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佐藤鉄工株式会社  

第7回 佐藤鉄工株式会社
都市鉱山で“金”を掘り出し
新規事業としての“金星”に

クロスフローシュレッダーの小型化に取り組んだ環境グループの元グループ長・西野清之さんは、富山県立大学の先生方との交流もあり、今回の開発にあたってもさっそく相談に…。
 「3~4年ほど遅れてですが、このシステムで第一ステップの年商1~2億円が見えてきました」
 佐藤鉄工で環境グループを率いていた西野清之元グループ長が、穏やかに微笑む。「このシステム」とは、家電製品や電子機器などを破砕するシステムのこと。平成18(2006)年度、当機構の新商品・新事業創出公募事業の採択を受けて、技術提携したドイツのメーカーのマシンを元に小型化したものだ。開発には富山県立大学が協力し、まさに産学官の連携によって生まれたシステム。“金の卵”の可能性を秘めているといっていい。
 今回は、佐藤鉄工が新規事業として取り組んだ環境関連装置、破砕・複合材剥離機の「クロスフローシュレッダー」誕生の物語である。

「今のうちに手を打とう」

ドイツと提携して製作されたクロスフローシュレッダー。冷蔵庫のほかにテレビ、パソコン、コピー機などの家電、電子機器の破砕も可能。
 同社が、新規事業として環境関連事業に関心を示したのは、元号が平成に変わって数年した頃のことだ。「リサイクル」が時代のキーワードになり、環境保全や環境ビジネスが注目されつつある時であった(容器包装リサイクル法の制定は平成7年、9年から容器の素材ごとに順次施行。家電リサイクル法は平成10年制定、13年施行)。
 新規事業の検討にはいくつもの案が俎上(そじょう)に乗せられ、フィジビリティスタディー(事業機会可能性調査)や先行する国の事業例の視察などが行われた。平成8(1996)年にはドイツを視察。企画の中に環境事業への進出があったため、冷蔵庫のリサイクルプラントのメーカーも訪ねたのだ。そして幾多の協議を経て、翌年より同メーカーの冷蔵庫を破砕するプラントを日本国内で販売することが決まった。
 「当時、冷蔵庫やテレビの大半は埋め立て処分されるだけで、埋立地もあと何年でいっぱいになると盛んに警告されていました。家電リサイクル法の制定も議論されており、社内で検討した結果『今のうちに手を打とう』ということになり、ドイツのメーカーと販売提携したのです」と西野元グループ長が当時の事情を語る。
 日本国内では家電メーカーも、法整備の行方に関心を持っており、佐藤鉄工がドイツから輸入してきたリサイクルプラントに着目。家電メーカー本社が、あるいは将来リサイクルを担当するようになる家電リサイクル会社が食指を動かし、いくつかのプラントで導入が決まった。
 「小型のクロスフローシュレッダーについては、リサイクルプラントを紹介して歩いている営業担当者から、『もう少し小型のものはできないか』という要望が何件も寄せられました。そこで小型のプラントを自社開発することにしました」
 西野元グループ長とともに小型化の開発に携わった山田宏志氏(現グループ長)が振り返る。ただ、小型化といっても、どのようなメカニズムで各種の素材(金属、樹脂、ガラス、木、ウレタンなど)が破砕されていくのか、また破砕工具のチェーンの耐久性はどれくらいか、などを把握しないと設計ができない。そこで同社では、富山県立大学の教授に協力を仰ぎ、まずは大学院生の研究テーマにチェーンの耐久性を調べることを挙げたのであった。


地域連携センターに勧められて

「今後は、小型クロスフローシュレッダーに付加価値をいかにつけていくかが課題ではないか」というグループ長の山田宏志さん。
 ここで破砕機の構造と破砕の原理を、大まかに紹介しよう。
 破砕は円筒形のシェルの中で行われる。シェルの底面中央に、底面に対して垂直回転する軸を設け、そこに1対のチェーンを取りつけて高速回転させる。チェーンは船の係留などにも使われている一般的なチェーン。回転数は1分間に1500回転以上だ。
 ここまでの構図を平たくいうと、円筒形のドラム缶の底で、2本の金属チェーンをつけた草刈り機のようなマシンが高速回転し、ドラム缶上部から投入された廃家電を、高速回転するチェーンの衝突によって粉々にしていく、というところだ。マシンの構造、破砕の原理は、いたってシンプルである。
 そういうシステムの中に、例として冷蔵庫を入れて待つこと約3分。破砕片(粒・粉)を選別すると鉄、アルミ、樹脂、ウレタンに分けられる。また冷蔵庫の断熱材から開放されるフロンガスは、破砕機から吸引され、別途、回収されるようになっているという。
 同社では、破砕の仕組みの詳細に関心があり、県立大の協力を得てチェーンの耐久性の研究に乗り出したのは先述の通りだが、大学の地域連携センターで破砕機の小型化について相談したところ、「新世紀産業機構の支援を受けて、破砕の仕組みの解明と小型化に取り組んだらいいのでは…」と勧められた。そこで平成18(2006)年度の「新商品・新事業創出公募事業」に応募し、採択されてその実行に乗り出した次第だ。


冷蔵庫のウレタンはなぜ粉末に?

