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第17回立山科学グループ先進技術開発センター  

第17回 立山科学グループ先進技術開発センター
もう一歩先の技術開発を組織横断的に
プロジェクト毎にチームを組んで
58(昭和33)年に設立された立山科学工業を中心に、電子部品・電子機器、FAシステム、ソフトウェア等の開発・製造・販売などで成長してきた立山科学グループ。グループ内には5つの研究開発部門を擁するまでになったが、この4月からは新たな取り組みが始まった。研究事例とともに、その取り組みを紹介する。
  積極的な分社化が進められた立山科学グループは、立山科学工業や立山マシンなど11社で構成。特徴としては、異業種をグループ内に有していることが挙げられる。このうち、5社に研究開発部門が設けられ、各社のコア技術の進化や拡大が図られてきた。先進技術開発センターは同グループにおいては6つ目の研究開発部門となるわけであるが、いったい何を目指すのだろうか。初代のセンター長に就任した斉藤氏を訪ね、まずはうかがってみた。


レベルの高いテーマに全社的に

 「研究開発といっても、目指すレベルはいろいろあります。例えば今のレベルを100とすると、120あるいは130のテーマでしたら、その部署の努力で答を出すことができるでしょう。でも、150とかもっと高いレベルのテーマになると、そう簡単にはいきません。研究者個人にも得意・不得意がありますし、高度なノウハウの他に周辺の専門知識やまったく異なった分野の技術も必要になる。当センターでは研究のプロジェクト毎にグループ内の研究開発部門からスタッフを集め、公的な研究機関や大学、あるいは他の民間企業にも協力を求め、従来より一歩も二歩も先のテーマを追いかけていきます」
  先進技術開発センターは、グループ全体を見渡し、高度で分野複合的な開発テーマに、グループ内・外の連携を推進し、柔軟に取り組むための研究開発部門といえるだろう。前述のように答える斉藤氏自身の“本籍”は立山マシン。他の研究スタッフも、それぞれの研究開発部門に本籍を置き、研究プロジェクトが進行している間はこのセンターに“出向している”といっていいだろう。
  このセンターが取り組んでいる研究テーマのひとつが「難加工材用反応性イオンエッチング装置の開発」である。もともとは富山県立大学、富山県工業技術センターと連携し、立山科学工業、立山マシンが中核となり経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業に採択された研究で、この4月からは実用化に弾みをつけるために、当センターが推進するプロジェクトのひとつとなった。


新しいデバイス素材の加工に成功

ニオブ酸リチウムの加工例。エッチング速度は200nm/minで、従来例の2倍ある。

 パソコンや携帯電話などのIT機器は、従来にも増して情報処理の高速・大容量化が求められている。同時に、機器の小型・多機能化の要望も多く、従来のデバイスでは限界が見えてきた。
  例えば半導体などではシリコンが使われ、μ(ミクロン、1μ=1mm/1000)単位の微細な加工が施されている。しかしながら、高速・大容量化、小型・多機能化の要求にはシリコンでは対応しきれず、そこで注目されたのが電気的・光学的に優れた特性を有するニオブ酸リチウム(LiNbO3、以下LN)。LNは新しいデバイス用の素材として有望視され、IT機器やその部品メーカー、大学等で盛んにその加工法が研究されてきた。
  デバイスとして実用化するためには、シリコンよりも微細なμ単位、あるいはそれ以下の加工も将来的には要求される。しかし、LNは硬くて精密な加工が難しい。精密さに欠ける加工では、デバイスとしては難点があるため、メーカー等はしのぎを削るようにここ数年、加工技術の開発に努めてきたのであった。
  それをいち早く可能にしたのが、立山科学グループが開発した反応性イオンエッチング装置である。
  エッチングには、薬液につけて不要な部分を腐食させて除くウエットエッチング(例:プリント基板の銅メッキの上にパターン印刷し、硫酸等の液に浸ける。印刷のあるところだけが配線として残る)とドライエッチングがある。ドライ方式も大きく分けて2つ。それはプラズマ中の反応性の高い中性粒子でパターンのない部分を削るプラズマエッチングと、プラズマ中の反応性イオンによって加工する反応性イオンエッチングで、同グループでは後者を採用し、LNにμ単位の微細な加工を可能にした。
「この開発には、電気・電子工学的な技術と、物理・化学的なノウハウが融合しています。また2つの公設研究機関、4つの大学とも連携。発足したばかりの先進技術開発センターにとっては、今後の実用化研究も含めていい先行事例となるのではないでしょうか」と斉藤氏は目を細め、微細な加工をナノレベルで検査する装置の開発等いくつもの開発プロジェクトが進行しており、いずれも大学の他に民間企業、公設試も加えた異分野、産学官連携で進んでいることを紹介してくれた。



将来は消費者の声から開発のタネを 

ひとり暮らしの高齢者の安否や在宅等を確認するための緊急通報システム。既設の電話につないで、緊急出動や安否の確認、健康相談などに対応できる。

さて、今度は身近な話題をひとつ。レストラン等の飲食店に行くと、店員を呼ぶための無線システムがある。もともとは軍事用に開発された信号を拡散させて送る無線技術を民間へ応用したものだが、コストや部品の関係から民間への転用は困難と思われてきた。しかし同グループでは小型化、省電力化、低価格化の課題も合わせて解決し、無線応用機器として全国で10万台あまりが稼働している。
  その応用機器の一例が緊急通報システムである。このシステムは火災センサー、安否センサー、外出センサーの他に、押しボタンリモコンなどより構成。無線を使うためセンサーの増設が簡単で、認知症や体調の異変の前兆をとらえるという優れた機能も合わせ持ち、全国で100近い自治体(市町村合併前の数字)が採用し、ひとり暮らしのお年寄りの安否確認や健康相談などで強い味方となっている。
「部品をつくったら、それを実装するシステムを開発する。さらには製品として実際に使うというように、裾野を広げてきました。緊急通報システムも将来的には、自社で使うようになるでしょう」(斉藤氏)
  このシステムのポイントは、看護士や保健士が相談センターに控え、24時間、相談に応じることが可能なこと。「自社で使う…」ということは、立山科学グループの中に健康相談ができる有資格者を置き、相談センターを設けることではないか。とすれば、今後は一般消費者との接点が拡大していくということで、新たな研究のタネを発見することになるだろう。
  「柔軟に対応することにしています。そのためには若手の登用を従来にも増して積極的に行う。また民間企業も含めて他の組織に協力をお願いしますし、逆に、私どもがお手伝いして新たなシステムを開発することもあるでしょう」
  斉藤氏が語る抱負には、品質を最優先する同グループの熱意が感じられるが、先進技術開発センターがどのような歴史を刻んでいくのか、期待したい。

[ 先進技術開発センター概要 ] 
○スタッフ 斉藤潤二センター長ほか25名
○研究内容 電子部品・電子機器の開発、FAシステムの開発などにおいて、高度で複合的な取り組みが必要な研究開発



[立山科学グループの沿革](生産・開発関係を中心に)
'58年 創業。炭素皮膜抵抗器生産
'76年 テレビ用映像伝送機器生産
'82年 厚膜角型チップ抵抗器生産
'95年 PDSS無線機生産
'98年 360度パルレンズ応用機器開発
'02年 家電リサイクルシステム開発
     3軸加速度センサー開発
'04年 車両番号認識システム開発

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