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第22回 世界をリードする環日本海経済交流
台湾経済訪問団派遣
富山-台湾の人・経済の交流を盛んに
 
  
訪問団の中の6社が、自社の商品を紹介しながら取引希望のプレゼンを行った。参加した台湾企業は34社、57名だった。
 「台湾の皆様こんにちは。4月からの富山-台北便の就航を、台湾との経済交流および観光交流の大きな弾みにするために、富山県から40名あまりでやってきました。一昨日に行われた「富山ものづくりセミナーin台北」および商談会では、台湾側から約35社約60名の方々のご参加を得て活発な商談も行われた様子で、たいへんうれしく思っています」
 これは石井隆一知事が、5月10日、台湾経済部の梁国新(りょう・こくしん)常務次長らを訪ねた際の挨拶のひとコマ。知事らは、挨拶にもあるとおり経済交流・観光交流をより盛んにするためにミッションを組んで訪問したのだが、今回の環日本海経済交流のレポートでは、台湾経済訪問団の現地での活動の概要を紹介しよう。

グッドタイミングの県訪問団

訪問に際して県では、東日本大震災に際しての、台湾からの多大なお見舞い・激励の言葉に謝意を示した。台湾側からは、台日産業連携架け橋プロジェクトについて詳しい紹介を受けた。
 5月7日夕刻に台湾入りした一行は、翌日以降、政府機関等への表敬訪問や現地の情報収集、そして商談会、台湾進出富山県企業・現地台湾企業との面談などのスケジュールを精力的にこなした。まず訪問したのは台湾経済部工業局。同経済部は日本でいうと経済産業省に当たる部署で、周能伝(しゅう・のうでん)副局長らが迎えてくれた。
 会談で周副局長からは、「経済部は台日産業連携架け橋プロジェクトに積極的に取り組んでおり、2011年の後半には4次にわたる訪日ミッションを派遣しました。また台北市内に台日産業連携推進オフィス(TJPO)を開設し、台日間のビジネス交流を推進しています。台湾と富山県が連携して、互恵関係のもと、ともに発展していきたい」と申し出があった。
 続いて訪問した台日産業技術合作促進会では、陳添枝(ちん・てんし)理事長より「訪問団の相互派遣を契機に、協力関係を活発化したい」と力強いコメントをいただき、中華経済研究院の梁啓源(りょう・けいげん)董事長からは「日本の企業と台湾の企業が連携・協力することは、台湾でのビジネスのみならず、アジアでのビジネス展開の拠点になり得る」とアドバイスいただいた。
石井知事と梁国新常務次長の会談の様子。知事からは、富山県の産業が紹介されるとともに、「富山県ものづくり総合見本市2012」への台湾企業出展の要請がなされた。
 歓迎ムード一色であり、期待も大きい。直行便就航のご祝儀的な要素も多少はあるのだろうが、経済交流を盛んにしたいという思いは本音であり、台湾では近年、その方向に施策の舵をとりつつあるところだ。それに拍車をかけたのは、2011年12月、台湾行政院(内閣)が「台日産業連携架け橋プロジェクト」を認可したこと。このプロジェクトは、台湾政府各部局の資源を統合して、台湾と日本の産業がウイン・ウインの関係を築くことを目指すもので、当然ながら経済・産業関係の部局がその中心的な役割を担うことになった。
 本県ミッションの訪問は、まさに時宜を得たものだった。その上、ものづくりが盛んな富山県からの一行だっただけに、表敬訪問や見学を受け入れてくれた各部局・機関の方々も熱が入ったようだ。


台湾経由で大陸で展開しては…

 (財)交流協会台北事務所への訪問や企業視察時にも有意義な意見交換が行われた。そのひとつは、2009年、胡錦濤中国共産党総書記と呉伯雄国民党主席のトップ会談で協議が始まり、翌年に発効した両岸経済協力枠組協定(ECFA/Economic Cooperation Framework Agreement)についてのとらえ方。これは一種の自由貿易協定(FTA)で、今回訪問した台湾の政府関係の部局や関係機関、企業のほとんどから、関税の段階的引き下げを通じて両国の経済交流が活発になることへの期待が語られた。
 これについては、手放しで歓迎できるものなのか。今回のミッションの中で石井知事は、「ECFAにより、台湾で製造し、富山で加工するなど付加価値を高めて中国に輸出していたものが、台湾で製造・加工して中国に輸出する動きが高まると、富山県内の製造業の空洞化につながる可能性があるのではないか」と懸念を表された。
YKK台湾社は1966(昭和41)年に設立され、同グループでは第2位の生産を誇るまでに成長し、現地に溶け込んでいると評判になっている。
 これに対して、例えば、台湾経済部の梁常務次長は「個別の企業では、ご指摘のようなこともあり得るかもしれないが、日本企業は単独で大陸での展開を考えるより、台湾の企業と提携・協力して中国でビジネス展開した方が効率的で、量の拡大にもつながるのではないか」と意見を述べ、「大陸への展開を積極的にサポートしたい」と続けた。
 また、YKK台湾社を訪問した際、川口均総経理は「ECFAにより全品目の関税が無税になれば、当社としては非常にメリットがある。当社の場合、台湾で製造・加工を行うための富山県黒部工場からのファスナーの素材などの仕入れも増えるので、富山側にとってはプラスになる」とコメントし、併せて、知事の「伏木富山港の一層の活用を検討してほしい」という要請に対して、釜山でのトランシップ(貨物を積み替えること)ではなく、台湾に寄港する東南アジア航路の運行など「伏木富山港の利便性が向上すれば、定時制の向上やコスト引き下げにつながるので、積極的に活用したい」という回答をいただいた。


