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第18回 世界をリードする環日本海経済交流
今後の発展は成都、重慶などの内陸地域!
~中国内陸地域貿易投資商談ミッションの手応え~
 
  
藤野氏はイトーヨーカ堂の海外第1号店である成都伊藤洋華堂出店における“仲人役”をつとめた。
 彼が成都にイトーヨーカ堂を紹介
 成都は将来中部アジアの窓口
 72歳で未だに精力的に成都の仲人役

 右の新聞記事のタイトルは、以上のように語る。タイトルがいう「彼」とは、新世紀産業機構環日本海経済交流センターの藤野文晤(ふじの・ふみあき)センター長のこと。この記事は、当機構が主催した「中国内陸地域貿易投資商談ミッション」(平成23年2月28日~3月5日実施。団長:藤野センター長)が成都(四川省)を訪れた時にインタビューされたものをまとめたもので、3月3日の地元新聞に掲載された。
 中国の地元メディアにも注目されたミッションを、参加者のコメントを交えながら振り返ってみよう。

成都・重慶は中国内陸地域の拠点

 再び先ほどの新聞。記事は、成都には20回以上訪れている藤野センター長の、かつての商社マン(伊藤忠)時代からの交流やイトーヨーカ堂の出店の経緯を紹介した後で、当ミッションが成都を訪れた目的についてまとめる。記事はいう。
 「藤野団長は、成都の中国内陸地域での中心的位置を十分に認識するために、今回のミッションを企画した。日本富山県の優れた技術と製品を成都に紹介し、またいち早く成都でのビジネスチャンスをつかみたいとミッションの狙いを述べた」
 今回のミッションの意図はまさにそこにあった。発展が成熟しつつある沿海部に比べ、内陸地域の成長の可能性は極めて大きい。特に有数の人口を抱え、消費地として注目されている成都。あるいは内陸地域で唯一の直轄市で、工業都市としての存在感を示す重慶。両都市は、中国の西部、中央アジアへの玄関口でもあるだけに、これらの都市に拠点を置くことは貴重な一歩となるといえるだろう。
 事実、成都のイトーヨーカ堂(成都伊藤洋華堂有限公司)は、中国の小売チェーン1店舗当たりの年間売り上げでは1位となる実績を上げ(09年は成都伊藤洋華堂の3店舗で35億1380万元、1店舗当たり平均11億7127万元。1元12.7円として約148億7500万円)、日本国内の同店のトップクラスの店舗の年間売り上げと比べても遜色のない実績を示すまでになった(成都伊藤洋華堂2号店(双楠店)は、日本の店舗も含めた全ヨーカ堂店の中でも、ここ数年の年間売り上げは、1位あるいは2位になっている)。
 また重慶は、工場の増設と道路等のインフラ整備が同時に進展。街全体が工事現場と形容してもいいくらいの開発ラッシュにあり、自動車の生産台数は中国国内で第3位、バイクの生産台数は第1位(ちなみに重慶市内を走るタクシーはすべてスズキ(長安鈴木)の車両である)。また世界上位500社に入る企業のうち、74社が当地で合弁会社を展開するなどの国際化も進み、長江上流・中国西部における最大の工業集積地になりつつある都市だ。
 今回の「中国内陸地域貿易投資商談ミッション」では、その成都・重慶の企業(中国系・日系)との商談・情報交換を中心に、現地の政府や貿易促進委員会などにも表敬訪問するなど、盛りだくさんな内容で実施(日程表参照)。途中、ミッション参加者が名刺を切らして現地で印刷するほど、人との交流が盛んなミッションであった。
 
中国内陸地域貿易投資商談ミッション日程表(概要)
日時
日    程
1日目(2/28) 移動(富山集合→小松空港→上海浦東空港→成都空港)
2日目(3/1) 四川一汽豊田汽車訪問

