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第10回 ファインネクス株式会社  

第10回 ファインネクス株式会社
1本の微細Pin(ピン)がIT機器を動かす
独自の技術が世界に貢献

 部品の中のとても小さな一部品。最終製品から見ると目立たない存在である。しかし、IT 機器や家電製品が小型化、高機能化している背景に、この小さな部品が大きな役割を果たしている。ファインネクスがつくっているCPUやコネクター等の電子部品用の精密な端子や微細なピンもそのひとつ。キラリと光る技術力・生産力で、他社には真似のできない製品をつくっている同社の強みに迫った。

CPU用のピンのシェアは世界の約90%

同社が生産している主な端子・リード線。CPU用のピンのシェアは90%というから、この記事を読まれた方のパソコンにもおそらく搭載されているはず。
 ひと口に精密な端子、微細ピンといっても、用途は多種多様。右の写真にその一部を紹介するが、電気機器を接続するコネクター、パソコンのCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)のプリント基板に実装されるPGA(pin grid array=ピンの格子配列)、リチウムイオン電池の電極端子などに使われ、最終製品としては電子・電気機器から工作機械、自動車、人工衛星に至るまで幅広く応用されている。
 同社が製造しているピンは、5000種類以上に及ぶ。実装される機器によって、またメーカーによって、その規格(長さ、径、形状、素材、めっき厚など)がすべて異なるため、ピンの種類は多くなっている。中でもパソコンのCPUに使われるヘッダーピンは、同社が世界の約90%のシェアを持つようになり、最終製品のメーカーも同社の技術を注目するようになってきている。
 CPUは以前、セラミックが使用され、この基板にピンを銀ロウ付けしていた。ところがコストダウンやCPU の品質をよりよくするために、プラスチックの基板に挿入する形状のピンが必要となった。しかし、どのピンメーカーもこの要求にすぐに応えることができなかった。
 松田登社長は当時を振り返って、
 「ピンの品質や精度に応えようとすると課題が次々と浮かび上がり、大変苦労いたしましたが、一応、新型ピンは完成いたしました。
 その後、この新型ピン開発に向けた当社の取り組みが、後の技術力と生産力の布石になってくれたことに感謝しております。ファインネクスでは以前から、自社製品の金型もその製品を製造する機械もすべて自社で開発・製造していますが、競合他社のほとんどは、購入した金型や機械を使っているため、フレキシブルに対応することがなかなかできません。また、今もお客様からは多くの試作依頼がありますが、我々はさらに進んで量産が可能かどうかも試しています。そうして量産時においての課題を一つひとつクリアしているので、当社に対して安心感や信頼感がでてきているように感じられます。我々が試作品を多くつくることは、お客様に育てていただいたようなものだと思います。試作品をつくる過程で、金型の設計・製作、機械や部品の設計・製作、そして機械組立の技術が社内に蓄積されるものです」と語った。
 一世代前の130ナノのCPUに使われたヘッダーピンの直径は0.45mm。CPU1個当たり三百数十本装着されている。しかし現在、65ナノのCPUでは0.3mmが主流で、CPU1個当たりで900本は使う。松田社長によると、「ピンはより細く、また短くなる傾向にあり、いっそうの精密さが求められている」というから、金型や機械を内製している同社の強みはますます高まるであろう。ちなみに同社のピンは、メーカー規格の寸法(径、長さ、形状)に対して、誤差は3μm(マイクロメートル)以内。安定した品質で生産されていることがうかがえる。

同社の本社・工場。平成13年にCIを導入し、素晴らしい(FINE)に顧客満足度を表わすCSをつけて「ファインネクス」という社名に変更。平成17年には企業グランプリ富山(技術部門)を受賞した。(右は記念のカップ)


ルネッサンスが多くある会社

過去につくられてきた電子部品を振り返り、「製造機械や金型を内製してきたことが技術の蓄積と差別化に役立った」と語る松田登社長。
  「おそらく電子部品の性能評価には、多くの試験項目があるかと思いますが、機器が小型化を指向すれば、より細く、より短いピンが求められ、評価基準も厳しくなるでしょう。それにも応えていきたい」
 松田社長の言葉からは、絶えることのない挑戦の意欲がうかがえるが、金型や機械の開発部門を持っているからこそいえるのだろう。同社では、年間800億本を超えるピンを生産している。一部のピンは汎用機でつくっているものの、大半は専用機で製造。また金型は予備を常備し、摩耗によるピンの変形を防ぐために随時交換し、品質維持にも努めている。
 同社が創業したのは昭和40(1965)年。以来、今日までの40余年、電子部品一筋できて、パソコン・携帯電話をはじめとする電子・電気機器業界にとっては頼りになる企業になった。部品のための小さな部品をつくっているが、存在感はとても大きく、ルネッサンスのドラマも多くある会社である。






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TEL 076-462-1881(代) FAX 076-464-1500
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