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第14回 世界をリードする環日本海経済交流
中国環渤海地域貿易投資商談ミッション開催
~個別商談等を積極的に展開~
 
  
 まずは右の写真をご覧いただきたい。これは今回のミッションの主な訪問地である天津市内の様子だ。インフラ整備が追いつかないこともあるが、車があふれて大渋滞。天津には日系の自動車メーカーが工場を持っており、自動車産業を中心に経済が発展して市民の生活が向上し、車が普及してきたことも一因としてあるだろう。
 それにしても車が多い。2009年当初の、中国での自動車の生産台数の目標は1,000万台。しかしそれは、前年に端を発した世界的な不景気の中で、どちらかというと控えめに発表されたような目標だった。ところが秋口になると、1,200万台に迫る勢いといわれ、年末には1,300万台になるのではないかという声も聞かれた。
 正式な生産台数については公式な統計を待たなければいけないが、仮に1,300万台とすると、365日24時間フル稼働したとして1分間に24.7台の生産(280日、1日8時間稼働の場合は、1分間に96.7台)。これはピーク時のアメリカの自動車生産台数(2000年1,277万台/世界自動車統計年刊2007)に迫る勢い。GDPも日本を上回るのは時間の問題のような感がある。(1月11日、中国自動車工業協会は、09年の中国の新車販売台数は1,364万台、生産台数は1,379万台と発表した)
 マスで見た場合の、中国経済の進展は著しい。その中でも今回のミッションでは、中央(北京)に近く、また国家発展戦略地域に指定されている環渤海経済圏のうち天津市を中心に、大連市、煙台市を訪問。商談会、現地法人(日系、中国系)との個別マッチングなどを精力的に行った。その概要をお知らせする。

注目の環渤海経済圏の都市で商談・視察

大連高新技術園区
 「ニーハオ。シンセイキのみなさん」
 大連空港・国際線到着ターミナルを行くと、出迎えの群集の中から一際大きな声を張り上げ、手を振る御仁がいる。大連市貿易促進委員会の史集部長だ。史部長とは今回のミッションの件で何度も打ち合わせを重ねており、我々一行18名(現地参加者10名を除く)を温かく迎えてくれた。
 大連空港に降り立ったのは午後2時過ぎ。大連新高技術園区(大連ハイテクパーク)の視察を済ませて、大連市政府を表敬訪問したのは午後5時であった。
大連市政府表敬訪問
  大連市とミッション団長の藤野氏(環日本海経済交流センター長)には、縁浅からぬものがある。かつて同氏が伊藤忠に在職して中国ビジネスを担当していた時のこと。大連経済技術開発区の発展に大きく寄与した工業団地の開発に携わり、日本からの企業誘致のパイプ役を果たした。それが縁で今もその特別顧問を務めており、“最初に井戸を掘った人の恩を忘れない”彼の国の人たちは、藤野氏を団長とする当ミッションを熱烈に歓迎し、李万才代理市長(夏徳仁市長の後任)が海外出張中のため、肖盛峰副市長(市貿易促進委員会会長も兼務)が代理として対応してくれたのであった。これは異例のことだ。通常、市政府の市長・副市長が応対するのは自治体では首長クラスのみ。同市の、かつて“井戸を掘った”藤野氏への配慮がうかがえ、これは後に訪ねた天津市・煙台市でも実感することとなった。
  ちなみに日程は、下記の概要に示した通り。一見過密に思われるスケジュールであるが、帰国後のアンケートでは「ちょうどよい」11名、「短い」3名、「長かった」1名。「内容からしてちょうどいいのではないか」(食品メーカー社長)というのが標準的な意見であった。
日程概要(10月26日~31日)
日程
主なスケジュール
1日目(26日) ・出発式(富山空港内) 富山空港→大連空港(大連市貿促会出迎え)
・企業視察(大連軟件開発有限公司:高新技術園区)
・大連市政府表敬(肖盛峰副市長・貿促会会長)
・大連進出県内企業、市国貿促等とのビジネス交流会(夕食会)
2日目(27日) ・大連空港→北京首都空港→天津
・天津濱海新区視察(天津一汽トヨタ)
・天津進出日系企業等とのビジネス交流会(夕食会)
3日目(28日) 博覧会視察(天津国際展覧中心へ)
中国企業との商談会(天津国際展覧中心内会議室「銀華庁」)
 ※個別視察Aグループ(天津デンソー電子有限公司 葛巻副総経理)
 各自で商談相手企業訪問
 ※個別視察Aグループ(天津市先達精密圧鋳有限公司)
 ※個別視察Bグループ(㈱永野旭堂本店2工場)
 ※個別視察(飲食店経営参加社:成嘉装飾公司)
天津市人民政府表敬
投資環境セミナー(天津日航飯店)
天津・北京進出県内企業等とのビジネス交流会(夕食会)
4日目(29日) 現地日系・(中国企業)との個別商談(天津日航飯店)
  ※企業視察Aグループ(天津市英辰精密金型有限公司)
  ※企業視察Bグループ(天津理研維他食品有限公司)
  ※大学視察Cグループ(南開大学)
煙台市政府主宰投資環境説明会・夕食会
5日目(30日) 投資環境視察
 (1)選択コース:先端農業ビジネスコース 協力:伊藤忠商事
 煙台市内→莱陽市
 ・(莱陽市)龍大食品集団有限公司
 ・(莱陽市)朝日緑源乳業有限公司
 ・(莱陽市)朝日緑源農業高新技術有限公司
 (2)選択コース:中国優良ものづくり企業コース 協力:煙台市政府
 煙台市内→牟平区
 ・富海アルミ有限公司
 ・海徳マシン有限公司
 ・工業団地視察
煙台市経済技術開発区表敬
 ・FOXCONN(台湾)※工場内車窓視察
大連市貿促会との交流会(夕食会)
6日目(31日) 大連空港→富山空港


