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第6期とやま起業未来塾開校  

第6期とやま起業未来塾開校
夢・希望・志を持って32名が新たに入塾
ビジネスの道を何本見つけられるか!?

 過去5期の「とやま起業未来塾」からは、合計で159名が卒塾し、半数以上が創業あるいは新分野に進出するなどして、富山に元気を振りまいてきた。そしてこの6月には第6期が開校。県内全域からベンチャーマインドに満ちた新たな塾生が集まった。卒塾生、新入塾生の“熱い思い”を交えながら、「とやま起業未来塾」について紹介しよう。

教職を辞して、目指すは「女でんじろう」

 「もみ子先生、こんにちは!」
 梅雨の晴れ間の一日。氷見市海浜植物園2階のセミナールームに、小学生が父母とともにやってきてカウンター前の席に座る。子どもの数は15人。出席確認の一覧表で子どもたちが通う小学校を見ると、富山市も含めて呉西全域にわたっている。
 この小学生らの目的は、月1回、同植物園で開催されている「もみ子先生の実験教室」に参加すること。この実験教室の1~2週前には、同様の実験がある意味予告的に能越ケーブルネット(氷見エリア)で放送され(番組名「もみ子先生のおもしろ実験室」)、それが富山市や射水市などのケーブルテレビにも提供されているため、「自分もあの実験をやってみたい」と子どもたちが集まってくるわけだ。ちなみに取材当日の実験は、ある入浴剤を使ってのペットボトルロケット。発射の瞬間を写真に納めることはなかなか難しかったが、500mlのペットボトルを5m~10mほど上空に飛ばす子が何人もいた。
 「女でんじろう」を目指す「もみ子先生」(本名:池田紅子(もみこ)さん)。実は先生は当機構が主催している「とやま起業未来塾」の卒塾生(平成21年度)で、県内のある高校で教鞭をとっていたのを敢えて退職し、科学実験エンターテインメントのビジネスを立ち上げたアントレプレナー(起業家)なのだ。

氷見市海浜植物園で行っている「もみ子先生の実験教室」のひとこま。ペットボトルロケットの原理をセミナールームで説明し、植物園横の庭で実際に打ち上げた。緑色の液体を噴射しながら、5mほど飛ぶ。


第6期スタート。「解けない問題はない」と激励

「皆さんの夢を夢で終わらせず、輝いて…」と激励した石井知事(塾の名誉会長)。
  では、もみ子先生をそこまで駆り立てた「とやま起業未来塾」とは何か…。
 「とやま起業未来塾」は石井隆一知事(塾の名誉会長、当機構の理事長)の発案で始まった、起業や新分野進出、地域づくりをめざす若者、女性、熟年者を支援する本県独自の事業。県内外の経営者や専門家による講座、ビジネスプラン作成指導、経営指導などをゼミ形式で実践的に行うもので、先述のように過去5年間に159名が修了。そのうち半数以上が実際に創業あるいは新分野進出などを果たし、夢の実現に向けて歩み出している。
 本年度もこの6月に第6期が始まった。新たに32名が入塾。開校式(6/6)で石井名誉会長は「かつて富山県人は、積極的で進取の気性に富み、粘り強いといわれてきましたが、最近少し元気がない。新入生の皆さんの元気で、県民の皆さんを明るくして欲しい。そしてせっかく塾に参加されたからには、充実して輝いた人生を送ってください。困難があってもしっかり取り組んで、未来を自分で切り開いていく気持ちで取り組んで欲しい」と激励し、飴久晴塾長(コーセル(株)会長)も帝王学の著書がたくさんある伊藤肇さんの言葉を引き「人生は一冊の問題集である。人生いろんなところで問題に遭遇するであろう。しかし解けない問題は与えられない」と訓話し、「最善の手を打てば答は出てくる。決して逃げないで!」と続けた。
 また一柳良雄塾頭((株)一柳アソシエイツ社長)は、「自分の夢・目標を明確に持ち、それを持ったら自分の身の丈を測ってください。そうすると目標と自分の立っている位置の差がはっきりしてきて、その差をどんな知恵と努力で埋めていけばいいかわかってきます。人と同じ努力では成功しない。人の3倍働いたら、将来必ずいい方向に向かう」と塾生を励ました。(他の顧問、師範の激励・挨拶は未来塾のHPに紹介)
 塾生はこの6月より、基本的には毎週土曜日の半日を、塾で特訓を受ける。各自が持っている起業・新分野進出・地域づくりの夢を、単なる夢で終わらせないためにビジネスプランを練り上げ、時には当初のプランから軌道修正することも。ゼミ形式で主任講師より6カ月間絞られ、ビジネスプランの発表会を経て卒塾し、新たな第一歩を踏み出すわけだ。

訓話の中で「きれいな責任のとり方」についても話した飴塾長。 一柳塾頭は、香港の30代の女性が、熊本のトンコツラーメンの店主と組んで香港・中国で店舗展開し、年商800億円(推計)に育ったベンチャービジネスを紹介した。


