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第31回 Destin(デスティン)  
第31回 Destin(デスティン)
皆が危惧した理科実験ショービジネス
もみ子先生がまいた種は芽を出して…

「東京のテレビ番組2つからオファーがありました。1つは私の方から断り、もう1つは企画の相談中に先方から断ってきた」という紅子先生。
 「理科実験のエンターティナーになりたい」
 この物語の主人公・池田紅子(もみこ)さんがそう思ったのは、今から8年ほど前。大手ソフトウエア会社を辞めて、氷見にUターンしてきた頃のことだ。
 「でんじろう先生」で名を馳せている米村傳治郎氏は、当時まだテレビには出ておらず、実験エンターティナーといっても雲をつかむようなもの。そこでまず池田さんは、“理科の先生”の経歴が書けるようにと、富山県立大学生物工学科で実験助手を務め、後には高校教員となり情報処理の授業を受け持った。
 ある時、富山県庁のホームページを閲覧していて、たまたま「とやま起業未来塾」の紹介コーナーを開いた。その説明には “創業の夢をかなえるための経営塾”とあるではないか。さっそく塾の運営主体である当機構に連絡。時は平成21年新春のこと。高校には3月いっぱいでの退職願を出し、新年度から、とやま起業未来塾で学ぼうと期待に胸を膨らませていた。
氷見市海浜植物園で行っている「もみ子先生の実験教室」の様子(この時は、入浴剤を使ったペットボトルロケット)。毎回20~30名の子どもが、県内各地からやってくる。詳しくはデスティンのホームページで。


未来塾講師のアドバイスに従って…

当支援センターの専門家派遣制度を活用して(21年度)、ホームページ制作の専門家の指導を受けて作成したデスティンのホームページ。再び同制度を活用して、23年度末に一部リニューアルも実施した。
 未来塾に入って、講師や塾生に実験ショーを見せると、皆口々にいった。「もみ子さん、おもしろ~い。でもそれ、富山で商売になるの? 電力会社の実験ラボは無料だよ」と。
 それでも本人は夢を高く掲げ続けた。学習塾を営むかたわら、実験ネタを仕入れるために理科教員経験者を訪ね、教えを仰いだ。ある御仁は「子どもの理科離れが進む今、意義がある」と全面的に協力してくれた。
 塾の修了時、主任講師は「地元で顔を売ることが先決」とアドバイス。池田さんはさっそく、地元のケーブルテレビに出向いて「とやま起業未来塾の卒業生」と自己紹介した後、おもしろ理科実験ショーの番組プランを滔々(とうとう)と語ったのだ。
 会ったばかりの女性がいきなり、実験番組を提案してきたのだから、局の担当者は驚いた。ただ、おもしろそうだったので「試しに1回やってみよう」と提案。後日、収録していた時、別の番組のために局に来ていた新聞記者の目にとまり、“女でんじろうの卵が氷見にいた”と記事になったのだ。
 これを見て、氷見市海浜植物園での理科実験ショーのオファーが舞い込み、それがまたテレビで取材されて「もみ子先生のおもしろ実験」は徐々に知られ、小学校や公民館のイベントに招かれるように。平成22年度には氷見市で開催された富山県児童クラブ大会で、小学生・保護者・教員ら約700人を前に実験ショーを行った。そして、大会に参加していた氷見市の職員と知遇を得たことを縁に、翌年度には市内の保育所・小学校での実験ショーを行うようになった。また同じく大会に参加していた県教育委員会の広報紙「ほっとタイムス」の編集者からも声をかけられ、紙面に「おもしろ実験」のコーナーを持つようになったのだ。
幼・保育園児(年少・年中・年長)、小学校1・2年生の子を持つ保護者向けに発行されている子育て情報紙「ほっとタイムス」(発行/富山県教育委員会、発行部数7万部)。そこに親子で楽しむ実験ネタのコーナーを持つ(23年度)。


ビジネスになりつつある理科実験ショー

平成23年秋に行われた第7回FITネット商談会に出展した際の、ブースでのプレゼンテ ーションの様子。こうしたジャンルの出展は珍しく、来場者には人気があった。
 この間、当支援センターでも池田さんを積極的に支援。21年度には専門家派遣制度を活用してホームページの制作支援を行い、23年度には中小企業支援施策普及員によるフォローと創業・ベンチャー挑戦応援事業の採択による創業時費用の一部を助成した。また秋には、販路開拓支援の一環として第7回FITネット商談会でブースを提供し、実験ショーのPRに務めた。
 「まさかここまで来るとは…」と未来塾の講師陣も驚くほどに事業は育ち、「数千円だった月収入が、今は若いOL程度まで増えてきた」(池田さん)という。
 さて、女でんじろう・みも子先生の次なる目標は、「法人化と仲間の実験エンターティナーを育て」て、手広くショーをこなすこと。「富山に根を張って、理科好きな子どもを増やしたい」と瞳を輝かせている。

 所在地/氷見市本町7-17
 代表者/池田 紅子
 資本金/個人営業(法人化の予定)
 従業員/0名
 事 業/学習塾、理科実験に基づく体験型学習塾の運営、および出張理科
      実験ショーの開催
 TEL/0766-30-2327
 URL/http://www.ikedamomiko.com/

作成日2012.02.01
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