資源)を活用して、新商品や新サービスの開発、販売に取り組む事業計画を有する中小企業を国が認定することで、補助金や低利融資などの支援策を受けられるもの。事業概要を聞いた荒井社長は申請に合意し、支援関係者の助言を受けながら書類を整えて、平成20年度の第1回目の認定審査に応募したのであった。また当機構では、同社の事業化プランを事業評価支援検討委員会で同社への支援を採択するとともに、中小機構と連携をとりながら、認定取得支援に取り組んだ。
 その甲斐あって、7月に入って見事国の認定を受けることができた。その後うどん等の麺類に入れての試作にますます拍車がかかり、また粉末を持ってさまざまな食品会社に提案。興味を持った会社が、試作品をつくろうと動き出した。一方ある食品メーカーからは、こんぶの端材を粉末化できなかと打診があり、さっそく試してみると白エビの殻同様微粉末にすることができ、他の食材の粉末化というビジネスにも可能性を見い出したのである。
 「粉末化は、流通に出せない規格外のものでいい。そう考えると、今回のトライでたくさんのビジネスチャンスをいただきました」と荒井社長は満足そうに微笑んだ。
 白えびの殻の微粉末を使用して、近く商品化されるものには、うどん等の麺類、ふりかけ、調味料などが予定されているが、5年間の支援が終わる頃にはいくつの商品が生まれているか楽しみだ。


[企業の概要]
 所在地/富山市水橋中村468-1
 代表者/荒井 忠一
 資本金/1,150万円
 従業員/25名
 事 業/水産加工品製造・販売、嚥下補助食品の製造・販売、魚介類の粉末とその応用食品製造・販売
 TEL/076-479-9311  FAX/076-479-7709
 URL/http://www.siraho.jp/

作成日2009.11.24
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