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平成18年度産業支援機関連携促進会議  

新事業創出に向けて連携強化
産業支援機関連携促進会議で53団体が協力確認

新事業創出のための支援体制をより強固なものにしようと、県内の産業支援機関53団体が一堂に会して、6月1日、連携促進会議を開催。3団体の支援事例と2団体の支援事業が紹介されました。その概要を紹介します。


  ■支援機関の取組み事例
(1)新連携の取組み事例について 富山県中小企業団体中央会 工業振興課長 江下 修

 中小企業団体中央会は昭和31年に設立されました。その名の通り、中小企業団体つまり協同組合や商工組合、また業種は建設業、製造業、商業、サービス業などあらゆる業種の組合を支援しています。会員は約470組合。これら会員組合の管理運営や研修会・講習会の開催、また異業種交流による新商品・新技術の開発、その成果の販路開拓等の支援も行っています。
  新連携については、広い意味での異業種交流ではないかと思います。そもそも異業種交流は、昭和45年、大阪科学技術センターが世話役になって、最初の異業種交流会ができました。今でいう産学連携の活動を、当時の大阪科学技術センターでは行っていたのです。その後、高度成長が終焉し、中小企業においては知識集約型の必要性が説かれ、異業種交流が徐々に盛んになってきました。本県では昭和54年、当時の富山県産業情報センターの呼び掛けによって異業種交流グループができ、昭和56年の技術交流プラザ開催事業と、昭和63年の融合化法の制定により、飛躍的に異業種交流グループが設立されています。
 これから紹介するタカマツタテグをコア企業とする新連携の事例は、当会が長年にわたって異業種交流を通じた商品開発、販路開拓に携わってきた経験が活かされたのではないかと思います。
  タカマツタテグは、元々は木製建具を作っていました。しかし、住宅の洋風化によって建具が和風から洋風に代わり、同社の売上げも年々減少。ちなみに木製建具の全国の出荷額は平成7年度は約7,500億円。平成11年には5,900億円まで落ち込んでいます。
 そこで新商品を開発してマーケットの縮小に対応しようといろいろ研究した結果、自動ドアに使われている蝶番を改良して新しいドアを作られた。この蝶番によってドアは2枚折れにも3枚折れにもなり、省スペースで、指1本で軽く開閉できる、非常に優れたものになりました。特許もとっておられます。
 商品化の目処がついた時、同社の社長から販売支援や生産支援の相談がありました。その時、新連携にぴったり合うのではないかと思い制度を紹介し、早速、申請したところ富山県の第1号になった次第です。
  コア企業はタカマツタテグ。八尾のC社は木製の玄関ドアをつくる役割を果たし、介護福祉の世界では知名度の高いNPO法人Kに製品の評価や提案、また全国からの見学者が多いので広報もお願いしています。また今まで一番のネックになっていた販路開拓ですが、大手板ガラスメーカーのA社が担当し、ガラスの折れ戸の開発にも協力していただくことになりました。
 新連携に申請する以前、商品開発や販路開拓には、県工業技術センターや新世紀産業機構の支援もいただいています。また金融面では商工中金の援助をいただきました。今後も関係機関の協力をいただきながら、こうした事例を増やしたいと考えています。
●富山県中小企業団体中央会
富山市総曲輪2-1-3 富山商工会議所ビル6階
TEL 076-424-3686(代)
URL:http://www.chuokai-toyama.or.jp/


(2)富山県立大学研究協力会の取組みについて 富山県立大学地域連携センター 所長 松岡信一

 本学には産学連携を推進し、地域経済の活性化に寄与することを目的として、富山県立大学研究協力会があります。設立は平成16年4月26日。会長はインテック代表取締役会長の中尾哲雄さんです。産業界による大学支援組織としては、日本でもトップクラスのものです。
  地域連携センターは、研究協力会と密に連絡を取りあっています。センターには、機械系、電子系、バイオ系のコーディネーター各1名を配置。また、常駐ではありませんが、研究協力会の会員企業のOBであるリエゾンサポーターを置き、コーディネーターとリエゾンサポーターが研究者と企業人の出会いの場をつくるための研究会、ニーズとシーズのマッチング、新事業に向けた共同研究の提案などを実施しています。
  テーマ別研究会は、気軽に技術談義をしましょう、ということで平成17年3月から始めました。異業種企業と大学研究者の出会いの場をつくり、「産・産・学」の連携促進を図っています。特許を申請して共同で商品開発する例も出ており、当センターはその世話人的な役割をしています。
  活動中の研究会は3つあります。1つは、ヒューマンインターフェースロボット開発研究会。いわゆるヒューマンなロボットの開発です。34名の会員がいます。2つ目は、健康・機能性食品開発研究会。これは健康食品の開発を目指した会で、37名います。そして昨年9月にできた流れの可視化研究会。空気の流れを可視化したり、学問的に解明する研究会で、20名の会員がいます。
研究協力会では、大学と共同して、平成16年度から卒論テーマの募集を行ってきました。学部学生の卒論テーマを公募して、その 研究を実施しよう、ということです。16年度には42件の申し込みがあり、うち研究協力会の企業から24件いただきました。17年度は69件で、うち研究協力会は48件。18年度は62件、うち研究協力会は41件です。担当教員が検討した上でお引き受けするかどうか決めますが、マッチング率は70%弱です。
 今年度の採択件数は、5月中旬時点で24件。今年からは簡単なものは技術指導にし、定期的に企業の担当者に大学に来ていただいて、課題を解決していく相談コーナーを設けました。その件数が今のところ16件になっています。
 また共同研究も、16年度は26件実施。うち13件は研究協力会の企業との研究です。同様に17年度は40件で、研究協力会23件です。
 それから修士論文のテーマ横断型の研究。これは学内でテーマを検討し、県内の企業に投げかけて共同研究を行おうというものです。現在、8つのテーマで研究が進んでおり、研究成果は、修士論文として学生に提出させます。
 大学にはMOT(技術経営)を教える専門家がいません。そこで研究協力会のメンバーにご協力いただいて、技術経営概論、地域産業論、創造性開発研究等の講座を担当していただいています。大学にとっては、これは大きな財産になっています。
●富山県立大学地域連携センター
射水市黒河5180
TEL 0766-56-0604
URL:http://www.pu-toyama.ac.jp/renkei/


