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第18回 第一薬品工業株式会社  

第18回 第一薬品工業株式会社
 本業の製薬に加えて、栄養補助食品も
 企業に滋養強壮の効果が出始めた
  
 「3年前に開発を始め、今年2月に販売開始した、フコイダンと冬虫夏草を配合した『イムノフェリン』が想定していた以上に好評なのです。これを契機に、この分野に一層力を入れていきたい」
 取材の冒頭から、寺田敦社長は至って意気軒昴だ。不景気風が吹いているにもかかわらず、アゲインストの風を受けながらも前進するヨットのような状態。おそらく全社一丸となって、これを好機ととらえ、社運を盛り上げようと必死なことであろう。
 ところがここに至るまでには、紆余曲折があった。
今年2月の発売以来、好調な売れ行きを示している「イムノフェリン」。ウイルスの増殖を抑制し、免疫力を強める作用があるフコイダンと滋養強壮効果がある冬虫夏草がブレンドされている。右のビンタイプの「イムノフェリンDX」にはメシマコブとチャーガも入っている。(いずれも配置販売)

経営の柱を他にも…

 同社はもともとは、いわゆる売薬さん(配置事業者)向けの薬をメインに製造販売してきた。和漢生薬を使った独自ブランドの人気は根強く、例えば漢方製剤では「八味丸」や葛根湯、小青龍湯のエキス顆粒などは、売薬さんから絶大な支持を得てきた。また洋薬とゴオウ、オウヒなどの生薬やビタミン剤を配合した「カゼゴールドカプセル」も同社が誇る看板商品。ある販社が、別の配置事業者から「懸場帳」を買って、売れている商品を調べたところ「カゼゴールドカプセル」だったことがわかり、これを契機に扱うかぜ薬を全面的に切り替えたところ、かぜ薬の販売量そのものが増えたという。「カゼゴールドカプセル」は、何より消費者から信頼された薬であった。
 同社は、平成13年度には約60億円を売り上げた。ところがこれをピークに徐々に減り、ここ数年は40億円を上回る程度まで減少。配置薬業界全体の傾向とはいえ、往時の2/3になってしまった。
昨年4月に社長に就任した寺田敦氏。「本業の製薬に加え、未病に役立つ商品開発にも力を入れていきたい」と意欲的。
  売上げ減の主な要因は、配置薬の販売不振だ。ドラッグストアの躍進が大きい。またコンビニエンスストア等でも、一部の薬を買うことができるようになったこともある。またかつては多くの家庭にあった配置薬が、利用者側の代替わりが進む中で配置薬を置くことが引き継がれなくなり、利用者そのものが減ってきたことも要因のひとつといえるだろう。薬の流通、買い方が変わってきたのだ。
  こうした傾向の芽はすでに平成10年ころから現れ始めており、同社では経営健全化の手は打ってきた。そのひとつが、大手製薬メーカー向けのOEM生産だ。近時では売上げに占めるOEM分(受託含む)が3割を占めるまでになった。
 「中でも好評なのが、当社が製造元となっているチョコラBBドリンクシリーズです。これはもともとは、弊社の石黒龍太郎会長が研究所在任中から商品化を目指して開発していたものですが、エーザイさんに多大なご支援をいただいて陽の目を見ました。昭和62年の生産開始以来、女性のお客様を中心にご支持いただいているようです」
 寺田社長がいうチョコラBBドリンクは、近時ではタレントの井上真央さんがCM出演してPRしている商品。平成11年の薬事法改正によってコンビニエンスストアでも販売可能になったため飛躍的に伸び、またシリーズ商品も増えてきた。


