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第9回 エコサイクル株式会社  

第9回 エコサイクル株式会社
汚染土壌の画期的な浄化剤を開発
総合商社と提携して全国、世界へ

  エコサイクル(株)という会社をご存じだろうか。社名から想像できるように環境ビジネスを手がける企業で、平成11年に設立されてまだ若い。そのエコサイクルが、独自の技術を開発して大手総合商社をビジネスパートナーとし、全国展開を図っているという。さっそく同社を訪問し、健闘の様子をうかがった。


短期間で浄化できる工法を…

 
[上]有機塩素化合物の浄化剤EDC。炭水化物、アミノ酸などを含む、食品由来の粉体である。微生物にとっては、一種の栄養剤。
[下]六価クロムで汚染された土壌の浄化に使われるEDC-M。微生物によって、六価クロムが安全な三価クロムに還元される。
 同社の主な業務は、バイオの技術を応用して、有機塩素化合物や六価クロムで汚染された土壌や地下水を浄化すること。従来の工法より簡便であるため、浄化する土地に事業所や店舗がある場合は操業しながら工事ができる。しかもコストは従来の工法に比べて1/3以下。また浄化のための工期も大幅に短縮されている。
 「バイオによる汚染土壌の浄化方法は、すでにいくつも開発され、当社もアメリカの企業から技術供与を受けていました。しかしアメリカでは認知された工法(工期2~3年)も、日本では時間がかかり過ぎるということであまり受け入れられません。そこで、バイオに詳しい専門家をスタッフに加え、また地元の大学の協力も得ながら、短期間にできる浄化方法の開発を目指したのです」
 技術開発を模索し始めた平成13年当時のことを、マネージャーの和田英一氏が語った。  有機塩素化合物は非可燃性で、また油に対する洗浄力が高いため、洗浄用の溶剤として多くの工場、クリーニング業界等で使われてきた。ところが1980年代に入ってその発ガン性が明らかになるが、それが判明するまでは、排液は事業所の側溝にそのまま流されていたのである(最終的には河川→海)。また溶剤の入った容器が敷地内に放置され、容器の腐食によって内容物が漏れ出すこともあったようだ。
 こうしたことを背景に法律(化学物質排出把握管理促進法、土壌汚染対策法など)の整備が進み、排出規制ばかりでなく、隣接地への漏出を防ぐための対策が急務となり、さまざまな浄化方法が開発されていた。


食品由来の粉体で土着の微生物を活用

EDC注入のイメージ図。汚染の度合いや敷地の広さによって、注入井戸の本数は変わる。この工法は環境省の「平成16年度低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査」VOC汚染土壌の原位置浄化技術に採択された。
 よく採用された浄化方法には、有害物質をガス化し、処理水を下水処理する工法(揚水曝気工法)がある。しかしこの工法でも、環境基準をクリアするために数年かかることがあり、コストも高い。また汚染土壌を掘削し、汚染されていない土で埋め戻す方法もあったが、これでは根本的な問題解決にはならない。
 これに対してエコサイクルが開発した工法は、食品の粉体を配合したEDC(Electron Donor Compound = 電子供与体)を水に溶かし、小さな井戸を掘って地中(地下水中)に注入する方法(特許取得)。EDCによってその汚染土壌に棲む微生物を活性化し、その力を活用して浄化するものである。開発には2年近くを要し、平成15年1月に実施したクリーニング工場跡地での実証実験では、浄化52日で環境基準をクリア。85日で完全に浄化したのであった。
南砺市のクリーニング工場跡地で浄化した際のデータ。有機塩素化合物は52日で環境基準値以下になり、85日で完全に浄化した。(PCE=パークロロエチレン、TCE=トリクロロエチレン、cis-1,2-DCE=ジクロロエチレン)

 研究開発部の主任技士・前田信吾氏が、EDC 注入による浄化工法を解説する。
 「EDCを溶かした水を注入すると、これを栄養源にして、まずは好気性微生物が活性化します。しばらくすると土の中が一種の酸欠状態になり、今度は嫌気性微生物の活動が盛んになる。その中には有機塩素化合物を呼吸に使い、分解してしまう微生物がいるのです。この嫌気性微生物の働きによって、有機塩素化合物は最終的には、無機塩(Nacl等)や二酸化炭素、水に分解されてしまうのです」
 つまりは無害化されてしまうのである。この実験結果やEDC注入工法をエコビジネス等の展示会や学会で発表すると、注目されるようになった。そして徐々に引き合いがくるようになり、後に総販売代理店契約を結ぶことになる三菱商事とも出会ったのである。(契約は16年3月)


食品由来の粉体で土着の微生物を活用

開発全体の管理をするマネージャーの和田英一氏(左)と技士の前田信吾氏(右)。前田氏は「その地に棲んでいない別な微生物を活用するといったら、日本では受け入れられないのではないか」と話し、同社のEDC注入工法の利点を強調していた。
 取材時の浄化実績は全国で71例。また、後に開発された六価クロムの浄化剤(EDC-M)による実績も4カ所になり、アメリカやインドなど海外での実績も積みつつある。
 土の中には、数億種類の微生物が棲む。EDCの配合を変えると、他の微生物の活性化が確認されており、別の汚染物質を浄化する方法の開発も可能であろう。ちなみに六価クロムに汚染された土壌の浄化方法は、有機塩素化合物の場合とほぼ同様と理解していただいてよい。
 取材をまとめるように、マネージャーの和田氏が語った。
 「微生物の力を活用するといっても、その土地に棲んでいない微生物を注入する方法もあります。しかしこれでは、生態系にどんな影響を及ぼすかわかりません。当社が開発した浄化方法は、あくまでもその地に棲んでいる微生物を活性化する方法で、環境への影響がなく安心です。また、EDCそのものは食品由来の粉体ですから、これも安全性が高い。今後は、油に汚染された土壌の浄化方法の開発に力を入れたい」
 ガソリンスタンドなど油を扱った事業所の跡地は、土地の売買でも敬遠される傾向にあると聞く。土着の微生物を活かした浄化方法が開発されれば、これを朗報と受け止める土地所有者は相当多いのではないだろうか。  

連絡先/エコサイクル株式会社
〒939-8064富山市赤田694-2
TEL 076-420-3122 FAX 076-420-3161
URL http://www.ecocycle.co.jp/



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