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第15回 株式会社ランブール  

第15回 株式会社ランブール
 婦人物ファンデーション一筋60年 機能を充実させてさらに飛躍を


 このコーナーを開けて、さぞや驚かれたことだろう。記事の冒頭に下着姿の女性の写真が写し出され、「えっ!?」と思われた方がいるかもしれない。ビジネスの栄枯盛衰を物語るコーナーだけに、読者には男性の管理職、あるいは経営サイドが多いのではないかと編集子は推測しているのだが、びっくりしてサイトを閉じようとされた方もいるのではないだろうか。でも、まじめなビジネスのお話だから、最後までお付き合いいただきたい。
 今回の取材先は、下着業界では老舗のランブールだ。創業は1948(昭和23)年。一貫してOEM(相手先ブランド)で婦人物下着をつくってきたため、社名はあまり知られてはいないものの、業界ではW社と同様の存在。60年に及ぶ同社の足跡は、日本の婦人物下着の近代史と重なっている、といっても過言ではなく、二代目社長の鴨島榮治氏にそのあたりをうかがった。

ウエストニッパーの考案から始まった

「女性が美しさを求めるのは、いつの世も自然なことです。当社はそのお手伝いをしたい」と語る鴨島榮治社長。
 創業者は、2年前まで会長を務めていた鴨島外子さん(現社長の母親)だ。根っから商売が好きな人で、戦後間もなく化粧品販売を手がけた。当時、せっけんや化粧品は珍しく、北陸一円の事業所を回って、女性を対象にした職域訪問販売を行った。
 能登地方でよく足を運んだのは、機屋である。能登はパンツなどの細幅のゴム入り織物が盛んで、機屋にはたくさんの女性が働いていたからだ。
 ある時、幅広に改良したゴム入り織物を使って、ウエストニッパー状の下着を考案した。ウエスト、ヒップを手軽に引き締められるとあって、またたく間に人気を呼んで、売れた。まさしく「飛ぶように売れた」のである。
 天然ゴムが使われたこの下着を、鴨島外子さんは「ラテックスゴム入り伸縮織帯」と名づけ、これを機に鴨島商会を創立。鴨島印のブランドで、洋裁学校などを中心に営業をかけて販路を全国に広げ、以来、下着一筋できたわけだ。
 しばらくして、今度は股(まち)を亀甲状のメッシュにしたガードルを考案した。日本初の、クロッチメッシュガードルの誕生である。このガードルは通気性がよく、衛生的でもあるため日赤病院の看護婦さんなどに好評で、そこから評判が広がって生産が追い付かないほどになった。
 まだボディーファンデーションという言葉もなく、装身具と呼ばれていた時代だ。にもかかわらず、鴨島外子さんはパターンメイクから販売までをこなし、実用新案をいくつもとって、着心地のいいファンデーションを世に送り続けたのである。ファッション界や服飾界で話題になったのはいうまでもない。それら大御所の御墨付きもいただいて、事業の勢いはますます拡大していった。
 パワーネットが日本で生産されるようになったのは、昭和40年近くになってのことだ。ところが生産を委託していた近所の小さな工場では、このパワーネットを扱うことができない。そこで工場を建てて内製化を開始。また昭和50年には法人化してランブールを設立し、生産力をさらにアップして、OEM先の需要に答えてきたのである。


