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[第33回]株式会社ビーライン  

[第33回]株式会社ビーライン
 35歳までは店舗を増やし、規模を大きく
 その後は利益率を改善して、さらに……

北京の「富山海(フーシャンハイ)」の外観とスタッフのみなさん。日本に留学して、大手外食チェーン店で勤めた経験のある中国人を店長にし、 料理人は日本から1人派遣、他は現地採用のスタッフ。左端は大坪社長
 「北京に食べ放題火鍋店 富山のビーライン」
 10月5日(火)の「日本経済新聞」に載ったタイトルだ。社長は大坪悟さん、31歳。平成17年4月に最初の店(イタリアン・フレンチを中心にしたレストランParty&Dining Beeline(パーティ・アンド・ダイニング・ビーライン)/富山市)をオープンしてから5年半が過ぎていた。
 大坪社長の当面の目標は、「35歳までに、売上げ10億円規模の飲食店を中心とした企業グループをつくる」こと。「今はまだ道半ばにも達していないけど、今年始めた手羽先店のフランチャイズや北京でのお店の展開が軌道に乗ってくれば、富山のビジネスと合わせてそれも可能ではないか」と明るく見通しを語った。
 今回のお店訪問は、“大志”を持っている若き経営者とそのビジネススタイルに焦点を当ててみた。

25歳で最初の店、そして4年で4店舗

 もともと大坪社長は、独立志向が強かった。中学生のころから事業主(会社か店を持つ)になることを夢見ており、大学生の時には飲食店に的を絞りつつあった。卒業してからは、友人が興したイベント会社を手伝う形で働き始めたが、自らが起業したわけではなく、不完全燃焼の日々が続いていた。
 ある日、中学の時から、ともに独立の夢を語り合った2人の友人と再会。ひとりはフランスで料理の修業をした後で都内の大きなホテルに就職。もうひとりは、大手レストランチェーンの店長を務めていた。
 この3人が再会して「自分たちの店を持とう」となったわけだ。ドラマのような話だが、これホントウの話。冒頭に紹介したレストランParty&Dining Beelineがオープンしたのは、3人が25歳の春を迎えた時のことだ。翌年(18年)の8月には法人化して、そして、かすかながらも「まずは10億円企業」の目標を持ったのである。
 イベント会社の運営に携わった経験のある大坪社長だ。「レストランを、単なる飲食の場にはしたくない」ということで、パーティやウエディングなどもできる店にし、3年後の平成20年8月には高岡市赤祖父にも出店。この時は、しゃぶしゃぶ・すき焼きなどの鍋料理専門店「なべ維新」も一緒にのれんを出し、建物の1階・2階で和食・洋食を楽しめるようにした。そして21年2月には、富山市山室のショッピングセンターにテナントとして入って、なべ維新山室店をオープンしたのである。
 創業から4年で、4店舗を構えたわけだ。集客はもっぱら地元のタウン誌等に広告を出すことにより図り、結構な宣伝費を使った年もあった、という。
 「大きな赤字を出して事業を進めるのは本末転倒ですが、最初のうちは宣伝が大事でしょう。ホームページもていねいにつくり、こまめに更新するようにしていますが、やはり最初の告知のツールとしては雑誌広告がいいようです」と大坪社長は語り、「店の存在を知った後でネットで確認し、そして予約を入れてくださる方が多い」と続け、PR媒体を見分けていると思われるお客様の様子を紹介してくれた。

左上から時計回りに、ビーライン富山店・同高岡店、なべ維新高岡駅南店・同山室店。


北京に中国1号店を出店したわけは…

平成19年秋、当機構主催の「上海・長江流域ビジネス商談ミッション」に参加した時、ジェトロ上海センターの協力を得て、上海市内の飲食店の実地調査にも歩いた。
 “このペースでお店を出していって、4~5年後に10億円企業?”と読者の皆さんは思われるだろう。姉妹店を増やしていけば可能だろうが、県内では限度がある。では、東京や大阪にも出店して全国展開か…と思いきや、大坪社長の考え方は違った。
 「なんでもかんでも東京・大阪の時代ではない。中国の経済発展はすさまじく、近い将来、規模の大きさでは日本は抜かれるはず」  
 中国に留学した経験のある兄から、その発展の様子などを聞かされていた大坪さんは、十数年前からこう聞かされていたという。そして「足元を固めたら、中国に店を出したい」と機会をうかがっていた氏は、平成19年と21年の2度にわたって、当機構主催の中国ビジネス商談ミッションに参加。19年といえば2店舗目を出す1年前のことだが、この時すでに中国への出店の青写真を具体的に描き始め、北京、上海、大連、天津、煙台などの都市を、ジェトロの現地スタッフの協力も得ながら視察し、情報収集に努めたたわけだ。
 ではなぜ、中国での1号店は北京だったのか?
 「大連、上海へは富山からの直行便がありますから、候補に挙げやすいでしょう。私も途中まで、上海を中心に考えていました。ただ両都市とも、すでに日本の飲食店が多数進出していて、日本食は珍しくないのです。また私は、中国で1店舗出すことだけが目的ではなく、そこを足がかりに事業を大きくしていきたい。中国は人脈の社会といわれていますから、北京で人脈をつくって、そこを拠点に次の展開を図っていきたいのです」
 活字にするとわからないだろうが、31歳とは思えないほど、しっかりとした口調で大坪社長は答えた。
 さてその北京のお店。「火鍋維新 富山海(フーシャンハイ)」という名前で、大使館や外資系企業のオフィスの多い、天安門近くのビルの2階にこの10月にオープンしたばかり。中国で人気の火鍋料理を出し、豆板醤がきいた辛い味、すき焼き風味、みそだし風味、塩風味、豚コツ風味などと味に変化を持たせていくという。
 お店では、富山県産の食材や地酒をメニューに加え、店内の空いたスペースを利用して、県の物産も販売していく。そのための輸出業務を手掛ける商社も設立する予定で、その準備を進めているところだ。
 「3年をメドに、北京市内に富山海を10店舗まで増やし、その後は天津や煙台でも展開していく」。これが大坪社長が描いた中国でのビジネス展開の初期の構想だという。
   


