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「NEAR2006 inとやま」
北東アジアの優秀部材企業が富山に集結
 

第5回 世界をリードする環日本海経済交流
「NEAR2006 inとやま」
北東アジアの優良部材企業が富山に集結
輸出、生産受託、販売提携を目指して活発に商談

 富山県と日本貿易振興機構(ジェトロ)などが、北東アジア地域の貿易促進を目指して2年毎に開催しているNEAR(北東アジア経済交流EXPO)。その第4回目が9月6日、7日の2日間にわたって開催され、多数の来場者で賑わった。
 出展企業は中国、韓国、モンゴル、ロシア沿海地方、県内からは環日本海地域と交流のある企業、大学、団体など151社・団体が出展した。海外企業は各社自慢の産業部品、材料を展示し、見学に訪れる日本企業に売り込んだ。熱気をおびた会場の様子を、出展者、来場者のコメントを挙げながら紹介しよう。


 9月6日(水)午前。前日までの真夏日とは打って変わって小雨模様となった。開場は10時にもかかわらず、それ以前に会場である富山産業展示館(テクノホール)の駐車場は満車状態。また富山駅とテクノホールを結ぶ無料リムジンバスからは見学者が次々と降り、展示会場入り口のホールは既に黒山の人だかり。建物の外まで来場者であふれていた。
 会場は、良きビジネスパートナーを探そうとする意気込みが満ち溢れ、同様熱気に満ち溢れていた。
 今回出展した外国企業は、国別では中国114社、韓国16社、モンゴル3社、そしてロシア沿海地方から1社。うち、中国企業は、北はハルビン、瀋陽、大連、北京、天津、青島、無錫、蘇州、上海、杭州、温州などの多数の都市からの来日となっており、環日本海地域での経済交流への関心の高さを物語っている。
 また、業種別では、工作機械・産業機械・鋳造・金型などの金属加工やアルミ・ステンレス等の加工品・電機電子機器・自動車・精密機器などの部品、そしてプラスチックや樹脂などの成型品等々。商談希望内容は、日本への輸出、生産受託、販売提携などのほかに、将来的には技術提携や共同開発を望む声もあった。    

日本企業の高い要求に応える外国企業が出展

 「NEARも含め、日本の産業展示会への出展は初めて。とても緊張しています」と語るのは、杭州万龍機械有限公司・経営統括経理の辺文超氏。一緒に来日した技術部長の黄琴氏とともに、バルブ製品や自動車部品などの紹介に余念がない。
 同社では製品のほとんどを海外に輸出し、その約70%はアメリカ向け。残りの30%はヨーロッパ等の企業に販売している。これまで日本企業との取り引き実績はなく、この展示会出展を契機にその足掛かりをつかもうと必死だ。
 辺氏は「品質、納期、コストについて、日本の企業が求める厳しさを知っています。納期については、カンバン方式という言葉があるでしょう。日本とのビジネスを望んでいる中国企業の多くは、これを知っていますし、中国国内でも同様のシステムをとる企業が現われています。こういった厳しさはアメリカやヨーロッパの企業との取り引きにも共通しており、当社はそれに応えてきました」と自信たっぷり。この取材の前に、ある産業用輸送機械メーカーがおよそ30分にわたって、同社の生産体制や設備などを熱心に聞いていた時も、欧米の取引先名を具体的に出しながら、動じることなく答えていた。
杭州万龍機械有限公司の辺文超さん(左)、黄琴さんと、同社の展示製品。欧米の企業への輸出をメインにし、次は日本の市場を開拓したいと熱弁していた。

 天津市中舟船舶工貿有限公司・プロジェクトマネージャーの宗良華氏も日本企業の要求の厳しさを指摘した1人である。同社は前回のNEAR2004に出展しており、その際に新規顧客の獲得に成功し、他の既存の大手日本企業数社へ納入している部品を含め、年間約3000tの製品を日本へ輸出している。
 「日本の経営や生産のことをすべて勉強し、それに応えてきました。応えてきたから、今も日本企業との取り引きが続いています。信用第一ですね」と宗氏は語り、「FAXと電話で設計や生産量、納期などを毎日確認している」と続けた。社名に「船舶」があり、また展示していた製品が船舶用だったため、船舶部品を専門につくる会社かと思いきや、船舶部品の技術を応用し、工作機械、産業機械全般の部品を製造から鋳造や金型まで製造していると胸を張る。
 「後から図面を送るから見積りをしてほしい、という企業が何社もありました。次回のNEARにも出展する予定です」と15年ほど日本企業とのビジネスを担当している宗氏は流暢な日本語で話した。
工作機械、産業機械全般の部品を製造している天津市中舟船舶工貿有限公司。日本とのビジネスの経験が15年ほどある宗良華氏は、「この展示会が終わったら、大阪へいって、以前から取引きのある企業と契約を結んできます」と流暢な日本語で話した。


