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第11回 立山化成株式会社  

第11回 立山化成株式会社
原薬メーカーのノウハウ・信用を生かし
有機合成で新展開を模索

 有機化学というと従来は、医薬品や農薬、そして樹脂・プラスチック等々の産業で活躍し、さまざまな製品を生んできた。ところが導電性ポリマーの発見(ノーベル賞を受賞した白川英樹博士ら)が引き金となって、電子材料の世界でも注目され始めた。最近の身近な例では液晶ディスプレイ。テレビやパソコン、携帯電話などに欠かすことができなくなりつつある液晶は、10~20種の化合物の合成によってつくられ、また次世代のディスプレイとして期待されている有機EL(電気を流すと発光する有機化合物を利用した表示システム)の開発でも、新たな有機化合物の合成を目指して盛んに研究が行われている。
 その電子材料の世界で、新たな道を切り開こうと立山化成が動きだした。

新たな有機化合物の開発にチャレンジ

 もともと同社は、製薬原料のメーカーである。医薬品や化学薬品等の原末・中間体を受託生産し、1953(昭和28)年の創業以来、依頼先のメーカーに納めてきた。大手製薬メーカーが経営効率を高めるために原薬製造部門のアウトソーシング(外部委託)化に拍車をかけた10年ほど前からは、国内はもとよりインドや中国などの海外の原薬メーカーとも競合しながら受注。プラントの増設とともに国際的品質管理基準(ISO9002)や医薬品の品質管理基準(GMP)の認証を取得し、さらなる生産量の拡大を図ってきた。
 その立山化成が、電子材料の分野に進出しようというわけは…。
 「この分野は、日本は世界のトップランナーで、電子材料の開発・発展の可能性はまだまだあり、裾野も広い。当社が、医薬品で培ってきた有機合成のノウハウを電子材料の世界で生かして、さらなる技術の蓄積を図ることを狙っています」
 片口真社長は、新たな分野にチャレンジする理由を以上のようにまとめるが、業界でもその動きは活発なようだ。従来の試薬開発の企業に加え、医薬品や工業薬品などを製造してきた企業も参入し、産業展が開かれても活況を呈している様子。高機能な化合物が合成された場合は、1kg当たり数百万円、ものによっては1kg当たり700~800万円で取り引きされるケースもあるという。
 余談になるが、「夢の素材」と称されている有機化合物のフラーレンは、1985(昭和60)年にスモーリー博士ら3名が発見(後にノーベル賞受賞)。フラーレンを使った合成物質の用途開発が進み、今では医薬・バイオ、エネルギー、光学・電子部品など様々な分野で使われている。スキーのワックスにも使用され、滑走速度を上げるのに効果を発揮しているという。(フラーレン:60個以上の炭素原子が強く結合して、球状あるいはチューブ状に閉じている。代表例のC60はサッカーボールと同じ形をした球形分子で、直径は約0.7ナノメートル[1ナノ=10億分の1メートル])
 「ファインケミカルは、今や超ファイン・ナノの世界に入って、いろんな産業とかかわっています。ですから、スクリーニングのテーマも多い。当面、当社は電子材料の分野に的を絞り、有機ELなど役に立つ有機化合物を開発したい」
 と片口社長は抱負を語るが、注目されている分野だけに競争も激しいといえるだろう。有機ELは自ら発光するためバックライトが不要になり、ディスプレイを従来より薄くすることができる。また、どの角度から見ても画像が同じように見え、動画をきれいに再生することも可。携帯電話はさらに薄くなり、ワンセグの画質も格段にアップするということだろうか。