3グループに分かれて企業訪問
 ・自動車関連グループ
(天興山田車用部品有限公司、コベルコ訪問)
 ・サービスグループ
(四川港宏企業管理有限公司、伊勢丹、とんかつ和光、山崎パン訪問)
 ・電子グループ
(高新区管理委員会、ULVAC(アルバック)訪問)

現地日系企業とのビジネス交流会
3日目(3/2) 3グループに分かれての商談会・企業訪問
 ・日中商談会(共催:成都貿促会)
 ・金星圧縮机圧訪問
 ・イト−ヨーカ堂1号店訪問

イト−ヨーカ堂2号店訪問、その後移動(成都→重慶)
現地(重慶)日系企業とのビジネス交流会
4日目(3/3) 重慶市政府表敬訪問
3グループに分かれて企業訪問
 ・自動車関連グループ
(長安スズキ汽車有限公司、重慶元創技研実業開発有限公司訪問)
 ・サービスグループ
(ローソン、新世紀百貨店訪問)
 ・電子グループ
(長安スズキ汽車有限公司、西永微電子産業園訪問)

重慶市貿促会・中国企業との交流会
5日目(3/4) 移動(重慶空港→上海浦東空港)
中国華東輸出入商品交易会視察
バイヤー企業との商談会(一部メンバー上海教育テレビ訪問)
上海進出県内企業との交流会
6日目(3/5) 移動(上海浦東空港→富山空港)


コンサルタント会社が10社の製品・技術を売り込む

成都での中福さんの商談の様子。
ジェック経営コンサルタントの中福潔部長は「中国では売り手にも買い手にも活気があった」と印象を述べた。
 今回のミッションでは、訪問先を従来の沿海部から内陸地域に移しただけでなく、参加企業の関心に合わせて日程の一部を3つのコースから選べるようにした。日程表2日目、4日目の「3グループに分かれて企業訪問」がそれで、コースは自動車産業、サービス業、電子機器・部品製造の3つ。また3日目は商談会をメインとしながらも、参加者の要望を入れて現地の金型メーカーや成都伊藤洋華堂1号店(春煕店)を訪問する機会もつくった。その結果、商談・情報交換の機会が従来に比べて格段に増え、先に紹介したように名刺が足りなくなって、急遽印刷することになった次第だ。
 「とにかく人と会う機会が多かった。これが何よりよかった」
 とは参加者の1人、(株)ジェック経営コンサルタント・部長の中福潔さんの弁。中福さんは、2日目は製造業(天興山田車用部品、コベルコ建機)訪問、3日目は商談会、4日目はサービス業(ローソン、新世紀百貨店)訪問を選び、ミッション参加者の中では名刺交換が最も多かった方だ(のべ150人近くの方々と名刺交換)。
 コンサルタント会社の部長氏が、何用あって中国内陸地域へ? と疑問に思う方も多いだろう。実は中福さん、県内のものづくり企業40社(ミッション参加前の時点で。現在はさらに増えて50社)の製品・技術を、「テクテクとやま」(富山市中央通り)、「テクテクたかおか」(高岡市末広通り)のアンテナショップで展示・販売して、そのPRに努めている。ミッションではそのうちの10社の製品・技術を売り込もうと、積極的に商談に臨んだわけだ。
 「10社分の製品・技術をオリジナルな資料にまとめ、100セット用意していきました。そして相手方の来場の目的を詳しく聞き出し、その10社の製品・技術に関心があるようならば資料を渡す。なければ渡さない。関心のある方で、業界を代表してこられた方には5部、10部と託して、『傘下の企業に渡してください』とお願いした」(中福さん)のだという。
 何社から反応があるかは未知数だった。ところが帰国して会社のパソコンを立ち上げると、6社からメールが…。製品や技術についての詳細、あるいは価格についての問い合せがほとんどで「輸出、あるいは技術供与に結びつく可能性が高いのではないか」と中福さんは期待を寄せていた。
各社のパンフ等を集約し、中福さんがオリジナルにまとめたもの(一部)。