特色ある出展で注目を集めた韓国・モンゴル・ロシア

ゴム製品、合成樹脂製品を製造する大養TECH株式会社の宗永哲氏。「富山の企業と契約して、おいしい水を飲む機会を増やしたい」と意欲満々。
  数の上では圧倒的に多い中国企業に押されまいと、商魂たくましく韓国企業も健闘していた。中でも目を引いたのが大養TECH株式会社。来場者がブースの前で足を止めると、展示品を手渡し、来場者をブース内に招き入れていた。
 同社は自動車用・建築用・産業用のゴム製品、合成樹脂製品をつくる会社。2001年から年に2~3回、日本の産業部品の展示会に出るようになり、すでに大手企業を含む数社を開拓してきた。
 「NEARへの参加は今回初めて。富山は日本海側では大きな工業地帯で、建材メーカーのほか工場がたくさんあると聞いている。ぜひ当社の製品を使ってほしい」。代表理事の宗永哲氏は自社製品を紹介する一方で、「富山は水がおいしく、立山連峰の景色が素晴らしいことは韓国でも知られている。今回ぜひ取引きできる企業を開拓し、近い将来立山に登りたい何度も富山に来たい」と熱心に語った。
モンゴル・ウランバートルから来日したガンバト・バルフー氏(ニースレルウルグー株式会社)は、レンガの販売を目指して来日。「この人が関心を持ってくれた」とある会社社長の名刺を持って駆け寄ってきてくれた。ガンバッテ!
  モンゴルから参加したニースレルウルグー株式会社・代理委員長のガンバト・バルフー氏も精力的に日本企業と接触していた。初めての日本の産業展示会出展にもかかわらず、「初日の午前中だけで100名近くと名刺交換した」と名刺の束を見せてくれた。
 モンゴルの首都・ウランバートルにある本社には建築部門とレンガの生産・販売部門があり、建築部門のウランバートルでのシェアは約60%。NEARへはレンガの販促を目的に出展した。
 「1日2万個、年間で500万個のレンガ生産能力を持っています。当社のレンガは一般のレンガより寒さに耐える能力が2.5倍、また摩滅しにくい特長があります。ですから建物の外壁や歩道にぴったり。また、建物のデザインや街の景観に合わせて、多様な色に焼くことができます」
「将来は貿易のコンサルティングもしたい」と抱負を語ったスルターノフ・ロマーン・タウフィコヴィチ氏(有限責任会社ヴラッドトレック)。富山県射水市に会社(ジャパントレック)を設立し、日本でのビジネスの足掛かりをつくった。
 ロシア沿海地域から出展したのは、有限責任会社ヴラッドトレック。ウラジオストックに本社を構える同社は、通関業務の代行を主な営業品目とし、日本からウラジオストックに輸出されている中古車の1/3について同社が通関業務を行っているという。
「当社は、工業製品をつくっている会社ではなく、通関をサポートする会社です。将来的には貿易のコンサルティングもやってみたいと思いますが、出展している日本以外の企業の方々もお客さんの候補です」と語る副社長のスルターノフ・ロマーン・タウフィコヴィチ氏は、ハルビンへの留学経験もある青年実業家。中国語も話すことができ、将来の市場開拓のために、ハルビン市から出展してきた企業を中心に中国ブースに頻繁に足を運んでいた。

       


多国籍企業、県内企業がNEARで商談

 前述のように、今回のNEARには中国企業に加え、韓国やモンゴル、ロシアからの出展もあって、大きく注目された。
 関東の大手自動車メーカーの調達・中国ビジネスの担当者は、事前にパンフレットとカタログを申し込み、当日の訪問予定の企業をリストアップし、その30社を丸1日かけてじっくりと見定めていた。
 「当社には部品を納めてくれる企業が300社以上あります。今日ここに来たのは、将来のサプライヤーを探すためで、特定の部品メーカーをターゲットにしてきたのではありません。また、各地域の市政府商工関連部門や貿易促進機関が出展していることもありがたい。今後の情報収集活動で協力してもらえる」と話した。また、手持ちの企業名リストに○×をチェックし、「意中の企業があり、将来、取引きするかもしれない」と結び、再び会場内へ入っていった。

株式会社シグマの加納滋夫氏のヒアリングの様子。単価、納期、生産設備などを細かく聞き出し、発注できそうな金型部品のメーカーを探し出していた。
 金型の設計・制作で定評のある株式会社シグマ(本社:高岡市)取締役・営業技術部長の加納滋夫氏も単価や納期、また相手企業の生産体制などを細かく聞き、メモをとっていた。加納氏も関心のある企業十数社を事前にリストアップし、1ブース毎にヒアリングしていた。
 同氏に話をうかがうと、「商社を介して、中国の金型メーカーとの付き合いはある。これではリスクの回避はできるが、コストに跳ね返り、また受発注にタイムラグが生じる。今の時代、これでは競争にならないので、直に取引きできそうなメーカーを探しにきた」と答えが返ってきた。
 金型は、機器が小型化、多機能化、高性能化すればするほど複雑になり、かつ高い精度が求められる。そして、その背景となる設計のノウハウも高度なものが要求される。そのノウハウについては、日本企業の方が蓄積しているため、今回出展した金型メーカーの中には、受注はもとより技術提携に関心があった出展企業も多かったようだ。
 加納氏は具体的な話はこれからとしながらも、「展示されているサンプルを見て、中国や韓国の金型メーカーの技術力を確認できたことは大きい。条件が折り合えば、取り引きの可能性のある企業が数社ありました」と述べた。

 
 こうして2日間にわたったNEAR2006は幕を閉じた。2ブースにほぼ1人の割合で通訳を配したことが効を奏し、会場での初期の商談は従来以上に活発に、そしてスムーズに運んだ様子であった。
 またこの展示商談会と並行して、テクノホール2階の会議室において、基調講演や投資環境説明会、パネルディスカッションを開催。基調講演では財団法人機械産業記念事業財団会長・福川伸次氏が「新フロンティアを拓く北東アジアの経済連携」のテーマで話し、環日本海地域の経済交流の展望と、同地域の持続的な発展のためのポイントを解説した。
 また、投資環境説明会では、出展各国の投資誘致などの担当者らによる、現地の最新情報やインフラ整備、外資誘致政策が紹介されたほか、パネルディスカッションでは既に中国に進出している県内企業により、取り引きの現状や中国進出のメリットや課題が話され、活発な質疑応答があった。


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