次は海運の直行便を!

空の直行便が好評なだけに、「海にも直行便があったら…」と積極的な意見が出された。意見は訪問団、台湾企業の双方から出された。
 今回のミッションでは、2011年11月に総合拠点港に選定された伏木富山港の利用促進もテーマとし、そのPRに努めたところだ。前述のようにYKK 台湾社で知事が伏木富山港の利用の要請をしたのをはじめに、日程の4日目には「伏木富山港利用促進に関する意見交換会」を設け、訪問団企業や現地台湾企業からヒアリングするとともに、台湾大手の海運業・ワンハイラインズ(Wan Hai Lines LTD)やNYK Container Line(株)(日本郵船系のコンテナ定期便の海運会社)の台北支店を訪ねて、PRとともに忌憚のない意見をうかがった。
 意見交換会に参加した企業からは、
 ・港の処理能力が低いためリードタイムが延びる。
 ・台北港ができれば、基隆からシフトして大陸とも近くなり、台中や新竹とのリードタイムも短くなる。
 ・現在、台湾との直行便はないので、釜山トランシップのルートになる。富山-台湾便の潜在的なニーズは非常に高いと思う。
 ・釜山経由で、かつて納期に遅れて、賠償金を支払ったことがある。
 ・伏木富山港との直行便があれば、納品までの時間も経費もかからなくなる。直行便がないので伏木富山港を利用できない現実がある。
 などの意見が寄せられた。
 一方の海運2社について。
 7年前までは、シンガポールの海運大手PIL(Pacific Int`l Lines)が富山に寄港し、台湾との間を結んでいた。当時の台湾-富山のリードタイムは72時間だった。現在はNYKが釜山トランシップで結び、運行期間が長くなっている現実があり、従来の貨物が横浜、名古屋、神戸港などに移動している現実がある。これらを踏まえて、海運2社には伏木富山港について説明するとともに、日本海側の航路で新たな寄港先を検討する際には、「同港を!」と勧めたところだ。
 1社からは、「富山県内のある企業が、富山新港から出荷している中国向けの貨物には魅力があるものの、その受注は入札による年間契約で、値段的に厳しいところがある。経済交流拡大に向けて、富山と台湾が新しい関係を築こうと動き始めた昨今は、いい機会だと思うのでチャレンジしてみたい。ただこの航路を台湾にのばすとなると、船足が長くなって、メリットが少ない。富山-台湾の直行便では、金沢や上越の貨物も取り込むという気概を要するのではないか」と提言が寄せられた。

    

 一行の訪台の目的には、9月に行われる「富山県ものづくり総合見本市2012」への台湾企業の出展を募ることもあった。石井知事はじめ県商工労働部や当機構のスタッフも積極的に見本市を案内し、企業誘致に努めたところだ。
 思い掛けない成果もあった。知事がチャイナエアラインの孫総経理と会談した際、「週2便でスタートした富山-台北便を、7月から1便増やして、週3便にしたい」(ただし冬期は2便のまま)と打診があったのだ。ピーク時には、台湾から年間95,000人の方々が富山を訪れ、アルペンルートをはじめとする県内の観光スポットを堪能していただいたわけだが、直行便で結ばれたことを縁にますます増えるのではないか。
 富山県からアジアに進出した企業は、この10年間で2.5倍になった。今回の台湾経済訪問団は双方の交流に拍車をかけるだろうが、これからどんな成果があらわれるのか楽しみなところだ。
 

○問合せ先
[(財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター]
 所在地 富山市高田527 情報ビル2F
 TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
 当センターURL http://www.near21.jp/
作成日2012.12.25
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