ニュースページトップへ戻る TONIOトップへ戻る
富山県ものづくり総合見本市  

 NEAR2012&とやまテクノフェア2012開催
  ~過去最高の372社が出展、交流~

活況を呈したNEAR2012の会場の様子。
  今回で2回目を数える「富山県ものづくり総合見本市」。前回(2010年開催)より、アジアなど海外企業の部品・部材を紹介する「NEAR」(北東アジア経済交流EXPO/県主催)と、会員企業を中心にその工業製品や産業機械などの技術をPR する「とやまテクノフェア」(県機電工業会主催)が合同で開催されるようになり、俄然注目を集めるようになった産業展だ。
 NEAR2012には、従来どおり中国、韓国、モンゴル、ロシア沿海地域などから出展があり、新たにインド、タイ、台湾からも参加。尖閣列島をめぐって日中関係が悪化したため、中国企業58社の突然のキャンセルはあったものの、全体としては前回より24社多い372社(団体含む、以下同)が集い、商談・交流に花を咲かせた。事前商談の申し込み数も回を追うごとに増え、事務局経由の予約は53社102件。企業間で直接、面談予約の時間調整をしているケースも見受けられ、展示会への期待は高まる一方だ。
 本稿では、総合見本市の中でもNEAR2012にスポットを当て、参加企業や政府機関などの声を拾ってみた。

モンゴルのビジネスチャンスに気づいていない!?

 モンゴルというと日本ですぐに思い起こされるのは、白鳳などの大相撲の力士のこと。ところが世界的には、投資家が強い関心を持つ国になっている。そのわけは、1990年代の民主化以降、鉱物資源開発の可能性が広く知られるに及んで、農・牧業の国から鉱工業国へと脱皮を図ってきたことにある。モンゴルのGDPに占める鉱工業の割合は、2005年以降トップになり、’11年には約22%を占めるまでになった。
 ここ10年間の経済成長率を振り返ってみよう。2002年4.7%、以後7%(’03年)、10.6%(’04年)、7.2%(’05年)、8.5%(’06年)、10.2%(’07年)と続き、リーマンショックがあった’08年は8.9%、その翌年は世界同時不況の影響をまともに受けて−1.2%となった。ただ、その後の回復が早い。IMFの支援やモンゴル政府自身の財政引き締め策などが効を奏して、’10年は6.3%、’11年は17.5%とV字回復を達成し’12年は12~13%になるのではないかと推測されている。
「経済成長の大きさからモンゴルは最も注目されている国です」と何度も強調された駐日モンゴル国大使館のエルデネツォグト・サラントゴスさん(参事官)。
 こうしたモンゴルの経済状況をおおまかに紹介してくれた駐日モンゴル国大使館のエルデネツォグト・サラントゴスさん(商務・経済担当の参事官)は、「都市部ではビルを建てたり道路を整備したりが盛んで、クレーンが林立しています。また郊外では住宅も建ち始めています。日本の高度成長の時と同じような状況です。民主化以降、欧米や日本、韓国などの国々にモンゴルへの投資を呼びかけているところです」と意気軒昂だ。
 このNEAR2012の開催とほぼ同時期に、在モンゴル日本国大使館より「最近のモンゴル経済」と題されたレポートが発表された(’12年9月)。その「対モンゴル外国投資」の節を見ると、’11年末までの日本からモンゴルへの投資累計額は1億6003万米ドルで世界11位。’12年4月現在、モンゴルに駐在事務所を開設している日系企業は24社、現地法人化している日系企業は169社と記されている。ちなみに隣国・韓国の数字をみると、投資累計額は3億1079万米ドルで世界7位。進出企業数は約2000社となっていた。
 モンゴルにあるビジネスチャンスに、日本はまだ気づいていないということか。「最近のモンゴル経済」はpdf 化されてネット上でも読むことが可能なので、モンゴル経済に関心のある方はぜひご一読を。(URLは文末に掲載)