「女でんじろう」もみ子先生も“花開く”

もみ子先生こと池田紅子さんは、取材中も実験ネタをいくつも披露してくれた。
 冒頭に紹介したように、科学実験エンターティナーを目指す池田紅子さんも、前年度の未来塾でビジネスプランを練り上げたひとり。高校教師の職を辞してまで「女でんじろう」として身を立てようとしたのであるから、その決意は並々ならぬものであったが、塾長以下の講師陣、また他の塾生たちの反応は「おもしろーい。でも富山でそれがビジネスになるの?」という反応であった。
 では、もみ子先生の卒塾後の活躍は如何に?
 平成21年の暮に未来塾を卒塾したもみ子先生は、“まずは地元で顔を売ろう”と能越ケーブルネットに営業をかけた。「たぶん向こうは怪しい女が来たと思ったでしょう」と振り返るが、「未来塾の卒塾生だ」と自己紹介すると、「それはよく知っている」と、プランを真剣に聞いてくれたそうだ。そしてそのおもしろさに共感してくれて、とにかく1回やってみよう、と。さっそく局で収録すると、たまたま別の番組の収録のためにスタジオに来ていた地元紙の新聞記者が科学実験の様子を見て、「おもしろい人がいたものだ」と取材して記事にしたのである。
 するとその記事が縁で他のテレビ局も取材に来て、氷見市海浜植物園での科学実験のオファーが舞い込んだ。また植物園で月1回の科学実験をしているとウワサが広がり、別なテレビ局2社のほかにタウン情報誌も取材に。宣伝費ゼロで、「氷見に女でんじろうを目指すおもしろい人がいる」と広まり、小学校や公民館の行事、さらにはアミューズメント施設でのイベントとして“お座敷がかかる”ようになったわけだ。
 といって、もみ子先生は科学実験エンターティナーとして、生計を立てられるまでには至っていない。1回の出演料は数千円~数万円程度。塾の先生、パソコン教室の講師なども務めて、「女でんじろう」として一人立ちするために、先輩の理科教師の指導を仰ぎながら「ネタ」の仕込みに余念がないといったところで、夢は五分咲きといったところか。


塾でプランを練ると道は何本も見えてくる

交流会中に取材に応じてくれた尾山嘉彦さん。塾生代表として決意も表明した。
  「先輩方の活躍には目覚ましいものがありますね」
 本年度未来塾の開校式後の交流会で、講師陣と名刺交換しながら語っていたのは、新入塾生の尾山嘉彦さんだ(尾山製材(株)営業部長/朝日町)。もみ子先生のマスコミへの登場頻度は卒塾生の中では多い方だが、他の卒塾生たちもなかなかのもの。時々テレビや新聞に顔を出し、当機構が発行した冊子「とやま人魂が生きた ベンチャー・起業事例集」でもその活躍の一端は紹介しているところだ。またマスコミで取り上げられていなくても、着実に実績を残している卒塾生も多い。卒塾生らと個別に会って話したことのある尾山さんは、他の卒塾生の動向も聞いて、その活躍に感心していたわけだ。
 「先輩のビジネスに感心しているだけでなく、君たちも後に続かなければいけないんだ!」と尾山さんは講師陣からハッパをかけられ、いや応なく志気も高まっていく様子。その尾山さんに話を聞いてみた。
 県内には200社近い製材業者が“林立”し、建築不況と北洋材の高騰でいずれも厳しい経営環境にあるようだ。そこで同社では、富山県産菜種油を原料にした「みつろうクリーム」の開発に2年前より取り組み、新分野への進出を図っていたのである。
尾山さんが2年をかけて商品化した「みつろうクリーム」。木製品用、革製品用、犬の肉球用がある。ちなみに菜種から油をとる方法は、薬品を使うのではなく圧搾による。
  「未来塾のこと、卒塾生の活躍は前から聞いていました。私の場合、みつろうクリームで新しい事業を立ち上げたいと思い、自分でビジネスプランを立てられるからひとりでやって行こうという気持ちがあったのです。ところが卒塾生に会って話を聞くと、皆、参加したらいいという。先輩の話をまとめると、“ひとりでビジネスプランを立てていると、道は1本しか見えない。しかし未来塾で勉強し、講師陣の話を聞いていくと、道は何本もあることを気づかされる”というのです。皆熱心に進めるので、みつろうクリームの商品化のメドがついたのを節目にして、本年度志願したわけです」
 尾山さんの目標は、3年後にはみつろうクリームの年商を3000万円に持っていくこと。さてこれから6カ月間、講師陣に絞られていく中で何本の道が見えてくるのか…。
 進行中の塾の様子や卒塾生の活躍の様子は、未来塾のHPでも随時紹介していますので、ぜひご覧を。


作成日2010.07.06
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