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第34回 塩谷建設株式会社  
第34回 塩谷建設株式会社
東京での展開を視野に入れるまでに
発展したコケ緑化ビジネス。さて…

3~4カ月間、1滴の水もかけられていないスナゴケに霧吹きで水をかけて1分ほどしたところ(左側は水がかかった部分)。スナゴケは-20度~70度の寒さ・暑さに耐え、自重の20倍の水分を蓄えることができる。
 「コケ緑化のビジネスは、今の日本全体の市場でいうと5億円程度。当社の新しい商材に加えて、ここ数年試行錯誤しているところです。まだ立ち上げたばかりで、コケ緑化の年間売上高といっても、小さいビル1棟の建設費にも満たないのですが、だからといって虚仮(こけ)にできないビジネスだということが実感としてわかってきました」
 こう語るのは塩谷建設専務の塩谷洋平氏。建設不況の中で、新しい商売のタネを求める旗振り役を同社で務めつつ、実務担当の高長利幸常務とともにコケ緑化のビジネスの可能性を探ってきたのだが、当機構の支援も新展開の一助になったようだ。

新事業で支援制度活用

同社において、コケ緑化ビジネスを進めてきた塩谷洋平専務(左)と高長利幸常務。
 経営相談の始まりは、塩谷建設が事業主となってマンションの分譲・賃貸に乗り出した時にさかのぼる。同社では、販促活動のプランは事前に立てたものの、実際に予約をとる段になって不安になった。その際、知人に紹介されて当機構を訪ね「なるべく早く完売するには…」と相談。機構サイドでは、販促プランを把握した上で、ホームページの活用を追加することを勧め、専門家派遣制度を利用しての分譲告知サイトの立ち上げを提案したのであった。(平成21年9月)
 「建設業というのは受注産業です。待ちの営業しか経験がなかったので、分譲開始が迫ってきて不安でいっぱいになりました。でも、中小企業支援センターのマネージャーをはじめ、いろんな方のアドバイスのおかげで予約は順調に入ってきたのです」
 塩谷専務は分譲開始当初を振り返るが、この時の縁が後にまた生かされることになった。
 平成22年の夏頃のことだ。今度はコケ緑化ビジネスが、同社の新規事業の案として出てきた。調べてみるとビルの屋上や工場の屋根をコケ緑化すると遮熱の効果があるらしい。また工場立地法(特定工場の敷地内に、一定割合の緑地を設けることを定めている)における「緑地」の考え方が変わり、屋上の緑化もそこに算入されるようになったのだ。
 「大きな市場ではないにしても、総合建設業の世界で生きていく当社にとっては、ひとつのアイテムとしてあってもいいのではないかと思いました。それで、一口にコケといっても2000種類以上ありますので、施工しやすく、メンテナンスコストもあまりかからないコケを探しました」
 高長常務は30cm四方ほどのコケのサンプルを取り出した。見た目には、使い古した長めの人工芝のようで、緑といっても色あせてしまっている。3~4カ月ほど水をかけていないスナゴケらしいが、霧吹きで水をかけると、みるみるうちに生き返り、緑濃くなってきた。
スナゴケを植えたばかりの圃場。写真中央の黒い畝のところに植えられている(塩谷建設所有地)。氷見市の山中でも連携相手の農業者によって栽培が進められている。
 コケ緑化に注目し、「スナゴケでやろう」と結論が出るまでに半年ほどを要したという。計画では、初めのうちは、県外の業者からスナゴケを仕入れ、同時に県内において栽培も開始して、2年後からは自給できる体制を整える青写真を描いていた。
 年が明けて23年2月。コケ緑化を同社の事業のひとつに加え、販促に乗り出したわけだが、「何かアドバイスを…」と今度は高長常務が機構に足を運んだ。事業計画を聞いたマネージャーは、スナゴケの自給体制を整えるために県内の農業者の協力を仰ぎ、耕作放棄地の活用を試みている点に着目。県ならびに当機構が推し進めていた「とやま新事業創造基金 農商工連携ファンド事業」に該当すると判断して、まもなく迎える新年度にその申請をするよう勧めたのであった。


思わぬ企業からコンタクトが…

2012NEW環境展での同社のブース。この他にも支援を受けて展示会に出展。
 ファンド事業の採択が決まったのは平成23年6月下旬のこと。スナゴケ用の圃場の整備に拍車をかけるとともに、事業を活用して省エネ効果を確認するための実験を富山県立大学に依頼し、そのデータを載せたパンフレットの作成も急いだ。
 一方では、過去に建設工事を依頼してくれたビルオーナーを訪ね、屋上のコケ緑化の営業を展開。また10月に行われた「とやま環境フェア2011」(会場:テクノホール)や翌年2月、東京・有楽町のいきいき富山館(県のアンテナショップ)で開催された「農商工連携商品フェア」にも参加するなど、展示会出展にも力を入れ始めた。
 平成24年度に入ってからは、5月の「2012NEW環境展」(東京ビッグサイト)に出展するとともに、「販路開拓ステップアップ事業」の採択を受け、専門家の指導の下、大都市圏での営業にも力を入れ始めた。
 こうして当社のコケ緑化ビジネスの露出を増やし、またマンション分譲時と同じようにホームページも充実してくると、思わぬところから声をかけていただくようになりました。県内でもいくつかの企業で施工させていただきましたし、日本でもトップクラスの不動産会社から問い合わせが入り、説明にうかがったこともあります」
 塩谷専務は「こういう企業とビジネスの話をすることは、今まででは考えられませんでした」と続け、さらにはコケ緑化が本業の建設受注に寄与した例をいくつも紹介してくれた。
 塩谷建設では、平成25年度の早い時期に、東京での営業拠点を設ける予定である。この新展開こそが、コケ緑化ビジネスの可能性について確信した証だ。

コケ緑化の施工例。左は北陸電力(株)高岡支社の屋上。右は富山ライトレール沿線の緑地帯。レンガで囲まれた部分にはスナゴケが、その手前のレールの脇、軌道間には芝が植えられている。

 所在地/高岡市石瀬6-1
 代表者/塩谷雄一
 資本金/2億円
 従業員/120名
 事 業/建築工事、土木工事、リニューアル工事、不動産事業、土地活用など
 TEL/0766-23-4636 FAX/0766-23-7450
 URL/ http://www.shiotani.co.jp/

作成日2013.1.30
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