品質重視ですべて国産

商品の企画・デザインは、この女性スタッフを中心に行い、縫製も自社工場あるいは国内の協力工場で実施。
 同社の歴史を俯瞰すると、ざっとこんな具合だ。創業以来、右肩上がりで販売先を増やし、売り上げも増やしてきた。商品の供給先も、売り方は一貫して訪問販売を続け、試着して着心地を確認した上でお客様に買い求めていただいていた。
 「私どもの商品は、量販店に大量に出回っている下着とは違いますし、補整下着のように単に締めつけるだけのものでもありません。当社のファンデーションは、着心地、機能を第一に求めてきました。また品質を維持するために安易に海外生産はせず、繊維も生地も国内で生産されたものを使い、裁断・縫製などの加工もすべて自社で行ってきました。違いを実感していただくには、試着していただくしかありませんが…」
 と鴨島社長は力説するが、悲しいかな編集子は♂であるため、試着はかなわない。そこでわかりやすい例で示していただくと、まず量販店で扱われているものは、生地の裁断ラインが単純だ。大量生産のためにはパターンメイクは単純な方が効率的で、縫製も速い。ただ、それをもとに縫製すると、フィット感が悪く着心地が悪くなってしまう。またサイズのラインナップも少ないため、見た目はファッショナブルであっても、着用の満足はなかなか上がらない。この点、着心地を重視してきた同社ではボディーラインに合わせてパターンメイクをそろえ、サイズバリエーションも豊富に用意してきた。
 一方、いわゆる補整下着との違いは、加圧の感じ方がまったく違うことだ。補整下着は着用後しばらくすると、往々にして息苦しくなってくる。ごわごわした生地で体を締めつけるだけだから、当然に起きてくる現象だ。これに対してランブールのファンデーションは、最近注目を集めている弾性ストッキングと同じ程度の加圧感で、生地の外側は化繊でも内側は綿にするという細かい配慮を施した商品も提供してきた。また値段も違う。補整下着は一般にセット販売され、1セット20~30万円するものが多い(中には50万円を超えるものもある)。一方、ランブールの商品は単品でも購入が可能で、デパートなどで販売されている商品より若干高い程度だ。

 


「自社ブランドの新商品を持とう!」

小矢部市郊外の高台にある同社と工場。
 法人化を機に、建設会社に勤めていた榮治氏(現社長)も経営を手伝うようになった。そして、その7年後には社長を引き継いだ。
 創業以来、追い風しか受けたことのない同社に逆風が吹き始めたのは2~3年ほど前からである。補整下着をマルチ商法的に販売していたグループが社会問題となり、またリフォーム詐欺などが新聞やテレビをにぎわした。訪販業界は一気に市場が冷え込み、例えば平成18年の婦人下着の訪販市場は、前年比でマイナス33%(日本ボディーファッション協会調べ)。二ケタのマイナスは今も進行中という有り様だ。
 「このままでは、OEM先の販売会社にとっても、当社にとっても死活問題になりかねません。そこで、自社ブランドの新商品の開発と、新しい売り方を模索し始めたのです」
 鴨島社長が語るその新商品とは…。
 読者の皆様には誠に申しわけありませんが、開発中の現段階では紹介することができません。しかし取材に同行した女性カメラマンは、「そんな下着がほんとうにできたら、私も着たい」といい、取材後に意見を聞いた編集子のヨメさんや知人の女性は、全員が「ほしい」と返してきた。
 同社では、ブラジャー、ボディースーツ、ガードルなどのベーシックなものから、ショーツやキャミソールなどのインナー、腰痛ベルトや加圧タイツなどのメディカルシーリーズなど、ボディーファンデーションではないものはないというほどの商品をそろえてきた。パターンの数だけでも2000以上ある。まさしく専門店だ。
 そこに、開発中の新商品が加わると、着心地と機能を追求してきた同社にとっても、業界の老舗としても面目躍如といったところではないか。  


ビジネスモデルを提案したい

バレンタインのお返しに、奥様に1着いかがでしょう。
 「問題は売り方です。今までの訪販の他にインターネットでの販売もある。また実店舗を構えた形での売り方もあるでしょう。この場合は、単なるファンデーションの専門店になるのではなく、 “美しくなる”をトータルにご提案するようなお店ではないかと検討しています」
 鴨島社長には、試案がいろいろあるようだ。スキンケア化粧品の製造販売やエステサービスを提供する同社のグループ企業・ナウとのコラボレーションもそのひとつで、新しいビジネスモデルを確立して、OEM先の企業にそのビジネスモデルを提案する企画も持っている。
 女性カメラマンが最後に、「その下着、いつ発売するの?」と鴨島社長に尋ねてインタビューを締めくくったが、男性読者の皆様、奥様に1着プレゼントするのはいかがでしょう。ちなみに同社の商品開発は、当機構の本年度の「とやま発新事業チャレンジ支援事業」に採択された。




連絡先/ 株式会社ランブール
〒932-0131 富山県小矢部市名畑53-5
TEL 0766-61-3777 FAX 0766-61-3778
URL http://www.ranbuhl.co.jp/
 

作成日2008.12.05

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