(3)富山湾深層水を活用した水稲種籾消毒法 富山県農業技術センター農業試験場 副主幹研究員 向畠 博行

 これから紹介する事例は平成15年度に、2つのメーカーと共同で取組んだ例で、現地での試験は今年も実施しています。また開発の過程で、特許の申請もしました。
  深層水の利用は、水産漁業の分野では従来から多く行われています。県では農業分野での深層水の利用を課題にしていました。環境問題が盛んに訴えられ、減農薬も求められています。稲の場合、重要な病気は種子の段階で伝染するので、種籾の消毒が必須となります。まずそこで、深層水が利用できないかと考えました。
  現在の稲作では、農薬はどうしても必要です。85haの大規模経営の田んぼで、育苗期に使う農薬の費用は約70万円。突発的な病気が発生した場合は、さらに費用がかかります。また、廃液処理費も試算(一例)して加えると約100万円くらい必要になります。
  種籾の主な病気には6種類あります。種籾は無菌状態ではありません。稲作は浸種という作業から始まり、ここで加温、加湿しますから菌が繁殖しやすい状態になります。当初は、深層水をそのまま使う方法はないかと模索しました。しかし実験を繰り返してそれが無理だとわかり、深層水の電解水生成機を開発したO社と、温湯処理機能がついた水稲催芽器を開発したT社の協力を得ました。
  バクテリアによる褐条病、カビによるばか苗病などは電解した深層水(酸性水、アルカリ水の両方)で種籾を処理すると、発病が抑制され、発芽率も8.7%向上することがわかりました。
  また電解水処理をした場合は、慣行薬剤を使った場合と同等かそれ以上の効果があることもわかりました。このように深層水による種籾の消毒は有効であり、実験を通してそれが証明されたのです。
  稲作農家が種籾の深層水処理をするとなると、電解水を効率的に使うために何度も使用することが想定されます。そこで同一の電解水液を3回使用してみましたが、効果が落ちないことも判明しました。
  そして平成16年度からは、実際に深層水の電解水処理をした苗を植えて、慣行薬剤で消毒した苗と収量の比較をしました。田んぼは深層水が取水できる滑川と入善に用意し、1枚の田んぼを区分けして、同じ日にコシヒカリの苗で田植えをし、田植え後の施肥等は同じ条件にしました。
  生育期間中の経過も、深層水処理をした苗の方が良好でした。収量も深層水処理をした場合は、5%増になりました。17年度も同様の現地試験をして、同様の結果が得られています。収量増の要因については、さらに分析を進めていく予定です。
 まとめますと、深層水の電解水を用いた種籾の消毒法は、有効であることがわかりました。育苗期の病害が抑えられ、稲の生育を促進し、収量も増加させます。この方法を普及させるには、装置の利便性を上げることと処理コストの低減が求められると思いますが、これは今後の研究課題です。
●富山県農業技術センター農業試験場
富山市吉岡1124-1
TEL 076-429-2111(代)
URL:http://www.agri.pref.toyama.jp/