販売だけでなく技術を高めたい

「日本企業との取り引きを通じて、自社製品の品質アップを図りたい」と強調された鐘招志総経理。
 冒頭にも触れたが、今回のNEAR2012では日中関係の悪化を受けて、中国企業58社が出展を取りやめた。しかしながら、それでも中国からは97社が参加。前回、前々回のNEARでも取材した中国企業トップの姿は何人も見え、「尖閣とNEARの件はわけて考えるべきだ」という声も聞かれた。
 志徳精密機械(上海)有限公司の鍾招志総経理もその1人だ。同社はシンガポール資本の会社で、精密プレス製品、精密プレス金型などを製造している。従来の主な販売先は、中国国内の日系企業やアメリカ系企業で、その他にヨーロッパ、シンガポールにも輸出している。
 鐘総経理が語る。
 「中国内の日系企業との取引量は、結構多いのですが、日本国内の企業となるとほんのわずかです。日本の企業が求める製品のクオリティの高さは世界も認めるほどですから、日本で市場を開拓して当社製品の品質アップに結びつけたい」
 商談した相手先の名刺と、この後の面談の予定表を見せていただいた。上場しているメーカーや、その業界では中堅どころの部品メーカーの名前が見え、合わせて10社ほど。その他、「資料と交換にいただいた」という名刺が十数枚あった。
 「海外の産業展示会には時々出展し、日本への出展は5年前に大阪であった半導体関連の展示会以来です。過去の展示会で、内容のある話ができたのは1回につき3~4件で、実際の取り引きに結びつくのはそのうち1件あればいい方です。NEARでは10社ほどの方々とゆっくり話ができました。ビジネスショーの第一の目的は知り合うことです。その意味では、満足しています。あとはいかにフォローするか。会社に帰って商談内容を精査し、今後の対応を決めたい」
 鐘総経理は以上のように、場合によっては深追いしないケースもあり得ることを匂わせて、取材を締めくくった。
 続いては、広東省東莞市から出展してきた東莞長騰金属製品有限公司だ。ロストワックス法により精密鋳造品をつくっている企業で、日米の自動車メーカーやヨーロッパの産業機器メーカーなどとすでに取引実績があるという。
「第一の目的は技術提携先を探すこと」といっていた東莞長騰金属製品の范有炘董事長。
 日本の自動車メーカーとはどのような経緯で取り引きが始まったのか聞いてみた。答えてくれたのは范有炘董事長。
 「自動車メーカーの調達担当の方が、“中国から精密鋳造部品を仕入れることはできないか”と商社に相談されたそうです。その商社からの紹介がきっかけで、3年前から取り引きが始まりました」
 納めているのは、エンジン部分のある部品。鋳造の過程でわずかに線やキズが入っただけでも不合格らしく、製品のチェックは極めて厳しいという。アメリカの自動車メーカーやヨーロッパの産業機器メーカーもほぼ同様だそうだ。
 そこまで品質の高い製品をつくることができるのなら、展示会を利用せずとも直接あるいは商社などを代理店として販売ルートの開拓ができそうなものだが、范董事長には別な狙いがあるようだ。いわく…。
 「われわれ中国企業の中にも技術レベルを上げているところが多い。そういう中でも競争に勝ち残っていくには、自社の技術レベルをさらに向上させなければいけません。こういう展示会出展をとおして、技術提携できる企業を探しているのです」
 鐘董事長への取材は、3日間の会期中の2日目の夕方に行った。その時点で30社ほどと商談をした様子で、感触がよかったのはその内の7社。某ポンプメーカーからは設計図を手渡され、ある鋳造部品の見積りを依頼されたそうで、「この中に技術提携に発展する企業があるかどうか楽しみだ」と話していた。


テクノフェア出展企業に商談を持ち込んで…

キムさんは時々テクノフェアの会場を見学しながら、商談の可能性のある企業の研究に余念がなかった。
 韓国からの参加は今回は7社で、他に資料展示のみ行った企業が3社。毎回、企業の顔ぶれは違うようだ。その中から、自動車用のバネを製造している(株)ソイル(本社:仁川広域市)の営業マネージャーのキム・ヤムスさんに話をうかがった。
 同社では、米系自動車部品メーカーの日本法人との取り引きはすでにあるようで(年間40~50万米ドル)、展示会をとおして他の自動車メーカーとの接点を持つことを図るほか、自動車用製品をつくっているメーカーに直接営業をかける狙いも持っていた。
 キムさんがいう。
 「ブースを訪ねてくれたある自動車部品メーカーから、図面を送るから月産4万個で見積りしてほしいと依頼されました。ただそれは、そのメーカーのタイ法人からのもので、成約すればタイ工場へ輸出するようになります」
 タイに進出している日本企業が、部品の調達先を探してNEARの会場を視察していたとは驚きだ。キムさんはさらに続けた。
 「隣の会場で同時開催されている、とやまテクノフェアには、自動車関連の製品をつくっている企業が何社も出展しているでしょう。NEAR開催前にそれらの企業に連絡を入れ、“当社の製品を見てほしい”とお願いし、アポイントをとりました」
 NEARとテクノフェアの同時開催には、こうした相乗効果も期待されていたのだが、同社では効率的にそれを実践したわけだ。
「出展の本当の目的は、日本の方々、富山の方々のニーズを調べることです。この靴もいいですよ。外反母趾を防ぎ、歩く姿を美しくしてくれます」とユーリィアさん。
 またロシア沿海地域からは、伏木海陸運送(株)のサポートを受けてオートグローバルJPが参加。中古車の輸出入などを手がける貿易会社で、ブースでは外反母趾予防用の矯正靴を展示していた。
 「日本では、靴には軽さが求められていますが、この靴は子ども用にもかかわらす結構重い。合皮ではなく本革と天然ゴムを使い、1足15000円します」
 商品の説明をしてくれたユーリィアさんは、15000円という値段に絶句する編集子を見て、「この靴は大学の医学部や病院との共同研究でできたもので、効果が確認されています。ロシアでは子どもが小さいうちに歩き方をチェックして、外反母趾の可能性があると思われる場合は、矯正靴で予防するのです」と続けた。
 この靴の展示は、同社にとってはあくまでも便宜的なもので、日本海をはさんでのビジネスのタネをリサーチしているように見受けられた。

    

 天候にも恵まれて、今回の総合見本市には延べ24,626人が来場。商談の成果は、今後のフォローによるところが多く、1件でも多くの成約を願うばかりだ。
 ちなみに、インド、タイ、台湾関係者の取材については、通常の環日本海経済交流のレポートのコーナーで紹介しよう。

○問合せ先
 (財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
  所在地 富山市高田527 情報ビル2F
  TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
  URL http://www.near21.jp/

 在モンゴル日本国大使館「最近のモンゴル経済」
  http://www.mn.emb-japan.go.jp/jp/seikei/EconomyMon201209.pdf

作成日2013.01.08
Copyright 2005-2013 Toyama New Industry Organization All Rights Reserved.