さてこうして画像処理の研究を進めている塚田助教授のもとに、恩師(富大の教授)を通じて、ある大学の医学部の研究者から相談があった(当時塚田氏は富大の助手)。それはヒドラ(腔腸動物)を使った実験で、ある物質の濃度を知るため、ヒドラの形態がどう変化するかを、自動的に調べたいというもの。従来は顕微鏡による目視で観察されてきたが、労力の負担が大きいばかりでなく、観察のばらつきによってデータの定量化がしにくい状況にあった。
ただ、それ以前にも画像処理システムがなかったわけではない。広く用いられている判別自動閾値選定法では、全画像の中からヒドラのみを抽出することが十分にできず、観察の精度が上がらないという問題があった。そこで氏は背景とヒドラを分離して(二値化法)、ヒドラのみの画像処理を可能にしたのであった。
「ペンを持って50?ほど先にかざして見た場合、われわれの目はペンに焦点を当て、その背景はぼやけて見えます。極端にいうと、ペンの画像は処理していますが、その背景の画像処理はしていません。この原理を応用したのです。ヒドラが細い触手を動かしても背景から分離して画像処理しますので、はっきりとした画像で観察できるようになり、データの解析も可能になりました」

|