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「龍頭」上海はますます成長か
~上海ビジネス交流ミッションリポート~
 

第6回 世界をリードする環日本海経済交流
「龍頭」上海はますます成長か
~上海ビジネス交流ミッションリポート~

 昨年11月、環日本海経済交流センターは「県内企業上海ビジネス交流ミッション」を派遣した。ミッションの参加者は11企業、総勢20名。世界最大級の貿易港に発展しつつある「洋山深水港」の他、中国国内最大級の見本市「第8回中国国際工業博覧会」の視察、さらには上海に進出した企業を訪ね、現地でのものづくりの実情を知ること等が主な目的であった。ミッションの概要を紹介しよう。
 


ハブ化に拍車がかかる

 富山空港を発って約2時間30分。上海航空FM826便は高度を下げ始めた。視察地のひとつ洋山深水港と、上海と同港を結ぶ東海大橋(全長32.5km)を遥か上空からでも望むことができないかと期待していたが、あいにくの曇り空でその願いもかなわなかった。
 上海には、1980年代に建設された上海港がある。長江河口の河川港であるため深水が浅く、大型のコンテナ船は接岸できない状況であるものの、’90年代以降、同港で扱うコンテナ数は飛躍的に伸び、’90年の200万TEU(TEU=20フィートコンテナ換算)から’04年には1,456万TEUと7倍強。当時の統計で世界第3位に躍り出て、さらに増える勢いを見せていた。
 中国政府によって洋山深水港プロジェクトが承認されたのは’02年3月のことである。6月から工事が始まり’05年12月には第1期工事が完工し、開港した。上海市の南東沖27kmに浮かぶ小島2つを中核に埋め立ててつくった港だけにさすがに大きい。埠頭の長さは1,600m、最大深水15m、コンテナバース5つを備え、年間220万TEUの取り扱いが可能。第2期工事が終了する’10年には、埠頭10km、コンテナバース30、年間取扱量1,500万TEUを目指しているというから、政府の意気込みもうかがえる。
 「このプロジェクトは’20年まで続き、最終的には長さ18kmの埠頭、50のコンテナバースを有する巨大な港を目指しています。また上海浦東空港では、第2空港ターミナルビルと貨物専用も含めて5本の滑走路を増設する計画を持っています。上海のハブ化が高まればアジアの物流が変わる可能性が高く、周辺国との競争の激化も避けられないでしょう」
 当センターの貿易投資アドバイザー・野村允氏は、現地でのヒアリングを踏まえた上でこう指摘。長江流域経済圏にあって、「龍頭」と比喩される上海の物流インフラが一層拡充されることは、「龍」そのものをも大きくするようだ。



現地社員の人材育成が課題

 現地進出企業の視察では、2社を訪問した。そのうちの1社は、上海宝菱塑料製品有限公司。家電用・家庭用品用・建築用プラスチック製品をつくっている会社で、日本企業2社が出資している。
 よく報道されたので周知のことだが、かつての上海では停電が頻発した。電力増産が都市の成長に追い付かず、工場のラインが動かないこともしばしば。しかし上海市が他省からの融通電力を活用し始めたので、’03年以降は徐々に解決してきた。電力問題は好転傾向にあるといってよい。
 代わって出てきたのは、労働力不足の問題である。3K職場を忌避する傾向が強くなり、また技術者や中間管理職を採用しにくい状況が表面化。ミッションに参加した(株)タカギセイコー(通信機器事業部氷見工場製造技術課・課長)の福田昌宏氏は、「上海宝菱塑料では、通信教育を奨励するなどして、一般工員の底上げと中間管理職のスキルアップを図っておられた。地道な活動の結果、現地に根付いて事業展開されていることが実感できました」と振り返り、「弊社も上海には工場進出していますが、軌道に乗っているとはいえない状況です。国民性の違いをきちんと把握して、人材育成に取り組んでおられた上海宝菱塑料には学ぶこと大でした」と結んだ。



中国最大規模の工業展

 さて今回のミッションは、これから紹介する「第8回中国国際工業博覧会」(’06/11/1~5)の開催に合わせて行ったといってもよい。この博覧会は、前年までは「上海国際工業博覧会」と称して行われ、’05年は1,306社・3,418小間の出展(海外からは21カ国・240社・930小間)。来場者は284,900人(海外からは59カ国・12,700人)であった。
 国家級の行事に昇格した’06年には、1,968社・4,680小間の出展があり、うち海外出展者は22カ国から331社・1,458小間。来場者は106,000人に減少したものの、これは専門化と商業化が図られた結果であり、ビジネス客に絞られた中国最大規模の工業展になりつつある。
  ‘06年の博覧会には、ミッションに参加した企業も出展。上海中部工営有限公司は初めての出展で、具体的な引合いは少なかったものの大きな手ごたえを感じたようだ。
 日本の親会社である中部工営(株)(取締役・営業部長)の川畑邦文氏が語る。
 「半田付けロボット、電動ドライバーなど、協力メーカーのデモ装置を稼働させると、日本の展示会とは違った反応があり、ブースは見学客でいっぱいになりました。目の輝きが違い、マシンを食い入るように見つめておられたのが印象に残っています。今回の出展は、現地法人の宣伝が目的でしたから、その意味では有意義な出展でした」
 07年度も、上海地域へのミッションが計画されている。詳細は追ってHP などで紹介予定であるが、県内企業の皆さんにはぜひともご参加いただきたい。団長(センター長)の藤野文晤氏は、大手商社で30数年にわたって中国ビジネスを担当してきた歴戦のつわもの。中国経済界に人脈が多く、単なる視察旅行以上に密度の濃いミッションとなっている。



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