|
平成17,18年度の事業で商品化に至ったもの。里いもだけでも1億円の大台に乗った。 |
一方の、深層水を利用しての、他の山菜や野菜の水煮商品の開発だ。ヤマサン食品工業では、平成17(’05)年度、18(’06)年度にも内容が充実した「新商品・新事業創出公募事業」(深層水分野)に採択され、17年度には里いも、栗、ゼンマイ、フキ、18年度には有機ゼンマイ、筍、大根、ごぼうの水煮商品の開発を試みた。
実験等で良好な成果が得られ、商品化につながったものを中心に開発の目的、結果についての概略を述べよう。
【里いも】
むき身の里いもの保存には、冷凍加工された商品が多い。しかし、生の里いもを調理した場合と比べると、食感がぱさぱさしている欠点がある。またレトルト殺菌されたむき身の里いもは、本来のもちもち感は残り、常温での長期保存が可能というメリットはあるものの、軟化が進み、調理した際に煮崩れを起こしやすいという難点がある。深層水を利用してこれら問題点を解決し、商品化に至った。
【栗】
生のむき栗は、栗ごはん用に利用されている。しかし、皮をむくと急速に劣化が進み、消費期限が4日ほどしかないという保存性の問題がある。保存性を高める方法として、真空包装後にレトルト殺菌する方法もあるが、軟化が進みすぎて食感を落とすケースが多い。深層水の利用を通して、この課題を解決した。
【ごぼう】
ごぼうの水煮商品は、長期保存が求められる中でレトルト殺菌されるようになった。しかし軟化が進むため、食品添加物の乳酸カルシウムや塩化カルシウムを使用している。ごぼうの風味を残し、軟化を抑えるために深層水を利用し、商品化にこぎつけた。
今まで述べてきた深層水の利用は、原水、ミネラル脱塩水とさまざま。利用のタイミングもそれぞれの加工法に合わせて行われ、それらの組み合わせを変えるなどして最適な利用法が探られた。
ちなみに、ゼンマイ、フキ、筍、大根については、深層水利用による改善が見られなかったもの、わずかしか改善が確認されなかったものなど、食品の特性によって違いがあった。「改善が認められたものでも、深層水利用によるコストアップが、消費者に受け入れられるかなども勘案して、今のところ商品化を見合わせているものもある」(水木さん)という。
|
売る立場から、新しい商品の企画などを検討している水木さん。次なる計画も練っているそうで…。 |
平成14(’02)年、深層水を利用しての商品開発に取り組んだヤマサン食品工業。公的支援で弾みをつけ、平成23(’11)年度には、深層水を利用した商品の売り上げが3億円を超えるまでになった。産学官の連携が生んだ金の卵が、孵化して若鳥に成長したといっていいだろう。
「水煮商品に関しては、引き続き商品の改善に努めていきますが、今後は、まったく新しい分野も開拓したい。例えば調味料の分野とか…。その時にはまた支援事業のサポートを受けて、商品開発などに取り組みたい」と意欲を見せ、水木さんは取材を締めくくった。
“金の卵”は何個でも生まれ、そこからかえったヒヨコが親鳥に成長し、今度は卵を産むための投資を支える側に回る。公的産業支援の好循環が起こることを期待するばかりだ。
新商品・新事業創出公募事業
http://www.tonio.or.jp/gijutsu/sinsyouhin.html
|