光触媒を中国で…

中国の新築住宅・マンションの事情から、商機があるのではないかと思ってミッションに参加した吉本輝志社長。
「手応えは十分にあった」そうです。
 高岡市で不動産業を営む吉本土地建物(株)の吉本輝志社長も、今回のミッションに手応えを感じた1人だ。
 中国の新築住宅や新築マンションでは、建材や塗料に含まれる揮発性有機化合物などの匂いがきつい。そのため新築で購入しても半年から1年は入居できないケースが多いという。
 吉本土地建物では、屋外はもちろんのこと屋内でも効果のある光触媒を施した住宅の販売の他、快適な住環境をつくるための抗菌脱臭効果のある光触媒スプレー「ウイルス☆クリアー」を販売するなど、不動産業者の間での差別化を図ってきた。それを中国でも展開してみようと意図して、ミッションに参加したわけだ(この光触媒の原剤は、佐賀県や産業技術総合研究所、名古屋市、TOTOなどが有する特許の技術を生かしてつくられている。光触媒スプレーに関しては北里大学の実験でその効果が確認されている溶剤(TPX-HL)を使用。スプレーは吉本土地建物が特許申請中)。
北里大学の実験では、インフルエンザウイルスの除去率99%が確認された「ウイルス☆クリアー」。
  「現地の小売業2社とは、その後も商談を続けており、成都や重慶で販売される可能性があります。また日系企業との交流会で出会った方が、現地の建設会社への技術供与と光触媒の原剤の販売の話を進めてくれていますし、一方で現地の車のディーラーからは『ウイルス☆クリアー』をOEM生産したいという要望もいただきました。さらには富山から中国に進出している企業2社から、扱ってみようかと打診されています」と吉本社長は商談中の案件を指折り数えながら紹介し、「ここまで商品に関心を持っていただいて本当にありがたい。小売値や仕切り値が折り合えば扱っていただけるのではないか…」と続けた。
 


家庭から出るゴミも調べた董事長

 その吉本社長が、今回のミッションで最も印象に残っていたのは、冒頭にも紹介した成都伊藤洋華堂の躍進だ。ただ、同社の繁栄は当初からあったわけではなく、1997年に1号店(春煕店)をオープンしてからの3~4年は、赤字は雪だるまのようにふくらんだ。仄聞するところによると、日本のイトーヨーカ堂の本部では、「中国からの撤退」も検討したという。
 それを思い止まらせたのは、成都伊藤洋華堂有限公司の三枝富博社長(董事長・総経理)の熱意であった。三枝社長は成都市民の消費動向を調べるために、各家庭から出されるゴミを分析。好まれる食品などを突き止め、それに沿ったものを店舗で扱うようにしたという。こうして5~6年目からは徐々に市民に信頼されるようになり、2003年には2号店の双楠店をオープン。以後07年、09年と1店舗ずつ増やし、今のところ成都ではあと2店舗増やす計画があるそうだ。
 「中国で事業をしようと思ったら、腰かけの気分ではなく、根を生やし、ここで骨を埋める覚悟で取り組むべきです」
 これはミッション一行を前にして、三枝社長が語った言葉だ。どん底からはい上がった人の弁だけに、「言葉に力がある」と参加者全員がかみしめた次第だ。

   

 さて環日本海経済交流センターでは、県内企業のアジアをはじめとした海外での事業展開・販路拡大支援などに、新年度も精力的に取り組んでいく所存だ。支援事業についてはその都度ホームページで紹介していくので、適宜、確認していただきたい。またメルマガに登録いただくと、逐次、最新情報をお届けする。詳しくは下記、環日本海経済交流センターのホームページをご参照ください。

○問合せ先
[(財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター]
 所在地 富山市高田527 情報ビル2F
 TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
 当センターURL http://www.near21.jp/
作成日2011.03.31

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