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第34回 有限会社アクセル  

第34回 有限会社アクセル
 「売るためのホームページづくり」を目指して
 自社ブランド品をネットで販売・ノウハウ蓄積

同社のリングピローの中心価格帯は7000~8000円。中には数万円のものもある。雑貨店等で販売されているものは、3000~4000円程度のリングピローが多い。
 「リングピロー」ってご存じだろうか。
 結婚式の時、指輪の交換まで結婚指輪をのせておくクッションのことをいう。指輪が落ちないようにリボンで結んで「約束を守る」という意味を表わし、また末長い幸せな結婚を願った…などのいわれのある、もともとはヨーロッパの風習だ。
 それが昨今の日本の結婚式でもだいぶ取り入れられているらしい。今回はそのリングピローの企画・製作・販売をしているアクセルを訪ねた。ただ、同社はホームページの企画・制作が本業の会社。リングピロー部門だけでも独立していけるまでに事業は育ったが(もちろんホームページ部門も)、本業との接点なども交えながら、元気なお店の姿を紹介しよう。

ホームページはつくったけど…

技術屋には珍しく販売・営業が好きな齋藤さん。当機構のITの専門家として登録している。
 代表の齋藤さんは、もともとは県内のとある電子部品メーカーに勤め、企画・開発、製造技術、品質管理など、生産畑一筋にきた人だ。“一筋…”とはいったもののまだ若い。現在47歳、独立した時は35歳だった。
 「もともと独立志向が強かったのですが、サラリーマン時代に培ったノウハウを生かして電子部品メーカーを自分で興す…のは無理でした。一方で、販売とか営業の仕事をしてみたいという思いもあって…」
 齋藤さんが選んだのは、あるコンビニエンスストアのフランチャイズに加盟して(98年)、いわゆるコンビニのオーナー(店長)になることだった。ただこれも、結果としてみると“中継ぎ投手”のようなもので、5年ほどしてからホームページの企画・制作の会社を興したのである(03年)。根っから、ものづくりが好きな齋藤さんは、製造業の盛んな富山で、地道にものづくりを続けている人の役に立ちたいと願い、ホームページでの販促を謳って、県内企業に営業に乗り出した。
 ホームページ制作の技術・ノウハウは、本人いわく「気合い」で習得。関連するソフトを独学して使えるようになり、自社のホームページも立ち上げた。友人・知人を介しての受注、あるいは客先から別な企業を紹介されることはあるものの、一般的な依頼があまりない。03~04年当時、ネットビジネスへの関心は高まりつつあるものの、“それってな~に?”“ホントにそれでものが売れるの?”といった感がまだ強かった。また、せっかく立ち上げた自社のホームページの反応もまったくなかったのだ。
 「通信環境が整備され、また料金が定額制になったり、検索エンジンが充実したりと、インフラは整いつつある時でした。でもなぜ当社のホームページに反応がないのかと突き詰めていくと、“この会社は、誰に、何を売ろうとしているのか”“自社のホームページの作り方のセールスポイントは何か?”と、いわゆるマーケティングの領域に入ってしまったのです」
 齋藤さんは反問しながらも、今度はマーケティングの独学を始めたのである。