実り多き商談会・個別商談

中国企業商談会の様子
 ミッションの目的は、視察よりは商談に重きを置いている。そのため参加企業にはあらかじめ要望をうかがい、商談会に参加する現地企業(日系、中国系)を、市政府・貿易促進委員会の市分会などの協力を得て、積極的に掘り起して臨んだ。その結果、28日の商談会には20社(すべて中国企業)、翌29日の日系企業との商談会には7社(うち1社中国企業)が参加。商談件数はそれぞれ35件(6件継続)、15件(5件継続)となり実り多いものとなった。
 そのうちの1社、光岡自動車の河村賢整副社長に話を聞いてみた。
 同社が中国を意識し始めたのは6年前のことだ。当時、ある日本の商社に「中国の市場で光岡自動車の車を販売してみないか」と誘われた。その時は、「時機尚早。中国市場については何も知らない」と判断してその誘いを断ったのであるが、商社側が同社の車30台(セダンの高級車1車種)を仕入れて(買取り)、中国での販売に乗り出したのである。
 結果としてみると、その販売は失敗に終わり、最終的には数台がディスカウントして売られたようだ。ベンツ、BMW、アウディほどブランド力がないことも一因であるし、1車種のみでのデビューでは弱かった面もある。また、大衆車を売っている自動車販売店で、ベンツ等に匹敵する価格の車を売ったというミスマッチもあったようだ。
 「出荷した30台の車の販売状況を追いかけながら、当社が中国でビジネスを始めるのは2010年からではないか。それまでの間に中国の市場を研究しないといけない」(河村副社長)と同社では判断。以来、北京、上海、大連などの都市を独自で視察しながら(最近では1~2カ月に一度は訪中)、準備を進めていたのである。
2010年あたりから中国でのビジネス展開を検討している光岡自動車の河村副社長
  「天津にはまだ行っていなかった」から当ミッションに参加したようだが、同社は天津で3社と商談。うち1社は、以前からコンタクトをとっていた自動車にかかわる企業であるが、これを機会に面談してもう一歩踏み込んだ話をしようと、貿易促進委員会・天津市分会を通じて商談会に参加してもらったのであった。
 「3社のうち2社とはその後も連絡をとりあっています。話がまとまれば、1社は当社の車のディーラーになるでしょう。もう1社とは、すぐにはビジネスに結びつかないかもしれませんが、それをお互いに理解した上で、情報交換を続けていく約束をしています」
 と河村副社長はミッション後のフォローも含めて答えてくれたが、中国市場には大きな魅力を感じたようだ。冒頭に触れたように、生産だけでなく自動車の普及も進んでおり、これからは中古車ビジネス、また板金事業に大きな可能性を見い出したようだ。