同社の品質管理棟。医薬品原末の品質管理はもちろんのこと、α-リポ酸を供給した健康食品メーカーからの依頼で、商品の成分試験や安定性試験なども行っている。


α-リポ酸を使った商品の共同開発も…

同社のα-リポ酸が使われている商品の一部。「リポQ-100」はケンコーコムでも人気の商品で、スポーツ選手が試合や練習の後で摂ったりしている。「リポ衛門」は宴会サプリ。「ほほエンジェル」は廣貫堂と共同開発した化粧品で、この夏より販売されている。
 同社には、数年前からにわかに活気づいた事業がある。2004(平成16)年に、「医薬品の範囲に関する基準の一部改正」が行われ、食品でのα-リポ酸(チオクト酸)の使用が可能になり、それに伴って健康食品業界ではα-リポ酸を含んだ商品を相次いで開発。国内でα-リポ酸を生産している企業は立山化成のみであったため引き合いが相次ぎ、またアジアの製薬メーカーから輸入されるα-リポ酸もにわかに脚光を浴びることとなった。
 しかしながら、手放しで喜べるものでもない。α-リポ酸は医薬品(糖尿病や慢性肝炎の薬)として使われ、その効果は医療の世界では認められてきたが、昨今のブームは、ダイエット効果を期待してのもの。“α-リポ酸は糖代謝の働きを助ける”が、あるマスコミによって拡大解釈されて“脂肪を燃焼させる”となり、“中年になるとα-リポ酸の体内生産は減るから、α-リポ酸を摂れば中年太りを防ぐことができる”と話がふくらみ、広がったのであった。
 ただ、熱しやすく、また冷めやすいのが“健康もの”の世界。特に、ダイエット関連は雨後の筍のように次々と商品が現れていることを考慮すれば、一時的なブームに流されることはあまりにもリスクが大きいのではないか。(ちなみに、厚生労働省の付属研究機関である国立健康・栄養研究所では「α-リポ酸を経口投与して体脂肪の減少を評価した信頼できる論文は見当たりません…。現時点ではヒトにおいてα-リポ酸に痩身効果があるかどうかは不明であり、今後の科学的な検証が必要…」と指摘している。 http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail471.html
 「私どもとしては、α-リポ酸が正しく認識され、適正に使われることを望んでおり、原料供給先の健康食品メーカーからの依頼で成分試験や安定性試験などを行い、信頼確保に努めています。また信頼できる企業と商品の共同開発を進め、商品の差別化も図っています」
 原薬メーカーだけに片口社長は商品の信頼性を第一に置いているが、そうした姿勢が効を奏したのだろう。同社と渡辺薬品工業が共同開発した健康補助食品「リポQ-100」の売行きが好調で、6800円と高額な割にはリピート客が付き、ケンコーコム(日本最大級の健康関連商品の通販サイト)のα-リポ酸サプリメントの中では月間売上げ1位にランキングされることが続いている。
 また今年5月には、α-リポ酸を化粧品に配合することが認められた。欧米では、α-リポ酸入りの化粧品はシミの改善や肌の老化防止に効果があることが確認され、さまざまな化粧品が開発されているが、日本でも化粧品メーカーが相次いで新商品を出してくることが予想される。化粧品メーカーへの原料供給を図ることはもちろんのことだが、同社では地元の配置薬メーカー・廣貫堂と新しい化粧品を共同で開発。「ほほエンジェル」と名づけられた美容ジェルが一足速く商品化され、店頭販売、ネット販売の他に、いわゆる売薬さんのネットワークを使っても売り出された。

        


 電子材料の分野での新しい有機化合物の開発、健康食品・化粧品での商品の共同開発や原料供給。立山化成では新たな事業を模索し、その芽も見え始めた。医薬品原末の製造等が同社の大きな柱であるが、柱の数が増える日も近いのではないか。
 事業が順調に進んで“ほほえんでる”。
 片口社長はもちろんのこと、開発の最前線に立つスタッフがその日を夢みているのではないか、と思えてきた。
 

連絡先/ 立山化成株式会社 〒939-0302富山県射水市大江1133
TEL 0766-55-3700(代) FAX 0766-55-1545
URL http://www.tateyamakasei.com/
 

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