FC店の展開や加工食品の販売も…

 こうして唐土での積極的な姿勢を紹介すると、「比重は彼の地に移りつつあるのか」と思いきや、そうでもない様子。「手羽先の移動販売車 てば壱」、「手羽先串揚げ酒場 てば壱」のビジネスモデルをオリジナルで立ち上げ、北陸3県を中心にFC展開していく予定だ。すでに移動販売車は3月からスーパー等の駐車場で(11月現在2台)、串揚げ酒場は9月から射水市のアルプラザ小杉で営業を始めている。
 「移動販売車は、高級車1台程度の資金で開業できますし、また串揚げ酒場の方は小さな居酒屋程度ならその1.5~2倍くらいの投資でお店が持てるので、若者や主婦でもオーナーになれるでしょう」と大坪社長はFCによる加入者の負担の軽減を説いて、「移動販売車は、はやっているスーパーの駐車場で営業した場合は、多い日で1日当たり7万円程度の売上げを立てています。月にして150万円前後、仕入れ等の費用を除くと約50万円がオーナーの手元に残る概算になります」と続けた。
 移動販売車でのFC加入費は500万円程度らしい。若者や主婦でも手が届きそうな金額だ。仮に失敗しても、再起できる投資額といえるだろう。またこれはビーライン側から見ても、少ない投資で売上げを立てるための方途でもある。それは例えば、従来の店舗展開の費用を見ればわかることだ。レストランやなべ維新を新たに出店するとなると、店舗の確保(テナント料や改装費)だけでも少なくとも数千万円が必要になってくる。しかしこのFC方式ので移動販売車ならびに店舗の展開は、基本的には加入者側のコスト負担となる。ビジネスモデルが完成した今となっては、本部側にキャッシュフローの重荷が発生するような事態はないだろうから、あとは加入店を増やすだけだ。
 「加入店が増えて、商品が動けば動くほど、本部側も潤ってくる。あと4年ほどで当社を10億円企業に育てるには、FC展開による加入権の売買や食品工場のような機能も一部持って、加工食品を販売することなども必要でしょう」

今年ビジネスモデルを確立した手羽先のビジネスは、このロゴマークのあるお店、あるいは移動販売車で行っている。

    

 大坪社長がここまで、売上げ10億円規模の飲食店にこだわるのは、なぜだろうか? スケールメリットを生かし、仕入れのコストダウンを図ろうとしているのは確かだ。またよりスケールの大きい仕事を呼び込むための一里塚として、ひとつの目標にしているようにも見受けられる。
 最後に、35歳くらいまでに10億円企業に育てることができたら、次は何をするのか聞いてみた。
 「そうしたら今度は利益率の改善に取り組んで、その一方で会社に体力を蓄えていきます。体力がついたら次は、30億円とか50億円の規模を目指して…」
 大坪社長はまだ若く、冒頭にも触れたように31歳だ。編集子の今までの取材では50代、60代あるいはそれ以上の経営陣が多く(某1部上場企業の90歳の取締役相談役というのもあった)、30年後のお店や会社のあり方、あるいは仕事上の抱負をうかがったことはほとんどないが、大坪社長は30年後でも61歳。まだまだ現役だ。描いた夢を大きく実現していることを期待するところだ。


株式会社ビーライン大坪悟社長
本  社/富山市布瀬本町4-12第二若林ビル1F
       TEL076-422-3222 FAX076-422-3368
事業内容/飲食店の展開、手羽先の移動販売・フランチャイズ店のFC展開
資本金 /300万円
従業員 /80名(パート等含む)
URL/http://www.beeline-e.com/
  
作成日2010.12.06
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