“売れてなんぼのホームページ” の必要性を痛感

現在アップされている同社のホームページ(Top)。アクセスや売上げのアップを図ろうと、冒頭でPRしている。ページの中に制作例もある。
 自社のホームページをつくること、あるいはネットショッピングのシステムを導入すること、それ自体を目的とする企業が多い時に、齋藤さんは“売れてなんぼのホームページ”という意識を持ち始めたのである。当時としては珍しい存在であった。
 「ホームページをつくる会社は次々現れていました。同業の士との情報交換などにも努めましたが、当初はデザインから入ってきた人、情報処理から入ってきた人が多く、私はなかなか話が合わない。私はデザインを否定していたわけではありませんが、7~8年前に、マーケティングの必要性とか、“売れてなんぼのホームページ”といっても、なかなか理解してもらえなかったのです」
 齋藤さんは当時の模様を、抑えた言葉で以上のように描く。編集子も取材で県内企業を歩いていて、同様の事例をよく聞いた。当初はデザイン重視のホームページをアップしていたものの、一向に受注に結びつかないために、クライアント企業が齋藤さんのような考えを持っている制作会社でホームページをつくり直した、という例だ。その結果、受注が生まれて、ビジネスが成り立つようになった企業が県内にいくつもある。
 「私の場合、独立したあと、一時的にサイン・看板のデザインのお手伝いをした経験があって、デザイン関連のソフトが使えたし、また集客や販売にデザインが大事な要素のひとつだというのは、多少はわかっていました。またコンビニ店を経営していて、お客様に来ていただくお店とは何か。販売するとは何かを、5年間考えさせられました。その上に自社のホームページを開設してからの反応のなさに、マーケティングの必要性を痛感していたのです。ホームページの制作を本格的に始めようとした時に、これらのことが1本につながったのです」
 こうして齋藤さんは“売れてなんぼのホームページ”を、比較的早く意識することができたわけだ。そして、マーケティングの独学をさらに進めていったある日のこと、客先からの依頼で行っていたマーケティング調査中に、「リングピロー」という言葉のネット上でのキーワード検索が多い事実を知ったのである(07年11月)。


始まりは「それってな~に」からだった

Le Ciel Brille(ルシエルブリレ)のリングピローには、完成品と一部手縫いを要する手づくりキットがあり、写真の女性は完成品の用意をしているところ。
 実年に近い齋藤さんにとって(編集子もそうだが)、「リングピローって、な~に?」から始まった。調べてみると、冒頭に紹介したようなことがわかり、さらには多数の販売者はいるものの、ほとんどが趣味の延長で売っているだけで、本格的なビジネスとして取り組んでいるのは2社しかないこともわかった。またマーケットが小さいため、大手が乗り出してくることもないことが、予想できた。
 もともとものづくりが好きな齋藤さんだ。灰の中に温存しておいた炭が炎を上げるように、齋藤さんのものづくりへの情熱にも再び火がついた。そして「よし、ウチでもやってみよう」と、リングピローをつくって、売り出すことを考えたわけだ。
 ところがこれが意外と、奥が深かった。
 「最初は軽い気持ちで始めたのですが、どんな商品にしようかと具体的に考えると、先に進めなくなったのです。そこで、花嫁はどんなウエディングドレスを着ていて、それに合うデザインのリングピローはこんな感じで…と具体的なスケッチが描けるように、まずマーケティングすることにしました」
 齋藤さんの得意技が出たわけだ。そこで調べていくと、ものづくりにとって大事なことに気づかされた。商品のブランド化が必要ではないか、と。結婚小物の中でも、さらにニッチな市場で認知度を高めていくためには、自社のリングピローのブランド化を図り、結婚を控えたカップルへの浸透を狙おうというわけだ。またマーケットサイズも月平均でおよそ1000万円前後ではないかと読み、その内の20%のシェア獲得を目指すこととした。
 「趣味の延長でやっている人が多いため、ある1社が突出してシェアを伸ばせない現実がありますし、複数の事業者が競争していく中で、商品に違いが出て業界が活性化していくのではないかと思い、20%のシェア獲得を目標にしたのです」(齋藤さん)


