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第19回 株式会社エムダイヤ  

第19回 株式会社エムダイヤ
 廃棄物の山を宝の山にする技術を開発
 ビジネスプランも錬って、さあ販売!
  
 例えば「ニューヨークや東京などの大都市が、世界でも有望な鉱山」といったら、大半の人は首をかしげるだろう。しかしそこには、ニッケルやパラジウムといった稀少金属(レアメタル)が多く使われた携帯電話やIT機器、家電製品が普及しており、「レアメタルは形を変えて埋蔵されている」といってもいい状況だ。
 それゆえ、大都市は「都市鉱山」と称されるようになっている。そして、その“鉱山”から資源を効率的に採掘する技術が必要となり、それを持つ会社として、ここに紹介するエムダイヤが注目され始めた。
 昨年11月、同社では複合素材を分離・破砕する装置を「中小企業総合展2009in Tokyo」(東京ビッグサイト)で展示。来場者の耳目を集め、「各種のIT機器の他に自動車の電池、下着、クリスマスツリー等の分離・破砕はできるかという引き合いを多数いただいた」(森弘吉社長)という。

産業機械の修理の中で技術蓄積

上は木製パレットを分離・破砕したもの。釘は変形しているが、原形はとどめている。下はイボ竹を処理したもので、左は樹脂、右は鉄芯。
 もともと同社は、油圧プレスを手始めに工作機械や各種の産業機械の修理を行う会社として、昭和54年に創業。当初は個人営業であったが、平成17年に法人化し、20年に現社名に変更した企業だ。創業者は社長の父親、現在は会長である。
 森会長は根っからの機械屋だ。産業機械の修理を行う中で技術を身につけ、その機械を使っている工場の業務に合わせて、改造も行うほどになった。
 平成10年のことだ。あるリサイクル関係の企業から、「タイヤを、ゴムと鉄芯(スチールワイヤー)に分けて破砕する機械をつくれないか」と持ちかけられた。
 従来の破砕機では、ゴムも鉄芯も一緒に破砕。そのためゴムの中に鉄芯が残っており、多くの場合そのまま燃料として使われてきた。ゴムと鉄芯を分離するには手作業も含めた事前の解体・分別が必要で、処理コストがかさむという問題があったのである。
 また今までの破砕方法は、粗破砕に始まり、目的の大きさまで何度も破砕を繰り返してきた。そのため何台もの破砕機を置かなければならず、そのスペースも必要であった。さらには破砕時に、刃にかかる圧力が鉄芯に直接当たるため、刃こぼれや刃が折れるなど刃の損傷がたびたびあり、その補修費用も企業にとっては負担になっていたのである。
 機械屋の森会長は、客先の求めに応じてさっそく試行錯誤を始めた。そして一台で分離・破砕を同時に行う装置を開発。鉄芯などの硬い金属は、表面を逃げるように刃がゴムをそぎ落としていく。破砕が終わった段階ではゴムと鉄芯は混在しているが、それをベルトコンベアで磁選機に送ると、ゴムと鉄に分離されてしまう、というわけだ。
 この技術は後に、木製パレット、園芸用に使われているイボ竹(芯は鉄などの金属、表面は樹脂)の分離・破砕にも応用されるようになった。


会社の方向性を変え、若社長走る

09年度のとやま起業未来塾で、光ケーブルの分離・破砕装置の製造・販売のビジネスプランで最優秀賞を受賞した森弘吉社長。
 分離・破砕機を最初に開発してから7年経った時のこと。それまで分離・破砕機は30台近く販売しながらも、主な業務は従来の産業機械のメンテナンスとしてきたことを改め、分離・破砕機の製造・販売をメインにすることにした。同時に会社も法人化し、工作機械メーカーに勤めていた森弘吉氏がその中心的役割を果たすために退職し、社長に就任。技術屋の会長は分離・破砕機の精度を上げることに没頭し、若社長はその可能性を広げることに奔走した。そして光ケーブルの分離・破砕もできるようにし、産業廃棄物の資源化を狙ってマシンの販売を目指したのである。
 この装置は「エコセパレ」と名づけられた。1台で粗破砕から粒度の細かい破砕までできる、世界ではじめてのマシン(日本、アメリカ、中国、韓国で特許取得済み)。しかも同時に、素材の分離もできる。
 複数の破砕機が不要になったため、「コストは当社従来比で1/10程度に」(森社長)。分離・破砕を、同一装置で同時に行うため、スペースも処理時間も極めて効率的になった。
 同社では、タイヤはもちろんのこと、廃棄光ケーブルの処理に「エコセパレ」の果たす役割が大きいと期待している。光ケーブルは、10年ほど前から本格的に普及し始めた。その当時の寿命は、約10年。劣化で通信速度が落ちるため、定期的に交換しなければならない。昨今が、その第一次の交換時期だ。幹線ケーブルの交換需要が出るとともに、それに比例して廃棄されるケーブルも出てくるわけだ。
エコセパレMTR-200型の設備事例。右/分離・処理機、左/磁選機、中央の左上がりはベルトコンベア。(必要スペース:W2600×D1700×H2300)
  「日本電線工業会の推測では、平成25年には、年間1万tの廃棄光ケーブルが出るのではないか…という予測もあります」と森社長はいうが、イニシャルコストは1/10(当社従来比)で、しかもメンテナンス費用も安いとあれば、「エコセパレ」の登場はリサイクル業界にとっても朗報といえるだろう。
 


未来塾で最優秀賞

 実際、廃棄幹線ケーブルも資源の山だ。その中央には、鉄芯の通った高強度樹脂と光ファイバーケーブルの束がある。鉄芯は高純度なため再利用が可。高強度樹脂もプラスチック製品にリサイクルできるほか、ダイオキシンの出ない燃料として利用できる。また光ファイバーケーブルは、250ミクロン程度に粉砕して、ガラス入り樹脂として再び使うことが可能だ。
 「今はそれをさらに細分化して、分離する技術を開発中です。光ファイバーケーブルを10ミクロンくらいに粉砕し、樹脂とガラスに分ける。このガラスにはレアメタルのゲルマニウムが含まれているものもあり、分離回収できたら太陽光発電のパネルや特殊塗料の原料にも利用できるのです」
  森社長は極めて意欲的だ。廃棄光ファイバーの推計値データを集めたり、また分離・破砕されたものの利用の可能性も調べている。また「エコセパレ」の販売先として、処理業者の他に光ケーブルのメーカーも可能性があるのではないかと積極的にアプローチ。生産中のロス品の処理の際に、「エコセパレ」を使ってもらおうというのだ。
 同機は、刃などを調節することにより、破砕対象物の粒度が調節できる。これによりレアメタルの分離・破砕も可能になるが、そのための技術開発が目下の課題というところだ。
 ここまで紹介してきた同社の新しい取り組みについて、森社長は昨年の「とやま起業未来塾」において事業プランをブラッシュアップして、修了式で発表したところ最優秀賞に輝いた。34歳の若い社長が率いる社員10人の小さな会社だが、事業プランの中にダイヤモンドが埋蔵されていることを、講師陣は見たのだろう。
 5年後、10年後の同社が楽しみだ。

                          [光ケーブルの分離・破砕例]


連絡先/株式会社エムダイヤ
〒936-0002 富山県滑川市中村551-2
TEL 076-476-0062 FAX 076-476-0063
URL https://www.m-dia.jp/
 

作成日2010.03.01
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