展示会出展でもチャンスが…

生態都市建設博覧会に県内企業が初出展した。
 今回のミッションでは、10月25日~30日に実施された「第6回PECC国際貿易投資・国際生態都市建設博覧会」(以下、生態都市建設博と略す)の視察(28日)とともに、博覧会への出展も試み、ミッション参加企業から3社(団体含む)が出展(他に富山県と当機構も出展)。生態都市建設博は、自然との調和の中で生活を楽しむことができる都市建設を進めることがコンセプトになっているため、出展した企業はいずれも環境対応商品や環境技術の紹介に努めた。
 出展企業のうちの1社は環境整備開発事業協会だ。この協会は省エネ・環境関連商品を扱う県内の有志企業10社によって構成され、09年年初より大連、瀋陽においてビジネスの機会を探り始めたばかり。天津でも可能性を見い出そうと、生態都市建設博に出展したのであった。
 展示したのは、農業技術、エコターボ(自動車バッテリーの活性化装置)、永土(道路の路肩や中央分離帯に使う、固まる土。コンクリート並の強度を持ちながらも透水性が高く、雑草予防になる)、クリスタルゲレンデ(ゴルフボールを敷き詰めたような人工スキーの設備)の4社の商品。会場ではブース来場者15社と商談し、うち有力な4社とは博覧会終了後もコンタクトを取っているという。
 事務局長を務める熊本幸之助氏(MISシステム販売・常務)が振り返る。
 「もっとも関心が高かったのは、永土でした。道路の整備が盛んに行われているからでしょうか。ただ他の3点も、大連、瀋陽でPRしてきたことを踏まえていうと、手ごたえのある商品ですから、中国国内で拠点を構えて本腰を入れてビジネス展開してみようと思っています」
「協会に商社的機能を持たせて、中国はもとより他のアジア地域でも展開したい」と抱負を語る熊本さん。
  協会では年初からの営業展開で、瀋陽に現地スタッフを置くまでに準備を進め、生態都市建設博のフォロー営業も、主にこの現地スタッフが中心になって行っている。また一方では現地企業がスポンサーになって、その100%出資会社もしくは合弁会社の形での事業展開も検討しているという。天津での博覧会出展は同協会の今後の展開にプラス材料となったようだ。
 ちなみに生態都市建設博でのミッション参加企業の総商談件数は75件。うち13件は引き続き商談が行われており、ある参加企業はミッション中に自社商品の中国特許が決定し、「天津市政府と共同で中国国内での製造販売の話も出た」というほど弾みのついた案件もあった。


急遽、名門・南開大学訪問。学術交流始まる

南開大学にて
 このミッションでは、参加企業の要望を取り入れ、商談の機会を増やすよう心がけていることは既に述べたとおりであるが、それを試されるようなハプニングがあった。ミッション出発直前に、4日目(29日)の視察先企業から、「ビジネスの可能性のない方の来社はお断りしたい」と連絡が…。ミッション一行には富山大学の教員5名が加わっており、相手先の要望を受け入れると、この5名にスケジュールの空白ができてしまうことになる。
 そこで事務局では、南開大学(天津市にある中国トップクラスの大学)より富山医科薬科大学(現富山大学医学部、薬学部)にかつて研修生として留学し、現在は帰国して教鞭をとっている教授に連絡(ミッション初日)。事情を説明して大学訪問ができないかと相談を持ちかけた。
 回答があったのは28日であった。彼の教授は連絡を受けてからの2日間、学内の調整に走り回っていたようで、「29日はお待ちしています」とうれしい知らせを届けてくれたのである。
 翌日、富山大学の教員5名が通訳とともに南開大学を訪ねると、同大学日本センターの研究員が対応してくれ、これを縁に大学間交流ができそうだとの声が聞かれた。
 サプライズのあった今回のミッションであったが、のべ125件の商談の機会に恵まれて所期の目的を果たしたと言えるだろう。帰国の途中、参加企業の手ごたえをヒアリングした藤野団長は、「環渤海経済圏という国家発展戦略地域を訪問先に選んだのと、経済の成長が地に足がついて確実な時というタイミングがよかった」と総括。ちなみに環渤海経済圏は、珠江デルタ経済圏(80年代)、長江デルタ経済圏(90年代)に続く第3の成長拠点と注目されており、GDPの国内シェア(21.6%)も輸出入額の国内シェア(24.3%)も高く、また伸び率もそれぞれ13.8%、31.6%と勢いを持っている(数値はいずれも2008年統計公報より)。
 帰国して1カ月もしないうちに再び訪中して商談に勤しんだ企業が数社ある。極めて実り多きミッションであった。
 なお、当センターでは、22年度も中国への商談ミッションを予定しています。詳細が決まりましたら、ホームページ等でご案内します。

○問合せ先
[(財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター]
 所在地 富山市高田527 情報ビル2F
 TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
 当センターURL http://www.near21.jp/
作成日2009.12.28

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