ストーリーが1本につながるように企画

Le Ciel Brille(ルシエルブリレ)を紹介するホームページ。シェア20%に迫るようになり、齋藤さんは次の展開を模索中。別な結婚小物を別ブランドで企画するか、このブランドの中で水平展開していくか…。
 “Le Ciel Brille(ルシエルブリレ)”
 同社のリングピローのブランド名である。フランス語で、“「輝く空」を意味し、お二人の永遠の絆、輝かしい未来にという願いが込められている”のだそうで、商標登録もされている。
 販売は、08年10月からだ。ただ当初は、商品の企画・生産・卸までしかせず、実際の小売りは販売店に任せる、あるいはネットショップでの販売希望者を募るという方法をとろうとした。なぜ、自社でネットショップを行おうとしなかったのか…。
 「ホームページ制作の依頼が順調に入っていて、そこにネットショップでの小売りを始めると手がとられて、日常の業務に支障が出るのではないかと思ったのです。それで卸でとどめました。ところが期待したほど販売店の開拓ができなかったので、自社でネットショップを立ち上げての小売りを始めたのです」(齋藤さん)
 ネットショップの小売りを始めたのは09年4月から。当初は月商数万円代であったが、徐々に認知度が上がってきて、最近は“シェア20%”に迫る勢い。リングピローの部門だけを独立させてもいい状態だ。また、ネット上での小売りが好調なのが伝わって、実際の販売店も同社のリングピローを見直すようにもなってきた。
 「試行錯誤の中でのネットショップでしたが、いい経験をさせていただきました。今振り返ると、ブランド化を図り、商品企画の段階で細部まで絵が描けるほどマーケティングしたため、ネットで小売りを企画した時も、ホームページ上のストーリーが1本につながってきたのです。このノウハウを今度は、富山のものづくり企業に応用して、地道にものづくりに励んでいる人びとを応援したい、と思うようになりました」(齋藤さん)  


今度は制作依頼会社でブランド化を

2009年度Eストアーアワード ネットショップ大賞富山県賞の表彰状。この受賞を縁に、リングピローの販売は少し伸びたそうで。
 同社の「ルシエルブレリ」の取り組みは、「2009年度Eストアーアワード ネットショップ大賞富山県賞」(各都道府県からネットショップが好調な1店が表彰される賞)の栄誉に輝き、また翌年には「第6回とやまSOHO大賞」の「特別賞」も受賞した。“売れてなんぼのホームページ”という齋藤さんの持論が開花し始めたと言えよう。
 雨後のタケノコのように現れたホームページ制作会社も、昨今は一段落している様子。生き残りをかけて、各社必死だ。県内では営業に限度があるとみて、東京・大阪・名古屋でクライアントを探し、富山で制作している会社が何社もある。またすでに淘汰された事務所もあると聞く。そういう中でアクセルのホームページ制作の依頼先は、県内の企業・お店などからが9割方を占めているという。
 「特別な理由があって県内に限定しているのではなく、こまめに営業で歩いている中で、県内で順調に受注できたのです。最近の営業で、当社のリングピローの例をお話すると、ホームページの制作とマーケティングを連動させることに関心を持たれる方が多くなってきました」
 齋藤さんによると、ホームページの制作依頼も依然堅調で、ホームページ制作の売上げとリングピローの売上げの比率はほぼ半々。両者を連動させながら、また新たなブランドを立ち上げる。あるいはホームページ制作依頼先でのブランドの創設を試みる。前途に可能性がいくつもあるゆえに、お店の発展、会社の成長が楽しみなところだ。
 ちなみにこの齋藤さん。当機構の専門家派遣制度のITの専門家として登録されている。当該制度を利用して、ホームページのコンサルティングをしてもらうのもいいのでは…!

当機構の専門家派遣制度
http://www.tonio.or.jp/sodan/keiei.html/

当機構に登録されている専門家
http://www.tonio.or.jp/sodan/senmonka05.html/


有限会社アクセル
本  社/富山市月岡町6-1357(TEL076-429-5151 FAX076-411-8010)
事業内容/ホームページの企画・制作、同マーケティング分析、リングピローの企画・製作・販売
設立/1998(平成10)年
資本金 /350万円
従業員 /5名(パート・契約社員等含む)
URL/http://www.airnet.tv/  リングピロー紹介/http://lcbshop.jp/
作成日2011.03.09
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