冷蔵庫の破砕例。中央上から時計回りに、プラスチック、鉄、ウレタン、銅・ア ルミニウム。
 小型化と破砕の仕組みの解明にあたっては、破砕現象の可視化、粉体粒度の調査、粉塵爆発を防ぐための研究など個別の課題も列挙。冷蔵庫を破砕したウレタンの粒度調査では、重量比で80%以上のウレタンが直径500ミクロン未満の粉体になっていることが確認された。
 また粉塵爆発を防ぐための研究の件。粉塵爆発は、炭坑などで稀にあり、小麦粉や砂糖でも可能性があるといわれている。家電製品の破砕では、その部材にアルミが使われていることもあるため、爆発の対策は必須の課題。研究では、水分を加えることでも可能なことが明らかになった。
今回開発された小型クロスフローシュレッダーも家電製品、電子機器など大型機同様に破砕していく。
 困難を極めたのは、破砕現象可視化による、破砕の仕組みの解明だ。円筒形のシェルの底で、2本のチェーンが高速回転することによって、先の冷蔵庫の例のように廃家電は破砕されていく。「破砕片を大きさ別に分けるだけでも、素材ごとのだいたいの分別ができる」そうだが、チェーンと廃家電が衝突するだけで、そこまでの破砕が可能なのだろうかと、誰もが思った。
 実験では、破砕機内部が見えるようにし、高速度カメラによる撮影を可能にした。ところが…、だ。破砕初期については衝突の瞬間の撮影も可能であったが、破砕片が細かくなり始めると、粉塵によって視界が遮られ、内部が見えなくなってしまった。
 粉塵の発生しにくい油紙を使って、破砕機内部の観察もしてみた。破砕が進んで粉末化が進むと、それに比例して破砕機内部で発生した渦が中央方向に伸び、その渦によって上下方向に強い旋回流が発生。研究グループは、この渦や旋回流が、ウレタンの粉末化に寄与しているのではないかと推測した。


「もっと小型を…」という声も

産業機械のビジネスショーや環境関連の展示会に出展して、クロスフローシュレッダーのPRにも努めてきた(写真は「2008NEW環境展 福岡」(平成20年11月13~15日)
 以上のように、破砕メカニズムの解明をすすめながら、マシンの小型化は着々と進み、平成19年3月には小型クロスフローシュレッダーが誕生。コンベアや選別機などとともにシステム化されて販売されるため一概にはいえないが、1セットの価格は1,000万円前後~数千万円。冒頭に紹介したように、このシステムで「年商1~2億円を目標にする」ということは、年間十数セットの販売を目指すということだ。
 「東京ビッグサイトなどで開催される、産業機械展や環境展に出展して破砕機のPRに努めてきました。家電製品や電子機器のメーカーの他に、産業廃棄物処理業の方々の間でも、徐々に認知されるようになりました」
 前年度までの受注実績は、年平均でも数台であった。しかし本年度に入って急に伸び始め、販売代理店を買って出た産業廃棄物処理業者も現れたほど。また一方では「もっと小さい破砕機はできないか」という打診も入ってきたという。レアメタルの急騰で、携帯電話をはじめとする小型の電子機器のリサイクルも、注目されるようになった証左であろう。
 かつて鉱山は人里離れた山の中にあった。ところが今日では、レアメタルをはじめとする金属は、各種の機器に使われて都市に多くある。人口の多い都市ほど、機器に埋蔵する金属も多く、大都市は都市鉱山と呼ばれる所以(ゆえん)だ。
 小型クロスフローシュレッダーは、都市鉱山ではリサイクル可能な稀少金属を掘り起こし、また同社では金の卵になるよう運命づけられたマシンなのであろうか。

新商品・新事業創出公募事業
https://www.tonio.or.jp/gijutsu/sinsyouhin.html/
(23年度分の申込みは締切りました)

[佐藤鉄工株式会社] 
  ○所在地 本社 富山県中新川郡立山町鉾木220 TEL 076-463-1511 FAX 076-462-9250
   URL http://www.satotekko.co.jp/

作成日2011.08.25
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