栄養補助食品もデータをしっかり

  同社ではまた、自社ブランド・自社企画の栄養補助食品の開発にも積極的に取り組んできた。例えば、黒酢エキスを主原料とした「麹肥減」やブルーベリーエキスを主に使った「アイ・バランス」。鹿児島産の黒酢を使った「麹肥減」は、生活習慣病の改善の一助となることが期待され、また「アイ・バランス」には目の健康維持の成分として注目されているアントシアニンが多く含まれる。食文化や生活スタイルが変化・多様化した今日においては、必須とはいえないまでも望まれる栄養補助食品のひとつ。これらは配置薬の市場で主に販売され、人気の商品に育ってきたものだ。
 「医薬品メーカーが栄養補助食品をつくるメリットは、製品のクオリティー、信頼性の高さにあるでしょう。当社ではデータをきちんと取り、健康の保持のためにどのような効果が期待できるのかを調べています。黒酢の『麹肥減』については中国で臨床試験も実施しましたが、こうしたデータを元に弊社の営業担当者が、配置販売業者さんに商品の説明をしっかりと行っています」(寺田社長)
  同社では15年ほど前から、毎年2、3種類の栄養補助食品を出してきた。「医薬品メーカーで、配置薬を柱にしている会社ですから、新しい配置薬を開発していくことは大切です。それに加えて、生活者が少しでも病気にならないことを目指す医療体系の確立、いわゆる治療よりも予防に力点を置いていく観点からも、栄養補助食品の位置づけは重要です」と寺田社長が訴えるように、栄養補助食品の市場は魅力的だ。そして何より、配置薬1箱(1袋)が数百円~1,000円程度に対して、栄養補助食品は数千円から1万円前後。売上げを伸ばしやすいのは、栄養補助食品だ。また独自の新ブランドも、配置薬より栄養補助食品の方がつくりやすい、という事情もあるだろう。
 とはいっても、栄養補助食品は浮き沈みが激しいため注意しなければいけない。ブームになると急に類似品が出回り、時にはひょんなことから一気に熱が冷めてしまう。過去にはこうした例が、枚挙にいとまがないほどあることを、読者の皆さんもご存じだろう。
 「ですから当社では、医薬品をつくるのと同じような基準で、栄養補助食品をつくっています。動物実験や臨床試験で商品の特性をしっかり把握し、原料の品質管理、製造過程の衛生管理などには細心の注意を払っています」と寺田社長は医薬品メーカーならではの姿勢を強調し、「チョコラBBドリンクの開発・製造を通して、品質保証のレベルアップを図ってきましたが、これを新しい栄養補助食品にも生かしていきたい」と続けた。 


配置で好評で、一般売りも

「イムノフェリン」の開発に当初からかかわってきた藤田章夫氏。「栄養補助食品といってもデータはきちんととっています」と胸を張る。
 冒頭に紹介した「イムノフェリン」も、大学の協力を仰ぎ、原料の選定や特性把握などのために動物実験を繰り返した末にできた商品。従来にない、滋養強壮などの効果のある栄養補助食品を開発しよう、という狙いのもとで企画された。
 「海藻やキノコ、菌類などの免疫や滋養強壮について関心があり、以前から富山大学の薬学部、和漢研の先生方に指導していただいていました。『イムノフェリン』は林利光教授との共同研究によって生まれたのですが、3年前の平成18年にご相談した時、『海藻やキノコ単体で試みるのではなく、ブレンドしたらいいのではないか』と勧められたのが、そもそもの始まりでした」
 とは開発に携わった藤田章夫さん(取締役・信頼性保証部長)の弁。母校の教授たちとの共同研究には熱が入ったようだ。
  原料の組み合せと、各々のブレンド量は動物実験をしながら探られ、最終的にはウイルスの増殖を抑制し、免疫力を強める作用があることが研究されているフコイダン(メカブ)と、滋養強壮の効果があると知られる冬虫夏草の組み合せに決定。「イムノフェリン」と銘打って今年2月に販売し始めたところ、新型インフルエンザの流行に備える意味もあって配置事業者から引き合いが相次いだ。また「薬局・ドラッグストア向けはないか」との問合せも多数入って、1箱の粒数が少ない「パンデミン」も商品化。生産が追いつかない状態になってしまった。
好調な「イムノフェリン」を受けて、薬局・ドラッグストア向けのブランドとして9月より「パンデミン」も販売。内容量が20粒と半減しているだけで、1粒の成分はイムノフェリンと同じ。
  こういうのを嬉しい誤算というのだろう。「当初に立てた販売計画の3倍ほどは売れています」と寺田社長は満面の笑みを浮かべ、「社員の中にも購入希望者が多いのですが、『しばらく待って欲しい』とお願いしているほどです」と続けた。「イムノフェリン」は、会社にも滋養強壮をもたらしたようだ。
 ちなみに「イムノフェリン」の開発は、中小企業地域資源活用プログラムに認定(平成20年度)された、 “くすりの富山”ならではの事業。地元にも地元産業界にも“滋養強壮効果”をもたらしてくれることを願って止まない。

連絡先/ 第一薬品工業株式会社
〒931-8441 富山県富山市草島15-1
TEL 076-435-0755 FAX 076-435-4900
URL  http://www.d1yk.co.jp/
 

作成日2009.11.02
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