  ■支援機関事業紹介
(1)リレーションショップバンキングについて 商工組合中央金庫富山支店 支店長 大野晃一

 商工中金では、「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム」を踏まえ、地域金融機関との業務協力を図っています。業務協力といっても緩やかな提携です。文書による提携をしていなくても、案件によっては相談の上、対応させていただいています。ちなみに、富山県内では3つの金融機関と業務協力文書を締結しています。
  業務協力の概略を紹介します。まずは創業・新事業支援に関する連携。ここでは1番目として、新事業の評価等に関する情報交換をしています。新事業審査委員会を活用した融資制度を紹介したり、新規性等の評価を行う情報交換を行います。新事業審査委員会は商工中金の本部にあり、外部の専門家の方々に委員になっていただいて、事業の新規性等の評価をいただいています。ここで新規性ありと認定された場合は、比較的有利な融資制度を利用していただくことができます。
  2つ目は新事業育成に関する連携です。ここでは技術開発や新事業展開に関する補助金、税制、信用補完制度等の情報交換をしています。
  3つ目のベンチャー企業支援に関する連携。ここでは投資先の相互紹介、投資事業組合を通じた協調投資などを行います。私どもでは融資は一般的に行っていますが、投資についても投資事業組合をつくり、20億円のファンドで行っています。
  4番目は新連携ですが、これは先ほど中小企業団体中央会からも話がありましたように国の施策であり、私どもも積極的に取組んでいます。
  では次に、経営相談・支援機能の強化に関する連携についてお話します。ここではビジネスマッチングやM&A、経営改善支援等の体制整備に関する連携や、商工会議所との連携などの情報交換を行っています。
  次は事業再生に向けた支援です。早期事業再生のためにDIPファイナンスやDDS、中小企業再生支援協議会やRCCとの連携による早期の事業再生に向けた取組みに関する情報交換を実施しています。
  最後は、新たな金融手法の取組みです。新たな金融手法とは何かですが、売掛債権流動化やABL、地公体CLOなどです。ABLを紹介します。余り聞き慣れない言葉ですが、これは売掛金あるいは在庫など、企業が持っている流動資産を一体として担保にして融資するシステムです。不動産担保、有価証券担保が一般的ですが、まさに本業の部分を一体として担保に引き当てさせていただくシステムです。一部新聞などでも紹介されましたが、養豚業者に融資をさせていただいた例では、豚を担保にして融資させていただきました。この業者は豚にICタグをつけて最先端の在庫管理を実施していましたので、ABLに取組みやすかったのではないかと思います。
  商工中金のABLモデルは、従来型の担保や個人保証に過度に依存しない融資形態であり、経済産業省の「ABL普及促進支援事業」のモデル事業に認定されています。
  こうした事例は富山県ではまだ実績がありませんが、ご相談があれば検討させていただきます。
●商工組合中央金庫富山支店
富山市総曲輪3-1-21
TEL 076-421-4126
URL:http://www.shokochukin.go.jp/


(2)中小企業基盤整備機構の事業紹介について
       中小企業基盤整備機構北陸支部 中小企業・ベンチャー総合支援センター 統括管理役 元木 茂

 経済産業省所管の特殊法人で、中小企業総合事業団、地域振興整備公団、産業基盤整備基金がありました。これらが平成16年7月に統合して中小企業基盤整備機構ができました。地域振興整備公団は、富山県内では八尾中核工業団地や小矢部フロンティアパークなど4つの産業団地を持ち、産業団地の造成、分譲、賃貸を行っていました。
  中小企業・ベンチャー総合支援センターを運営してきたのは、中小企業総合事業団でした。ところが中小企業総合事業団は、北陸エリアでは活動拠点がなかったため、知名度が低いのが実情です。
  では、中小企業・ベンチャー総合支援センターでは何をやっているか。まずはアドバイザーによる経営相談があります。相談の形態は、窓口相談です。私どものオフィスはいろいろな専門家が控えていて、その専門家に経営相談をしていただくことが基本になります。その他の相談形態としては、出張相談があります。各種イベント会場とか金融機関の会議室等にアドバイザーを派遣して、お客様の経営相談に対応します。
  また電子相談も行っています。当機構の電子サイトに相談内容を入力して送信していただくと、“相談が入りました”と連絡が入ります。そこで内容を確認した上で適切な専門家に取り次いで、その専門家から回答を送っていただくシステムです。
  セミナーやビジネス塾も積極的に開催しています。この4月には、北陸支部の中小企業・ベンチャー総合支援センターの開設1周年を記念して、事業承継セミナーを行いました。内容的には、当機構の人材育成機関である中小企業大学校が行っている後継者育成や、後継者がいない場合のM&A の対策なども含めたセミナーです。
  専門家による窓口相談の発展形として、窓口相談をされた企業に直接専門家を送り込んで支援する専門家継続派遣事業や企業等OB人材派遣事業も行っています。専門家継続派遣事業では、コンサルタント的な方々、中小企業診断士、公認会計士、税理士などの専門家を企業に派遣。1人1日当たり16,700円を企業に負担していただきます。企業等OB人材派遣事業では、大企業等を退職されて仕事に対するノウハウ、技術を持っている方で、中小企業への支援意欲をお持ちの方がいましたら、技術やノウハウを必要としている企業に派遣して、事業のお手伝いをすることです。これについては、1人1日当たり8,000円を企業に負担していただいています。
  金沢のオフィスには、19名のアドバイザーが常設されており、その他、富山県内に6名、福井県内に7名のアドバイザーが登録されています。経営課題の解決が必要と思われる企業、あるいは新事業展開にあたってビジネスプランのブラッシュアップが必要と思われる企業がありましたら、支援をさせていただきたいと思います。その他、機構の本部が中心になって行っている支援メニューもありますので、積極的に活用していただけたらと思います。
●中小企業基盤整備機構北陸支部
石川県金沢市広岡3-1-1金沢パークビル10階
TEL 076-223-5761(代)
URL:http://www.smrj.go.jp/


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