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第13回 「中善工業株式会社」  

第13回 「中善工業株式会社」
天井クレーン、製造産業界をリードする


官か民か

社長の中川達也氏が富山県中小企業支援センターを訪ねたのは、平成15年の3月。春とはいえ、まだ冬の名残りが残る肌寒い日であった。設備資金を借りるためだ。当時の財務内容では大きな設備投資を行うほど自己資金に余裕がなかったのである。
  融資の要請を「民にするか官にするか…」推敲を重ねて、官を選択したのであった。
  当社の主力3品は、1.トレーラーフレーム 2.バスフレーム 3.天井クレーン(自社製品)である。これらはすべて「鉄」でできている。鉄を切断するための「レーザー切断機」は必須のアイテム。従来は、この設備がないため、鋼材の切断を仕入れや外注に頼っていたのである。
  これでは付加価値の向上は望めない。何としてもレーザー切断機を導入しなくてはならないと考えたのであえる。
  支援センターの担当者は、決算書を見ながら開口一番「業績に比べて、大きな投資だね…」と。だが中川社長は、臆することなく業績不振の理由、設備投資の必要性、業績改善の具体策等を、数字やグラフの入った資料を見せながら、粘り強く訴えたのである。
これが功を奏し、同年8月に約3,000万円、翌年にも約2,000万円の「設備貸与」を受けることができたのである。


3年あれば会社は変わる

 レーザー切断機の導入は、当社の財務体質を改善し、強固にする最初の一歩となった。4億円半ばで頭打ちの売上げが、一気に6億円に迫り、経常利益も比較にならないほど飛躍した。レーザー切断機の導入により切断工程を内製化し、高騰する鋼材を自己調達から有償支給に切り替えるなどタイムリーなアクション…。環境の変化に素早く対応する中川社長の経営手腕は鋭い。
  平成17年8月期は売上高7.5億円、経常利益6,000万円を達成した。「3年あれば会社は変わるのだ」。
  支援センターのサポートは、設備貸与の他にもうひとつ。レーザー切断機の導入に伴う工場レイアウトの改善、賃金体制の見直しなどをアドバイスする「専門家派遣」である。
  外部専門家の派遣は、当社にとって「新たな発想が生まれて、より良いレイアウトの構築」に結びついたようである。

 


会社は船、社長は船長

当社が歩んだ道のりは、山あり谷ありの連続であり、必ずしも平坦ではなかったようである。オイルショックの数年後、当社は先代社長の時代に「会社整理による再建」に遭遇したのである。中川社長が大学2年生の時であった。家屋敷のすべてを失い県営住宅に身を寄せていた頃、ある日、債権者の一人が尋ねて来て、「女の子が生まれたのでお雛さまを買ってやりたい…。なんとか支払って欲しい」と懇願。金額は30万円であった。だが、父である先代の社長は「払ってあげたいのだが…」と力なくつぶやいたのであった。
  この光景を、父の隣で見ていたのが現在の達也社長である。「こんなばかな仕打ちがあるものか…」と。
  爾来「会社は船、社長は船長」が中川社長の経営訓となっている。

 



ワーク形状の大きいものを

当社の強みは「量産品、単品を問わず」受注可能なところである。「付加価値の少ないワーク形状の大きいものを、精度高く、短納期、ローコストで」が合言葉だ。
  ワーク形状が大きいものは輸送コストも大きい。「海外で安く生産しても輸送費が嵩む。海外生産のメリットは少ない」。まさしく逆転の発想である。
  国内で作れて、国内で使われるもの。リピート需要が見込めるもの。こんな分野が当社の得意分野である。
  鉄の商売は荒い。「変化しろ、スピードを上げろ」と中川社長は日々社員にハッパをかける。

 



経営革新計画の承認取得に挑戦

現在は天井クレーン製造のノウハウを核に、一品オーダークレーンの多様化、および各種搬送機器の開発に取り組むとともに、トレーラーやバス等のフレームの量産化を手がけている。当社の取引先は特定企業に依存している部分が多く、また業界全体がジャストインタイム生産方式へ移行していることから、当社としてもフレキシブルな生産体制の構築が急務となっている。
  そこで工数管理、品質管理、図面管理、納期管理等を事務所管理にネットワークを連動させた「生産管理統合システム」を導入し、事務所にて情報のコントロールをするとともに、各現場、各工程で情報の共有化を図れるシステムを構築することとした。平成17年8月に上のテーマで経営革新計画に申請をし、翌9月には見事承認を取得することができた。
  今後はこのシステムの導入により、短納期対応はもちろんのこと、ロス率が低下しコスト低減が期待できる。加えて信頼度の高い製品供給体制を構築することにより、既存取引先企業からの外注先のさらなる選別・淘汰に生き残るとともに、新規取引先に対する積極的な営業展開のツールとしていきたいと社長は意気込んでいる。

[企業の概要]
所在地 富山市小黒2048
代表者 中川達也
資本金 1,000万円
従業員 30名
電 話 076-468-2529
FAX 076-468-2514
E-mail ntatu@quartz.ocn.ne.jp
URL http://www.chuzen.com/
事業概要 トレーラーフレーム、バスフレーム、
       天井クレーン(自社製品)等の製造


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