第20回 日本オリゴ株式会社 |
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業態転換して違った分野に進出するも…
恩師らの支援も受け、生産方法を開発 |
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生協経由で販売されている同社のフラクトオリゴ糖。700g入り、1本819円(税込)。県内で最初にトクホの許可を受けた商品。 |
「トクホ」ってご存じだろうか。
平成3(1991)年に厚生省(当時)によって制度化された、特定保健用食品の略称。体の生理機能などに影響を与える成分を含んでいて、特定の保健の効果が科学的に証明され、所管大臣(現在は厚生労働省)の許可を受けた食品のことをいう。審査を受けるには科学的なデータが必要とされ、有効性や安全性も評価されるため、その商品には健康に関連した「保健の用途」を表示することができる。
そのトクホの許可を、五箇山に至る一歩手前(旧・城端町)にある企業・日本オリゴが、平成7(1995)年に受けていた。同年までに許可された品目数は58品目。制度開始の創生期で勉強会から参加できたことも幸いし、大手食品メーカー・医薬品メーカーに混じって、表示許可を得ることができた。地元の企業が健闘していたのには、驚かされるばかりだ(品目数は(財)日本健康・栄養食品協会の資料より)。 |
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繊維製品をつくっていたが…… |
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同社のホームページに紹介されているフラクトオリゴ糖が使われた料理やおやつの一例。レシピも掲載されていますので、ぜひお試しを。 |
「当社は、私の父(藤井孝一社長)が一大決心をして、繊維製品をつくる会社から業態転換してできました。オリゴ糖をつくる技術を持った方に九州からきていただき、昭和62年から生産販売を始めたのです」
取材に応じていただいた藤井紀人さん(同社開発兼営業担当)が、中学生の時のことだ。
販売ルートのない中での営業は大変だった。一定量をつくったら、手分けしてみんなで売りに行く。食品を扱う問屋やスーパーへの飛び込み営業の毎日。繊維業を営んでいた頃に付き合いのあった問屋が、アドバイスしてくれたこともあったという。
大学をはじめメーカーが、オリゴ糖の整腸作用に関する研究成果を発表していくなか、国の健康増進への取り組みでもあるトクホ制度の創設が追い風となり、また「機能性食品」という言葉が徐々に広まり、おなかの調子を整え、便秘を改善する効果のある同社のフラクトオリゴ糖も注目され始めた。まずは生協が取り扱い始めたのであった。
「生協は県や市単位で運営されていて、扱っていただくところが徐々に増えました。食品への関心が高いお客様が多いこともあり、安定的にご注文をいただけるようになりました。また生協の協同購入という注文数を把握しやすい長所も幸いして、経営も安定するようになったのです」(藤井さん)
今では、生協経由の売上げが、9割近くを占めるようになっているというが、商品が単一では売上げの安定性に欠けるため、今度はガラクトオリゴ糖(オリゴ糖の一種)の商品化に乗り出した。
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もう1本、柱になる商品を |
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工場内の様子。 |
ガラクトオリゴ糖は、乳糖(ラクトース)を原料につくられる。腸内のビフィズス菌を増やし、消化酵素では消化されないため便秘の改善が期待される糖。熱に対する耐性が高く、また酸性下でも安定的な特性を持っているため、どちらかというと加工食品向きといえるだろうか。
同社がその効率的な生産技術の開発を模索し始めたのは平成17年のこと。一方で、本格的な開発には資金や設備も必要なため、公的な支援制度はないかと探し始めてもいた。
社長は直接、当機構の中小企業支援センターに訪ねマネージャーと面談。また紀人さんは、母校・県立大学の地域連携センターで当機構を紹介された。最終的に窓口を1本に絞って、平成18(2006)年度の事業評価支援検討委員会に付議され支援の採択を受け、「中小企業自立化支援事業」により、研究開発助成金を受けたのである。
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さあ、販売はこれからだ! |
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07年2月の第2回とやまベンチャーマッチングフェアでの藤井紀人さんの発表・商談の様子。 |
県立大学の先生方もバックアップした。時あたかも工学部に生物工学科が開設された年(それ以前は大学院のみ)。ガラクトオリゴ糖を効率的に生産する技術を確立して、ビジネスに生かそうと試行錯誤する卒業生を応援しようと、生産方法、食品としての安全性試験など、親身に支援してくれた。
年度末にはそのメドがついて、「第2回とやまベンチャーマッチングフェア」(主催:富山県・当機構)に参加し、ビジネスプランの発表と商品の展示、そして来場者との商談の機会を持った。
「これからの課題は販売先の開拓。その手始めに商談の機会を持てたことはいい経験になりました」とフェアを思い起こす藤井紀人さんの目には、“いつの日にか親父を超えたい”という意欲が満ちていた。
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